●クリスマス色
イルミネーションが瞬き、クリスマスソングが街中を駆けまわる12月。
武蔵坂学園でも『伝説の木』が飾りを纏ってクリスマスツリーへと変身していた。
そこここから聞こえる学園の仲間たちの声。皆、浮き足立っているように見えた。
「今年もまたこの季節が来ましたね」
クリスマスの衣装を纏った『伝説の木』を見上げて、向坂・ユリア(つきのおと・dn0041)が言葉を紡いだ。冷たい風に銀色の髪が揺れる。
「ああ。パーティ当日はさぞ賑やかになることだろうね」
その隣でロングコートに身を包んだ神童・瀞真(大学生エクスブレイン・dn0069)もつられるように木を見上げた。
「校内でもたくさんのパーティが行われるのですよね。楽しみです」
その光景を思い描いて、ユリアはおっとりと笑った。
●伝説の……?
武蔵坂学園の生徒ならば知っているだろう。クリスマスイブの一日だけ、学園敷地内にたくさんのナノナノが現れるということを。
その内の特別な一匹、『伝説のナノナノさま』を見つけると、二人の愛を永遠にしてくれるという――つまり、キューピッド的なナノナノさまが現れるのだ。
しかし出現場所は学園の敷地内の何処かというだけで、正確な場所はわからない。姿に関する情報もなく、見れば分かる、という情報のみ。
「見つかるものでしょうか?」
「たとえ見つけられなくても、共に探した時間は消えないし、深まった絆が無くなることはないと思うよ」
祝福を受けたい相手と過ごす時間は特別なものだから、きっといい思い出になることだろう。
敷地内にたくさん現れたナノナノ達は、皆と遊びたがることだろう。食いしん坊なナノナノと一緒におやつを食べたり、いたずらっ子なナノナノと笑顔になるようなイタズラを仕掛けたり。普段ナノナノと関わりの少ない者も、楽しく過ごせるに違いない。
さあ、どうやって過ごそうか――?
●光
LEDライトは元より折り紙や風鈴など和風の装飾が取り入れられたクリスマスツリーが一際輝いて見える。
「ナノナノさん、発見なのよー」
ゆきはクッキーとキャンディーを広げて。するとどこからともなく数匹のナノナノ達が寄ってきた。ぷにぷにぽよんぽよんといつの間にかおしくらまんじゅうに。
「かわいいなぁ、触ってもいいかしら?」
集っているナノナノにおずおずと手を伸ばした梨衣奈。来年は素敵な彼氏と一緒に「ナノナノさま」を探しに来たいなぁと思っていると、その手に触れたのはナノナノとは違う感触のもの。
「ゆきちゃん!」
ちいころ鳴くゆきと仲良くナノナノを堪能。
「ビンクで、柔らかそうで、愛らし……ごほん」
本音がすべて漏れるのを咳払いで止めてユーヴェンスはナノナノ達にお菓子を配る。ひと気の少ない場所にもナノナノはいて、ちょうだいと言わんばかりに彼に寄ってきた。
「どーゆーつもりなんだろうなー」
友達以上恋人未満という言葉が当てはまりそうな微妙な関係。赤音はナノナノを抱きしめて呟いた。すると。
「それ、もっと菓子が欲しけりゃ赤音にも集まれ」
もわわわわっとナノナノ達が赤音に突進。ナノナノさまは見つかりそうにないが、これはこれで幸せな時間だ。
まさにここはナノナノ天国。ドレスに頭だけナノナノの着ぐるみをかぶったルージュは、目の前でナノナノ達とぐるぐる回っている真人を見ていた。ナノナノさまを探すのではなかったのだろうか?
