クリスマス2014~ありがとうのキス

    作者:立川司郎

     今年も年の瀬が迫り、相良・隼人(高校生エクスブレイン・dn0022)はなにやら大きな包みを抱えて教室に座っていた。
     放課後の教室は、すでに日が陰って闇に閉ざされつつある。
     隼人が何を考えているか知らないが、学園内は以来だけではなくクリスマスに向けてソワソワしている所だ。
     クロム・アイゼン(高校生殺人鬼・dn0145)が彼女の前に立つと、隼人は顔を上げて包みを差しだした。
    「やっぱりヤドリギのリースか」
     お前、結構乙女チックなの好きなのな。
     クロムの言葉に、隼人はそうだろう、と笑う。
     実際乙女チックかどうかはさておき、隼人はヤドリギの下に集う人々の笑顔を見るのが好きなのだという。
    「俺等も毎日戦う事だけ考えてりゃいい、って訳じゃないしな。どうだ、クロム。お前もヤドリギのリースを飾ったツリーに来ないか?」
     隼人が作ったというリースは、柊松ぼっくりを使ったシンプルなものに、ヤドリギを絡めたものであった。
     やや大きめなのは、遠くからでも分かるようにと。
     クリスマスツリー建設予定地のもみの木の所にクロムとともにやって来ると、隼人は去年の事を思い返していた。
    「またプレゼント用意するのか?」
    「そうだな。……ただ、まぁ」
     隼人は口を濁らせると、少し考えてふと笑った。
    「いつもありがとう、って言ってみたくてな。俺は依頼で教室から見送ってばかりだからな、いつも体張ってくれてありがとサンって言ってみたくてさ」
     だから、隼人も誰か知り合いが通りがかりでもしたら、ありがとうと言って贈り物をしようかと話した。
     プレゼントは、一口サイズの苺チョコ。
     お前にはやらんぞ、と一言隼人は断る。クロムはそれを聞いて、眉を寄せてちょっとガッカリしたように肩をすくめた。
    「そんな事言う奴はクリスマス一人ぼっちだぞ」
    「クリスマスは家族と過ごす日じゃねぇのか?」
    「郷に入れば郷に従えって言うだろ」
     どうにもクロムに言いくるめられた気はするが、ともかく隼人は今年もクリスマスを楽しむつもりであるらしい。
     もみの木を見上げて、隼人は目を細める。
    「なあ、今年はヤドリギの力を感じたか?」
    「さあな。でもクリスマスを笑って過ごせたら、ヤドリギ効果があったって事じゃないか?」
     クロムはぽつりとそう言った。
     
     
     クリスマスイブの夜、今年もヤドリギのリースを飾った大きなツリーが明かりを灯す。てっぺんには、いっとう目立つ位置にヤドリギのリースが飾られる。
     このヤドリギのリースの下で待つ子には、キスをしてもいいのだ。
    「戦ってくれてありがとう。……お前達に、ヤドリギの幸せがもたらされますように」
     隼人は、学園の仲間にそう言って、プレゼントにチョコを渡すだろう。
     あなたも、大切な人に贈り物をしてはどうでしょう?


    ■リプレイ

    ●ヤドリギの下で
     待ち人来たる。
     氷霧は伊織がやってくると、微笑んだ。
    「随分魅力的、なとこで待っててくれはるんやね」
     伊織にヤドリギの事を言われて氷霧は、顔を赤くする。
     しかし躊躇しつつも、そっと伊織の手の甲にキス。
     多分意味など知らないのだろう、と伊織はその様子に愛おしさが募る。
     顔を上げた氷霧の額に、伊織は優しくキスをした。
    「オレからも」
     照れて笑う伊織の顔を見られず、氷霧はつい足早に歩き出した。

     雪降る中暖かそうな服装でロジオンは迎えた。
     ヤドリギの話を聞いたロジオンははにかんだ笑顔。
    「はいロジー、いつも有り難う!」
     対して花恋は元気一杯に贈り物を渡す。
     自分にしてはいいプレゼントを選んだと言う花恋。
    「私に…でございますか」
     花恋はワクワクして目を閉じているのに、ロジオンはもじもじと。
    「ヤドリギの下で待っている人にはキスしなきゃ駄目なんだぞ!」
     ようやく急かされ、ロジオンはキスをした。

