クリスマス2014~伝説の木をみんなで飾ろう

    作者:六堂ぱるな

     
     きれいに晴れた空から、ちらりほらりと雪が舞う。
     12月のその日は凛と澄んだ空気が漂っていて。
     色とりどりのモールやオーナメントの入った箱を抱えて、埜楼・玄乃(中学生エクスブレイン・dn0167)がふらふらよろけながら歩いてきた。
    「おっと?」
     ひょいと箱を取り上げて、宮之内・ラズヴァン(高校生ストリートファイター・dn0164)が彼女を見下ろす。
    「ツリーの飾りつけ、まだ終わってないのか。手伝おうか?」
    「ああ先輩、助かった。運ぶものはまだあるし急いでいたんだ」
     なにしろ武蔵坂学園のツリーは大きい。
     
    ●聖夜を彩るクリスマスツリー
     武蔵坂学園には『伝説の木』と呼ばれる10メートルほどの木がある。
     例年クリスマスには巨大ツリーとなって生徒たちを見守ってきた。飾りつけをするにも普通ならひと苦労の大きさだが、そこは箒で空だって飛ぶ灼滅者の学園のこと、大した問題ではない。
     でもここはパーティのメイン会場だから、パーティの前には飾り付けを終えたいところ。
    「先輩、もっと上に掛けてくれ。落差がないと格好がつかない」
     ラズヴァンにLED電飾のケーブルを上のほうの枝にかけてもらって、玄乃がテーブルの上に並んだ箱を示してみせた。
    「オーナメントも一通りあるんだが、いかんせん手が足りない」
    「なあ、時間があったらツリーの飾りつけしていかないか?」
     箱からツリーの飾りを取り出しながら、ラズヴァンが通りかかる生徒に声をかける。
     白や金銀のモールに赤と緑のガーランド。
     金色の縁取りのついた赤いリボンや小さなベル、色とりどりの綺麗なガラスボール。雪だるまや天使、小さなクマの縫いぐるみやプレゼントを入れる靴下も可愛い。
     羊飼いの杖をかたどったキャンディケインやジンジャーブレッドマンも定番だ。
    「せっかくだから、好きな飾りを持ってきてくれると面白そうだな!」
    「それはいい。みんなのツリーだし、みんなの好きなように飾るのが一番だ」
     頷いた玄乃が、白い息を吐いて伝説の木を見上げた。
     ダークネスと戦ったり、テストに追われたり、武蔵坂学園の生徒は忙しなく日々を過ごしている。クリスマスだからこそ、仲間や大切な人たちと騒いだり、楽しい思い出を作るのも大切なことだ。

     パーティが始まるまであと少し。
     寒くないように上着を着れば、時々雪が舞う気温でも大丈夫。
     伝説の木のてっぺんに大きな星を乗せるまで、お友達や大切な人と、みんなでツリーを飾りませんか。


    ■リプレイ

     小雪ちらつく、学園のクリスマス・イブの朝。
     箒で舞いあがった火蜜の背中で、ユークレースは胸を躍らせる。
    「ひみちゃん、もっと高くー……!」
     木のてっぺんまで箒を寄せる。でもユークレースの手がツリーに届かない。怖いけれど火蜜の背中を登って、やっと飾れた大切な二人のオーナメント。
    「温かいものを飲んで、夜を楽しみにしようね」
    「ユルとひみちゃんのじまんのお星様、地上からでも見えるといいなぁです……♪」
     地上からもきっとよく見える。
     ユークレースのナノナノ顔のお星様と、火蜜の雪の結晶を模った砂糖菓子。

     ツリーが正門からよく見える場所に、みやびと竜雅が飾ったのはヤドリギのリース。竜雅が実家の裏山で採って丸く整え、みやびが色とりどりのリボンと花を編み込んだ力作だ。
     みやびの箒でツリーを見下ろしてみれば、皆の想いがとりどりに咲いているよう。
     ヤドリギの祝福は、きっとこの木を見あげる皆に届くに違いない。
     気がつけば、舞い散る雪。
    「……やけに寒いと思ったら雪が降ってるのか。」
    「こちらで降るのは、少し珍しいですね」
     兄は妹の肩にコートを掛けて、一緒に見られる嬉しさを分かち合う。

