クリスマス2014~手作りのぬくもりを共に

    作者:陵かなめ

     今年もこの季節がやってきた。町は華やかなツリーで溢れ、楽しげなクリスマスソングがそこかしこで流れている。勿論、学園内も例外ではない。伝説の木は装飾を施されクリスマスツリーに代わるだろう。きっと朝から楽しいことが沢山あるはずだ。
     さて、そんな中、空色・紺子(高校生魔法使い・dn0105)がウキウキとした表情でクリスマスソングを口ずさみ、教室に現れた。
    「やっほー! もうすぐクリスマスだよね! 楽しみだー♪」
     手に持っている段ボール箱の中には、様々なクリスマス飾りが見えている。
    「それでね。教室を借りて、手作りのクリスマスパーティーをしない?」
     みんなで飾り付けをして、手作りの食べ物を持ち寄り、楽しく過ごそうと言うわけ。
    「私はね、今年はカップケーキを焼いてこようかなって思ってるよ♪ みんなで色々持ち寄って、楽しく遊ぼうよ♪」
     仲間と簡単なゲームをするもよし、持ち寄ったお菓子を食べながら語り合うもよし。もちろんお一人様も大歓迎。一緒に準備をしたり、楽しく過ごせば、新しい出会いもあるかもしれない。
    「一応、手作りがコンセプトだから、何か一品手作りのものを持ち寄ってくれると嬉しいな♪」
     それは、食べ物でも、飾りでも何でも構わないと言う。
     さあ、楽しいクリスマスになりますように。
     一緒に手作りパーティーはいかがでしょうか。


    ■リプレイ


    「紺子ちゃーん! やっほ♪遊びに来たよー?」
     要がひらひらと紺子に手を振った。
    「来てくれてありがとうー!」
    「俺はドーナツを作ってきてみたよー、ほら、チキンとかケーキは他の人が持ってくるかなーと思ってさ?」
     手作りのドーナツを見て、紺子は目を輝かせる。
    「ドーナツは良いよねぇ。後で私のカップケーキとちょこっと交換して欲しいなー♪」
    「おっけーおっけー!」
     話しながら、2人は飾り付けを行った。
    「メリクリー!」
    「紺子殿はよろしくでござるよ」
     会場の飾り付けに、矢宵とブレイブもやって来た。
    「こんにちはー。来てくれてありがとうー♪」
     矢宵の持ってきた雪の結晶とブレイブの持ってきたわっかを、それぞれ手分けして飾りつけて行く。
    「あ、こっちは食べ物?」
    「パーティー用にチキンナゲットでーす!」
     紺子が矢宵の手荷物を覗き込んだ。
    「たーくさんあるので他の料理と交換したりしよう!」
    「交換良いよねー!」
     矢宵と紺子の会話を聞きながら、ブレイブはわっかを壁に飾り付けている。しかし高いところは特に難しい。
     手元のわっかと苦労して取り付け、ブレイブはチラチラ矢宵のナゲットを見た。
    「チキンナゲット! 飾りつけの前に少し頂くのもよいやもでござるよ?」
     とっても美味しそうだから! とってもおいしそうだから!!
     ともあれ、早くに到着した参加者たちも手伝って、教室は可愛く飾り付けられた。


     そろそろ参加者たちが集まってきた。テーブルの上には皆が持ち寄った食べ物が並んでいく。
     チキンやケーキの他、趣向を凝らした様々な菓子など、見ているだけで気持ちが弾む。
     さて、最初にお揃いの天ノ川星歌隊の衣装を身につけ、星空芸能館の皆が教壇に集まってきた。
     どうやらクリスマスソングを歌うようだ。
    「みんなで歌いましょう♪」
    「みんなで歌えば楽しいよ♪」
     くるみとさやかが呼びかける。ぜひ皆さんもご一緒にと、他のメンバーもパーティー参加者に向けて手を伸ばした。
    「紺子さんも一緒に歌いましょう♪」
     えりなに呼ばれ、紺子が驚いたように立ち上がる。
    「歌は上手い下手関係なく楽しんで歌えばオッケー!」
     そんなマサムネの言葉に背中を押されたように、紺子は頷いた。
    「柚澄ちゃん大丈夫? たのしんで歌えば大丈夫だよ♪」
    「……、皆と一緒に居たいから、頑張る」
     くるみが差し出した手を柚澄がそっと握りしめる。
     そんな2人の様子を見て、紗里亜はにっこりと笑顔を浮かべた。
    「よし、伴奏は俺に任せろい」
     歌う準備が整ったのを見て、ファルケがギターの弦を弾く。
     明るく楽しげな伴奏が始まると、皆は明るい声で歌いだした。
     アリスとミルフィも、並んで声を合わせクリスマスソングを歌い上げる。
     教室のそこかしこからも歌声が聞こえてきた。
     手作りクリスマスの始まりは、クリスマスソングから。
     歌に合わせて手拍子をする者、肩を揺らしてリズムを楽しむ者、近くの仲間と声を合わせる者など、教室が一気に華やぐ。
     雰囲気が盛り上がってきたころあいを見計らい、心桜がクラッカーを高らかに鳴らした。
    「メリークリスマス!」
     その掛け声に、皆が一斉に声を上げる。
    「「「メリークリスマス!」」」
    「じゃあ、みんなー! 一緒にパーティーを楽しもうね♪」
     紺子がそう言うと、大きな拍手が巻き起こった。
     それは、美しい歌声と楽しいパーティーの幕開けを用意してくれた星空芸能館の皆への拍手でもあった。
     皆の様子を見て、えりながキーボードの演奏を始める。控えめでいて美しい音色をBGMに、それぞれ料理に手を伸ばした。


