クリスマス2014~雪色想い、湯に融け合い

    作者:飛翔優

    ●Xmas SPA
     そこかしこで楽しげな音楽が響き、鮮やかなクリスマスカラーに染まる、夜になれば電飾がきらびやかなリズムを奏で始める街並み。
     武蔵坂学園もクリスマスムードに染まりながら、生徒たちは日々の学業に灼滅者家業に勤しんでいた。
     一日の学業も終わりいざ帰宅に部活動に、といった放課後。倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)が、空き教室にあなたたちを集めていた。
    「数日後にクリスマスを控え、心躍らせている方も多いと思います。私もそうです。そこで、こんなものがありまして……」
     いたずらっぽく微笑みながら、葉月は説明を開始する。
     ――温泉でクリスマス!
     十二月二十四日、クリスマスイブの日に、とある温泉を貸しきった!
     湯は白濁、囲いは岩。見上げれば遥かな空が伺える。
     そう。その温泉は露天にある大浴場! たくさんの灼滅者たちが押しかけても、きっと十分に答えてくれる場所。
     更には混浴、男女の隔てなく体を心を温め合う事ができる場所。ゆったりとした空間で、心ゆくまで交流を楽しむ事ができるだろう。
     混浴であるがゆえ、注意点が二つほど。
     一つは水着の着用必須。
     もう一つは、公序良俗に反しない。
     それさえ守れば、後は自由。のんびりぽかぽか穏やかに、クリスマスを過ごしていこう!
    「友達同士でワイワイ過ごしたい方も、恋人同士で心を通じ合わせたい方も、一人で静かに過ごしたい方も……どんな方でも、きっと大丈夫。暖かな湯に抱かれ、優しい時を過ごしていけるはず」
     そのためにも注意点はしっかり守っていこう!
     クリスマスの日に、お説教なんて似合わない。
     みんな笑顔で楽しく明るく、心踊らせ温め合う……それこそが、かけがえのない思い出にする秘訣なのだから……!


    ■リプレイ

     一番星の周りで踊るナノナノたち。
     鮮やかな緑を基調とし雪色を走らせ、きらびやかな電飾が眩い程に輝いているクリスマスツリー。合間には、ベルや人形に混じり人々に暖かな視線を送っているサーヴァントたち。
     紅白の薔薇に紫苑、シザンザスで彩られているヤドリギ。柊に宿るのは折り紙で作られた花や雪の結晶、カラー風鈴やシルバーの風鈴……。
     ……個性を持って飾られた、武蔵坂学園のクリスマスツリー。この場から眺める事はできないけれど、代わりに、温もりがあなたたちを包み込んでくれている。
     暖かく立ち上る湯気と静かに降り注ぐ雪が交じいる露天風呂で、かけがえのない思い出を描いていく……。

    ●暖かな湯に身を浸し
     雪合戦で強張った体を暖めながら、悠花は一人空を仰ぐ。
     サンタさんでも流れ星さんでもいいから、願いを叶えて……と。
     優しい温もりに抱かれながら、楽しげな喧騒に耳を傾けながら……。

     一人で来ても良かったのか、邪魔したら悪いかな? と、不安を抱いていたサン。隅で一人寛ぐと覚悟を決め、ゆっくりと手足を伸ばした。
    「……ふう」
     温もりに抱かれ、頬を緩めていく。穏やかな時を過ごし始めていく……。

    「びばのんの?」
     鶉に背を流された後、タオルで海月を作りながらゆっくりと湯に浸かっていたルチル。
     その背中に、鶉が抱きついた。
    「さーて、成長しているでしょーか!」
    「……トレーニング?」
     突然の悪戯に、ルチルは首を傾げていく。
     それでも楽しげに、鶉は笑った。
     初めての温泉だというルチル、色々と教えてきた。上がった後は、一緒に牛乳でも飲もうか。
     勿論、伝統の飲み方で……。