「全世界ナノまみれーッ! ジロドゥーも回ろうぜーッ!」
「ナノまみれ……乗らないわけにはいかないわね! よーし、回るわよ!」
真人の襟元から顔を出している愛太郎も嬉しそう。ルージュも輪に入って一緒に踊る。交わす言葉はありがとうとメリークリスマス。
校庭の一角にできた白い塊。何かと思えばナノナノ着ぐるみ姿のキャロルとナノナノ達がおしくらまんじゅうをしていた。
「おしくらまんじゅう、押されてナノナノ♪」
「ナノナノ~♪」
「コマちゃんも一緒にやりましょう!」
「確かにおしくらまんじゅうは冬の風物詩かもしれませんけど……」
いつのまにやら始まっていたおしくらまんじゅうに戸惑いつつ、狛も加わって……あっちこっちに重心が動いた結果、まんじゅうは大崩壊。ナノナノに埋もれた二人は顔を見合わせて。たまにはこんなのも悪くないかもしれない。
「ほらほらー、お菓子あるよっ」
夕月の声にナノナノ達が反応する。隣のアヅマと他愛のない話をしながら思う。一緒にいることが幸せだなんて口に出して言ってあげないけど。
去年の今頃はこんな風に誰かと過ごすなんて考えていなかった、アヅマも思う。嫌でない、むしろ嬉しいなんて口には出さないけど。
「――で、それはそれとしてだ。……夕月さん」
会話を切り上げたアヅマを振り向いた夕月が固まる。
「助けて下さい」
お菓子を求めるナノナノの群れの中に埋もれるアヅマ。お菓子あげるからこっちおいでと笑みながら夕月は呼びかけた。
「そうそう、考えていたことが」
告白にきちんと答えられていない事で悶々としていたいちごの顔に迫ってきたのはナノナノの顔。
「ふぇ!? なんです、いきなり」
桐香の手によってナノナノとキスさせられたことに気づいた時には、彼女はナノナノを抱きしめていて。
「この子、いただいていきますわね……って、アリカさん何しますの!?」
いちごのビハインド、アリカがナノナノを奪おうとして引っ張り合いに!
「2人とも落ち着いて下さい!?」
いちごの悩みは二人を止めることになり、桐香は去年と同じことをしている気がしてならないのであった。
今年のかくれんぼ大会の鬼は十織と九紡。喬市を探すために向かうのは同じ方向で。
「俺くらいの背丈で、ウサミミが似合いそうな、髪サラッサラの美人見かけなかったか?」
負けじと辺りにいるナノナノに聞きこみをする十織。
その頃喬市は擦り寄ってくるナノナノを無視できず、褒美に用意したクッキーを上げていると次々ナノナノが集まってきて。
「お前は九紡じゃないか」
次にクッキーを受け取ったナノナノは見覚えある腹巻き姿。
「お前、いつの間に!」
負けを認めた十織だったがもらえたのは努力賞ではなくでこぴんだった。
「お! いかにもいい貫禄のナノナノ発見! これは伝説に相応しいだろう!」
「はへ? あそこにいるナノナノって……」
耕平が意気込んでナノナノをキャッチ。
「なの~?」
だがむちむちぷり~んとしたお腹をぺちーんぺちーんとする姿に見覚えが。
「あのー師匠、紛らわしいので僕らと一緒にいてくれへん?」
「師匠、一緒におろうね」
咲羅は何となく自分のナノナノだと気づいていたのだが。
「よし、今度はどっちに行ってみる?」
「そだ、迷子になったらいけんから手ぇ繋ぐっす!」
「……って、え? ら、らっさん?」
繋いだ手は、互いに暖かかった。
食べ物でナノナノ達を釣る柚羽から貰ったクッキーを頭にしがみついているらいもんにあげる貫。
「らいもん、数が多いからって同種族に怯えてどうする」
遊んで来いとそっと送り出して。
例えナノナノさまが見つからなくても、自分からの想いは変わらないと柚羽が心の中で呟くと。
「伝説のナノナノさまが見つからなかったとしても、俺とユズにとってはらいもんがナノナノさまってことでいいんじゃないか?」