    「よォラズ、手伝いに来たぜ!」
     陽気な声はいつもの錠、ラズヴァンも手を上げて応じる。
     伝説の木は今日の主役、しっかりおめかししなくては。身長のある二人のことだから、高い所はお任せだ。 
    「オーナメント飾っていこうぜ。俺は……やっぱりコレかな」
     掲げてみせるのは、音符の形のオーナメント。
     並べてラズヴァンがかけたのは、ギターの形のトルタ・ドルチェ。
    「誰かを楽しませる力があるってすげえよな。尊敬するよ、錠」
     この先もダチでいられますように、そんな錠の願いはもう、叶っている。

     見上げれば、思い出すのは去年のツリー。
    「えっ、梗花が下って大丈夫かよ」
    「大丈夫、一年でしっかり鍛えたから!」
     細い肩に腰を下ろした南守、見上げる梗花と相談しながら飾りつける。
     でもぐらり、バランスが崩れた。
    「「うわっ!」」
     気がつくと尻もちをついていて。オーナメントまみれの親友に、南守がツリーみたいだと吹き出す。そりゃあ僕が悪いけど、と唇を尖らせた梗花が不意討ち。
    「うん、似あってる!」
    「俺までツリーかよ」
     はにかむ南守の頭には小さなベル。
     沢山の幸せを、彼に運んできてくれますように――梗花の願いをこめて。

     Xmasに赤いバラ、なんて。
     花束を渡す翔琉が、寒がる璃依にマフラーを巻く。
     翔琉は白いピンポンマムを縦に並べて雪だるま、赤いヒモを巻いてマフラーつき。
     バラとガーベラをハート型のリースに飾った璃依が、最後にリースにリボンをつけてとねだる。リボンは、永遠の絆を結ぶって意味があるんだって。だから。
    「アタシとの愛を永遠の絆にして欲しい」
     照れながらの璃依の言葉に、思わず翔琉の結んだリボンが歪む。永遠なんて約束するようなガラじゃないけど、璃依となら。
    「俺もだいぶ璃依に染まってきたな」
    「カケル。だーいすきっ」

     伝説の木はパーティのメイン会場に立つツリーになる。気合いを入れて飾らねば!
    「中等部2年川堀香奈江、お手伝いさせていただきます!」
     持参したのはナノナノのぬいぐるみ。
    「くららさんは何か持ってきましたか?」
    「ららはこの三毛猫ちゃんクッキーを飾るんだー」
     短冊にサンタさんへのお願いも追加。ナノナノぐるみは『見つけた人はラッキー』な感じで、葉陰にこそっと。
    「かにゃのナノナノぬいぐるみかわいー」
     キャロラインを飾ろっかなーとか言ってると、空からちらほらと雪が舞った。
    「メリーホワイトクリスマース!」
     ららの歓声が楽しげに響く。

     青士郎の箒で舞い上がれば、慣れない眺めが不思議でエイダの視線はあちこちへ。
    「さて、アディ。どの子から飾ってあげようか?」
     青士郎が厳選したクッキーマンや雪だるまを、エイダは母のように微笑む「エイダ」と飾りつける。最後にとっておきを青士郎が出した。
    「こっちがアディ。こっちがエイダ」
     寄り添う二人の女性のオーナメントに、毛糸で編んだ紐をマフラーのようにかけて。
    「メリークリスマス!」
    「ありがとう、ございます……。メリー、クリスマス……」
     懐に小さなぬいぐるみを抱いて、微笑み返した。

     近づくとその大きさを実感する。
    「私達もすいこまれちゃいそう」
    「この木がみんなの力でキラキラになるってすごい」
     りねと穂純は微笑みあって飾りつけていく。
     穂純はベルやキャンディケインに赤いリボンを。ジンジャーマンクッキーはふたつ並べて、ピンクのリボンはりね、オレンジのリボンは穂純。
     りねは金色と銀色の、折り紙で作ったお星様。
    「私達が飾ったのってあの辺かな?」
    「うん、あそこに星もリボンも見えてるよ!」
     見上げる二人の笑顔もきらきら。

