クリスマス2014~スペシャルロンリーナイト!

    作者:空白革命


     クリスマス。イルミネーションバリバリのロードには密着度1000パーセントのカップルたちが所せましと入り乱れていた。
     そんな中、今日も仕事で疲れたおっさんが一人とぼとぼと歩いていた。
    「やだー、見てアレ。一人でイルミネーション見てるー」
    「まっじウケるんですけど! 絶対ドーテーなんですけど!」
    「彼女いたことないんだろーねー!」
     指をさして笑うカップルたち。
     おじさんは下を向いて、綺麗な床タイルだけを見つめた。
     言い返せないのは、全部事実だからだ。
     タイルにぽつぽつと水の後ができた。おかしいな、雨なんて降ってないのになあ!
     行く手がカップルに囲まれる。
     彼氏彼女たちはお互いにベッタベタしながらおっさんを取り囲み、なんで彼女作らないのとかクリスマス一人で寂しくないのとかこの近くにホテルあるよといったリア充ビームを集中砲火してくる。
     おっさんの心に立ったローソクがぽきりと折れ……そうになったその時。
    「ウウウウウウウウウウウウウリャアアアアアアア!」
     両手にクリスマスツリー(5m特大バージョン)を持ったマッスルガイがジャイアントスイングしながら突っ込んできた。
     一斉に吹き飛んでいくカップルたち。
     肉密度1000パーセントのマッスルガイはおっさんを肩に乗せると、ギラリと白い歯を光らせ、観客席に向けて肉々しいポーズをとった。。
    「オンリーナイトにロンリーナイト。嫉妬うぜえと言わば言え。我らは妖精、夜の使者! 今夜もカオスが舞い降りる! クリスマスを爆破せよ!」
     マッスルは翼をはやして天へ飛翔すると、爆発する宇宙を背景に高速回転を始めた。
    「スペシャルロンリーナイト、開催でああああああああああああああるッ!」
     

    「っていう演劇をですね、することにします。しましょう、しました!」
     小市民・バニラ(動く背景・dn0166)は匿名性を保つため手のひらで目線を隠しつつ、衣装の肉襦袢をいそいそと脱いでいた。
     そうだよジョニー。演劇だよジョニー。マッスルが全裸で宇宙へ飛び立つはずないじゃないかジョニー。全裸じゃないよジョニー肌色のタイツだよだから大丈夫なんだよジョニー。
    「このアドリブ台本『スペシャルロンリーナイト』にそって、あなたも……聖夜の妖精になりましょう!」