貫の言葉に柚羽は目を輝かせた後照れ笑いを浮かべて。
「成る程……そうだな」
ならば尚の事、思いは変わらない。
「なァ、こんなトコに居んのか……」
「グダグダうるせぇ、こんなとこだから居るんだろ」
錠の言葉を遮り、葉は下駄箱を開け続ける。ナノナノなんて大して興味ないくせに、自分を喜ばせようと思って錠が色々してくれているのを知っている。今更「ありがとう」と言う気にはなれないけど、少しだけ向き合ってみようと思った。
いつも冷静な相棒がガチで探しているのを見ながら、錠が思い出すのは葉と出会った時の事。丁度この場所。ダメ元で話しかけた結果が今の状態。つれない返しにも慣れた。
「おら、テメェもちゃんと探せ!」
「仕方ねェ、とことんまで付き合うぜ!」
嫉妬して逃げ出した白豚を放っといて蒼騎は他のナノナノ達とケーキを食べている。
「食いしん坊な所はどのナノナノでも同じだな」
そのナノナノ達の中にいつの間にか紛れ込んでいる白豚には勿論気づいていて、そっとケーキを差し出す。
「匂いでお前の事は分かるって奴だ」
白豚は嬉しそうに擦り寄った。
「ユリアさんもナノナノさんお好きなのですか?」
「はい、可愛いですから」
芝生の上でセカイはユリアと瀞真と共に小さなパーティを開いていた。手招きをすれば、様子をうかがっていたナノナノ達が寄ってくる。
「この子達も甘い物が好きみたいだ」
瀞真からナノナノを手渡されてもふもふ。ゆるりと時間は過ぎてゆく。
「ヘクセンハウス作戦開始である!!」
「ナノ♪」
高らかと宣言したのは【ナノ隊】のもこ。みことが建築主任としてお菓子の家の組み立てを指示しているようだ。
「もここガンバなの~。完成したら好きなだけ食べていいから、完成するまで頑張るの~。つまみ食いはしちゃダメなの」
「ナノ!」
瑞葵は精一杯もここを応援するが、我慢できずにもここはちょっとだけ齧りつく。
「なの美、つまみ食いはあかんでー。ちょっとくらいならええけど」
「ナノ! ナノッ!」
智恵理の言葉につまみ食いはしませんとばかりに働くなの美。集まってきた他のナノナノ達も作業に加わって、時にはつまみ食いもしながらお菓子の家が出来上がっていく。もこ達はあくまで補助だ。
「完成である!」
もこの宣言。達成感と空腹がこみ上げてきたのか、家で遊ぶよりも家を食べることに熱心なナノナノ達。もここは嬉しそうに屋根から、なの美はチョコの扉を食べ始めていた。
●想
薫の作ったスノーボールクッキーと雨の用意したミルクティー。目ざといナノナノ達がふわりと寄ってきた。
「ん、お前も食べるか?」
「ナノ~♪」
クッキーに夢中のナノナノにそっと振れて撫でる薫。幸せな感触。
「ナノナノもミルクティー、飲む?」
「ナノッ」
雨はふーふー冷ました自分用のミルクティーを差し出して。優しい時間が過ぎていく。
「これからもこんな風に一緒にいたいな」
「一日一分一秒でも多く雨とこうして一緒に過ごしたいのがオレの願いだよ」
永遠なんてないって知っているけど、でも――。
「ナノナノさん、なのです♪」
ナノナノとすりすり頬をすりあわせている凛々の側で氷桜はカメラを手にシャッターを切る。
「そこでぎゅっとしてからポーズしてリリー?」
「え、ぽーず? はいなのです!」
可愛い彼女の姿が見られるのだ、沢山写真を撮りたくなるのも当たり前。
(「うん、思った以上に可愛い流石過ぎる」)
「ひーくんも、楽しんでいますか?」
「ああ」
大切な人と一緒に楽しめるなら、それは幸せ。
「司くん、手伝って……ええと、肩車かな?」
「え、肩車? わ、わかった」
麒麟に頼まれて承諾したものの、心のなかの動揺を隠せない司。麒麟はナノナノを捕まえようと必死に動くから、余計に、気になる。