    「あそこの料理はおいしそうですし、あっちのデザートも素敵ですよ?」
     藤恵が司の手を引き教室を回る。
    「ふぅん。覚えてる範囲じゃ初めてっちゃ初めてのパーティだな」
     司はきょろきょろと辺りを見ていた。
     持ち寄った食べ物を食べながら、そこかしこで盛り上がっているようだ。
     適当に歩いていると、色々な人から食べ物の差し入れを受ける。司の思っていた通り、食べ物は沢山ありそうだ。
     その後、藤恵は司に手作りのジンジャークッキーを差し出した。
    「あーん、してくださいな」
     食べさせてあげるからと、可愛い顔のクッキーを近づける。
    「指まで食べちゃ、駄目ですよ?」
     言われたとおりクッキーをかじってみると、口の中に生姜の香りがふわりと広がった。
     手作りのマフィンをいくつか配り終え、鈴音は本当はポトフが良かったこと、それが少し上手く行かなかったことを隣の娑婆蔵に呟いた。
    「ではそいつは後日だ。いついつまでも待ちやす故、今度あっし一人に振る舞ってやって下せえ」
     1人だけに。
     そんな風に言われ、鈴音はどぎまぎしながらミサンガを差し出す。
    「えええっ。じゃ、じゃぁそれはそれとして……はい、こっちは娑婆蔵に」
    「おっ、ミサンガたァこれまた。有難く頂戴致しやす!」
     娑婆蔵は受け取ったミサンガを大切そうに眺めた。
    「もうずぅっと切らずに巻きっパでおりやすぜ!」
    「それって願いが叶わなかったってことじゃないかしら」
     最後に、鈴音は首を傾げた。
     持ち寄ったミルク寒天とケーキを前に、レインと達人の間には何となくぎこちない空気が漂っていた。
     こうして2人で過ごすのは珍しく、何だか間が持たない。そう感じていたからだろうか、達人がクリスマスソングを口ずさむ。
     突然の歌に、レインは首を傾げた。
     それが達人の歌だと遅れて気付き、思わず笑い声を漏らす。
    「ってなんで笑うのさレイン」
    「いや……」
     普段の達人のイメージが強くて、歌う姿に不意打ちを食らった気分だったのだ。
     レインがそんな風に笑うところも初めてかもしれない。そう指摘すると、レインは自分の本分は学業と戦いだと言う。
     だが。
    「……今日くらいは、寛いで笑おうじゃないか」
    「そうだね……今日くらいは、くつろいでいよう」
     今日はクリスマスなのだから。
     2人の間に、ようやくくつろいだ空気が流れ始めた。
     今年もまた、仲良しな皆と一緒に過ごせて嬉しい。そう言ってにこやかに笑う誘宵を見て、郁もつられて微笑んだ。
    「コレ食う? ……アイツらの手作り」
     差し出したのは、手作りのガトーショコラだ。今日は来ていない義兄の手作り品だ。郁も一緒に作ったのだが、それは口が裂けても言わないけれど。
     誘宵は目を輝かせて手を伸ばした。
     2人の前には、誘宵の手作りクッキーも並んでいる。
     温かさで満ち溢れたこの空間も嫌いじゃない。郁はそう感じる。
    「いっぱいいーっぱい、楽しいっ!」
     誘宵はお菓子に手を伸ばしながら、色々なことを話した。
     お陰で良いクリスマスになりそうだ。頷きながら郁は微笑を返した。
    「じゃじゃーん!」
     掛け声と共にさちこが取り出したのは、手作り感満載のビスケット製ブッシュドノエル。
    「おお、うむい。スゲー美味いぞ」
     ビスケットをサクサクかみながらキィンが言う。その言葉に、さちこは喜んだ。
    「さぁ、作ってきたぞ。リクエストのチーズ入りハンバーグだ」
     次にキィンが取り出したタッパーを見てさちこが眼を輝かせる。
     タッパーの中には、形のいびつな肉団子の塊。皆まで言うな、これはミートボールだと。
     さちこはそれをひょいと口に運んだ。
    「……おいしーい! きーちゃんすごーい。ミートボール……みたいだけど!」
     さちこはキラキラ輝く瞳をキィンに向けた。
     ああ、そんなはっきりと……!
     ちいさいおとーさんの顔に似せようとしたハンバーグも見つつ、2人は互いの料理を楽しんだ。
     慧樹はいつもご飯を作ってくれるゆまに恩返しをしようと、手作りのポテトグラタンを持ってきた。
    「スミケイくん、随分お料理上手になりましたよね? 子供の成長が見られて、お母さんちょと嬉しいです!」
    「今日は子供とか、言われたくないなー」
     ポテトグラタンを美味しくいただきながらゆまが言うと、慧樹が唇を尖らせる。その手には、ゆまの骨付きチキン。
    「だからゆまサンも、今日はおかーさんじゃなくて、ただのゆまサンで! なっ!」
    「そうですね、じゃあ……今日は先輩? ふふ、冗談です。今日は大切な友達として」
     慧樹が笑顔で差し出した飲み物をゆまが受け取った。
    「言い忘れてたケド……メリークリスマス、ッてな」
     どっさりと砂糖が入った紅茶を飲んでいた昶が不意に顔を上げた。
    「あ、えっと、改めてですが、メリークリスマス、です」
     穂風が頷き返す。
     こうして友達と過ごすクリスマスは初めてで、嬉しいと思う。
    「ああ……そうだったな。メリー……クリスマス」
     マドレーヌを食べていた理人も静かに言った。
     3人の前には、他にもカップケーキや林檎チーズケーキが並んでいた。持ち寄ったものはとても美味しく、穂風の用意した紅茶も良く合う。
    「また来年、ドコか行かねェ?」
    「そうですね。また一緒にお出かけしたり出来るの、すごく楽しみ、です」
     昶の提案に、穂風が頷いた。
    「……そう、だな。クリスマスだけでなく、色々なところへ出掛けられたら……」
     きっとそれが、友達というもの。
     理人は考え、一口紅茶を口に運んだ。


