クリスマス2014~武蔵坂雪まつり

    作者:日暮ひかり

    ●Merry Christmas!
     紅葉の見頃も終わり、関東にもいよいよ本格的な冬がやってきた。
     武蔵坂学園内でも、例年通り盛大にクリスマスイベントが行われるようだ。
     窓から遠く、遠くを見ながら、鷹神・豊(エクスブレイン・dn0052)は街もクリスマス一色だなと呟いた。同じ方を眺めてみたものの、彼の視力が良すぎるためか、イヴ・エルフィンストーン(中学生魔法使い・dn0012)には何を見ているのかわからない。
    「雪でも積もれば風情もあろうが、東京では望み薄だな」
    「鷹神さん、近くも見ましょう。積もるみたいですよ、雪。ほら!」
     クリスマスですから。
     イヴはそう言って、悪戯っぽく笑うと、掲示板に張られたポスターを指さした。
     毎年恒例の雪合戦やライブなど、数々の告知が並ぶ掲示板の中に、見慣れないものが混ざっていた。大きな雪だるまの絵とともに、こんな題名が書いてある。
     
     ――武蔵坂雪まつり、開催!
     
     クリスマス当日、学園のグラウンドには人工雪が降り、一面真っ白になるという。
     どうやらグラウンドいっぱいにたまった雪を使って、いろんな雪像を作ってみよう! という企画のようだ。あまり雪の降らない東京では、めったにできない体験だろう。
     だんだんと集まってきた灼滅者達にも、イヴは声をかける。
    「イヴも雪だるま作りに行きたいんです! ねっ、行ってみませんか?」
     大きさにはいちおう規格があって、小さいもので普通の雪だるまぐらい。
     最大は、横2メートル×縦2メートル×高さ2メートルの立方体に収まるサイズまでOKだ。
    「大きいのは、ひとりで作ったら大変そうです……でも、お友達といっしょに作ればきっと大丈夫ですね。それにとっても楽しそうです! ねっ、鷹神さん!」
    「……本気か? まあ参加もやぶさかではない、この機会に盛大に雪遊びをしておくか。それで何を作ればいいのだ」
     題材は、自由だ。
     オーソドックスな雪だるまでもいいし、人の像やペット、建物、食べ物に空想上のモンスター、前衛芸術っぽいよくわからないものまで、とにかく自由だ! と書かれている。
     基本的に、素材はグラウンドの雪だが、多少の装飾なら許可されているようだ。
     例えば、目や眉毛をつけたり、マフラーを巻いてあげたり、木の枝で手を作ってあげたり……というレベルであればOK! との事だ。
    「あっ、自由参加の雪像コンテストもあるみたいですね。ステキな雪像さんができたらエントリーしてみてはどうでしょうか!」
     ユーモアや芸術性を追求するのも一興。
     好きなもの、思い出深いものを、のんびり楽しく作ってみるのもいい。
     一人でふらっと遊びにきてもいいし、恋人と共同作業をしてみるのもいい。
     仲間内でいくつか雪像を作れば、並べてひとつのテーマを表現……なんてこともできるだろう。
     
     武蔵坂雪まつりは、誰でもチャレンジ大歓迎。
     はじめての人も、雪に慣れている人も、いっしょに楽しく楽しもう!
     あなたの作った雪像で、クリスマスの武蔵坂を賑やかに盛り上げてみませんか?


    ■リプレイ

    「わーい、雪です雪ですー! 今日は楽しみにしてたんですー!」
    「デカい雪だるまを作るンだろ? オレたちなら楽勝だぜ!」
     ナノナノのもこもこを呼び出しめりるもヘキサも気合十分。スライムの体をうねうね動かしながら、雪緒が雪玉を転がしていく。
    「ベースの雪玉作りは雪国育ちの俺に任せろー! 最初は豪快に! 次にいびつな所に雪をつけるように!」
     形を整えたら羽、ウサミミ、ニンジンを雪でデコレーション。シルクハットとステッキを備えたアリスの紳士雪だるまも隣に並んだ。完成したウサだるまの頭に兎変身しためりるが乗り、【魔法使いの隠れ家】の仲間で記念撮影だ。
    「ヘヘッ、オレも合わせてトリプルウサギだな!」
     一仕事終え、いい笑顔のヘキサにアリスが言う。
    「身体を冷やさないよう、汗はしっかり拭くこと。魔法瓶にダージリンを入れてきたから、これ飲んで温まりましょう」