     そわそわと藍は、寛子の手編みマフラーをして待つ。
     待ちきれずに早く来た藍は、行ったり来たり。
     彼女の姿を見つけると、ほっと笑顔。
    「いつもありがとなの!」
     寛子は、藍に贈り物を手渡す。
     オリジナルの、クリスマスラップCDだ。
     ドキドキしながら寛子が身をかがめると、藍は背伸びをしてキス。
    「えへへ…藍ちゃん、大好きなの」
     寛子の言葉に、藍ははにかんだように笑った。
     二人の側に、寛子の送った音楽がゆっくりと流れる。

     雪ウサギと向き合う愛の背中に、恵がそっと近寄る。
    「オレを待たせるとは良い度胸っすね」
     不機嫌そうに愛が言うと、ニコニコと恵は贈り物を。
     羽を象ったシルバーピアス。
    「絶対似合うと思って」
    「けーちゃんにしては良いセンスじゃないっすか」
     どうやら気に入ってくれたよう。
     お返しにと愛は耳当てを取り出し、恵に付けた。
     手で覆った耳当てごしに、そっと愛は大好きと囁く。
    「え?今何か…」
     言いかけた恵に口付けた。

     欲しい物が出来た事自体初めての事だった。
     ツリーの下で、この一年を思う白焔。
    「メリークリスマス」
     間を置かず着いた今日の緋頼は、黒のワンピースに白いダッフルコート。
     プレゼントです、と緋頼が手渡したものは黒革の手袋だった。
     薄手だが丈夫な作りは、白焔の手に馴染む。
    「有り難う」
     礼とともに、抱き上げてキスを返した。
     有り難う。
     愛してる。
     色んな気持ちが込められたキス。
     ふと笑顔を浮かべた緋頼と、さあ出かけよう。

     鈴佳に花束を渡されるまではそわそわしていたミトも緊張と嬉しさで一杯に。
     想いに答えてくれた事に礼を言う鈴佳。
    「ありがと、鈴佳ちゃん。あたしなんかにここまで…」
     言葉を詰まらせ、ミトは鈴佳の首筋にお礼のキスをした。
     鈴佳も笑顔を浮かべ、ミトの同じ位置にキスをする。
    「貴女が幸せでありますように。この想いが変わらないものでありますよう」
     ありがとうと鈴佳はもう一度口にした。
     抱きしめたミトの温もりが、鈴佳に伝わる。

     笑顔で送られたヴァンからの、ピンキーリングの贈り物。
     恋人達の待つツリーの下で、智恵美はカードに視線を落とした。
     -陽だまりのような温もりをくれる、優しい笑顔の貴女が好きです-
     恋人として貴女の傍に居させてください。
     そう書かれたカードに、智恵美は涙を零した。
    「嬉しい…」
     泣いている智恵美に、ヴァンは狼狽。
     ヴァンの思いの贈り物のお礼。
    「ヴァンさん、知っていますか?」
     贈り物のお礼は…智恵美は頬にそっと口付けをした。

     どうか、私に勇気を。
     父に祈りつつ桃香は待つ。
    「お迎えにあがりましたよ、オレのお姫サマ」
     笑顔で来た遊が、カードを添えた薔薇の花束を差しだす。
     薔薇の香りに目を細め、桃香は微笑む。
    「わぁ、すごく綺麗でいい香り」
     テストのご褒美も込めて、遊の頬にそっとキス。
     それから桃香からも、リングの贈り物。
    「贈り物は三倍返しだっけ?」
     照れたように遊は言うと、額と頬。
     そして目を伏せた桃香の唇にキスを。

     クリスマスの贈り物に悩んだアリス。
     無難にカードを選び、蒼衣を待つ。
    「執事服ではないので気付いてもらえるか不安だったんですが」
    「服装が違うくらいで間違えたりしないさ」
     蒼衣はいつもと違う装いのアリスに返す。
     メリークリスマス。
     アリスは蒼衣に言いながら、カードを。
     すると、蒼衣の方からもクリスマスリースの贈り物を返してくれたのだ。
    「部屋のドアに飾れるようにな」
     手作りの贈り物のお礼に、アリスはそっとキスをした。

     真珠と過ごした一年は、決して平和ではなかった。
     ツリーの下にぽつんと立つ真珠に元に向かうと、咲哉は言葉を選ぶ。
    「真珠、ありがとう」
    「…こちらこそ、ありがとうございました」
     目を細めて真珠が微笑む。
     でも一番咲哉が伝えたかったのは…。
     咲哉は真珠の目をじっと見つめた。