「捕まえた。ん、ぷにぷにでおいしそう、……あれ、どうしたの?」
「な、なんでもないよ」
彼女をそっと下ろしてナノナノをぷにっ。
「ん……、来年は伝説のナノナノさまをつかまえられたらいいね」
「伝説のナノナノさまかぁ。来年といわず……今から探してみる?」
そっと手を取り合って、歩み始めた。
「苺大福! そこで食うのはいいけど襟首からクッキーの食べかす入って来んだよ! こぼすな!」
「ナ~ノ」
お菓子と引き換えにナノナノさまの居所を聞き出そうとしていた雨情だったが、鷹育と肩に乗った苺大福のお陰で進捗は芳しくない。お菓子は鷹育によって次々と渡されるナノナノによって消費され……。
「今年も一緒に過ごせてるのは、ナノナノさまのご利益があったんですかね?」
「別に見つからなくても関係を維持する心が大事だと思う。来年も来ような」
「うん、そうですね」
そっと、手を繋いだ。
「あなたは伝説のナノナノさまに会ったことある?」
ふわふわしているナノナノに呼びかける安寿。隣の陽己は二人きりなので緊張してどこか上の空だ。
「よーく考えてみれば伝説のナノナノさまって、あたしや太治くんみたいにお友達同士だと、見つけることができないのかな?」
「クリスマスなんだ、祝福は貰えないかもしれないが、会うくらいは叶えてくれるさ」
陽己の口をついて出そうになる言葉。何とか抑えて。
「あ、向こうにナノナノさまが見えた気がした」
安寿の手を引いて、誤魔化した。
手を繋いでどれくらい歩いただろうか。休憩、とベンチに腰を下ろしてクッキーと紅茶を取り出す一樹と多久等。お菓子につられてナノナノ達が集まってくる。
「僕らも、一緒に食べよう?」
「ん、ありがと」
クッキーにつられたナノナノを膝に乗せた多久等の姿を、一樹は瞳に焼き付けて。
「また、来ようね」
「ああ、来年も、その先も一緒にね」
ありがとうと添えられた多久等の言葉に、いつも感謝しているよ、と。
付き合って初めての冬。恋人つなぎでナノナノを探して回る眠兎と梟。普段あまりしないお洒落をしている彼女が可愛すぎて、梟は心の中で叫んだ。捕まえたナノナノの戯れる眠兎やツーショットをカメラに収めて歩く。ナノナノさまが見つからなくても、幸せに過ごせればそれでいい。
「寒くなってきたね」
梟が通常より長いマフラーを首に巻けば、眠兎は自分の首にも巻いて。
「二人マフラーですねー」
仲良く寄り添って、歩き続ける。
「……すまない、シェリー。この顔についたナノナノ取って欲しい」
シェリーがふと彼を見れば、遊んで欲しいのか七狼の顔に張り付いたナノナノがいる。そっと引き剥がして抱きしめればふわふわで。
「寒くないカナ」
「外は寒いけれど君が居るから暖かいよ」
二人で伝説の木をそっと見上げて。
「君と過ごす3回目のクリスマスも、一緒に素敵な光景を観れて幸せ」
「君とこの光景を見らレて、良かった」
代え難い思い出が一つ増えた。
初デートの緊張も、手を繋いでナノナノ様を探しているうちに溶けていった。
「静姉さん、あそこにいます! 跳びますよ!」
「え? どこに――わ!」
高い所にいるナノナノめがけてジャンプ。捕まえたナノナノをそっと静菜に手渡す心太。そのまままた、歩き出す。
「楽しかったです。また、一緒に出かけましょう……静菜さん」
「うん、是非また。私も楽しいですよ。しんちゃんと一緒ならどこでも」
いつもと違う呼び方に、そっと照れた。
ツリーの前でお菓子を手にナノナノ達を集める明日等とギィ。ツリーに飾ったりキャリバーに乗せて動きまわったり、一体でも多くのナノナノを集めようとしている。合間にぷにぷにと感触を楽しんだりして。
「ホント可愛らしいわよね♪」