    「今年もでっけーの作るですよ! 手袋よーし! 長靴よーし! くまさん着ぐるみよーし! でごぜーます!」
     美菜の肩にはニホンリスのモミジも一緒。けれど雪玉作りも中々難しく、美菜は【東雲】の皆を羨ましげに眺めた。
    「実はこれでも美術はちょっと得意なんですよー」
    「……食人花かしら」
    「お花ですよお花!」
    「……。あらティセの可愛……」
    「雪崩色に染めてやりますわー!」
    「?!!」
     謎の怪物を傍らにどや顔の司、緑のスプレーを豪快にかけ雪崩色うさぎを生むティシー。唯一まともだった壱の雪だるままで司プロデュースで角が生え、すごく目立っている。
    「……なんかトゲトゲしたわ!」
    「サンタ帽を被せてあげましょう!」
     ティシー、ナイスフォロー。
    「どうだー!」
     美菜の作った小さなモミジ像が、独創的な雪像軍団に加わる。皆でわいわい遊んだ思い出は、記念写真の中に刻まれた。

     広がる銀世界に感嘆の声をあげ【くらげごや】の面々も雪の中に踏みだした。早速雪だるまの体を作り始めた花音だが。
    「よいしょ……よいしょ……なんかこれは大変ですね……ふわあっ」
    「わあ。花音さん大丈夫? 気をつけて……!」
     べしょっと転び、アノンに助け起こされる。
    「お、重いです……! えとえと、どなたか手伝っていただきたいのですが……」
     同じく苦戦中の海月を花緒と奏哉が手伝い、何とか大きな雪だるまが二つ。飾り付けている間に花緒はナノナノ、奏哉はおおいぬ座をイメージして犬の、小さな雪像をそれぞれ作った。そこにアノンの雪うさぎも並ぶ。葉っぱの耳が可愛らしい。
    「何だか家族の様に見える気がするよ。微笑ましいね」
     奏哉が微笑む。ピンクのマフラーを巻いた花音の雪だるまがお母さん。枝の眉毛が凛々しい海月の雪だるまがお父さん、それからペット達という雰囲気だ。
    「……どうせなら、記念に一枚……写真、撮りません、か?」
    「はい、記念撮影致しましょう!」
     花緒の言葉に、海月とアノンが頷く。
    「冬ってとても寒いけれど、こういう楽しみがあるからいいの」

    「雪だるま作るよーっ! ゆきたちくらいの大きさの雪だるま!」
     大雪玉を二人で転がしながら、結月と竜生は元気に雪上を進む。木の枝の手、石炭の目、人参の鼻を飾りつければ、なんだか楽しそうな顏の雪だるま。
    「一人で作ると大変でも、ゆきが居れば心強いね」
     街にくり出すのも良いけれど、こんなデートだって二人らしい。写真レンズの中で肩を寄せ合う二人は、きっと素敵な笑顔に写ったろう。

    「ともき、るる、精密な八千代作りませんか?」
    「うん、止めようね。ね。ほら、一緒に恐竜作ろう。大きいやつ」
    「笑顔ですよ笑顔。ピースピース」
     問題児多数の【空き教室】、不安はやはり的中した。自由なかをりをなだめつつ恐竜像を作る八千代の横では、るるかが楽しそうに雪を集めている。
    「ほらでーきた! かわいいうさぎさんのなまくび~☆」
     リアル系(by智希)。
     こちらも衝撃作だった。隣の八千代作・雪兎が怯えてる風に見える。
    「腹の中に八千代をしまえば完成です」
    「駄目だからね。絶対」
     混沌を極める皆の様子をどこかマイペースに見守りながら、智希は小さな雪の花を作り上げる。ココアを飲んで、一緒に笑って。寒くても、皆でいれば楽しい。
    「みんなと寒かったり暖かかったりしてるるはしあわせだわ」
    「帰ったら誰かに温めてもらいましょう。一先ずはココアで我慢しつつ、ね」

