クリスマス2014~カオス☆みんなで鍋パーティー

    作者:カンナミユ

     12月24日。
     ある者にとっては何の変哲もない一日であり、
     ある者にとっては大切な人と過ごす一日であり、
     ――ある者にとってはしっとの炎を燃やす一日である。
     
    「お前達、12月24日は暇か?」
     灼滅者達を前に、結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)は話を切り出したが、唐突すぎて反応が返ってこなかった。
     なので、眼鏡のブリッジをくいっとしながら言い直す。
    「お前達、クリスマスは誰かと過ごす予定があるか? ……家族とか友人以外で」
     ぐさっ。
     何人かの心に何かが突き刺さる音が聞こえた気がしたが、相馬は気にせず話を続ける。
     事の発端は相馬の後輩、三国・マコト(正義のファイター・dn0160)の一言からだった。
    「クリスマスに皆で鍋を楽しみたい! ってマコトが言い出してな、予定がないなら皆で集まってパーティーをしようと思うんだ」
     鍋パーティーという単語にちょっと大き目の土鍋あたりを想像する灼滅者達だが、マコトが用意した鍋は何故か寸胴。炊き出しとかラーメンのスープを作るような巨大サイズの鍋を使うという。
    「鍋に使う具材はお前達が持ち寄ったもので全てまかなう。……つまり、闇鍋だ」
     ――!?
     数々の修羅場を潜り抜けたであろう灼滅者達の間に戦慄が走った。
     場所は武蔵坂学園の教室。闇鍋をイメージした教室内は薄暗く、飾りつけもそれっぽい感じになっている。
    「クリスマスを一緒に過ごす予定で埋められる恋人がいないお前達ならしっとの炎やオーラで鍋の味くらい何とかなるだろ?」
     無茶言うな。
    「まあ、カセットコンロを使うから火力は足りるんでしっとの炎の火力は少なくてもいいし、ぼっちオーラがなくとも持ち寄った具材があればいい感じの味付けになると思う。だが、火力は多ければ多いほどいいし、ぼっちオーラと共に具材を投入し、リア充への呪詛でも呟きながら混ぜれば熱く滾った美味しい鍋になると思わないか?」
     さらっと言う相馬の言葉に闇のオーラを放つ深淵にして混沌たる闇の鍋が完成するビジョンが見えた。
     なお、ぼっちやしっとの炎を燃やすシングルヘルだけではなく、好奇心旺盛なチャレンジャーの参加も可能だ。
     一人一品以上の具材を持ってきてもらうので、参加者が多ければ多いほど具材は増えるし、それだけカオス、もとい、バラエティに富んだ楽しい鍋となるだろう。
    「せっかくのクリスマス。我々は同志だ、ぼっちなどいない! 皆で楽しもうじゃないか、闇鍋を!」
     
     なお、このパーティは鍋が空になるまで終わりません。
     グッドラック☆


    ■リプレイ


     今日は楽しいクリスマス♪
     ツリーやキャンドルの輝きを受け、武蔵坂は華やかだ。
     ……この教室にはそんなもん届きませんが。
     
    ●我々はぼっちではない!
     クリスマスは聖人の誕生日であり、ぼっちやカップルは関係ない!
     暗き想念が溜まればサイキックが強化されると思い参加した史鷹。カップルを見て羨ましくなんて思ったからじゃないぞ!
     そんな史鷹が口にした闇鍋は、チョコだかキムチだか明太子だかの味がじっくり染み込んだはんぺん、油揚げに伊勢海老。
     完食した後、部屋の隅でダウンする中、新しい味の出会いを求めた蘭花も周囲を見渡し、ヤミ鍋を口にする。
     板かまぼことブロック肉が溶けたマシュマロの池に沈んでいるような。
    「まあ、残すのは勿体ないので残さず食べましょう。美味しいですから」
     負のオーラが薄いと感じつつも美味しく食べていると、嫉妬のバトルオーラを纏いながら食材を投下したレイフォードが、混沌と化したお椀の中でタコと寄り添う鮪の魚眼と目を合わせていた。
    「…………」
     妙なオーラを纏っているような気がするが、気のせいだろうか。
     大量に用意した飲み物もある。意を決して食べていると、
    「あ、ラッキー!」
     ここに奇跡が起きた。
     藺生が口にしたのは自分が持ち込んだおでん!
     れんげを食べそうになり食べるおでんは染み込む味は混沌だが、ちょっと嬉しい。
     おでん推しの藺生だが、おかわりで用意した胃薬が大活躍した。
     