     湯船でジュース、の前に体を洗う。
     互いに背中を流し合う。
     夕眞に背を向け、藍の鼓動は加速した。
    「受けて立つけど擽りはダメだぜ!? のたうち回っちゃいそうだ……」
    「はは、なんでどきどきしてんだ、やらしー」
     笑いながら、夕眞は両手をわきわきと。擽りも交えながら洗った後、交代。
     優しくと願う夕眞に対し、藍はどう応えるのだろう?
     賑やかな事に違いはない。湯船でジュースを目指し、二人は身を清めていく。

     約束通りと、由布が麗の背中を流していく。
     興が乗り、由布は尋ねた。
    「えーっと。お客様、かゆいところはございませんか?」
     麗は楽しげに返答する。
    「あら、かゆいところがあったらどこでも掻いてくれるのかニャー?」
     手が止まったのを確認し、悪戯っぽく笑いながら肩越しに振り向いた。が、由布は表情を変えずに作業を再開する。
     いつもと変わらぬやり取り。締め括りにはまた、遊びに……との約束を。

     湯の中、アリスにねだられ、ミルフィは身を寄せた。
     温もりを感じながら空を仰げば、湯気と混ざり合う様な細かな雪がチラホラと。
    「あ……雪です」
    「あら、本当、雪が……アリスお嬢様、お寒くはございませんか……?」
     アリスが凍えてしまわぬよう、ミルフィは優しく抱きしめる。
     委ね、アリスは頷いた。
    「ん……寒くはないですよ……ミルフィが、抱きしめてくれますから、とっても、あったかいです……」

    ●温もりに抱かれて
     白ビキニに身を包んだ明日等は、どことなく頬を染め体を抱きながら、同道する者たちに言い含めていく。
    「くれぐれも変な気は起こさないようにね!」
     こんな時くらいは落ち着いて……と付け加える彼女を含め、ギィが楽しげに口を開いた。
    「恋人の皆さん、今日は来てくれてありがとうっすよ。いっぱい楽しい時間を過ごしやしょう」
     ブーメランパンツをきらめかせ、皆で湯の中へと突入する。
     早速とばかりにキスを交わしていくギィを眺め、スク水を纏う妃那は静かな言葉を発していく。
    「まぁキスくらいならいいですけど、流石にディープなのは駄目ですよ。なんというかギィさひゃうっ!?」
    「ふふっ」
     不意をつく形で、セレーネが笑顔で抱きついた。
    「ごめんね、みんなでこうやって温泉に入るの初めてだから、つい楽しくなっちゃって、ね?」
     それ以上の事はしない。
     ただただギィとキスを交わし、時に抱き合い、静かな時を過ごしていく恋人たち。
     少し離れた場所で眺めていたリヒターは、静かな息を吐くと共に近寄っていく。
    「俺もまざっちゃいますよ」
     ギィと肩を寄せ、温もりを与え合いながら静かな時間を過ごしていく。
     概ね落ち着いている……と判断し、何かあったら止めようと考えていた椿子は風呂桶を取り下げた。
    「……ま、ゆっくりできるのが一番だよね、うんうん……ひゃっ!?」
     落ち着いて浸かろうとした時、顔に湯が放たれた。
     アモウだ。
     アモウの水鉄砲が戯れていた妃那の横を抜け、椿子の顔にかかったのだ。
     視線を向けてきた椿子に、アモウは微笑み手招きする。
     時に賑やかに、時に静かに、彼らは暖かな雪色の中で過ごしていく……。

     皆でサンタガールな水着に身を包み、湯に浸かる。
     人心地ついた段階で、巫女が翡翠に抱きついた。
    「で、翡翠ちゃん、私はあなたのことをいつも大好きだと言ってるけど、その返事はどうなのかしら?」
    「へっ……み、巫女さんは大好きですけど恋愛感情とかそういうのじゃなくてですねー!」
     翡翠は真っ赤になりながら、彩歌に視線を送って見た。
     落ち着いた調子で、彩歌は視線を返す。
    「翡翠さんは無い無いと仰られていますが、多分二年で今の私を超えますね。断言してもいいです」
    「ってどこの感想言われてますかー!」
     抗議するも動けぬ翡翠。
     彩歌は静かに胸を張れと告げていく。
     同意しながら、巫女は彩歌にも尋ねていく。
     温もりを共に、楽しく過ごしていきましょう。