     【八幡町キャンバス2-B】の三人は、考える人像を作るようだ。美術が苦手な皆無が雪集めに行っている隙に、姫月と透はこっそり雪像を改造する。
    「赤い角はニンジンで表現して……と。うん、なかなか似てるんじゃないかなぁ」
    「加えて鹿の角を付けたら格好良いかのぅ?」
     完成した雪像を眺めて、皆無は暖かいお茶で一服する。
    「いやぁ……なかなかの出来栄えですねぇ」
     筋肉、角、哲学的な表情……筋肉!
    「……角?」
    「うむ、どれをとっても素晴らしいできじゃ……あ!」
     額に生えた人参の角を皆無はさりげなく折った。
     しかし、今度は羽根をつけようと透が迫る。攻防はもう暫く続きそうだ。

     七葉、銀河、藍花の仲良し三人組は、夏の水族館で見たコウテイペンギンを冬の雪で作り上げる。
     威厳溢れる親ペンギンと可愛い雛の家族ができたら三人で記念撮影だ。すると七葉がデジカメに映りこんだ何かに気付いた。
    「あれ、藍花さんのビハインドが別の雪像作ってるよ?」
     それは藍花がこっそり計画していた、巨大な銀河の胸像。
    「すごい、けど……なんで私の!? なんか恥ずかしいよ!?」
     照れる銀河をよそに、二人はうんうんと納得している。
    「完璧です、……これはもうコンテストに出品するしかないですね……!」
     いくら可愛い友達の作品でも、そればかりは全力で阻止した銀河だった。

     【日本の歩き方】の三人は皆で入れるかまくら作り。スマホで作り方を検索しつつ、手探りで建設していく。
    「私の故郷は雪が良く降る場所だったのでとても懐かしい、です」
    「ボクの故郷のアンダルシアは、雪とかあんま積もらなかったんだよネ」
     立派なかまくらの隣にアプリコットとサルバドールが雪うさぎを添えた。楽しそうな二人の様子に、明も満足そうだ。
    「アプリコット姫、どうぞ貴女の城へ……」
     はにかんだ『姫』が中へ入れば、七輪の上で餅が焼けていた。雪の中ココアをついで、三人のんびりお餅を食べる。カマクラの中はあったかい。
     御伽噺の中にいるみたいと、サルバドールが笑った。

    「エンブレムについているマスコットの一足りないを作りましょう……」
    「前後左右上下のスケッチを描いて来ましたよ。あれ、一枚足りませんね。しかも大事な正面が」
     【TG研】の部長、流希は良太のスケッチを覗く。確かに一足りないが、記憶とスーツを頼りに作るしかない。
     猫風の体、矢印っぽい尻尾、抱えたサイコロに何より背中の『-1』。園観のイメトレはばっちりだ。
    「あとはこのいっちゃんスーツを着て実際作れば……あっ! 園観ちゃんの分がありません、一つ足りない……一足りませんよーっ!?」
    「さっきから用意している雪や道具も少し足りなかったり、一個足りなくなるのですが……」
     削り過ぎたり、付け足しすぎたり。そんな苦労を乗り越えて作った一足りない像を、登は何か腑に落ちない顔で見る。
    「ふう、何とか完成したねえ。でも、何かが足りない気が……」
    「ホットココアを持って来てありますので、一緒に飲みましょう。……あ、カップが一つ足りませんね」
     戦力外だった清美の優しさも儚く散った。一足りない像がほくそ笑んでいるのは気のせいだろうか……。