     恋人達の様子を見送る隼人の手に、ぽんと紙袋が置かれた。
    「よう、今年もここか」
    「なんだお前か」
     と隼人は笑い、通にチョコを手渡した。
     ありがとうと言いたかったのは通の方。
     だけど、贈り物のお礼は結局お預け。
    「…やっぱり俺には早いらしい」
     通らしい様子に、隼人がからりと笑う。

     タキシード姿の式と赤いドレスの菜々は、これからダンスパーティーへ。
     ドレス姿の菜々はいつもより綺麗で、式もドキドキ。
    「今年も来てくれたっすね。嬉しいっす」
     …と言い、ぼんやりしている式を見上げ。
     見とれていた式夜は、はっとして贈り物を取り出した。
     式が選んだネックレス、菜々へとつけてあげると菜々はキスを返した。
    「去年と違って、今年は1日中付き合って貰うっすよ」
     式の腕を取ると、菜々は楽しそうに歩き出した。

    ●勇気を出して…
     ツリーの謂われを知らず、いちごは笑顔で贈り物を手渡す。
     赤い顔の由希奈にきょとんとするいちご。
    「どうかしましたか?」
     いちごが聞くと、由希奈はようやくヤドリギについて話した。
     二人とも顔を赤くして沈黙。
    「でも…いちごくんなら、いいよ」
     そう言い由希奈は見つめた。
     ドキドキしながら顔が近づき…。
     気付くと、恥ずかしさに耐えかねた由希奈が頬にキス。
     俯いて赤い顔の由希奈といちご。
     ちょっぴり残念なような…。

     ツリーの下の六花は、蒼と白のドレスを纏っていた。
     緊張を押さえながら、孝優は待たせた事を謝る。
    「…俺の事好きになってくれてありがとうな」
     孝優の言葉を聞きながら、潤んだ目で六花は見つめる。
    「六花の事、あっ愛し…大好きだぜ!」
     真っ赤な顔で、ピンクの薔薇の花束を差しだした。
     じっと見つめ六花はヤドリギについて聞く。
     返事を待たず、六花はふいうちで口付けた。
    「ふ、不意打ちは卑怯だろ」
     紅潮を隠すように孝優は六花を抱きしめた。

     お互い緊張が隠せず、ゼノスと目を合わせる事も出来ず。
    「雪がちらついてるが寒くないか」
    「うん。雪だね。大丈夫」
     言い聞かせるように言うと、天花はマフラーの贈り物を差しだした。
     出来上がりが不安そうな天花。
     ゼノスはお互いの首に巻き付けると、天花に顔を近づける。
     ぎゅっと目を閉じた天花の唇にふわりと触れた。
    「へへっ、そんじゃ行くか」
     手を引いてくれるゼノスの手を握り返す。
     メリークリスマス。

     さすがに夏樹も、周囲の空気で気付いていた。
     これは、そういう場所だと。
    「メリークリスマス!」
     リコは夏樹が気付いていると知らず、ワクワクしながら贈り物。
     中身はお手製のパネトーネ。
    「キスでもいいんだよー?」
     お礼は額にキスをとリコは助け船。
     でも夏樹は心を決めていたのだ。
     リコの唇に男らしく、キスをした。
    「うー、ズルいよ。こういう時妙に覚悟決まってるんだから」
     リコは赤い顔で抗議した。

     急いだ様子で駆けてきたエウロペアの頬は、紅潮していた。
    「待ったかえ?」
    「あやうく雪だるまになる所だったねぇ」
     笑う式夜に、エウロペアはネックレスを取り出す。
     天然石を使ったネイティブデザインのものだ。
     式夜の首に手を伸ばすエウロペアに合わせて屈むと、首に手を回して口付け。
    「お返しなどさせてやらぬ。去年のお返しじゃ」
    「…なんかお前妙に力んでるけど」
     照れた様子が見え見えの彼女に、式夜は笑いを零した。