    「お鍋♪ お鍋♪」
     冬の夜と言えばお鍋! ……闇鍋?
    「はらぺこかいじゅうの嗅覚でおいしい食材を当てちゃうんだから!」
     ……多分。
     ちょっぴり不安になる空だが、いっただっきまーす!
     不思議な味が染み込んだイワシとブリ。
    「これは斬新!」
     言いつつも食べる空だが、鍋に入れる事ができないものをポケットにこっそり仕込んできた智優利も闇鍋の禁断食材であるチョコレートとマシュマロがイチゴやバナナが絡んだはんぺんを食べていた。
    「うん、まあこんなものかな」
     そんな智優利が口直しとして水代わりに持ってきたのはタバスコ。
     熱気以外に何だか別の物がバーニングしている人達がいる中、流希は参加者達と運命共同体である。
     普通に食べられるものを作って持ってきたが、果たしてどんなものを口にするか。
    「…………」
     甘いイチゴとキムチがあんぱんと織り成すコラボを食す流希だが、ウキウキ気分で魔理沙が食べたのはワイルドすぎる肉とこれまたワイルドすぎる魚。
     その他諸々のカオス食材が魔理沙に立ち塞がるが、何でも食べ、全て美味しいと完食。
    「ん~、こんなに沢山の人たちと~、まぁ~、お食事が~、出来て~、幸せって感じ~?」
     人生初のパーティーにけたたましい音と共に魔理沙は不気味な色のエクトプラズムを吐き出した。
     
    ●見るか、天国と地獄
    「編入してきて数ヶ月……この学園リア充多ない?」
    「多いずねリア充」
     非リア充くらら&紅華だが、今年も彼氏はできなかったけど悲しくない! 普通に友達欲しい!
    「あぺっ!?」
    「おおこれは味わい深い……深くない! まずい!」
     二人のお椀には混沌と化したつゆに同化したおにぎり(鮭、こんぶ、バナナ)、ドライプルーン。
     とどめにカオスな鍋つゆを吸ったフランスパン丸一本。うわあ、斬新。
    「今日からアタシとくららは鍋友達だべ!」
     ぐっとサムズアップする紅華とくらら。
    「神宮寺殿は何かそわそわしてる様だが大丈夫か?」
     胃薬を手に深まる友情を目にした有愛は刺さるような周囲からの視線を気にもせず、手にするお椀からぱくりと一口。
    「これは……お肉かな、うんおいしい」
     薄暗くても見える笑顔を目に、勢いで有愛を誘った柚貴も一緒に直感でよそった何かをぱくり。
     口の中に広がる激辛手羽先とちくわぶっぽい何か。
    「何かわからんけど口の中に何かドロドロした、怨念みたいなんが広がるような……み、水……」
     寄り添って座る有愛は優しくそっと、柚貴に熱いお茶を差し出した。
     
     鍋奉行ポッポーこと希が具材を無造作に放った暗黒鍋を目に、梛は希がハムを持って来られなかったのは正解だと思った。
     そのままで食べた方が美味しいし、次回に期待しよう。
    「こーち……この鍋が終わったら、アイス食いに行こ?」
     その言葉に思わず梛は噴き出してしまう。まだ始まったばかりだというのにデザートとは。
    「そうな、食いきれたらな」
     様々な練り物が浮かぶお椀を手に梛は言い、希も梅干味になったシュウマイやチーズ、ミニトマトなどを口にすると、いっせーの! の声と共に三樹と九十九はぱくり。
    「あ、イケルのね、結構強いわねぇ」
    「……ぐにゅぐにゅしてますね。味わい深いです」
     中辛カレールーが絡まったきりたんぽを口に三樹が九十九を見れば、鍋のつゆを吸ったカオスなタコの干物を口にしていた。
    「居待月さん、おかわりよそいますか?」
     そう言う九十九だが、既に三樹への大盛りおかわりが。
    「大盛り? もしかして変なのに誘ったって怒ってる?」
     いいえ、誘ってくれた感謝の気持ちです。含みはありませんよ?
     
