例え何かを犠牲にしてでも!

     佐藤・志織(大学生魔法使い・d03621)は、こんな噂を耳にした。
     『テクニシャンな整体師の都市伝説が出現した』と……。
    「それでなんで俺が……」
     佐藤・誠十郎(高校生ファイアブラッド・dn0182)は、嫌な予感しかなかった。
     これは何かの陰謀だ。間違いなく、都市伝説はあっち系。
     都市伝説が現れたのが、新宿某所。
     しかも、相手はテクニシャン。
     ガチムキマッチョなナイスガイ。
     どうして、こんな依頼を引き受けねばならないのか。
     前世の業か、運命か。
     とにかく、ご遠慮したいところである。
     実際にアーッな目に遭っている一般人は、数知れず。
     都市伝説の整体は閉め切った部屋に一般人達を閉じ込め、ロシアンルーレットの如く、あんな事やこんな事をしてくるようである。
     そういった意味で、襲われるのは運次第。
     誰かが代わりになれば、ただそれだけである。
     だが、誰もいなかった場合は、襲われる前に助けてもらうしかないだろう。
     その事を踏まえた上で、都市伝説を倒す事が今回の目的である。



    参加者
    偲咲・沙花(フィルレスドール・d00369)
    佐藤・志織(大学生魔法使い・d03621)
    五十里・香(魔弾幕の射手・d04239)
    瀬河・辰巳(宵闇の幻想・d17801)
    井之原・雄一(怪物喰いの怪物・d23659)
    ジェルトルーデ・カペッレッティ(サイバーブラストガード・d26659)
    十朱・射干(霽月・d29001)
    迦遼・巴(疾走する人工肢体・d29970)