     去年の贈り物を模した薔薇のカードを、手に携える。
     おいでと手招きすると、夜深は芥汰の腕に飛び込んだ。
    「あくたん!寒ク無かタ?」
    「今、あったまった」
     ぎゅっと抱きしめる芥汰。
     二人でカードを見つめると、芥汰はマスクを外した。
     それは芥汰のちょっとしたお願い。
     頬を染めつつ夜深、目を瞑った芥汰の唇に触れるようなキス。
     愛らしい姿に芥汰もキスを返した。
    「…あのネ?何時モ沢山、ありがと」
     小さな声で『大好き』と芥汰に届く。

    ●これからも、ずっと…
     ツリーの下、クロムの元に来たのは翡桜だった。
     あれから一年半。
    「クロムさんが灼滅者として助かってくれて、学園に馴染んでくれて有り難うございます」
     自分を振り返り言う翡桜。
    「こっちこそ、ありがとう!」
     そこに居るのは確かな翡桜の戦いの成果。

     そしてしばらくすると、そんなクロムの所に錠。
    「よォ、そっちも楽しんでっか」
    「今から楽しむ所」
     とクロムが笑い返す。
     ピアスの贈り物のお礼は、無しでいいと錠。
     意地悪そうにクロムがにんまり笑う。
     でも多分、二人にはバラし合いの方がお似合いなのだ。

     着飾った少女達の間に、いつもの服装でヴァイスは立つ。
     不安を胸にしたヴァイスの前に、宗嗣が現れた。
    「なんだ、遅かったじゃないか」
     上目使いのヴァイスに、宗嗣の手でシルバーのネックレスが掛けられた。
    「今年も一年ありがとう」
     そういった宗嗣に、ヴァイスからの気持ちが送られる。
     触れた唇は、少し熱く。
    「慣れてなくて照れくさいんだが…その。す、好きだ…これからも、宜しく」
     気恥ずかしそうに、宗嗣は言った。

     こうして黒虎と過ごすのも二年。
     思い返す銀河の元に黒虎が来ると、笑顔で迎えた。
    「寒くなかったか?」
     黒虎はマフラーを掛けてやると、贈り物の犬のぬいぐるみを手渡した。
     犬の抱いていた封筒の中には、人気の温泉宿の宿泊券が。
     それはつまり…。
    「寒い中待たせたし、ゆっくり暖めてやろうと思ってな」
    「うん…二人で過ごす時間が、何よりの贈り物だよ」
     銀河はそっと抱きしめると黒虎にキスをした。

     少し遅れて家を出ると、冰雨はツリーの下の冰雨の所に。
     いつも一緒に居てくださってありがとうございます。
     その一言を綴るのに、顔を赤くして詰まりながら。
    「冰雨は優しい月様が大好きですっ…」
     最後にそう言うと、カードを差し出した。
     照れてカードを手渡す可愛い恋人から、月は大切に受け取って懐に仕舞う。
    「ふむ、さて返事はどうするんだったか」
     月は悪戯にそう言いながらも、ちゃんと忘れてなんか居ない。
     額にキスをすると、冰雨はまた顔を赤くして抱きついた。

     二度目のクリスマス。
     だが夫婦としては初めての聖夜に、無邪気な笑顔でリオナは現れた。
     空香もそんなリオナに笑顔が浮かぶ。
    「いつも私を助けて下さって、ありがとうございますなのです…」
     少し照れたように、空香は悩んで選んだ贈り物を渡す。
    「オレの傍に居てくれて感謝しているぜ」
     リオナは、贈り物のお礼に優しいキスを。
     初めてヤドリギの風習を知った空香は、驚きつつ笑顔。
     一つ高い段に上ってキスをしたリオナの背伸びも、愛おしい。

     朱毘が到着すると、普通のファッションで三成は待っていた。
    「ちょっと見つけにくかったです…いや、冗談ですよ」
     朱毘が笑って言うと、三成は缶珈琲を手渡した。
     暖まりながら一年の事をぽつりと語り合う。
     プレゼント交換をしながら、朱毘はお礼のキスをと三成の頬に。
    「少しの間目を閉じていただけますか?」
     ごく普通に三成は頼むと、朱毘の唇にキス。
    「ん…これで足踏み状態から進展、ですかね」
     笑った三成に、朱毘はほんのり紅潮。

     白雪が降る中、深い茜色は詠の瞳によく映る。
     聡士はこちらを見ると、笑みを浮かべた。
    「少し待たせてしまったかな」
     聡士は謝罪を言いながら、花束を差しだした。
     赤い薔薇が七本…そのささやかな想いに、詠の心に熱が燈る。
    「メリークリスマス、聡士」
     詠は聡士にマフラーを掛けながら、背伸びをして首筋にキス。
     髪をそっと撫でられると、詠は囁いた。
     -私、手放したくないのよ…聡士-