    「温泉、温泉なのですー」
     はしゃぎながらもしっかりと体を洗い、師将は湯に浸かっていく。
    「温まるのです……」
    「クリスマスプレゼントですよー」
     人心地ついた時、ゆまが皆に牛乳を配って回った。
    「ふふ……」
     そんな二人の微笑ましい姿を眺めながら、旧と呼ばれるスクール水着を着こむペーニャは牛乳を受け取っていく。
     一方、春華は受け取り礼を述べた。
    「プレゼントが牛乳なんて可愛いプレゼントですね。……牛乳飲めばまだ背伸びないかな……」
     静かな願いを語りながら、口にする。
     人心地ついた段階で、叶流が主な語り役となる会話がはじまった 。
     寒い時は温泉に入るのが一番。ついうとうとと眠くなっちゃいそうなほどに。
    「こうやってみんなと同じ時を過ごせるのが嬉しい、来年も一緒に過ごせたらいいな」
    「……そうですね。この一年もとてもよいものでしたし……」
     頷きながら、薫はふりゆく雪に想いを馳せていく。
     この一年に起きた色々な事を、こういうクリスマスもステキだと。
     さなかにも、叶流は語っていく。
    「後、お風呂あがりはやっぱりコーヒー牛乳飲もうか……って、水瀬さん大丈夫!?」
    「え……って水瀬さんっ、それに七那原さんまで!?」
    「はう……」
     ゆまの隣、エクルも顔を真赤にして沈んでいた。
    「……」
     熱っぽい視線の先には、ペーニャ。
     飲み損ねた白き液体が頬に線を引き、ぺーにゃんと刺繍された胸元を怪我していた、ペーニャ。
     まだまだ青い中学生男子には刺激的だったのだろう。エクルは湯をぶくぶくともさせていた。
     バタバタと二人の介抱へと動き出す中、日々音も協力していく。
     ゆまにのぼせた理由を問えば、会話が楽しかったからと言う回答。故に、微笑んだ。
    「にへへ、たしかに、楽しかったせいでちょーっと長風呂してもたしなぁ……ほらほら、どっか座って牛乳飲も」
     楽しい思い出となるように、全力での行動を……。

     仲間内で、温泉へとやって来た。
     女性陣の水着姿を前にして、皆無はのほほんと感想を口にする。
    「いやはや、華やかでいいですねぇ、葦原さん」
    「ええ、皆さん、いずれもステキな水着姿ですよ」
     頷きながら、統弥は藍の傍に近寄り耳打ちした。
    「僕にとって藍が常に一番です」
     微笑ましい光景を前に、樹は視線を逸らす。
     仲間と自分の体つきを見比べて、静かなため息を吐きだした。
    「みんな細いし、大きいわよね……」
    「本当……改めて見ると隣の芝は青く見えるといいますか」
     結衣奈も同様に肩を落とし、女性陣を……特に愛を眺めていく。
     愛が居心地悪そうにするも、場は和みいざ風呂の中へと相成った。
     皆が会話も弾み十分に温まった頃、七波が更衣室へと引っ込んだ。程なくしてトレイ片手に戻ってきて……開幕する。
     ロシアンジュース対決が!
     公平を期すために結衣奈と葉月で紙コップへとジュースを注ぐ。
     提示されたコップを眺め、愛は優に質問した。
    「優、貴方はどれがいいと思う?」
     ゆっくりと示されたのは、右側のコップ。
     愛は頷き、手を伸ばす。
     他の者達も思い思いのコップを手にとった。
     楽しげな合図とともに乾杯し、真琴はグラスに向き直る。
     当たりか、ハズレか……高鳴る鼓動を抑えながら、一口。
    「あ、リンゴジュースでした。美味しいです」
     一方、梓は唇を尖らせた。
    「これは外れでしょうか、なんとか飲めますが……あんまり酸っぱいの好きじゃないんですけどね……でも、これで」
     後は当たり、とつぶやこうとした時、結衣奈は語る。
    「誰が一つと言った」
     ホッとした様子でリンゴジュースを飲んでいた藍は、慌てた様子で統弥へと視線を向けた。
    「あの、ひょっとしてハズレでした?」
     返事は、肯定。
     どことなく心配気な様子で、藍は統弥の介抱を開始した。
     そんな中、三成が淡々と語りだす。
    「……収穫時期が早かったのでしょうか? 酸味が強く柑橘系の口当たりもしますし、何よりこの喉越しはっってこれグレープフルーツじゃねぇか! 当たりよりはずれの比率のほうが多いロシアンとか前代未聞だぞオラァ!!」
    「もう、結衣奈!! お水頂戴!!」
     憤り紙コップを縁に叩きつける三成、水を求める愛。
     一方、七波は涼しい顔。
    「ふ、普通の林檎ジュースでしたじょ」
     明らかに言語をおかしくしながらも、平静を装いコップを一箇所に集めていく。
     騒ぎが一段落した段階で、誰にともなく提案が行われた。
     この思い出を形に……と。
     写り込む表情は笑顔だったらいタレていたり涙目だったりと様々だけれど、心はきっと一つになる。
     また、来年も……。

