お土産に糸切り餅を頂いたので

    作者:聖山葵

    「もっちぃぃぃぃぃ!」
     とある町を一人の少女が走っていた。
    「もちぃぃぃぃぃ」
     爆走していた。身に纏うのは青が二本赤一本の線が入った白いチューブトップのような形状のお餅のみ。
    「もぉっちぃぃぃぃぃ! うわぁぁぁぁぁん」
     こう、上とか下から女の子としては見せちゃ行けないものが見えてしまいそうななんともデンジャーな姿でご当地怪人に変貌した少女は泣きながら走っていたのだった。
     

    「一般人が闇もちぃしてご当地怪人になる事件が起ころうとしている。今回は糸切り餅だな」
     糸切り餅は米粉から作られた青と赤のラインの引かれた筒状のお餅にあんこを入れたお菓子だが、それはさておき。
    「通常ならば闇堕ちした時点で人間の意識は消えてしまう筈なのだがね、今回は人間の意識を残していてダークネスの力をもっちぃながらもダークネスになりきっていない状況なのだよ」
     もっともこれは一時的なものなので、放っておけば完全なダークネスになってしまうと思われる。
    「もし彼女に灼滅者の素質があるのであれば、闇もちぃから救い出して欲しい」
     それが叶わぬ時は、完全なダークネスになってしまう前に灼滅を。
    「問題の少女の名は、一森・朱鷺(いちもり・とき)。なかなかスタイルの良い、高校一年生の女子生徒だな」
     友人に貰った大好物の糸切り餅を開けたら、中身が空だったと言う極悪非道なトラップに引っかかったことで闇もちぃし、ご当地怪人に変貌した後は、悲しみを紛らわす為に街中を走り回るのだとか。
    「一応その友人を弁護させて貰うが、友人は中身が空だと気づいていなかったらしい」
     本来入っていたはずの中身は、数時間前まで家に来ていた親戚の子供が食べてしまっていて、友人はそれに気づかなかっただけなのだと座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)は言う。
    「もちろん、誤解を解いても少女が元に戻ることはないがね」
     闇堕ち一般人を救うには戦ってKOする必要がある。
    「少女の持つバベルの鎖の影響を受けずに接触出来るタイミングのうち、戦いに一番都合が良いのは、町を走り回る少女が町外れに至ったところになる」
     人気もなく、一般人よけをする必要がない上、周囲は空き地や畑で戦いの邪魔になるようなモノもない。
    「戦闘になれば、朱鷺はご当地ヒーローとバトルオーラのサイキックに似た攻撃手段で応戦してくるだろう」
     男性として目に困る格好で、拳やらキックやらを繰り出して来るというのは、ある意味脅威かも知れない。
    「まぁ、私のように女性なら何の問題もないのだがね」
     尚、闇堕ち一般人に接触し、人間の意識に呼びかけ上手く説得出来れば弱体化させることが出来る。
    「早く戦いを終わらせたい、絶対に救いたい、戦いを有利に運びたいなどと思うのであれば、説得することを推奨しよう」
     誤解が解ければ、完全な救いにはならずとも少女の心境も変わるであろうし、闇に抗うきっかけになるかも知れない。
    「そして、餞別兼説得手段として君達にこの糸切り餅を渡しておこう」
     誤解が解けたところで少女に食べさせればだめ押しとなるであろうし、最初に差し出せば説得に耳を傾けさせる手段としても使えると思われる。
    「期待が絶望に変わった瞬間なら、私にも覚えはある。シチュエーションは違うがね」
     どうか少女のことを宜しくお願いすると、はるひは頭を下げ、君達を送り出した。
     


    参加者
    ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)
    黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)
    鈴木・レミ(データマイナー・d12371)
    鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)
    杉凪・宥氣(天劍白華絶刀・d13015)
    天瀬・ゆいな(元気処方箋・d17232)
    白石・作楽(櫻帰葬・d21566)
    三和・透歌(自己世界・d30585)