    ●クリスマスとは、鍋とは何か
    「仲間と鍋を囲める日が来るなんて、クリスマスは楽しい日なんだな」
     そう言う心也の前にはカオスな鍋と、土下座する漣香。
     闇鍋だと言わず、秘密で誘った事を後悔しまくりの漣香とは対照的に初闇鍋を前に優太の瞳はキラキラだ。
    「あれ? 何で逃げるの??」
     入れたもののせいでげんこつを貰った優太が首を傾げて渡すのは、お鉢サイズのお椀。
     臭いといい、具材といい、嫌な予感しかしないがいただきます!
     イチゴ味プロテインが染み込んだ葛きりときりたんぽ。お菓子達が奏でるハーモニー。
    「なんかトロみが! トロみがさ! ……甘み? いや辛み? ナニコレ斬新!」
    「……水を! 誰か水を頼む! 3人分!」
     その味に漣香は悶絶し、口元を押さえ助けを求めて心也は用意された水(常温)に手を伸ばした。
     
    「エファ、本格的なナベを食べるのは初めてデスヨ。とっても楽しみデス!」
    「よりにもよって闇鍋とは」
     にこにこ笑顔のエーファを目に、國鷹はポツリと言い、椎奈や天花はごくりと息をのむ。
     凄い雰囲気を前に、普通の鍋が良かったなーとか、黒いオーラに中てられて、また闇堕ちしそうだなーとか。
     混沌そしていても素材がよければ美味しく食べられる筈だ! いや、予想……というより願望なのだが。
     さあ皆で楽しく『ナベリョーリ』タイムに突入だ!
    「……これは、ダメじゃないかなぁ?」
     カオス鍋で煮られカオス蟹を口に天花は顔をしかめ、マシュマロとチョコ味のブランド肉を無言で食べた國鷹は水を取りに行き、
    「こ、コーヒーがほしいわね」
     言いながら椎奈は眉をひそめた。
     そんな中、平気な顔なのはエーファ。どんな味でも食材でも大丈夫!
    「ゴチソーサマデシター! とってもおいしかったデスネ! またヤミナベしたいデスヨー!」
     椎奈と共にロックフォールが融合した暗黒キムチ蟹を平らげ、エーファはにこり。
     
    「メリー、クルシメマス」
    「……コッペリア、いちごは鍋に入れるより、後で食べた方が美味いのではないだろうか」
     悪い笑顔でこっそり宣言と共に食材を入れる三月を目に、廉也は好きな甘いものを入れるコッペリアを目に尋ねるが、
    「たぶん、きっと、おそらく、おいしく食べられる、かも」
     チョコレートフォンデュの材料なので、皆と美味しく食べられる筈。皆で一緒に鍋を食べる事に意味があるのだ。
    「俺はうまみ食材かつお節、そして豆乳を入れるZ!」
     しっとの炎は出ないが洋の孤独の炎が鍋の火力を上げる!
     三月から受け取ったお椀からは、ちょっぴり独特なにおいがする。大丈夫、こっぺりあにはおいしくなぁれが……きんし?
    「ん、れんやせんぱい、おひとつどうぞ?」
    「……これは少し覚悟がいるな」
     薄暗い中、コッペリアから受け取った廉也は一口。
    「甘いな」
     その言葉にコッペリアも食べれは、口の中に広がる奇跡のチョコレートフォンデュ。
    「これはいけるZ!」
     豆乳の湯葉がチョコと混ざる味に洋も舌鼓を打つ中、
    「メリー、クルシミマス」
     暗黒鍋の中で逆奇跡を生んだ猪肉を食べた三月はダイイングメッセージと共に、ばたんきゅー。
     