     籠いっぱいの木製オーナメントは凪のお気に入り。ガラスボールやキャンディケインを追加しながら黎が歓声をあげる。
    「凪ちゃんのオーナメント、どれも素敵!」
     リースを飾った凪の箒に二人乗り、白い猫のカバーのカイロを懐に、二人はあれこれ飾りつける。
    「ほら、これはとっておきよう」
     最後に凪が出したのは、リボンが飾られた青薔薇と星図盤。
    「黎ちゃんとあたしみたいでしょ」
     照れくさいけれど黎も嬉しくて、二人でツリーのてっぺん近くに飾る。
     見下ろせば伝説の木は綺麗で。
     このままお茶と、お買物に出かけましょう。

     舞い散る雪は雪を見慣れない小鳥にも、積もる雪を見慣れた仙にも珍しくて、二人で天を仰ぐ。
     温かそうなイメージのリネンのモールや松ぼっくりを手にとる仙の傍ら、迷う小鳥は霊犬の黒耀に選ばせようと『持ってこーい』に挑んでいた。
    「そういえば黒耀って雄? 雌?」
    「雄なはず……雄だよな?」
     ガラスボールや雪だるま、持ってくる順に飾りつける。黒耀を抱えてもふりながら、仙がもちかけた。
    「この後も一緒に会場を回ろうか」
    「目一杯、一緒に楽しもうぜ」
     笑いながら、小鳥が答える。

     ルーシーとグローリアが用意したのは、一緒に住んでいるみんなの人形。
     人形と一緒に飾るシザンサスの造花には、共に過ごした感謝の気持ちがこもっている。花ことばは、「良きパートナー」。
    「一緒に居てくれてありがとう。これからもずっと、よろしくね。グローリア」
     目礼したグローリアが、大切な主に微笑みかける。
     取り出した赤と白の薔薇の飾り、二つの花を合わせた花ことばは「温かい心」。それはルーシーとの出会いを感謝したグローリアの気持ち。
    「ルーシーお嬢様、メリークリスマスでございます」

     春音はレイム・ソルジャーと手分けしてオーナメントを飾りつける。いつも一緒の彼と何を飾ろうか、迷いながらガラスボールやモールをあれこれかけて。
    「ありがとう、レイム」
     そう言われて、照れたように顔をそむけるビハインド。
     地を蹴って高い場所へと飛びさるのは、飾りつけるよりは顔をみられたくないかのようだった。くすり、春音が微笑む。

     大きな伝説の木を仰ぎ見て、リギッタはリアに囁きかける。
    「リア、きらきらしていて綺麗だな」
    「ピカピカして、キラキラ、してて、すごいです……!」
     リギッタは小さな女の子二人と男性の人形を用意した。彼女たち二人と、ビハインドのルアドロのよう。
    「これからもずっと一緒に居られたらいい」
    「……はい、ずっと、リギーお姉ちゃんと、ビハインドさんと、いっしょ、です」
     三人一緒に飾れる場所に結わえてそっと見上げる。
    「あっちの飾り、もっとみたいかも、です……!」
     リギッタはリアの手を取って歩く。
     彼女の初めてのクリスマスを、楽しいものにしてあげなくては。

     木に脚立を立て掛けるクレイが、モールを手に振り返った。
    「子供が見てはしゃぐような飾り付けにしたくないか!?」
    「どれかいるもんあるかー?」
     オーナメントの入った箱の前に腰を下ろして梛が問うけれど。
    「リボンにするか……オーナメントにするか……」
     クレイとは対照的、一歩引いて全体のバランスをみて、シグマがまた戻る。
     と、脚立を下りたクレイと悩むシグマの目の前にサンタパペットが現れた。手にはプレゼントの形のオーナメント。ぴょこぴょこ動かして梛が笑う。
    「わぁ?!」
    「いい子にサンタからプレゼントな」
    「わっはー、かわいい!」
     クレイがサンタを上に飾る。小さなプレゼントを受け取って、シグマは枝の目立つ位置に。すると再び、ひょいとパペット。
    「もう一個あったぜ、トナカイの」
     トナカイはシグマがサンタの近くに飾った。
    「三人でクリスマス呼んだ、って感じするな」
     シグマが頷いて、クレイと梛と並ぶ。