     雪兎作りも意外と難しい。不器用ながらどうにか形になった兎をハガネは掌に乗せ、たまきにさし出す。
    「よォし出来たぜ、並べて置いといたら親子の兎みてーだな!」
    「あはは、可愛い、よー。親子かぁ……良かったね、お前たち」
     いつかの都市伝説のように寂しくはないだろう。
     少しデコボコだけどどちらも可愛い。にっと笑った彼に笑い返すと、たまきはクリスマスのリボンを大小の兎達に結んだ。

     地面に残されたらいもんの帽子とマフラーを前に、貫は絶句した。隣で実のクロ助と遊んでいた筈だが一体どこへ。
    「や、八重樫さんどうしよ……雪、迷子、凍える……」
     実の心配をよそに、クロ助は雪像へ尻尾を振っている。
     見ればらいもんをおぶったクロ助の雪像の影から、本物のらいもんがひょっこり。雪まみれの悪戯っ子たちを保護して、二人は肩を撫でおろす。
    「子育てって大変だな桃野……」

    「龍、お腹に入ってみない?」
     湊詩と誠士郎の作ったカンガルーは人が入れる袋が自慢だ。湊詩が雪を固め、誠士郎が細部を彫った像は入ってもびくともしない。
    「すごいな二人とも」
    「俺達は雪に慣れているものでな」
    「こういうのって、年に一度しかやれないからさ」
     楽しめるだけ、楽しまないとね。湊詩が言えば、足元の花もきゃんと鳴く。
    「花も入る?」
     袋から手を伸ばす龍も、楽しそうだった。

     鶫の雪像作りを見学していた瑪瑙だが、何か目線が気になる。
    「大丈夫、ちゃんと『超イケてるユキくん像』にしますから」
     待って、意味がわからない。
     けれどきりりと宣言されては冗談かもわからず。
    「……わかった、僕も一緒に作るから」
     渋々といった瑪瑙の横顔に、鶫はへらりと笑み返す。ごめんね、だって、キミと遊びたいんだ――二人作った雪にゃんこは、鶫の『まぶだち』に少し似ていた。

     わたしが一番お姉さんだから――ひよりが頑張って大きくした雪玉を紗奈が一緒に押し、春が背伸びして頭を乗せた。
     横でポーズを取るのは春の霊犬・ナツマだ。凛々しいその姿を、三人一緒に作っていく。皆大好きなナツマだから、雪の冷たさだって気にならない。
    「春、春! 大事な目は、春が描いて!」
     春が外した手袋を紗奈が預かり、真っ赤な手にはめる。
    「うし! ……魂、ちゃんと篭ってる?」
     仕上げにきりっとした瞳を描く春の指ももう真っ赤。二人と一匹が愛おしくて、ひよりは丸ごと抱きしめた。ぎゅっとされれば少し照れるけど、ぽかぽか暖かい。
    「みんな、いーっぱい頑張りました!」

     雪の思い出。ともだちになったやつのこと。何でもすぐ忘れてしまうから、よくわからない。そう言ったパストラに、花は少しだけ悲しげな微笑みを返す。
    「……また、お友達になってくれますか?」
    「おまえがそれを望むなら、ラーは何度でもこたえる」
     それしかできなくても。忘れてそれきり、会えないよりずっといい。
     友達と、初めての雪遊び。真っ白な雪に、不器用で小さな羊の像が並んでいく。

     兎の耳と眼鏡をつけた姉だるまの隣に、同じ大きさの弟だるまが並ぶ。
    「ネオンは1人じゃだめだもん。クオンがいてくれなきゃ!」
     姉弟で育てた双子の雪だるまは、揃いの赤髪をつければ音音と空音そっくり。ずっと一緒にいれるように一本のマフラーで繋ぐ。
    「……姉さん、俺達も今日は同じマフラーで帰ろうか」
     風邪引かれたら、困るから。弟の可愛い照れ隠しに、あっためてあげると姉は笑った。