「明日等さん、寒くないっすか?」
問われて明日等は用意していたココアを差し出す。けれど。
「抱きしめたら暖かくなるっすよ」
ギィは彼女を抱きしめる。沢山集めたナノナノが、ひと目を遮ってくれる。そしてそっと口づけを。
「九十九さん、ナノナノが沢山いますわよ!」
「ああ、確かに貴重だ」
ナノナノを抱いて貴重な体験ですと嬉しそうなティシーを見て、九十九は呟いた。そんな彼の様子が最初に比べて随分解ることが出来たような気がして、ティシーはほっと息をつく。
「それと……あの……その……今日はご一緒していただき有難う存じますわ……九十九さん大好き」
恥ずかしさからナノナノで顔を隠したティシーを見て、いつもはない笑みを口元に浮かべる九十九。
「ああ、俺もティシーが大好きだ」
がっくり肩を落として戻ってきた太郎が連れていたナノナノに、詩乃はクッキーをあげて。
「一緒に食べましょう? 太郎くんとこうして過ごせるだけで十分です」
その言葉に、ナノナノさまが見つからずに落胆していた太郎も顔を上げる。
「ナノナノさまが見つからなくても、わたくしと太郎くんはずっと一緒なのですから」
穏やかな表情の彼女を見つめて、その手作りクッキーを口に入れる。
(「ま、いっか。詩乃が楽しそうだしさ」)
さり気なく片思いの相手である榛を誘った冴子は、共に校内を探し歩くことに幸せを感じていた。時々見かけるナノナノと触れ合いながら歩いた思い出は、ナノナノさまに会えずともかけがえのない思い出になるだろう。
「ツリーの上の方にナノナノがおるね」
罰当たりかもしれないけれど、捕まえたいと榛はダブルジャンプで距離を詰める。しかし。
「ナノ~!」
驚いたナノナノはふわりと逃げてしまって。
「残念やわ、普通のナノナノやったわ」
「ふふ、今日は、お付き合い本当にありがとうございました」
大切な思い出がひとつ、生まれる。
マシュマロを餌にナノナノを捕まえた秋帆に千穂は私も! と目をキラリ。
「触りたい? なら交換条件だ」
渡されたナノナノをうっとり堪能する千穂。するとふと紙に銀が降った。
「これが交換条件なの?」
「今夜だけでいいからつけといて」
銀のリボンが梅太郎とナノナノをもふる千穂の動きに揺れる。独占したい衝動を言葉にせずに。
「どう……ぞ?」
秋帆がナノナノと梅太郎を手渡そうとしたその時、ふわりと雪がちらついて。
「メリークリスマス秋帆くん!」
「メリークリスマス、秋津」
絶対にナノナノさまを見つけてやる、強い意思の悟と想希は一体のナノナノを追いかけた。ついて来いって言ってる気がするのだ。
「ここ屋上やないか」
見渡した悟の視界に広がるのは地上に広がる星空。手を伸ばせば掬えそうで。
「すっげー想希こっちきてみ!」
「って悟!?」
柵から乗り出した悟を、想希は抱き止めた。ふと見あげれば、白いものがちらちらと舞い降りて。
手を絡めてそっと頬寄せる。
「今日はやっぱり幸せな1日ですね」
「俺もや」
最高の、1日――。
●祈
アザラシのましょまろ。を抱いてナノナノを探す真魔。探しつつもナノナノ達とましょまろ。のベストショットは逃さず写真に収める。飛んでるナノナノにシャボン玉を吹くと、ナノナノは楽しそうに笑った。
屋上からツリーを眺めて思う。幸せを自らの手で掴める様……傍らに、比翼の片翼になれるよう進む努力をしよう、と。
「大丈夫だよ」
沢山のナノナノに驚いたのかパー子はクリスにひっついたまま離れない。
「あらら、パー子ビビっちゃった。同じナノナノなのにね」
屋上にもナノナノは沢山いて。桃夜はクリスが超早起きして作ってくれた料理&スイーツを食べ始めた。
「うん、相変わらず美味しい♪」
と思えばナノナノ達が食べ物目当てで近寄ってきて。
「あはは可愛いな」