     温泉で、友人と語らう静かな時間。
     今日の予定を尋ねられ、麻美は明るく返していく。
    「あたしはこの後は友達とのんびりケーキ食べたりするよー♪」
     恋人とではないけれど、ケーキは楽しみ、色気よりも食い気だから!
     受け止め、緋頼は微笑んだ。
    「麻美さんは友人とケーキですか、美味しいですよね。甘いのを友人と食べるのは楽しいです。わたしは……」
     好きな人と一緒に過ごす。
     麻美は思わず頬をゆるめ、声を上げていた。
    「緋頼さんはデートかあ、いいなあ♪」
     恋人はまだ興味はないけど、憧れはある。
     そんな浅みが先導する中、会話は深まり、独り身が多いと判明。
     悠花が笑いながら手を振っていく。
    「大丈夫大丈夫ー、楽しんだもの勝ちですよー」
     そうでも思ってないと……と肩を落とすも、いちごがライブに行くと言う話を聞き、自分も……と復活した。
     一方、真昼は椿に泣きついた。
    「アタシは……未定だ! うえーんっ! 寂しいよーっ!」
    「よしよし。なくななくな」
     椿は真昼をなだめながら、私もないんだ……と笑っていく。
     概ね笑顔に包まれた後、椿は惚気た者たちの下着をセクシーなものに変えるという悪戯へと、真昼は仲間のマッサージ受けにと移行した。
     マッサージの現場では、緋頼に不意打ちでいたずらした悠花が復讐を受けていた。……が、程なくして椿が戻ってきて、改めて本格的なマッサージへと変わっていく。
     さなかには、いちごが由希奈に迫っていた。
     元々は、自分を見る由希奈の様子がおかしいと気付いたから。
     中々口を割らぬ由希奈に対し、いちごは柔らかな膨らみにいたずらすることで対抗した。
    「言わないならこうだっ」
    「やぁっ、お願いっ、やめてっ……言うよっ、言うからっ」
     観念して白状した内容は、いちごと瓜二つな彼氏にキスをしてしまったこと。
    「ええと」
    「そのくらいにして皆さんと合流しましょ?」
     いちごからの返答がなされる前に、りんごが乱入して有耶無耶に。
     さなかには、水鳥が小さく呟いた。
    「いいね……やはり、美人は何来ても美しいの……」
    「水鳥さんだって、髪やお肌も綺麗ですよ?」
     呟きを葵が拾い、近寄っていく。
     首をふりかけた水鳥の手をとって、賑やかな方角を示していく。
    「そのままこんな所にいないで折角ですし、皆の元へ行きましょうよ」
    「え、あ……」
     返答を探している内に、輪へと引っ張られていく水鳥。
     同様にシェリカは輪を眺め、ぶくぶくと湯に沈んでいた。
     曰く、のんびり使って疲れを癒やすと少し離れていたけれど、元気を通り越して皆やりたい放題してると。あちこちであんな事されてると、ちょっと見てるだけで恥ずかしいと……!
    「ひゃっ」
    「ふふっ、背中を流してあげましょうか?」
     無防備な背中に、タシュラフェルが抱きついた。
     前に手を伸ばし弄り始めたなら、シェリカも見を捩りお返しを始めていく。
     そんな彼女たちと同様に、ひかりも杏子といちゃついていた。
     杏子はひかりに抱かれながら、静かな息を吐いていく。
    「はふーイイお湯♪ なんだけどさ……」
    「? あんこちゃんどうしたんだにぃ?」
     首を傾げるひかりに、杏子は語る。
     嬉しいけど、りんご率いる花園メンバーの前でイチャラブを魅せつけると……と。
     ひかりは首を傾げたまま、顔を上げた。
     花園メンバーの幾人かが回りを囲んでいた。
    「にょわっ?! ちょ、ひかりんはあんこちゃんのだにぃ~?」
    「ぬわーっ!? りんごさん不意打ちとは卑怯なっ」
     不意を突く形で潜伏していたりんごが杏子に襲いかかり、スキンシップを始めていく。
    「せっかくですもの、今は皆さんと遊びましょー?」
    「……」
     わいわいがやがやと賑やかな光景。
     レティシアは佳奈美と共に、離れた場所から眺めていた。
     二人共、心穏やかにのんびりと。
     静かに予定を語らい、両方とも予定はない。ただ、佳奈美は気になる人が……と続く中、レティシアは佳奈美の膨らみを、そして自分のを見比べ、呟いた。
    「大きさだけが魅力の決定的差ではなにのだ……!」
    「へっ」
     突然の言葉を前に、佳奈美は小首を傾げていく。
     けれど続くことはなかったから、再び和やかな会話へと移行した。
     ……会話に集中しているからか、気づいていない。
     背後から迫る影に、輪への導き手に。
     熱を薄桃色に染めながら、彼女たちは温泉でのひとときを過ごしていく……。