     背中合わせの匡とぬいは、せーので振り向いた。
     まんまるの目とまろ眉、おひさま色リボンをつけた匡の雪だるまはとても可愛い出来栄え。
     碧藍海硝子の目に小枝の猫ヒゲ、ゴーグル装備のぬいの雪だるまも形は悪いが愛嬌がある。
     狼の耳と尻尾はお揃い。モデルは、一番大好きな友達だ。
    「ぬい。これからももっといっぱいいっぱい、遊ぼうね!」
    「うん! タスクといっしょ、わくわくいっぱい!」

     一組の手袋を半分こし、鼓と弥彦はころころひゃっこい雪だんごを作る。二つ重ねれば、小さな雪だるま。互いにプレゼントしあった後、弥彦はささらの顔の雪玉も作ってくれた。
    「弥彦さん。手、ください」
     冷えきった弥彦の指を、鼓の両手がふわりと包みこむ。
    「にんげんはこうやってあたためるですよ」
    「……あったかい」
     狼の子達は笑いあう。もふもふの毛がなくたって、人の手はこんなに凄い。

     重みで崩れる心配のない平たいもの。口を大きく開いた動物の像を、敬厳は写実的に作り上げていく。
    「ワニさんですね。歯がリアルです……!」
    「あっイヴさん、こんにちは。もうお元気そうですね!」
     楽しみ方も人それぞれ。遠くで真っ白な雪に足跡をつけている良顕を眺めながら、イヴはほうと白い息を吐く。
    「イヴさん、みおも手伝いに来たよ」
    「嬉しいですっ。わあ、アクセサリーまで!」
     水織達と一緒に雪を固めていると、何だか寂しそうな仁王が通りかかる。
    「良かったら手伝わせてくれねぇか。いや、部屋にいても一人だからよ」
     手先が器用だという彼女、頼もしいですとイヴは微笑む。
    「ニォさん、可愛いニックネームですね!」
     仁王の得意な兎に水織の装飾品をつけ、できたのは兎の魔法使い。
    「案外いい出来だな」
    「皆さんのおかげですね、鷹神さん。あ、コンテストの結果が出ましたよ!」

    ●ストレンジ賞
     雪祭り。芸術を発揮する時が来た――!
    「私の手にかかればこんなモンよ。完璧だわ」
     自信満々なセイナの前には、ピンクハートちゃん。雪だるまを作ろうとしてこれが出来る稀な才能、流石お嬢様だ。

    「あの頃作ったのはもっとガタガタだったけれど」
    「今なら昔よりもっと綺麗で大きいの作れるよな!」
    「ちょっ、怖いからやめて!」
     幼馴染で腐れ縁な二人は童心に帰り雪だるま作り。リアルなイケメン顔を彫刻した朔之助に対抗し、史明は鼻に人参を突き刺す。めげない朔之助は肩に腕を回す謎のマッチョ像を作った。
     題名【カップルさん】。
    「……こういうカップルが朔の理想なの?」
     まさか、ね。

     十織のお題『あったか』に、千花と円理のうっかりコンビが挑む。
    「披露致します。作品名『脱出難度鬼畜レベル』」
     千花はこたつ像。蒲団からはみでた猫の手が鬼畜度を高める。
    「具材? そんな技術が俺にあるとでも」
     円理は手刀で割った雪玉で鍋を制作。中で暖まるおっさん入り。
     いい勝負だ。千花は止めの蜜柑を乗せようとするが、ない。円理が食べたと発覚するや、みぞおちパンチが炸裂。
    「何故ソコでおっさんが登場する! 千花も蜜柑一つに容赦ねえぇ!」
     いつもの光景を眺めつつ、十織は雪を手に取る。あったかさとうっかりな二人に必要なもの――蜜柑と鍋の蓋が雪像の上に添えられた。