    「ゆくのだ我が下僕(食材)たち、恨みの炎でおいしくなぁれ♪」
     教室の怪しげな雰囲気にエクルは少したじろぐが、去年のぼっちな恨みと共に投入すると、
    「りあ充爆発ですー!」
    「っしゃぁー!リア充爆発やー!」
     ゆまと日々音もイン! 
    「なんという禍々しいオーラ! まさに儀式と呼ぶに相応しい!」
     氷の魔女(自称)である鍋奉行ペーニャも食材を鍋に入れ、振舞うのはよーく煮込んだカオスな山盛り鍋。
     結果は神のみぞ知る。では阿鼻叫喚、魑魅魍魎の領域に乾杯!
     ぱくりと口にしたゆまは、ばたりと倒れたが、起き上がる。
    「はっ! もしかしてわたし、闇堕ちしかけたっ?」
     甘いのに舌がしびれるこの食感。
     皆のお椀に掬われたのは、混沌鍋で煮られたマンドラゴラの形をした高麗人参キムチ山芋。しっかり煮込んだイチゴがいいアクセント☆
    「これッて、もはや毒鍋だよ!」
    「これは……あかん……はっ! ぺーにゃん!?」
     ゆまの無事を確認したエクルと日々音はペーニャを見るが、
    「フフフ……! アーッハッハッハッハ!!」
     ちょっと手遅れな予感。いや、これはダメかもしれない。
     とにかく貴重なクリスマス体験でしたとさ。
     
    ●混沌の宴に奇跡はあるか
    「メリークリスマース! さあ皆の者ども宴だ!」
    「メリークリスマス!」
     くるりの掛け声に合わせて安寿が言えば、お茶や麦茶、衛が持ってきた飲み物で乾杯!
    「メリクリー! 鍋や鍋や!」
    「闇鍋とはのう……」
     大げさなノリで言う衛に舞姫は呟き、狩人しか味わえないものをストレリチアは鍋へと投下する。
     寒い冬は暖かい鍋が一番! 『闇』鍋? みんなで楽しく食べれば大丈夫!
     だってお鍋は美味しいものだと相場が決まっているのだから!
    「何があっても食べきれ! 食べなければサンタは来ないぞ!」
    「全ての食材はいただきますとごちそうさまの精神の下に完食すべし!」
     安全地帯のない戦場に立つ股旅館の面々はくるりと式夜の言葉と共に、いただきます!
    「この美味しさはきっと神様の思し召し! メリークリスマス!」
    「舞姫の食材は当たりじゃ。うむ、楽しいのう」
    「ふふ、そうそう毎度ひどいものをひいてなるものですかー」
     安寿と舞姫が嬉しそうに言い、ストレリチアはぺろっと平らげると新たにおかわりをお椀に掬う。
     嫌いなものが入っていない! 好きなものばかりだ!
     ちょっと独特なつゆだけど、大根おろしがいいアクセントになっている。お肉やさつま揚げ、白菜に舌鼓を打つ三人とは対照的に、
    「なっなんやこれぇぇぇ!?」
    「ぶっ、ん、ぐっ……げほっげほっ」
    「なんて言ったら良いんだ……」
     ワイルドなモツが特大明太子と絡んだするめが缶詰みかんと丸ごとかぼすのコラボを味わった衛、虎次郎、式夜のリアクションが凄かった。
     天国と地獄を味わう面々だが、さてお父さんは?
    「色んな材料の出汁がほど良く混ざり合ってなんか奇跡起こってる!」
     ここで巡り遭いたくなかった、たい焼きが出会うチョコとのあんこの奇跡に感動していた。
     
    「ぎゃー煉火先輩…!」
    「れ、煉火さあああーーん!」
     希沙は先陣を切って散った煉火に敬礼すると、茉莉は水と幸太郎の魔法のコーヒーを差し出した。
     結構おいしそうな匂いがしているのだが、匂いだけなのかもしれない。
    「聞いたことが無いという面々が多数だろう。この食材は北海道の隠れた名産の」
    「こーたろー先輩どうぞ!」
     持参した真鱈の白子を使ったかまぼこ『たちかま』についての薀蓄を語って時間稼ぎに出た幸太郎であったが、お椀を笑顔で差し出す霧湖により作戦は失敗した。
    「俺は皆を信じてる! 信じてる!」
    「南守さんにもはい、運命のひと掬い! 多くナイ!」
     安心レーダーを働かせて安全地帯を狙おうとした南守だが、茉莉が大盛りお椀を差し出した。受け取り皆と共に食すと、イカスミと牛乳がお握りや山芋、ひじきとタンドリーチキンにじっくり染み込む危険地帯の暗黒ハーモニーに悶絶。
    「きりこにもお水くださーい!」
     霧湖と希沙は水をがぶ飲みし、百鳥以外のLPメンバー全員は持ち込んだ食材が織り成す混沌の味に全員が大苦戦。
    「……やあトリくんおはよう♪」
     死んだフリして回避を決め込んでいた百鳥だが、霧湖と目が合うその先にはダークネスが逃げ出すいい笑顔を浮かべ、お椀を手に言う煉火。
     闇鍋の大トリは百『トリ』で〆だよね!
    「キミのために大量によそっといたよ、召し上がれェッ!!」
    「あ! さきも! はい、先輩あーん!」
    「待て、話し合おう! 何なら皆守と分け合って負担を軽減……」
     ずいっと差し出された煉火と希沙からのカオスお椀から視線を逸らせば、幸太郎はコーヒーを手に世界の混沌を集約した何かと対峙中。逃げ場なし。
    「さあ、あーん」
     わくわく待機でお椀を持つ霧湖の眼差を受けた南守は暗黒ラーメンを奏の口へ。
    「……待て、話せば分かギャアアアア!」
     この世界に奏の『終焉を終焉させる者』はいなかった。
     