    ■リプレイ

    ●クリスマスに一人でいちゃあ悪いかよ!
     某所焼き肉屋。どいつもこいつもチキンチキンゆーてるから、じゃあ俺は牛喰ってやんよとばかりに一人焼き肉にしゃれ込もうとした男。彼を待っていたのは……。
    「はいユーくん、あーん♪」
    「ホルモン頼んじゃおっかなー。あとビール☆」
    「もー、やだー」
     カップルの群れだった。
     そんな彼らが再びあーんしようとしたその時。
    「ブーッシュッシュッシュ! クリスマスにカップルで焼き肉屋きてんじゃねえギュー! クソが!」
     テーブルの下から飛び出してきたダーク州斗がカップルをまとめて窓から捨てた。
    「ずん、うーにー……ずん、うーにー……」
     転がり出たカップルの頭上からゆっくり落ちてくるウニ。
     ラスボスBGMと共におりてくるウニ。
     地は裂け天は曇り人類は未曾有のどーのこーのがあーしてこーして地球は爆発した。
     世界はロンリーの炎に包まれた。
    「しかし!」
    「ロンリーは死滅していなかった!」
    「ヒャーッハーカップルだー!」
     トナカイ・ザ・衛に直接跨がった雛罌粟がトゲパッドをいからせて荒野のイルミネーション通りを突っ走っていた。
    「お前らのマフラーに点火式だよォオオオオオ!」
     松明を振り回す雛罌粟。
     逃げ惑うカップルたち。
     その行く手を妖怪たちが立ち塞がった。
     妖怪バナナ女。妖怪フェレット女。妖怪スイカ女である。
    「チクワァー!」
    「バナナァー!」
     ほぼほぼフェレットの咲良とその背に跨がる全身クリスマスツリーっていうかバナナにしたナナコ。
     そこへ冷静な顔してスイカをひたっすらボーリング投げし続ける翠華。
    「カップルもリア充ブレイカーも等しく滅べ。じゃなくてスイカを!」
    「キリスト教徒でもないヤパーニッシュがいちゃつきおってぇ! 日本人なら神社へいけぇ!」
     額に巻いたハチマキにクリスマスキャンドルぶっさしたマモリがお祓い棒片手にカップルの群れへと飛び込んでいく。
     その姿、猿さんの惑星における猿。世紀末荒野におけるヒャッハー。つまり星の支配者層である。
    「ウチかて相手さえおれば……くっそう、くそう!」
    「そんなあなたに……朕、降臨!」
     両腕をYの字にした流希が白塗り殿フォームで降り立つと、両手に持ったハリセンで襲いかか……るかと思いきや、カップルたちの革命じゃとばかりにハリセン片手に襲いかかってきたリア充レジスタンスたちに囲んでボコボコにされていた。
    「な、なんでじゃ! 立場が逆でおじゃらんか!?」
     と、そこへ!
    「アーッハッハッハッハ! そんなリア充どもにクリスマスプレゼントですよぉ!」
     何でか知らんが空を飛ぶエクルが大量の雪だるまを作っては投げ作っては投げし始める。
    「ぼっちの痛みと恐怖を思い知るがいい! 雪に埋もれて消えてしまえー!」
     荒野を埋めていく雪。
     そこへやってきたのは、荒野をずしんずしん歩く知信もとい大怪獣ヒトリンジャーのみであった。
     海獣の肩で世界の黄昏を見つめる菜々乃。
     靡く髪を片手で押さえ、暮れゆく空へと手を翳す。
    「さあ、リア充どもを薙ぎ払うのです!」
    「あんぎゃー!」
     火を噴く大怪獣。
     コマンドーばりの重装備を背負った龍一郎がパラシュートで落ちながらバズーカを乱射。
     背中から生やした翼をぱったぱったしながらハート型の矢を乱射する左斗彌。
     ひたすら突っ走りながらリア充たちを角でかっ飛ばしまくる椿・ザ・トナカイ。
     地は裂け天は曇り人類は未曾有のどーのこーのがあーしてこーしてまた地球は爆発した。