    ●チームワーク賞
    「デカさの限界に挑戦! 人が入れるくらいのつくっちゃうぞー」
     【白の王冠】チームはクラブに因んだ物を作成中。ポンパドール、瞳、矢宵の力で瞬く間に2mの雪山が出来ていく。
    「頼もしいね。その調子でお願いします!」
     小唄がサーヴァント達を労わる様に撫でる。運搬用のそりを付けたテツくんと、サンタ帽を被った庵胡もお手伝いだ。
    「雪の塊をくり抜いてカップ型にしましょ♪」
     瞳の声かけで光貴と小唄にタッチ。二人を中心に細部を作る傍ら、響斗は全体に水をかけ雪を固めていく。
    「うう、手が冷たい……」
    「矢宵ちゃん大丈夫ー? カイロあるから無理し過ぎないでね?」
    「ふぇぇ響斗先輩ありがとおお」
     冷たさにも負けず作業を進め、いよいよ難関の取っ手部分だ。
    「ポンド君、この取っ手が腕の見せ所だから頑張ろー!」
    「(ヤバいヤバい、おれがいちばんそういうの苦手じゃん!)」
    「わたしも手伝うよ…………ひゃー、ごめん!」
    「小唄、俺様に任せろ!」
     少し形が崩れて、慌てる二人を光貴がフォロー。皆の頑張りが実を結ぶよう、慎重に作る彼の眼は真剣だ。仕上げに瞳が王冠を模った雪飾りを表面へつけた。
    「『BIGサイズな王冠入りのコーヒーカップ』、完成ね♪」
     真っ白な雪で出来たカップの前で、最後は喫茶部らしくコーヒーで乾杯。丈夫で可愛い雪像と一緒に記念撮影をした。

    「空丸! かっこよくてそれでいて気品もあり作りやすいポーズをとってね! そして動かないでね!」
     大切な相棒とあたし、勇ましく作ってあげたい。アリッサの想いに応え、空丸は無茶振りに耐えた。
     サズお兄さんに教えてもらいながら、みかんは初めての雪だるま作りに挑戦。モデルはだいだいちゃんに決めた。二人で転がした頭部の雪玉をサズヤは胴に乗せようとする。
    「サズお兄さん……だいじょうぶ?」
    「おぅ…………。…………頑張る」
     案外重い。みかんとだいだいも力を合わせ、持ち上げる。細部を作り、最後にマフラーを巻いた。蜜柑で作った二つの瞳は、後で一緒に食べられるお楽しみだ。

     【メカぴ研】がモデルに選んだのは、クラブで飼育しているカピバラ。月夜が用意した図面や写真を見ながら、1/1スケールのカピバラ温泉を作っていく。
     土台の基礎ができたら、まず部長の沙雪が父カピバラのメカピを真ん中に配置。大人の雄が備える、鼻の上のモリージョが大黒柱の証だ。
    「ヒメカはメカピ雪像の隣に作る感じでええ?」
    「うん、仲良しカピバラ家族の雰囲気を出したいしな」
     智恵理の担当はお母さんカピバラのヒメカだ。彼女が用意した温かい緑茶に、ほのかとアンジェレネが飛びつく。
    「チェリ、ありがとうデース」
    「うー寒い寒い……でも気合で乗り越えたる!! キュートに本物みたいに再現したるで~」
    「超カワウィウィカピバラを作るお」
     全部で4匹の仔カピ達ももちろん勢ぞろい。ほのかがヒューチ、アンジェレネがベルを夫婦カピバラの隣に作った。
     お父さんが大好きなフユヒは、背中に乗せてあげよう。月夜がメカピ像の上に慎重に作っていく。お母さんが大好きなカピータの担当はエリオ、隣に寄り添っている姿で作ってあげた。
     サンタのようにずた袋を背負った葵がライドキャリバーに乗って走ってくる。運んでもらった雪を使って、仕上げに露天風呂風の土台を皆で制作。
    「にゅ、上手にできたでしょうかっ?」
     ぐるりと雪像を一周し、月夜はにっこり頷いた。最後に色違いのスカーフを頭に乗せれば、ほっこり仲良しカピバラ家族の温泉が見事完成だ。
     写真を撮る見物人達へ、エリオがここぞとばかりにアピールする。
    「興味を持ったらメカぴ研に遊びに来てね!」