    ■リプレイ

    ●狙われたお尻
    「佐藤はん……、また厄介な事に巻き込まれて……心中お察しします。でも、なんで毎回こんなに尻を狙われるんやろ? 皆に好かれてるっちゅうか、なんちゅうか……」
     風間・薫(似て非なる愚沌・d01068)は仲間達と共に都市伝説が確認された整体院に辿り着き、色々と察した様子で佐藤・誠十郎(高校生ファイアブラッド・dn0182)の肩をぽむっと叩く。
    「いや、全然嬉しくないから! 逆に涙が出てくるからっ!」
     誠十郎が思わずツッコミを入れる。
     何度も誠十郎が繰り返しに言っている事だが、そっちの趣味は微塵もない。
     むしろ興味もないので関わりたくもないのだが、何故かその手の依頼に関わっている。
     出来る事なら、もふもふ癒し系依頼を引き受けたいのだが、運命とは実に残酷。
     そんな意思に反して、そういった依頼には巡り会えないようである。
    「大丈夫、怖くない、痛くない。先っ……もとい、痛いのは一瞬だけで、すぐ気持よくなりますから! まぁ、細かい事は気にせず、早く早くっ」
     佐藤・志織(大学生魔法使い・d03621)が陽気に笑う。
    「……って、さらりと不吉な事を言うなよ。いま妙なフラグが立っただろ!」
     誠十郎が再びツッコミ!
     この時点で嫌な予感しかしない。
     出来る事なら、このまま帰りたいところである。
    「でも、この手の依頼に誠十郎が行く羽目になるとか、もう運命通り越して宿命なんじゃないかなと思うよけ」
     そこに偲咲・沙花(フィルレスドール・d00369)が、油を注ぐ。
     誠十郎も何となく自覚があるのか、『それを言ったら、お終いだろ』と言って肩を落とす。
    「とにかく、男性陣は注意して下さい」
     迦遼・巴(疾走する人工肢体・d29970)が、警告混じりに呟いた。
     それ以外の事は言えない、浮かばない。
     迂闊な事を言ったところで、場合によっては慰めにもならないのだから……。
    「……でもアーッな事を人目につく場所でしないだけマシなのかな? ……あれ、何か普通が分からなくなってきた」
     瀬河・辰巳(宵闇の幻想・d17801)が、困った様子で頭を抱える。
     この手の都市伝説ばかり相手にしていたせいで、何がマトモで何が異常なのか分からなくなってきた。
    「なんというか……、一部の人には脅威だね。見ている分にはおもしろ……いや、一般人に悪事を働く都市伝説だし、これ以上被害が増えないように、しっかりと灼滅しないといけないね」
     沙花が自分自身に言い聞かせる。
     その視線の向こう側にいる誠十郎が魂の抜けた表情を浮かべていた。
     だが、本当の恐怖はこれからである。
    「気休めにしかならないっすけど……」
     そう言って煌星・紅虎(紅色もふりーとら・d23713)が渡したのは、もふりーと形態の誠十郎を模したぬいぐるみであった。
     ぬいぐるみは誠十郎の抜け毛を使ったものであり、一見すると本物そのもの。
     違うのはサイズくらいである。
    「まあ、どちらにしても、あっち系だろうが、テクニシャンだろうが、ナイスガイだろうがなんだろうが、誠十郎に手を出すとかダメです
     システィナ・バーンシュタイン(希望と絶対の狭間・d19975)が、真顔で答えを返す。
    「誠十郎は俺が絶対守るから安心してくれよ。いつか言ったろ? そういう目にあったら助けるって」
     井之原・雄一(怪物喰いの怪物・d23659)が、誠十郎に微笑みかける。
    「ううっ、信じられるのは、お前達だけだ」
     半ば人間不信になりつつあった誠十郎が、感動した様子で涙を流す。
    「でも、テクニシャンって、なんだか、どきどき!」
     ジェルトルーデ・カペッレッティ(サイバーブラストガード・d26659)が、興奮気味に口を開く。
     一応、プラチナチケットを使って従業員を装うとしたものの、経営者が都市伝説であったため、門前払いを食らってしまったようである。
    「腕の良い整体師がいる、というだけで終わればよいものを……。もう少し容姿や性質がまともであれば倒されずに済むだろうに……」
     五十里・香(魔弾幕の射手・d04239)が、複雑な気持ちになった。
     おそらく、噂に尾ひれがついてしまったせいで、このような結果になってしまったのだろう。
     そう考えると都市伝説も被害者なのかも知れないが、どちらにしても倒す事に変わりはない。
    「う……何と言うか、この部屋……男臭い……。こんな場所に長居はしたくないな……」
     十朱・射干(霽月・d29001)が、げんなりとした表情を浮かべる。
     その時、奥の部屋で悲鳴が上がった。
     そこから現れたのは、下半身を丸出しにした男。
     何やら都市伝説にされたのか、尻を押さえて泣いていた。
    「とりあえず、外に運んでおきましょうか」
     月詠・千尋(ソウルダイバー・d04249)が色々と察した様子で、気絶した男を運んでいく。
     その間に、次々と悲鳴が響き、同じような姿をした男達が、あられもない姿のまま、床にゴロンと転がった。