    ●勝者も敗者も存在しない
    「なにこれ俺が嫉妬の炎を燃やして鍋の火力高めればいいの?」
     リア充である里桜と翼を前に響はファイアブラッドの火力が不要なほどのぼっち火力と共に食材を投入する。
    「リア充舌火傷しろ、って事か……?」
    「で、なぜ皆さん戦々恐々としているのでしようか」
     素でボケる鍋に優希に続いて杏月は鍋に食材を入れながら見渡せば、様々な表情の仲間達。
    「遠藤さんは箸が震えているようだが……大丈夫か?」
     ちらりと里桜が穣を見れば、お椀を持つの手が震えているような。
     箸が震えてる? いやこれは武者震いだ! 先輩達に一人前の男として認めてもらいたいし、後輩にいいとこ見せたいし、同級生に一目置かれたい!
     それでは皆さん、いただきます!
    「……何だろう、この微妙な感じ……」
    「カレー粉とケチャップで戦うぞ! 頑張れ、俺!」
    「んー……普通の味付けのが美味いかなー」
     豚肉やもつ、たこ焼きがぼっちやしっとのオーラを受けてか、恐怖の味となり優希と響、翼へ牙を向く。
    「ふむ、これは……か、辛っ……!?」
    「こッ……! こんなのよ、ヨユー……っすよ……よ、よゆー……」
     明太子や唐辛子、タバスコっぽい味が絡んだ麺類を口にした欠食児童の里桜は耐えながら食べ、ぷるぷるしながらも穣も涙目を我慢し、平らげる。
    「妙な雰囲気はありますが、悪くない味ですね」
     独特な風味と化した鴨肉と金目鯛を黙々と食べる杏月の瞳に映るのは悪戦苦闘するも、しっかり食べる仲間達だった。
     