    ●アイデア賞
    「イヴちゃんここくぐってー!」
     甲羅に開いた穴から手足と頭を出せば亀の気分。背中で滑り台もできるクラレットの雪像は遊び心が光る。
    「亀さんに変身できるから『マジカルタートル』なんですね!」
     楽しげな皆の様子をグラウンドの端から見守るのは、武蔵坂学園校長・緒形・時雄。この威厳ある等身大雪像はいろはの作品だ。
    「いつもいろは達学園生達を信じて見守ってる、校長先生のイメージだね」

    ●ハートフル賞
    「穂純ちゃん、素敵な設計図を有難う。可愛いリスさんを一緒に作ろうね」
     【リトルエデン】と手伝いに来た鷹神はまず雪を集めた。細部の造形を香乃果と穂純に任せ、高い所と基礎固めに注力する峻はいつになく頼られている。
    「これだけ雪があれば充分だ。相当でかい作品になるぞ」
     ドングリを持った手を削り出し、顔も作る。香乃果がメタリックモールの首飾りとリボンをつけると、穂純の顔がぱっと輝く。
    「すごい! 飾りが付いたらもっと可愛くなった!」
    「よかったな、朝川君」
     クレヨンで描かれた夢の設計図が本物になった所で一休み。お洒落なリスには、美味しい紅茶とクッキーがよく似合う。

     狼の毛並みを作るのに彩雪は悪戦苦闘。高所の細工や力仕事を請け負ってくれる康也が頼もしい。隣に小さなさっちゃん像を作り、狼――康也さんの首にはトレードマークの缶おでん。霊犬の六文銭も缶の蓋で表現だ。
    「でっかいのとちっこいの、兄弟みてーだな!」
    「さゆたちも、兄妹みたく見える、でしょうか……?」
     彩雪は大きな彼を見上げた。
     嬉しくて――どうしてだろう。少し、もやっとする。

     今、俺達のきしめん愛を示す時だ――!
    「こう、鼻はぽってりしてて、目はくりくりしてて、ちょっとまつげが長くて……あ~いいぞ~きしめん可愛いぞ~~」
     2mの雪塊にはりつき、のろけ全開で顔を彫る小次郎。負けずに葉と瞬は毛並みや六文銭を彫っていくが。
    「やめてきしめん手元狂うからやめてお願い」
     本物きしめんの遊んで攻撃の前に、葉は敗北寸前。
    「きしめん可愛いな。可愛いな。つうか、兄ちゃんにじゃれつけていいな」
     瞬、ちょっと本音が出た。
     女の子らしく燕子花と撫子の飾りを身につけ、小次郎も太鼓判の大きしめんが完成。きしめんとお揃いの超笑顔で、皆一緒に写真を撮った。

    ●デザイン賞
     命とレナータが作るのは、特大天使ナノナノ像。天使の輪と白いトーガを付け、ウインクで決めた姿が愛らしい。
    「レナータ~。追加の雪もってき~!?」
    「だいじょぶ? 雪、よく払わないと……」
    「ふにゃ……ありがとう~」
     途中命のドジっこが炸裂するも、レナータの用意した救急箱が役立った。使っていたカイロも一緒に貰って、あったか補充、やる気十分。トラブルに負けず頑張って完成させた。

     かしこの形作った雪のスカートが、魔法の様なナイフ捌きで立体感あるフリルへ生まれ変わる。絲絵の生む芸術に圧倒されていると、視線が交わった。懐にしまった物は何だろう。
    「先輩も楽しい?」
    「うんっ! 愉しいねえ、愉しそうな君が視られて」
     兎に時計、少女にリボン。飾ればそこはアリスの世界。好きな物を好きな子と作れば、雪景色にも花が舞う。私も楽しいよ――『君』はぽつりと呟いた。