    ●覚悟の時
    「私はここで待機するが、誠十郎は覚悟が出来ているようだな」
     香がキリリっとした表情を浮かべて、誠十郎に視線を送る。
    「……と言うか、もう帰ったっすけど……」
     紅虎が苦笑いを浮かべて外を指差した。
     誠十郎は脱兎の如く逃げ出したらしく、仲間達に捕まって何やら喚き散らしていた。
    「男性諸君には色々とトラウマを刻ませるようで申し訳ないんだけど、気を引く役目を負ってもらおう」
     沙花が色々と察した様子で、殺界形成を使う。
     霊犬のナツも『頑張って』と言わんばかりにワンと吠えた。
    「……ん? どうした、お前ら。早く来い」
     それに気づいた都市伝説(褐色兄貴風)が、ムックリと顔を出す。
    「あ、いや、僕……じゃなかった。わ、私は女の子だから……」
     辰巳が女装した姿で、苦笑いを浮かべる。
    「……嘘をつくな」
     都市伝説が辰巳の腕をガシィッと掴む。
    「こ、こんなに可愛いのに……? 胸がないから、男って言いたいの?」
     辰巳が青ざめた表情を浮かべた。
    「ああ、オスのニオイがする」
     都市伝説がキッパリ。
    「お、オスのニオイって、何っ!? と言うか、なんで下半身丸出しなの!? む、無理だから……!」
     辰巳が嫌々と首を横に振る。
    「てんちょーさん、このひと! このひと、おねがい、します!」
     すぐさま、ジェルトルーデが誠十郎の腕を掴んで、都市伝説に対して声をかけた。
    「……って、馬鹿! シャレにならないだろうが!」
     これには誠十郎も身の危険を感じて、ジェルトルーデを叱りつけた。
    「そう言えば、この手の人に全力で否定する人って、逆にその気がある人なんだとか聞いた事が……。さ、佐藤はん、まさか……」
     薫が驚いた様子で、口に手を当てる。
    「いや、違うから!」
     誠十郎が即座に否定。
    「……終わった?」
     その間に、香がスマホ片手に様子を見にやってきた。
     そんな空気を察したのか、雄一がラブフェロモンを使う。
    「さ、さぁ来い! そこの老け顔のおっさんより、若い野郎がいいよな! な! おっさんより整体のしがいがあるだろ! でも初めてだから、出来れば優しくしてほしいな。いきなり、無理ゼッタイ!」
     そのまま都市伝説の前に陣取り、ビシィッと決めた。
    「……安心しろ。オレはテクニシャンだからな!」
     都市伝説は少年のように穢れのない笑みを浮かべ、雄一を連れて個室に入っていく。
    (「……とは言ってみたものの……」)
     雄一は激しく後悔していた。
     だが、都市伝説はそんな気持ちを知ってか知らずか、最初から全力で雄一を攻め立てていく。
     その途端、雄一の体を包むのは、例えようがないほどの快楽……!
     全身を骨抜きになるまで解され、天にも昇るような気持ちになった。
    (「クッ……! こ、このままでは……!」)
     そう心の中で思ってはいるものの、体が敏感に反応してしまい、抵抗する事が出来なくなっていた。
     おそらく、これが都市伝説の力……。
     そうでなければ、荒れ果てた大地が、こんなに潤う訳がないっ!
     そして、雄一はカーテンの隙間から覗く志織の視線に気づかぬまま、都市伝説のソレを迎え入れた。
    「アッ……あれ? これはむしろ、いやいや、そんなはずは……。それに加えて何だ、このフィット感は……。本当に入って……(以下、規制モードに突入)」
     雄一が戸惑った様子で、あたふたとする。
     おそらく、他の男達は都市伝説に襲われて激しく抵抗したのだろう。
     それ故に、天の岩戸の如く固く閉ざされていた場所を強引に開かれ、心と体に傷を負っていたのかも知れない。
    「動くんじゃない、この変態が……!」
     その隙をつくようにして、射干が殲術執刀法を使う。
     思わぬ不意打ちに都市伝説が悲鳴をあげ、雄一が『み、見るな!』と言わんばかりに顔を隠した。
    「……悲しいかな、これがネタ戦場なのだよなぁ……」
     千尋が深い溜息を漏らす。
     この場合、最後まで思いを遂げさせるべきだったのか、それとも早く雄一を助けるべきなのかよく分からないが、どちらにしてもなかなか見る事の出来ない光景と言えた
    「もっと見ていたいのは山々ですが、既にティッシュが空です。そろそろ、覚悟してもらいましょうか」
     志織が空になったティッシュ箱を、スレイヤーカードに持ち替える。
    「さあ……、始めましょう」
     次の瞬間、巴が高速演算モードを発動させ、都市伝説に攻撃を仕掛けていった。