     悟が差しだしたホットチョコを想希が受け取り、手が触れる。
    「俺はな、誰にでも手伸ばすねん」
     だけどその手をすり抜け落ちていく。
     その悟の手を掴んだのが想希だった。
    「これからも一緒に居てくれるか?」
     悟に想希は頷き、手を取る。
     想希が大好きな手。
     君が支えてくれるように、俺ももっと支えるから。
    「君が思っているよりもっと掴めるはずだから」
     でも今日だけは独り占め。
     寄り添い、想希は悟に愛を囁き口付ける。

     両手で包むと、小さな潮の手はひんやりとしていた。
     出会ったのは8月14日。
    「寒い中待ってたんだから…抱きしめて」
     潮が言うと、マサムネが抱きしめた。
     夏に出会って、告白して。
     -幸せになっていいのかな-
     潮はちらりと不安。
    「潮といると心が暖かくなって自分が強くなったような気持ちになる」
     だからこれからもずっと。
     潮は笑顔で応える。
    「キス…してください」
     ワガママ一つ、世界で一番幸せなキスを。

     少し早めに理が到着。
     スヴェトラーナはツリーの話は知らないようだ。
    「あの、いつもありがとう。見ててくれて、助けてくれて」
     だからお礼。
     彼女から、カードとマフラーの贈り物。
     少し上目使いで見つめるスヴェに、照れながら理がそわそわと。
    「スヴェのお陰で楽しい一年だった。今までで一番。…来年もよろしく」
     これからも出来るだけ長くと心に思いながら。
     そう言うと、頬にキスをした。
     スヴェの頬は、ほんのり赤く染まる。

     日が傾き始める頃、朱彦は初衣を手招き。
     日没前とはいえ冷える頃だが、初衣は表情を和らげる。
    「あ、あの…いただ、いた、まんね、んひ、つで、かい、てみ、ました」
     想いを綴った小さな紙を、初衣は手渡した。
     送った万年筆を使ってくれたのだと朱彦は頷く。
    「…おおきに。ほな、俺からのお礼」
     不安そうに見上げる初衣の額にキス。
     メリークリスマス。
     朱彦がそう言い抱きしめると、初衣も大きな背に手を回した。

     隼人とツリーで背中合わせ、多岐は立っていた。
    「なぁ相良。俺ァそれがどんなもんかと思って立ってた」
     隼人と同じように、雪の降る中に立った。
     日が暮れると、小さな包みを隼人にと。
    「俺達は複数だが、相良は一人だろ」
     見送る側を思い言う。
    「さて、なんか暖かいモン食いに行こうぜ」
     多岐はゆっくりと歩き出した。

    ●贈り物は絆
     淡いオレンジのマフラーに白いコート。
     すぐに見つけた鵺白の元に、蓮二は駆け寄る。
     蓮二がポケットから出したのは、小さな箱。
     鵺白があけると、それはピンキーリングだった。
    「左手出して」
     蓮二は、鵺白の手を取り指にはめる。
     君の幸せが逃げ出す事のないように。
     俺の手で守れるように。
     蓮二の願いを受けたリングが光る。
    「今年も一緒に居てくれてありがとう」
     その言葉に、こみ上げる想いのまま鵺白は蓮二の背に手を回した。

     声で旨く綴れなくて、ホワイトはカードに認めた。
     雪降るツリーの下で、リオンはホワイトが言うのを待ってくれている。
    「…これ」
     差しだしたカードを、リオンは受け取って開いた。
     そばに居てくれてありがとう。
     カードを見ると、リオンはにっこりと微笑む。
    「ありがとうございます。嬉しいです!」
     ほっとしたホワイトに、リオンはヤドリギの話をした。
     大好きですよ。
     リオンからの言葉は、頬にキスとともに。

     ミルフィは花束とクッキーを持ってアリスの元へ。
    「わたくし手作りのスノーボールクッキーですわ」
     お嬢様に心づくしの贈り物を。
     笑顔のミルフィにアリスは恐る恐る。
    「手作り?」
     いつも料理が下手なミルフィだが、見ると可愛いクッキー。
     このクッキーには、ミルフィの思いが込められているのだと切々と語った。その言葉を信じて、アリスは口にする。
     …美味しい!
    「ミルフィ、とっても美味しいです!」
     聖夜の奇跡に、アリスはミルフィへとキスを返した。