クリスがクッキーをおすそ分けするとナノナノはくるんと回って見せた。
「もしナノナノさまに会えたら……って、あれナノナノさまじゃない?」
桃夜が声を上げる。願うのは、二人の変わらぬ愛。
「匣庭ナノナノ探検隊しゅっぱーつ!」
匡の号令で【匣庭】の一同はまず理科室を目指した。
「ナノナノさーん、美味しい美味しいチョコレートがあるよー」
「ナノッ」
珈薫は飛び出してきた2体のナノナノを問答無用でむにむに。
「触っても大丈夫?」
「なのなのー!」
「メルとぬいもナノナノむにむにしよう!」
匡のクッキー目当てに寄ってきたナノナノにメルと縫いも触れる。むにむにで気持ちがいい。
「何々? ここほれナノナノ~って? わぁぁ、ほんとにナノナノ発見ー!」
キャロラインが潜った机の下から出てきたナノナノと一緒に遊び、ピンクのリボンを結んであげたらら。
「甘い星をお一つどうぞ」
骨格標本の影に隠れていたナノナノに、紡は金平糖を差し出して。近くでは椅子に座った姿が愛らしいナノナノに史子がマカロンをあげていた。
「ノノさんとも仲良くして下さいなっ」
このとからハート型のキャンディを貰ったナノナノは、ノノさんとじゃれあった。
家庭科室に場所を変え、林檎はクッキーをちらつかせながら机の下を覗きこもうとした。すると。
「わぁっ!」
飛び出てきたのはナノナノではなく、匡、メル、ぬいの小4トリオ。
「わ、びっくりしました……わ?」
だけではなかった。3人の後ろからヒョコンと顔を出したナノナノに、笑顔でクッキーをあげて。
最後に屋上に上がり、のんびりとツリーを見下ろす。
「寒いからあっためてね」
見かけたナノナノを片っ端から捕獲する珈薫、両手いっぱいに抱きしめるぬい。残ったお菓子を分けあって、楽しい時間。
胸の内、願うのはこれからも皆と楽しくいられるように、もっと仲良くなれるように、楽しく過ごせるように、来年も素敵な一年になりますように――。
「んん? ツリーのてっぺんにナノナノが……ってあれはもしかして!」
ららの声に一同の視線が集まった。もしかして、本当に――。
「暖かそうだぜ、鴎も一匹どォだ?」
自分の帽子をかぶせたナノヘキサを向けるヘキサ。そんな姿に鴎はほくほくして。
「もし伝説のナノナノを見つけられたらどうすっかなー。俺らの航路に祝福とか頼んでみるか!?」
「そォだなぁ。オレ、今この時間が一番幸せだ!」
鴎をぎゅむっと抱きしめるヘキサ。その視界に金の光が舞い散って。見上げれば、金の光舞い散らせながら浮かぶナノナノがそこに。
「! そォだなぁ……やっぱりオレたちだけ独占は勿体無ェよな」
「ああ」
頷き合ってそのナノナノと向き合う。
「よォし伝ナノ! 学園中を目立つように鳴きながら飛び回ってこいッ!」
「ナノナノ~~~!!」
くるんと一回りしてナノナノは飛んで行く。
ひとりでも多くの者の幸せを願って。
見つからなかったと諦めた人のそばにも、金色の光が舞い散ったかもしれない。
すべての人に幸せな一夜を。
末永く、幸せを。
作者:篁みゆ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
|
種類:
公開:2014年12月24日
難度:簡単
参加:69人
結果:成功!
|
||
得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 20/キャラが大事にされていた 0
|
||
あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
|
||
シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
|