    「折角だし『人狼』しようよ」
     芭子の提案で、柴くんち御一行は人狼ゲームをすることになった。
    「ゲーム、やりましょうやりましょう。人狼、はじめて。どうやるのです?」
     昭子が周りを見ると、次々に説明の声が上がる。
    「人狼ですか。アレ、結構……難しいん、ですよね。がおー」
     花緒は密かに闘志を燃やしているようだ。ゲームと聞けば、ゲーマーとして負けられない。
    「がおー?」
     対して、真珠はどんなものか小首を傾げる。聞いた事はあるけれど、さて?
    「なになに、がおーって言えばいいの? がおー」
     蓮二が笑う。聞くだけでしたことは無いけれど、何やら楽しそうだ。
    「がおーはもっと迫真の演技で言おうよ」
     こちらも、やったこと無い組。観月が抑揚無く言ってみた。
    「がおー」
     あんまり変わらないと、近くの皆が笑う。
    「がおー! 人狼! わぁわぁあれですよね占い師とかもいるやつ」
     千架がきゃっきゃと期待の声を上げた。
    「そうそう。村に人食い狼が現れて、その狼を討伐するゲームだよ」
     芭子の説明に、皆が頷く。
    「人狼ですか? 悪くないですね」
     司もゲームに賛成の様子だ。
    「がおー。実はみんなに隠してたんですが僕って凄い悪人なんですよー」
     あんまり怖くない狼の叫びが、皆から次々に上がる。
    「ふふふ俺のポーカーフェイスに惑わされてください。ぜっったい勝ちます。がおー」
     侑二郎が言うと、ゲームに参加しようとそれぞれポーカーフェイスを作った。
     テーブルには持ち寄った沢山の食べ物が並んでいる。
     蓮二のプリンに侑二郎のスコーン、観月はフォンダンショコラを作ってきた。司と芭子のクッキーに、千架のマカロン、真珠のスイートポテトもある。さらに、昭子はクラッカーにつける鶏肉のパテと明太子のディップを用意してきた。花緒の飲み物も、次々と消費されていく。
    「うわー。すっごく賑やかだねー!」
    「紺子ちゃーん」
     通りかかった紺子に真珠が手を振った。互いにテストをねぎらいあう。2人は同じクラスなのだ。
    「人狼やってるんだー! ふむふむ」
     誰を排除するのか、ゲームの参加者が相談しているようだ。千架が質問を受けてしどろもどろになっているところを、侑二郎が畳み掛けるように追求している。その様子を、観月がポーカーフェイスでじっくり観察している様子も窺えた。
     誰が狼だろうか? 今宵狼を排除できるのか?
     見ると、皆楽しそうに笑っている。
     時折聞こえる、がおーがおーと言う平和的な遠吠えが、また楽しい。
     これが終われば、次はトランプも用意している。
     それから。
    「……あ、これが終わったら問答無用で原稿あるから、そのつもりで」
     観月からお達しがあった。
    「はははご冗談を。え、嘘ですよね、今日クリスマスですよ?」
     侑二郎が乾いた笑い声を上げる。だが、皆の表情は、それが嘘では無いと物語っていた。
    「クリスマスに原稿……が、がんばります……」
    「は、はい。げんこうも……が、頑張ります」
     真珠と花緒が言葉を詰まらせながら力弱く頷いてみせる。
    「原稿、原稿は、あの。サンタさんが手伝ってくださったり、しないでしょうか……」
     昭子の言葉は、何となく現実逃避っぽく聞こえた。
    「原稿? 知らない子ですね」
    「明日以降にやるやる。だいじょぶだいじょぶ」
     司はしれっと横を向き、蓮二はさらっと適当に笑顔で返す。
     ともあれメリークリスマス。原稿徹夜明けの朝日はきっと眩しかろうなぁ。