    ●熱き心が交わる場所
    「やっぱり、大きいお風呂は良いよね」
     恋人たちと挨拶を交わした後、洗い場に座った雪花。その程よく肉のついた逞しい両足を、雪の模様が浮かぶ白水着を着たリリーとアメショー柄のセパレートを身につけた虎狐ががっちりホールド。
    「虎狐ちゃんと一緒に洗って上げるのです」
    「背中から足元まであわあわに……」
    「……あれ? これ動けない?」
     どことなくそわそわし始めた雪花をよそに、二人はスポンジ片手にこしこしと雪花の両足を擦り始めていく。
     くすぐったそうに身を捩る、雪花の両腕には、ふりふり多めな赤いセパレートでスレンダーボディを包んだひいかとピンク基調な大胆ビキニで豊満な肉体をより良く魅せる茜が……ある意味対照的な二人が抱きついた。
    「っ!?」
     驚きの声を上げた雪花に、二人は告げる。
    「み、みんながやってるから!」
    「みんなでむぎゅー、って」
     鼓動が早いのは、きっと皆同じ。
     だから温もりを、感触を与え合い、暖かな時間を過ごしていく。
     契りを交わした五人でそれぞれの方法で。かけがえのない思い出を……。

     頭を洗ってくれている弥咲に髪を褒められ、伊万里は笑う。
    「えへへへ……♪ 髪のお手入れはちょっと気をつけているので嬉しいですっ! でもでも、弥咲の御髪だってとっても綺麗ですよっ!」
     微笑みながら語り合う、優しい時間。
     締めくくる頃には、伊万里は完全にリラックス状態。
     弥咲は瞳を光らせ、抱きついた。
    「ぴゃぁっ!!?」
    「ハイ、洗い終わり。じゃばーっと流してー。で、次は私が髪を洗ってもらえたりするのかなー?」

    「へっ!? あ、洗うんです!? ……あ、頭だけですよ!? せ、背中は駄目です! み、水着でも、駄目です……!」
     顔真っ赤な文具を前に、彩はわざとらしく唇を尖らせた。
    「もう……文くんは恥ずかしがり屋なんだから……」
     けれど、頭を洗われ始めたなら胸は否応にも高鳴る。鼓動が重なり始めていく。
     だから、終わったら恥ずかしがり屋の文具に対して申し出よう。
    「わたしも文くんの頭を洗ってあげるね!」
    「へっ!?」