     とうさまから継いだイコの雪捌きと、なこたのにゃんこ愛で生まれた、にっこり雪だるにゃんこさん。お腹の穴にキャンドルを燈せば、雪の中でも暖かそう。
     クリスマス飾りを纏わせれば、連なる星かきらきら瞬く。
    「メリークリスマスです、イコさん」
     聖夜の星猫さんは、皆に笑顔を燈す。たまも一緒にJoyeux Noel!
    「雪のよに記憶も降り積もるの。融けて消えても、この温もりはずっと」

    ●優秀賞
    「雪だるまが上から威圧気味に見下してるインパクトある雪像を作るんだ!」

     △バケツ
     ○頭
     ○胴
     ○胴
     ○胴
     ○胴
     ○胴
     ○胴
     ○足

     エルメンガルトにこの設計図を見せられた【201】の仲間は絶句した。胴体を作ると言った責任は本人に取らせるとして、供助はひとまず前傾姿勢を作るための強固な土台を真面目に制作しだす。
    「どうせなら横にも規定いっぱいに……いや、奥行も使ってみせる……!」
     だが芸術家魂を出し始めた民子により、芋虫的な謎の脚とムキムキの腕が与えられ正に台無し。
    「……土台が終わって、既に全然違うモンになってる訳だが」
     民子に頭の設計を丸投げされた多岐はヤケになる。これ以上のインパクトを求めるとなれば――顔は、天狗。
     冬空に輝く高い鼻。自称引率とは何だったのか。
    「……子供泣くんじゃね?」
     雪だる魔神、降臨。慄く供助の発言が、全てだった。

    「やっぱりお城よ。日本の誇る最高の建築物だもの」
     盛り上がるオデット達につられ、千早も笑みを零して設計図を広げた。縄張りが重要と雪に当たりをつける。普請奉行に従って、作るは大阪城。
    「ちーちゃん親方! 次は何したらいい?」
    「宮大工になった気分だな」
     天守閣の破風作りは慎重に。確り固めた雪を、スコップやコテでオデットが丁寧に削る。茶子は南の真田丸担当だ。赤地に六文銭の手作りミニ幟旗の中に【聚楽】三人の青、白、桃色旗も潜ませた。
    「400年の時を超えて武蔵坂に参陣だよ☆」
     雪遊び 友と歴史を 築城し――雪は溶けても記憶はずっと心に残り、戦う支えになるだろう。

    ●最優秀賞
     開始と共に真っ先に雪集めに走った【ロストリンク邸チーム】。久遠は運搬用のソリに次々雪を乗せていく。
    「大変な作業だが、頼むぞ風雪、バクゥ……確かに雪を運ぶとは言ったが、お前が乗ってどうする?」
     乗っていたのは、雪は雪でも遠間・雪。遊び心にゃーと笑うと、彼女は霊犬達と共に雪像作成班の元へダッシュ。
    「大量の雪をどうぞにゃー♪」
     雪から雪を受け取るのは土台作り担当の言葉。ビハインドの千尋と二人三脚で下地を作り上げていく。
    「千尋と雪遊びしていると、なんだか生きていた頃の事を思い出すね。童心に戻った気分だよ」
     大切なデザインの基礎は、他でもない部長のライラの担当だ。
    「……ロストリンク邸はもう家みたいなもの。再現はわけはない」
     いつも見ている、瞼に記憶された光景。思い出しながら作り上げるのは親友の邸宅だ。巧と朱香の鴻上姉弟が、写真も見ながら細かい部分を仕上げにかかる。
    「力任せじゃなく、繊細な作業も修行のうちだな。うん」
    「物理的に無理でなければ、再現は可能ですからね」
     時間配分を考え、多少デフォルメしながらも特徴的な部分は残していく。カフェテリアのあるテラスや、増築された道場……見る人が見ればすぐ判る。流れ作業で時間一杯作りこまれた作品の前で、記念撮影。楽しいロストリンク邸が大迫力の雪像になった。

     グラウンドを埋め尽くす雪像に、訪れた見学者達も歓声をあげる。聖夜を賑せた雪像は、皆の写真と思い出に刻まれた。

    作者:日暮ひかり 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月24日
    難度:簡単
    参加:107人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 16/キャラが大事にされていた 6
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