     参加者達の様子を描いていた雁之助の元へ、カンナが戻ってきた。今まで馬頭琴の演奏で、パーティーを盛り上げていたのだ。
    「おお。ケーキじゃの」
     カンナは雁之助が確保していたケーキを食べさせて欲しいとねだる。
    「まあ、折角の聖夜だし、義娘孝行はちゃんとしないとね?」
     雁之助は頷いてケーキを口へ運んでやった。
     甘えるように寄り添ってくるカンナに、雁之助は絵を差し出した。演奏している様子が描かれている。カンナは嬉しそうにそれを受け取り、今度はケーキを雁之助の口へ運ぶ。
     プチシューやマカロン、クグロフにクリスマスパイ、トライフルやクッキーまで。星空芸能館の皆が集まるテーブルも、沢山の手作りの品が並んでいた。
     それから、それぞれ用意したプレゼントも配り合う。
    「こんな素敵なクリスマス、みなさんと過ごせて幸せです……♪」
    「アリスお嬢様、素敵なクリスマスになりましたわね……♪」
     アリスとミルフィが笑顔で顔を見合わせた。
    「やっほー! 開幕の歌、ありがとうねー!」
     そこへ、紺子がやって来た。
    「紺子さんお一ついかが?」
     皆に飲み物を配っていた紗里亜が気付き、ホットワイン風ドリンクを差し出す。
    「え、何か凄く良い香り!」
     葡萄ジュースにスパイスと蜂蜜を入れホットにしたもののようだ。紺子が眼を輝かせて受け取る。
    「はい。紺子ちゃんにも、配っちゃう♪」
     さやかからは親指サイズのフェルトのサンタ人形が手渡された。
    「ありがとうー! 嬉しいよー♪ 嬉しいよー♪」
     他にも色々おすそ分けを貰ったのか、紺子は両手いっぱいに色々抱えている。
    「クリスマスが来れば、今年ももう終わりか」
     皆の料理を味わいながらファルケが呟いた。
    「今年も色々あったけど、来年もいいことあると信じて……乾杯!」
     マサムネが手にしたグラスを上げると、皆も飲み物を手に取る。
     素敵な友達と一緒の幸せなクリスマス。こんな日がずっと続きますようにと心桜は思った。
    「Hyvaa joulua ja onnellista uutta vuotta!」
     メリークリスマス、そして良いお年を。柚澄が言う。
     パーティーの参加者達は、まだまだ持ち寄った料理を食べあい楽しい話に花を咲かせている。
     2014年のクリスマスに、皆心行くまで手作りパーティーを楽しんだ。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月24日
    難度:簡単
    参加:39人
    結果:成功!
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