     石鹸とたわしを間違えるハプニングを超えて、互いの背中を流しあった月人と春陽。
     身を寄せ合い、手足を伸ばし……周囲を確認。
     誰もいない。
    「メリークリスマス」
     言葉を添えて、春陽がキス。
     唇を離し、月人も返す。
    「あぁ、メリークリスマス」
     温もりを与え、頬に朱を差し込みながら微笑み、語らう。
    「普段恥ずかしがるくせに変な所で大胆だよな、お前って」
    「えへへ……」
     二人だけの時間を過ごしていく……。

    「そうそう、そんな感じで……」
    「えへへっ、気持ちいいー?」
     楽しげに、涼の背中を流す凪。
     言葉は冗談めかしていても丁寧に、大切な人を清めていく。
     洗い終わった後には、綺麗な背中に抱きついた!
    「うにゃー♪」
    「おっと」
     驚きながらも、涼は笑い振り向いていく。
    「なら、倍返しだっ」
     暖かな湯気に包まれながら、二人は戯れる。
     楽しく、和やかに。抱き合い、温もりを与え合う……。

     白葡萄のソーダとメロンラムネをグラスに入れて、端を指で弾く。
     小気味の良い音と共に、炭酸の泡と共に雪の結晶のようなキラメキが浮かんできた。
    「うわ、凄いです……! 綺麗……」
     静穂は瞳を輝かせた。
     楽しげに静穂を見つめている内に、ジヴェアは本物の雪も降り注いでいる事に気がついた。
    「これも綺麗かも!」
     グラスで出会う、二つの雪。
     幻想的な雰囲気を楽しむ二人の絆は、闇でも阻めぬ現のもの……。

     熱に浮かされ、けれども確かな想いで月華は誓う。
     例え、生命の理に抗う恋であっても……。
    「私は、貴女を護る騎士となりたい……どんな罪を負っても、私は、貴女を護り抜いてみせるわ!」
     受け止め、エニシアは必死に言葉を振り絞った。
    「わたしも、一緒にいたいから、わたしも、おなじくらい、月華さんのこと、たすけてあげれるように、なりたい……!!」
     言い切ると共に、力が抜けて倒れこむ。
     あるいは、そう……互いの熱を感じ合うために。

     互いの体を洗った後、湯に浸かる。
     穏やかな息を吐きながら、倭は語り始めていく。
    「しんどい事も辛い事も在ったけど、こうやって一年一緒に過ごせたから……良い一年だったのは間違い無い、な。この先もずっと、色んな事を一緒にみよう」
     ましろは頷き、返答し、締め括る代わりに抱きついた。
    「メリークリスマス! 倭くん、だーいすき♪」
     ぽかぽかホワイトクリスマス……ちょっと不思議で、とってもすてきな時間。

    「ねえマル君! 雪だよ雪!!」
     はしゃぐ智優利は、マルクの頭に胸を乗せるように抱きつき空を示して。
     マルクは鼓動をはねさせ、様々な思いを巡らせ抗議するも、なすがまま。
     果てにはぐったりともしてしまったけれど……、満足気な笑顔を見るだけで癒される。
     だから……。
    「また、温泉一緒にこようね☆」
    「……お望みならば。何度でも付き合いましょう、senorita?」
     だから、未来への約束を。来年も、いつまでも、一緒に……。

     湯船で語らうは、去年とは違う、今年のこと。過ごしてきた時間のこと。
     これからのこと。大学生になり、住むところはどうするのか。
     一人暮らしを頑張りたいと、言葉は首を横に振る。
     久遠はねぎらい、抱き寄せた。
     温もりを与え合い、空を見た。
     身を任せ、言葉も雪を眺め口を開く。
    「で、でも……その、新生活始めたら……何時でも、来てくれたら……嬉しいかな」
    「まあ、その……その時は是非寄らせて貰おうと思う」
     優しい契を交わすため。

     ぬくぬくの湯船で語らう中、レビが楽しげに語りかけた。
    「せっちゃんも、もう少し温もりを求めると良いと思うよ? 色んな意味でね」
     よくわからないと、雪那は首を傾げていく。
    「もう十分すぎるくらい、もらってる、から。みんなから、たくさん、レビのは少し暑すぎるけど……」
    「もっと貰ってもいいんだよ? 融けちゃうくら……あれ?」
     言葉半ばで、レビは雪那が赤い事に気がついた。
    「のぼせちゃった?」
    「……どうなんだろう?」
     赤いのは、誰のせい?