    「メリークリスマス」
     とりあえずこの言葉は言わねばと、嵐は言いながら噂の闇鍋を覗き込むと、
    「ぼっちが許されるのは小学生までだよねー!」
     いつもよりイチャイチャしながら、冬崖とサンタ帽を被る櫂が一緒に食材を鍋にイン!
    「ぼっちオーラ? 呪詛? えーっ、ちょーコワいんですけどー」
    「あ、イチャイチャとかじゃないわよ?いつものことだから気にしないで欲しいわ」
     そんな冬崖と櫂を目にギリギリする朔之助は皆と食べようと持参した手作りケーキをうっかりドボン。そこへクリスマスだからと七のジンジャークッキーが運命を共にする。
     大丈夫! カレーにチョコ入れる原理と一緒だよ!
     サムズアップするサンタ帽を被る七と朔之助だが気のせいか、クリスマス衣装の仲間達を撮影する芥汰がざらざらとキャンディーケーンを投下し、クリスマス感増し増しにしているような。
    「……とても個性的ですね……?」
     トナカイの角をつけた要が鍋の決め手であるダシをどぼんと入れているのを目に、同じくトナカイの角をつけたイシュテムはなんとも複雑な顔で言う。
     うわあ、ビフォーとアフターの差が激しい。
     普通に美味しいものを入れたサンタ服の葵はみんなの具材がぐつぐつ煮える紫鍋を目に、
    「……束の間の幸せってやつだな」
     そう思ったり。
     美味しいものを入れれば皆美味しくなると思う! 大丈夫!
    「多分大丈夫、な、はず……」
     鍋の様子を目にトーンが落ちていく薫。
     鍋奉行・芥汰の手により全員にお届けされる美味しいお鍋! 召し上がれ☆
    「皆さんお先にどうぞなのですよ」
    「……これが、ヨイノソラの味、かな……?」
     絶対に食べないと意志を固めるイシュテムの前で、キムチクッキー餃子を無邪気に食べた要は撃沈し、
    「何か舌がピリピリする……あ、コレ肉だ」
    「……なんや、これ……なんかあかんやつや……」
     キムチとケーキがコラボする肉を口に、嵐の顔色が鍋のように変わり、なんでこうなったと薫は考えながら食べ、葵は絶句する。
    「あ、これ普通の餃子じゃ……なーい! かっらーい!!」
     酢と溶けたキャンディーケーンのダシが利いた辛子と山葵餃子に七と芥汰は苦悶する中、冬崖と櫂は紫色の鳥団子とたこ焼をあーんと食べさせあったり。愛の力があれば耐えられるとでもいうのか。
    「食べないのか?」
    「はは、食べる? いいえ僕は作る係です!」
     空いた皿にどんどん入れていく芥汰は手付かずの朔之助に言うと、
    「遠慮しなくていいんだぞ」
     そそり立つ鰹節(削ってない)、それに登頂するジンジャークッキー、そして自分達が用意した食材がいい具合に煮えたものが入ったお椀を二つを手に、爽やか笑顔でイシュテムと朔之助に嵐は言い放つ。
     何とか完食という希望の光が見えてきた瞬間、冬崖と嵐が投入した冷麺と米により再び暗黒時代に突入した。
     
    ●聖夜の奇跡
    「さあいい子のみんな、ごはんの時間よ」
     樹の言葉と共に集まった3Bの仲間達はそれぞれ持ち込んだ材料を寸胴鍋にイン!
    「もし食べられるけどゲテモノの類を入れてたら……わかってるわね?」
    「ええと、私が持ってきたのは鳥団子に、しいたけ、ねぎ、豆腐……それからエノキダケ!」
     ハリセンフォースブレイクの準備万端な様子に無難な材料を持ってきたは彩歌は素直に申請しながら隣を見れば、鶏肉を入れる悠一と持ってきてものが被り、思わず笑みがこぼれる。
     麗羽がかき混ぜ、シジマも材料を入れる中、
    「一部がまともな食材を持ち込んだところで、大勢がヤバい物を持ち込んだらその時点で味の修復は不可能になる。具材の調和、それが鍋だ」
     言いながら八雲も材料を入れる。胃薬は持ってきたので、万が一の時は大丈夫だろう。
     ぼっちや嫉妬のオーラを目に、アウェー感に思考停止状態の悠一と共に全員でいっただっきまーす!
    「やっぱ寒い日は鍋物やな」
    「美味しいわね」
    「うん、おいしいね」
     言いながらシジマと樹、麗羽が味わうのはラム肉に冬野菜。
    「いいか、食べ物で遊ぶなよ! フリじゃねぇからな!」
     彩歌の隣でカットした白菜や魚を味わう悠一が視線を向けると、
    「冬だッ! 鍋だッ! 全裸だッ!」
     股間に前貼り一枚姿の拓馬が全裸寸前でつつく鍋はりんごとうどん。
    「こちとら教室の後ろで全裸でコサックダンスしながら踏みまくった超偉大なうどんだからな! 一本足りとも残さず食えよ」
     個性的なスープを味わい、野菜やお肉、超偉大うどんを味わう3Bメンバーだが、実は誰もゲテモノ食材を持って来なかったのだ! これは奇跡!

    ● 
     教室の中で鍋を囲み、天国を味わった者もいれば地獄を味わった者もいるだろう。
     結果はどうであれ、皆で鍋を楽しんだという事に変わりはない。
     そんな寸胴闇鍋は仲間達により空となり、パーティーはお開きに。
     それでは皆さん、メリークリスマス☆
     リア充爆発しろ。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月24日
    難度:簡単
    参加:68人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 2/素敵だった 13/キャラが大事にされていた 2
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