    ●今現在で地球が滅んだ回数:2回
     20XX年。全ての人類が滅んだあと自力で生き残ったカップルがいちゃいちゃしていた。
     っていうか香澄とミーシャだった。今日はホワイトクリスマスだねとかゆーてる後ろで蛇目が無言で粉雪っぽい粉を巻いていた。
     流し目で妻を見やるミハイル。
    「クリスマスを爆破したいみたいだけど……クリスマスは爆発させるものじゃない。神様ならぼっちだって救わないはずがな――」
     って言ったところで地面が爆発した。
    「ああああああああああ!」
    「ミーシャー!」
     振り向けば、そこには三角ずきんの一団がいた。
     一本指を高らかに掲げる刑一。
    「俺たちは今日、やられ役という枷を外しましょう。一心不乱の爆発を! 凱旋の声を高らかに!」
    「「BR!」」
    「「BR!」」
    「「BR!」」
     香澄は怒りに震えた。
    「よくも夫を爆破してくれましたね! ゆるすまじBR団!」
     香澄は(結婚できる年齢だけど)魔法少女みらくる☆いなりに変身して三角ずきんの一団に襲いかか……ろうとした所で顔面にケーキが直撃。
     コロンビアポーズで自己アピールする兎。
     その後ろでやんややんやしていたカップルたちへ向けて、和弥が空へと飛び立った。
    「行くぜ、真スカーレットタイフーン・エクセレントRB号!」
     男性陣めがけてやけにピンポイントで急降下爆撃を仕掛けていく。
    「俺は最後まで戦う。戦い抜いてみせる……う、うわあああああああ!」
     腹マイトしたリア充の突撃によって爆発、墜落する和弥。
     そんな彼をキャッチしたのは琥珀だった。
     キッと空を見上げる琥珀。
    「今こそ、あまりの危険性から封印されていた23番目のアルカナ、RBを解き放つ時……!」
     琥珀はタロットカードを天に投げると、いきなりすんげーバケモンに変身した。
    「私のすべてを賭けて滅びろリア充どもおおおおおおおおおおお!」
     リア充とバケモンがぶつかり合うなか、六玖がパチンと指を鳴らした。
    「今宵は!」
    「「忌々しき聖夜!」」
    「我らの使命は!」
    「「リア充の爆破!」」
    「そう、我らは!」
    「「RB団!!」」
     天高くカップルが爆発する。
     灰と破片を浴びながら熟練の老指揮者の如く両腕を振り上げる六玖。
     そこへ……!
    「ちょっとお待ちになってくださいな!」
     八人の少年少女がずらりと現われた。
    「我々こそ愛のメッセンジャー!」
    「「愛のサーカス小屋!」」
     八人は一斉にポージングした……と思いきや二人残してすっと下がった。
     スポットライトを浴びる神父風の孤影。
     同じくスポットライトを浴びるシスター風の雛。
    「さあ、あなたにも愛の祝福を」
    「私の美しいシスター。あなたは私に愛をおしえるのか? いやその必要は無い」
    「え、それは……」
    「なぜなら私は既に心を奪われたから!」
    「そんな、神に仕える我々が愛し合うなど……!」
    「「って普通にいちゃつきに来てんじゃねーよオラアアアアアアアア!」」
     割れ瓶や斧を持って飛び込んでくるRB団の皆さん。
     そこへエステルと直司がシャシャっとスライドイン。
     二人の手にはケーキが乗っていた。
    「はい皆さん、あーん」
    「むぅ~、クリームついてるの~」
     と、ケーキと急接近で軽く気を引いたところで、二人はきゅっと手を握り合ってバイバイした。
    「私は彼がいるからダメなの~」
    「その彼でーす」
     無言でグレネードランチャーを担ぎ上げるRB団の皆さん。ダッシュで逃げるエステルと直司。
     と、そこへ残りの四人がいっぺんに出現した。
     雨はイブイングドレスで歌い始めるわ薫はトランプでマジックしまくるわ花恋が優しい顔でホットミルクをトンって置いてくれるわロジオンが無言でシェイカー振りまくるわでこの人たち何しに来たんだろうとぽかーんとしている……と。
    「やあかわいい歌姫様。俺に盗まれてみない?」
    「まあ……私の仕事は皆のために歌うこと。でも今日だけはあなたのために……」
    「「……」」
     無言でマシンガンを担ぎ上げるRB団の皆さん。
     もうおわかりかも知れないが、この空間はリア充を爆破するのが定め。いっぺんイチャついたからには地の果てまでいっても逃がさない。
    「普通の世の中ではカップルは多少のことをやっても最後は祝福され、『末永く幸せに暮らしましたとさ』で終わるもの……」
     サングラスかつGENDOポーズで呟く恭乃。
    「だが今日だけは、今日この場所だけはそうはさせん。イチャつくカップルは爆発あるのみ。ここは倫理の外側ぞ……そう、このスイッチさえ押せば!」
     バァンとくそデカいスイッチを叩く恭乃。
     ぴぽーんという音と共にパネルが立ち上がった。
     『自爆』と書かれたパネルである。
    「え……?」
     そして地は裂け天は曇り人類は未曾有のどーのこーのがあーしてこーして花恋とロジオンが保健所に運ばれていってまたまた地球は爆発した。

    ●カップルが焼き肉してるだけで三回世界が滅ぶ話
     たぶん30XX年。何でか知らんが再び繁殖したリア充カップルがクリスマスイルミネーションの下でイチャイチャしていた。
     二人だけで少子化問題を解消しちゃおうぜという内容をかなりロマンチックかつ遠回しに語っていると男の袖をくいくい引く子がいた。
     振り向くとそこに紅葉。
     テディさんを腕に抱き、じっとりと見つめていた。
    「ぱぱー、その人だれ?」
    「パパ!?」
    「パパチガウ!」
     そこへシャッと智以子が出現。クリスマスカラーを意識したガーリーふぁっしょんをひらつかせつつ、男ににっこりスマイルした。
    「この間はすごく気持ちよかったです! また遊んでくださいね! ところで今日はいつもの彼女さんと一緒じゃないんですね!」
    「なんですって!?」
    「なんですかねえ!?」
    「ぱぱー」
    「パパチガウ!」
    「ビッチです」
    「ビッチガウ! って誰だお前!?」
     いきなりベンチの裏からハノンがぬるっと出てきたかと思うと、二人の膝にまっすぐ横たわった。
    「遠慮しなくていいですよ、わたしビッチですから」
    「いやその」
    「その人彼女ですか?」
    「ビッチです」
    「ぱぱー」
    「ええい、いい加減にしてくれ!」
     男は彼女たちをはねのけると、腕をまくって実力行使の構えをとった。
    「それ以上やると怒るぞ! 俺は、俺はな……」
    「男同士の付き合いがしたいんだろう?」
    「分かってるぜ、ブラザー」
     両サイドから屈強なマッスルブラザーズが肩を叩いた。
     ジャックと羅生丸だった。
    「男なら熱くなれ!」
    「プライドなんて脱ぎ捨てろ!」
     と言いながら男のシャツやパンツを引きちぎっていった。
     きゃーきゃー言いながら両手で顔を隠しつつ指の間からチラッチラする女性陣。
     羅生丸が男をヘッドロックして前屈みにさせつつ、ジャックがその尻を両手でホールド。
     からのダイナミックグラインド。
    「声をあげろ! 夜の空に! ウオオオオオオオオ!」
    「ウオオオオオオオオオオ!」
    「アアアアアアアアアアアッー!」
     そして男たちの衣服は『大破』シグナルと共に飛び散り、一糸まとわぬ姿でワッショイワッショイしはじめた。
     夜のパレードの始まりである。
     男神輿に上に跨がったラッパーキングが『2015』の形したサングラス(嘘みたいだがほんとにある)をかけてエアターンテーブルをきゅっきゅしはじめた。
     道すがら、カップルの座るベンチにペンキを塗りぬりする空子。移動屋台で『こいつはいい奴だった』と鶏の遺影と共にフライドチキンを売るセレス。
     テレビ局をジャックした鉄弘が都内の巨大スクリーンにスカイタワーから大量のリア充を吊るした映像を垂れ流し、そこへトナカイ・ザ・霞が『これ見ろよ』という感じのキてる顔で映り込んだ。
     横に並ぶキてるウサギ的な何か。っていうか鉄弘。
    「さあ皆さん、スペシャルロンリーナイトを……開催します!」