     【元社務所+α】は自然素材を使った素朴なガーランド。これに赤や金色のボール、リボンのオーナメントも絡めて、電飾も一緒に巻こうというわけ。
    「銘子さん本格的なの持ってきましたね」
     パンとガーランドに手を合わせた紗里亜もお手伝い。杣やまーまれーどにガーランドをかけて、バランスを見ながらオーナメントを追加する。
     銘子と紗里亜がガーランドの端を持って箒で飛び立つと、銘子がじたばたし始めた。
    「あたいも上がりたいー!!」
     ぽんと猫変身、体にモールを巻き付けて木を駆け登る。途中のボールに猫ぱんち、決死の戦いを繰り広げつつ頂上を目指す!
    「飾り付け俺もやるぞー」
     織兎がまーまれーどに電飾をまきまき。台になってもらって、電飾を巻くお手伝いも買って出る。
    「センスが……問われる……!」
     慄く織兎。小次郎が声を張り上げる。
    「もうちょっと右の方にも電飾がいくといい感じですよ!」
     そんな彼はツリーの下方でアレンジ付加。風鈴を柊のリースと合わせて飾る和洋折衷。間違っても素直にベルは飾らない。ついでに『世界平和』と書いた短冊も。
    「パーティー料理の手伝いにでも行きますか」
     小次郎が息をついた頃、上では降りられなくなったミカエラのため、紗里亜が枝を避け、銘子がそっと手を伸ばした。
    「ふふ、頑張ったわね」
    「お疲れ様でした。下でご馳走が待ってますよ♪」
     紗里亜も微笑み、地上へ向かう。

     【びゃくりん】では向日葵の元気な声が響いていた。
    「じゃじゃーん! ジンジャークッキー作ってきたよー♪」
     スノーマンやプレゼントの形に、お砂糖のアイシングで縁取りも完璧。
    「どれどれひとつお味見を……。中々美味いじゃないか、腕上げたな」
    「咲哉ちゃんつまみ食いしないのー!」
     笑顔の咲哉はキャンディケインを取り出す。何がいいかよくわからない真琴は、オーナメントの詰まった箱を覗きこむ。高い所は天狗丸で、低いところは咲哉が脚立を支えてそれぞれに飾りつけ。
     飾り終えると息をついて真琴はツリーを見上げた。
     皆のクリスマスをそっと見守るという伝説の木。待ち合わせに使わせてもらうのも、咲哉ばかりではあるまい。
    「どうか素敵なクリスマスになりますように。頼んだぜ伝説の木!」
     手を合わせて、ツリーと化した伝説の木を拝む咲哉である。

    「でっけーヤツ程、制覇した時の感慨もヒトシオってネー。皆の幸せパゥワー! で飾り倒されちゃえーィ!」
     【ピースフル同盟】、尚都の宣言である。希沙も声をあげた。
    「皆で飾れば豪華で素敵なツリーになるね!」
    「タロー氏よ……今年もキミがツリーで輝く時が来たンだねィ」
     尚都が茉莉の持ってきたぬいぐるみに話しかけるのを、当のタローが見つめていた。希沙のオーナメントは4羽のハト。4羽揃えて飾って、お星様まで仲良く飛んでけと願う。
    「皆で一つの物を作り上げるのは楽しいですこと」
     微笑む藤乃は「peaceful」と入れた手作りの刺繍ストラップの他にシルバーのスノーフレーク。小さな雪の欠片が連なる。
    「あたしは王道の金の星のオーナメント!」
     藤乃が縫ったストラップをつけ、尚都がお星様を突き出した。刺繍ストラップはぬいぐるみのタローにもつけてあげる。
    「ほらタロー見て見て!」
     星は高い所に掲げて、まわりには白い鳩が4羽。下にはタローさんとスノーフレーク。
     皆で手を広げて声を合わせる、メリークリスマス!