     狛からの贈り物は、紫御殿の花束。
     誠実で変わらぬ愛の花言葉が込められている。
    「ぼくからはこれを」
     キャロルは、物語の絵柄のカードだ。
     その話をした後で、キャロルは迷わず狛にキスをした。
     少し照れている狛は、キャロルに問う。
    「何でわたくしなんかを選んでくれたんですか?」
     自分と同じ境遇の子がそこに居たから放っておけなかった。
     キャロルは誰より孤独は感じていた。
    「でも、変われたんだよ」
     カードを見ながら、彼は言った。

     恋人達の中待ちぼうけの貴明を、このまま見ていようかと悪戯心。
    「お待たせ、貴明さん」
     直人が声を掛けると貴明はむっとした。
     思わず直人は吹き出してしまう。
     贈り物として渡したのは、ラブレターだった。
    「形に残したかったんだ。…後で読んで」
     直人の思い、気持ち。
     お礼に貴明が頬にキスをしようとしたが、促されて唇に。
    「嫌じゃないんだ。ただ…」
     そう言う貴明に、直人は頷いた。

     青い装飾のつげ櫛。
     古風だが、髪を大切にして欲しいという圭の想いがあった。
    「華やかな事させてやれないから、これ位は」
     朴念仁だと思っていた圭の贈り物に、ニコレッタは驚く。
     ニコレッタからの贈り物は、歯車やボルトを繋いだ、お揃いの十字架の首飾り。
     付けてみせると、身を寄せた。
    「大好きだ」
     少し赤くなりながら圭は伝えた。
     ニコレッタはしっかりとハグすると、圭にキスをした。
     愛を込めた、情熱のキスを。

     ツリーの下には、ふんわり笑顔で迎えてくれる通が居た。
    「通さん、待たせてすみません」
     春実の手には、赤い花の花束がある。
     松ぼっくりも使った、クリスマスらしい花束だ。
     春実が人生初めて買った花束。
    「今日を一緒に…いや、いつも一緒にいてくれてありがとう」
    「嬉しい…ありがとう」
     これからも一緒にいてほしいと通は言って抱きしめた。
     花束のお礼は、キスの贈り物。
     思い切って春実にキスをすると、照れたように笑った。

     真那からの贈り物は、冬華に似合う白いポーチ。
     すると、冬華はマフラーを交換に差しだした。
    「わたしもマフラー、編んでみたんだ」
     いつもありがとうと言いたくて。
     冬華からマフラーを受け取り、嬉しさがこみ上げた。
     そっと近づき背伸びをしてキス。
    「…あ、ありがと。…真那、大好きだよ」
     頬を赤くして冬華が笑顔を浮かべる。
     真那も好きだという言葉を、伝え返す。
    「ずっとそばにいる」
     大好き。
     真那は冬華に誓う。

     いつもありがとうと言いたくて。
     カードを用意して朱梨が送る。
    「これからも、宜しくお願いします」
     朱梨から受け取ると、椿はふ、と笑い返した。
     ツリーの下は女の子ばかりで、椿はソワソワしたけど。
    「朱梨ちゃんいつもありがとう」
     椿はそう言うと、頬にキスをした。
     すると背伸びをして、朱梨もお返しのキスを頬に贈る。
    「お返しが駄目、な決まりはないよね」
     朱梨は幸せいっぱいの笑顔を、椿に向けた。

     雪がしんしんと降る。
     冷える玲仁にふわりと温もり触れた。
    「だーれだ!」
    「良い子にしてたからサンタが来てくれたのだろうな」
     玲仁が背に言うとマフラーが巻かれた。
     七緒は自分と二人マフラーで包み体寄せる。
    「めっちゃ長いのだよ!俺頑張ったよ!」
    「ありがとう」
     一緒に居てくれた事。俺を好きになってくれた事。
     玲仁の言葉が温かい。
     マフラーの目隠しの下、玲仁はキスを送った。
     七緒が居てくれれば寒くない。

    作者:立川司郎 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月24日
    難度:簡単
    参加:77人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 16/キャラが大事にされていた 1
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