     大好きな人と、温泉にゆっくりと浸かる優しい時間。
     語らいながら身を寄せて、温もりを与え合っていく。
     熱が高まるにつれて、言葉数は少なくなる。鼓動は変わらず早いのに。
    「……暖かいな、メイニー」
    「いい湯だね、武流……」
     この時間が長く続くよう、ずっと心に残るよう、武流とメイニーヒルトはそれきり話すのを止めていた。
     言葉紡がずとも、分かり合える。思いが湯に溶け合う、この時を……。

     一緒にいると暖かいけど、まだまだ照れたり恥ずかしい。
     ドキドキしながら浸かる中、清香はゼクスの言葉を受け止めた。
    「いい湯だね清香。こうして清香と一緒にクリスマスを迎えられて僕はとても幸せ者だねうん」
     ストレートな物言いに、清香は顔真っ赤。無意識の内に、ゼクスと腕を組んでいく。
     ゼクスは清香を抱き寄せる。柔らかな温もりを感じながら、共に過ごす時間を楽しんでいく。
     暖かな幸せに抱かれて……。

     景色を楽しんでいた千尋。ゲイルも最初は合わせていたが、程なくして痺れを切らした。
    「あーはいはい、景色もいいけど僕も見ましょう。はい眼鏡没収」
     千尋の眼鏡を没収し、女の子らしい柔らかな場所を弄ぶ。
    「ちょ……、こんな所でダメだって……ん♪」
     言葉とは裏腹に楽しげだから、止めはしない。
     自分だけ見ていればいい、とはヤキが回ったもの……と楽しげに笑いながら、指先を更に蠢かせる。
    「もぉ、ゲイルのバカ♪」
     喜びの声を聞きながら……。

     湯に浸かりながら、二人で乾杯。
     葡萄ジュースに口をつけた後、ミヤコは元気な声を響かせた。
    「メリー・クリスマスです、刹那さん。今年はありがとうございました、来年もよろしくおねがいします」
     微笑み、頷き返す刹那。
     のんびりと肩を寄せ、空を仰ぐ。
    「良い湯ですね。それに雪を見ながら入る温泉も良いものですね。……クリスマスにミヤコさんと一緒に温泉は入れて嬉しいです」
     言葉の果てに、優しいキス。
     温もりが熱へと変わっていく。

     不慣れながらもはしゃぐ眞白。ハルから悠へと呼び名を変える機会を伺いながら、湯の中で二人きり。
     会話をリードする悠が語るは、温泉のこと。
     一緒に慣れて幸せだという思い。
     笑いあう内、悠はさり気なく身を寄せた。
     キスを、眞白の唇に刻み込んだ。
    「……眞白、大好きだ。愛してる」
    「っ……」
     突然のできごとに、眞白は全身を朱に染めていく。
    「……いきなりすぎ! 悠のバカっ……!」
     自然に名を呼びながら顔を反らし……同じ時を、過ごしていく。

     筑音が翼の水着を褒めた後、湯の中で始まる語らい。
     共にいる、支えあう、一緒に色々な所へ行こうとの誓いを立て、寄り添う。
     ふと筑音が顔を上げた時、のんびり湯に浸かる葉月の姿が目に写った。
    「……デカい」
    「……」
     翼は瞳を細め、筑音の頬に手を当てる。
     軽くキスをした上で、からかうように笑っていく。
    「今日くらいは私を見ててよ?」
     共に過ごす、かけがえのない時間なのだから……。

     ……暖かな白に抱かれながら、彼らは時を過ごしていく。
     想いを育てながら、思い出を刻みこみながら……クリスマスという日を、過ごしていく。
     願わくば、彼らの過ごす聖なる夜が幸いであらんことを。
     今日はクリスマス・イブ。世界が笑顔で包まれるべき幸せな日なのだから……。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月24日
    難度:簡単
    参加:91人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 15/キャラが大事にされていた 3
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