     【箱庭ラボ】はまずしっかり相談から。
    「どう煌びやかに華やかに飾り付けられるか、センスが試されるわね」
     やる気十分の叡が呟き、そのセンスに期待しちゃおうと律花が乗る。ちょっと不揃いに綿を散らし、星の飾りじゃ定番だから、星型に切り抜いたフィルターをかけたライトを当てる。
    「白いリボンはどうでしょう?」
    「上の方は叡の言う星空にして、下は雪っぽく飾り付ければ」
     とてもステキになりそうだと律花は思う。早速脚立に登った彼女に、叡がふとツッコんだ。
    「……スキニーかスパッツ穿いてるわよね?」
    「私が脚立支えますからー!」
     顔を真っ赤にして翡翠が走ってきたが、「そしたらアンタが目撃するわよ?」の一言に沈没。
     結局叡が脚立に登り、飾りつけは進む。

     【あおぞら空想部】は箒からの落下対策、銀都がクッションマットを敷きつめる。
    「これは飾り甲斐がありそうだ」
     見上げた作楽がキャンディケインとジンジャーブレッドマンを取り出し、マイスも母国スウェーデンのペッパーカーカを用意してきた。あとワラで作られた星のオーナメント。
     みつるは実家が神社でクリスマスを祝ったことがない。親に内緒で買った金や銀のボールにフェルトのろうそく。蒲公英に高いところに飾ってもらう。
    「悪いが手伝ってくれい」
     銀都が自作したLED電飾を広げるのを、急いで統弥がお手伝い。
     蓮は箒で高い場所の飾りつけ担当。マフィンに金銀のモール、クッキーと忙しい。愛華を乗せたらそっとマフラーを巻いてもらった。
    「寒くないですか? 瀬川先輩…!」
     もちろんオーナメントも丁寧に飾る愛華。
     イロイロヤワラカイ感じに女子力を感じた次は、やる気に満ちた統弥。銀都から預かった大きなマフラーを一杯に広げて枝にかけた。まるでツリーがマフラーを巻いたよう。銀都が編んだのだという。
    「このツリーをみて、恋人たちや家族……子供たちが喜んでくれたらいいなぁ……あ、っと?!」
     蓮は二人目の箒二人乗りでホバリングに挑戦していた。そしたら傾いた。
    「うわぁぁぁぁぁ!!」
     統弥、落下。蓮が振り返ればルーちゃんしかいなかった。
     そこにリボンを高いところにつけて欲しい作楽が声をかける。と、琥界が前に出た。蓮に頼むのが納得いかない模様。
    「いや、瀬川さんが駄目なら蒲公英さんに頼むし……」
     言わせも果てず、リボンを強奪した琥界が高いところへ。
    「琥界ー!!?」
    「えっ、蒲公英。止めに入る気?」
     慌てた様子の蒲公英に、みつるも声を裏返らせた。
    「そろそろ飾り付けが終わるみたいだね?」
     仲間の様子に和んでいたマイスがふと呟く。
     来年もみんなで幸せなクリスマスを迎えられますように、愛華の願いをこめた飾りつけはとても綺麗で。
    「これをバックに写真とろうぜー」
     銀都の陽気な声に、皆で集まる。

     サンタ帽を被り首元をリース風に飾り付けた瞳の霊犬・庵胡が、尻尾を振りながら伝説の木を見上げる。それだけで【桜堤中3E】はテンションアップ!
    「庵胡ちゃんカワイイ! でもテツくんも負けてないのです!」
     矢宵のテツくんはモールと電飾でぴっかぴか!
    「庵胡ちゃん可愛いー! テツくんカッコいい!」
     和奏に瞳がクッキーを差し出した。型抜きクッキーに砕いた飴を入れて焼いた『手作りステンドグラス風クッキー』はキラキラ輝く。
    「食べても良いの? わーい、ありがとー♪ ……んー、おいしい~」
     幸せそうにむしゃる和奏はリボンと鈴を結んだ松ぼっくり。ついでに庵胡とテツくんにもつけちゃう。
    「男前が上がったよね、テツくん」
     矢宵は折り紙を6つに折って切り抜いた雪の結晶だ。テツくんを足場に飾りつけを始めよう。完成がとても楽しみ。