    ●禁断のテクニシャン
    「クッ……、まさか、こんな事になろうとは……。一体、何が不満なんだ。オレはみんなを天国の向こう側に連れて行ってやっただけなのに……」
     都市伝説が悔しそうに唇を噛む。
     おそらく、都市伝説の中では良かれと思ってやっていた事なのだろう。
     嫌よ、嫌よも好きのうち的な発想で、男達を襲っていたのかも知れない。
    「まあ、確かに……。もう佐藤、貧血寸前です。有難うございました、ごちそう様でした! でも、それとこれとは別の話。これ以上、過激にものを見せられたら、佐藤が天国に行ってしまいますから」
     志織が両方の鼻にティッシュを詰めて、都市伝説に答えを返す。
     あまりにも過激な光景を目の当たりにしてしまったため、妄想が止まらず、スケッチしまくりである。
    「ならば、何故っ! そうか、やきもちだな!? ならば、お前達にも!」
     都市伝説が下半身を丸出しにして、誠十郎に迫っていく。
    「……って、何で俺がっ!」
     誠十郎が涙目になって逃げ惑う。
     一難去って、また一難。
     その間も都市伝説は誠十郎の尻にターゲット、ロックオン!
    「……佐藤さん、お尻狙われてるぞ! 後は私達で何とかするから、下がった方がいいんじゃないか?」
     射干が誠十郎を守るようにして陣取った。
    「そこを退けええええええええええええ!」
     都市伝説が殺気立つ。
    「おしりは、たいせつ!」
     それを目の当たりにしたジェルトルーデが、たいせつのポーズを取った。
    「誠十郎、これの報酬はもふりーと状態でもふもふ30分な……」
     再び雄一が都市伝説の行く手を阻む。
    「まさか、お前……。オレなしでは生きられなくなってしまったのかァァァァァァァァァ!」
     都市伝説が無駄に感動して、雄一をギュッと抱きしめた。
    「おいおい、まさかたったぬひとりで満足なのか。来いよ、ガチムチ。しょっちゅう女子と間違えられるもやし男子が、お前をひれ伏してやるよ」
     辰巳も一緒になって、都市伝説を挑発する。
     その間も脳裏に浮かぶのは、最悪な結果。
     都市伝説に捕まったら、最後。
     確実に掘られる、ガチ掘りされる!
    「出来れば近づきたくないが……」
     香が間合いを取って、マジックミサイルを撃ち込んだ。
    「誰だっ! オレの愛を邪魔するヤツは!」
     都市伝説がキレた、ブチ切れた。
    「さすがに、これ以上おぞましい光景は見たくないから」
     沙花が思わずツッコミを入れつつ、縛霊撃を仕掛ける。
     その途端、都市伝説の動きが封じられ、辰巳がホッと胸を撫で下ろす。
    「これで終わりにしましょう、世の中のためにも……!」
     それに合わせて巴がオーラキャノンを撃ち込み、都市伝説にトドメをさした。
     都市伝説は何やら納得のいかない様子であったが、言葉を発する事すら出来ずに消滅した。
    「それじゃ、誠十郎。もふりーとになって、いつものように、もふらせてね。だってこれが月一のボクのご褒美だから!」
     都市伝説が消滅した事を確認した後、システィナが誠十郎に視線を送る。
    「前からやりたかったんだよね、これ。あ、動物のマッサージは上手いから」
     辰巳もブラシ片手に、瞳をランランと輝かせた。
     さすがにこの状況で、断るという選択肢は……ない。
    「まあ、命の恩人……だしな」
     誠十郎が納得した様子で、もふりーと形態になった。
     すぐさま雄一も、誠十郎でもふもふ。
     都市伝説との激戦で疲れていたのか、そのままスヤスヤ。
     そんな中、誠十郎は思った。
     もしかすると、あの場所で起こった出来事は、すべて幻だったのかも知れない、と……。
     そうでなければ、雄一があんなに……。
    (「……止めだ。考えるのは、止めだ!」)
     誠十郎がブンブンと首を横に振る。
     どちらにしても、その真実を知るのは、雄一のみ。
     いや、正確に言えば雄一の体だけが、真実を知っている……!

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月14日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 7
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