     『今夜はロンリーナイト』
     歌:ラッパーキングとロンリー歌劇団

     だって今夜はホーリーナイト!
     卑屈になるのはダメダメ☆YO!
     (大量の花火を打ち上げる六玖。その辺のカップルに修羅場をまいて回る智以子。ダブルピースでカメラにアピールする鉄弘と霞。そして爆発する地球)
     自分のハートをキャストオフ!
     街に繰り出しスマックダウン!
     (菜々乃を肩に担いでわっしょいわっしょいするジャック。空から雪だるまをまき散らすエクル。ハリセン片手に走る流希。ひたすら投光器を握る蛇目。両手にスイカ持ってジャグリングする翠華。そして爆発四散する地球)
     不埒なオーラをまき散らす、そんなリア充……!
     (鉄格子を内側から掴んでこっちをじっと見つめてくるロジオンと花恋。なんか満足げな顔で海面に浮かぶミハイル。小脇に抱えた大量の矢をひたすら空に放ち続ける左斗彌。でもって木っ端みじんに砕け散る地球)
     成敗!SAY☆BYE!
     (荒野を駆け抜ける椿。その背に跨がりニヒルな顔でロケラン乱射する龍一郎。バケモンになった琥珀と手を取り合って踊る羅生丸。その真ん中で新聞広げるビッチ・ザ・ハノン)
     成敗!SAY☆BYE!
     (フェレット咲良に跨がったナナコがバナナヌンチャクを振り回し、直司とエステルを追い回す。見つめ合う雛と孤影の間にねじ込んで修羅場をプレゼントする紅葉。そんな彼らを焼き払う大怪獣知信。大穴開いてぶっ壊れる地球)
     だって今夜はホーリーナイト!
     嫉妬パンチで地球を割っても、神様だってお目こぼし!
     (空とぶ真スカーレットタイフーンエクセレントRB号の上で人生晴れ時々大荒れとか言ってる和弥とケーキ食ってる兎。そっからぶら下がったヒモにつかまって飛ぶ刑一。いまだにイチャつく雨と薫。その後ろで自爆スイッチを怒りの形相でぶん殴る恭乃。あと蜂の巣になってぶっ壊れる地球)
     いつもの自分にグッドバイ!
     勇気の翼でゴー☆トゥー☆カオス!
     (トナカイ雛罌粟に曲乗りして松明振り回す衛と州斗。それからダッシュで逃げる香澄。お祓い棒を振り回すマモリの頭上に三倍速で降ってくるうに丹。そして地球がダイナマイツ)
     だって今夜はホーリーナイト!

     もう何回滅んだか分からん地球の片隅で、おっさんがベンチで居眠りしていた。
     そのそばを通りかかるセレスと空子。
     セレスは手に持っていたフライドチキンをそっとおっさんの膝においてやった。
     二人はグッと親指(?)を立て、夜の町へと消えていった。
     涎垂れ流しながらびくっとするおっさん。
    「おまえら……メリークリスマス」
     

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月24日
    難度:簡単
    参加:42人
    結果:成功!
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