     【SarvantHouse】はサーヴァントのいる人々のクラブ。人手は参加人数の2倍だ。オーナメントに迷う上、二人分の飾りを選ぶのに時間がかかるのがネック。
    「総司さんも、何を飾りますか?」
     ビハインドの総司に声をかけ、昭乃がガラスボールやモールを手にとれば。
    「……ママ……どれ、に……する……?」
     マリアと顔を寄せ合ってサーシャが囁く。十字架のオーナメントを選ぶのを見ながら、脚立で渚緒は鳥のオーナメントを空を飛ぶように飾り付けた。手の届かないところはカルラにかけてもらう。
    「二人のも上の方に飾ってあげようか?」
     渚緒の言葉にそれぞれがオーナメントを持ち寄った。
     「友達を作るんだよ」と言った父の言葉を、サーシャは思い出していた。
     その意味が理解出来た気がする。

     大きな伝説の木の前で、心日がぽかんと口を開けていた。メルは用意されたオーナメントにきょろきょろと目をやる。
     ジュリアはクラブに居座る控えめなボス猫に似た飾りに、小さな掌サイズのランプと栞。
    「ジュリア殿はボス殿の飾り……我はノーベル似」
     別の猫に似たステンドグラス。心日も猫のオーナメント、金・赤・青のモールにジンジャーブレッドマン。
    「天辺のほうに飾りに行こう」
    「僕も乗って良いの?」
     心日を乗せ、メルは箒で飛び立つ。猫の玩具を靴下に詰めたり、試験管に星の飾りを落としたオーナメントを飾るのだ。心日はモールをかけていく。
     次はジュリア、緊張しながら小さなランプや栞をあちこちに飾る。
    「メリークリスマス!」
     メルの楽しげな声が響く。

     今年初めてクリスマス行事に参加する想々は、伝説の木のことも今年初めて知った。その傍らでレーネが振り返る。
    「自分らしい装飾、何か持ってきたですか?」
    「桜柄の手ぬぐい。リボンみたいに結べば立派な装飾品だろっ?」
     天狼は去年は参加しなかったからとても楽しみ。
     想々は雑貨屋さんで買った二羽の青い小鳥のオーナメントだ。
    「家に置いておくより……こっちの方が、寂しくないかなって」
     頷いたレーネは紫苑の花を取り出した。花ことばは『あなたを忘れない』。
    「レーネはツリーにお華を捧げるです。ツリーは皆にお華を捧げるです。また来年も誰も欠けずに出会えるよう祈るです」
     天狼の支える脚立で、レーネと想々がバランスを見ながら飾る。
    「いや、来年あたりァ2人とも誰か特別なヤツと来てっかもな?」
     天狼は笑うけれど、また来年も皆と過ごしたいと思うのは、想々もレーネも同じ。

     初めての、友達とのクリスマス。
     銀色に塗装された松ぼっくりや靴下、雪だるま。菖蒲は迷いながら可愛いオーナメントを選んでいて。
     恢は天然石の細石の瓶詰めを持ってきていた。エメラルド、タンザナイト、アメジスト、夜光石。誰かさんたちの誕生日に因んだ石なのは内緒。
    「メリークリスマス、2人とも!」
     いつも通り口をへの字に結んだ少女は、でもどこか楽しそう。
    「上まで行きますよ、良ければどうぞ?」
     恢の箒で木の高い場所をめざす。
     高さに怖がりながらも菖蒲は一生懸命飾る。恢も光を美しく反射する瓶詰を配置。
     アルスメリアは丁寧に折られた菖蒲の花飾りと、鎖で連なった大小の金色の星たち。
     同じものをもう1セット取り出すと、二人の頭へ。
    「折角だから……つけてあげるわ」
    「ありが、とう」
     恥ずかしそうな二人の笑顔にアルスメリアも笑みをこぼす。


     てっぺんには雪の結晶の砂糖菓子とナノナノの顔のお星様の砂糖菓子。
     5mぐらいのマフラーをかけて、温かそうなツリーは白いリボンや自然素材のガーランドで飾られて、青や白い鳥のオーナメントが空を飛ぶ。色とりどりのサザレ石の瓶詰やお星さま、雪の結晶に飾られて。中段にはヤドリギのリースが揺れる。
     たくさんのジンジャーブレッドマンや雪だるま、ぬいぐるみの下には手ぬぐいのリボンや風鈴が揺れた。全体を彩る、赤や白の薔薇や紫苑。

     伝説の木は皆の想いのこもった飾りつけで装われ、聖夜を迎える準備が、整った。

    作者:六堂ぱるな 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月24日
    難度:簡単
    参加:64人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 11
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