    ■リプレイ

    ●美味しいんだもん、仕方ない?
    「なんだかよくわからないけれど、親戚の子供がデストラップを仕掛けた恐ろしい策士だって事と糸切り餅が美味しいって事だけは理解できたもっちぃ」
     ご当地怪人の口調を真似ジュラル・ニート(デビルハンター・d02576)が呟いた時、餞別のお餅は一個減っていた。
    「腹が減ってはなんとやらと言いますしーせっかく餞別に戴いた糸切り餅ですし、1個ぐらい食ってても大丈夫ですわよね? きっと大丈夫ですわよね」
     と周りに確認をとっていた気がそこはかとなくするので、つまみ食いしたのだと思われる。
    「糸切り餅が原因で闇堕ちするって、砂漠で遭難して奇跡的にオアシスを見つけたと思ったら蜃気楼だった、くらいの絶望感だったんでしょうか……」
     ポツリと漏らした鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)がちらりと糸切り餅の入った箱を見たのは、旺盛な好奇心に一人の少女を闇もちぃまでさせた品がひっかかったのか。
    「ぼくにはそこまで食べ物への執着がないので、なんというか本当に想像するに余りあるんですがっ」
     約一名つまみ食いをする灼滅者が出るくらいなのだ、美味しいのだろう。
    (「思わず闇堕ちするほど気落ちしたのだな……」)
     同じ箱を少し痛ましく見つめていた白石・作楽(櫻帰葬・d21566)は、静かに拳を握ると道に沿って視線をやる。
    (「何とかして救出したい、な」)
     視界を遮るモノがないからこそ、待ち人がやって来るならば、すぐに察すことが出来た。
    「いよいよっすね」
     話だけは聞いていた鈴木・レミ(データマイナー・d12371)が期待に瞳を輝かせる。
    (「やっと遭遇できる、あれが噂のモッチア! 説得抜きにしても――」)
     情報屋としての自分がレミの中で「色々取材してみたいっすよ」と猛っていたのだ。
    「うわ、あんこがはみ出しそう……あーいう服も、ありですかね」
     エメラルドグリーンと黄色を基調にしたナース服に包んだ自分のモノを何気なく寄せてあげつつ天瀬・ゆいな(元気処方箋・d17232)が視線を向ける先。
    「もちぃぃぃぃっ」
    「うぶっ」
     遠目にも解る大きな何かをお餅から零さんがばかりにしながら駆けてくる少女、ことご当地怪人『糸切りモッチア』に顔の下半分を手で覆った杉凪・宥氣(天劍白華絶刀・d13015)が指の間から血を漏らしながら膝をつく。
    「えっ」
     ただ走っているだけなのにいきなり仲間が膝をつくという事態に黒蜜・あんず(帯広のシャルロッテ・d09362)は驚きの声を上げ。
    (「糸切り餅ですか。見た目的にも美しくて、和菓子らしい和菓子ですよね。まぁそれはいいとして――」)
     仲間の声に膝をついたままの宥氣を一瞥してから、三和・透歌(自己世界・d30585)は平然と視線をご当地怪人の少女に戻す。
    (「闇もちぃでしたか。割と好きですよ、そういうの」)
    「待った! まずは話し合おうっす!」
    「ご町内での暴走行為はそこまでですっ!」
     視線を戻し、やや気怠げに元少女を見つめた時だった、レミと伊万里が声を上げたのは。
    「いっ?! とっ、とっ、と」
     伊万里に関しては進路を塞いだ為、ご当地怪人は慌てて急制動をかけ。
    「危ないもちぃ! 急に飛びだ」
    「あなたが探しているのは、コレじゃないですかっ?」
     飛び出しを非難しようとした糸切りモッチアは飛び出した当人が颯爽と掲げて見せたモノに目を奪われていた。

    ●話し合えば
    「そんなに急いでどこ行くんです? ここで会ったのも何かの縁、良かったらこっちで一緒にお茶とお話、しませんか?」
     と、ゆいなが質問ついでにお誘いするまでもない。
    「とりあえずお茶と糸切餅で落ち着いて!」
    「まあこの糸切り餅を食べながら落ち着いて話を聞いてください」
    「と、皆が言うようにだな……おやつを食べつつ少し話をさせて貰えないか?」
     畳みかけるように、あるいは口々に。
    「え、いいもちぃ?」
     大好物を差し出され、食べていいと言われた時点で元少女に抗うことなど不可能だったのだ。
    「糸切り餅ですよー。美味しいですよー」
     とかこれ見よがしに箱を見せられた時点で、敗北は決まっていた。
    「だから、みんなで食べ」
    「いただきますもちぃ」
    「ちょっ、早っ! 糸切り餅、食べられなかったのは残念ですけど。そんなにがっついちゃ、だめですよ」
     もっとも、好物を前にした行動の早さ、一部の者には想定外だったのだけれど。
    「良かった……これで、話は……聞いて貰え……そう、だね」
     とりあえず上手く説得に持って行けそうな流れに安堵しつつ、宥氣は顔の下半分を手で覆ったまま微笑んだ。
    「あ、い、糸切り餅食べさせてくれたから、構わないもちぃ。けど、そんなことより大丈夫もちぃ? 凄い血もちぃよ?」
     ただ、心配する元凶は、血塗れの理由に気づかない。そのくせ心配して宥氣の方へ近寄って行くのである種のピンチだったのだが。
    「そもそも、何で走っていたんです?」
    「そう、それもちぃよ!」
     首を傾げてゆいなもう一度疑問を口にすれば、くるりと向きを変えて糸切りモッチアは即座に食いついた。
    「本当に酷いもちぃよ、私が――」
     元少女が語った内容は、エクスブレインの説明にあったとおり。
    「ときちゃん……お友達は本当に貴女を陥れたかったんですかね?」
     だから、元少女が語り終えるなり、ゆいなは一つの疑問を投げかける。
    「それは、どう言うこ」
    「落ち着いて思い出してみて下さい。ご友人は糸切り餅をくれた時、どんな表情を浮かべてましたか? こいつを騙してやろう。傷付けてやろう。そんな表情でしたか?」
    「怒る前にちゃんとお友達に聞いてみたの? ほんとに悪気があったのかどうかって。お友達はあなたをだまそうとしてるように見えた?」
     問い返そうとした糸切りモッチアの言葉を遮り、透歌とあんず二人分の視線が元少女に注がれた。
    「も、もちぃ……それは」
    「違いますよね。だって、貴女に喜んでもらおうと思っていたのですから」
     真実を明かすなら、この時を於いてない。
    「えっと、それなんだけどね」
     口元を覆ったまま元少女と視線を合わせない宥氣の顎から血の滴が地面に落ちた。
    「お土産の中身が空だったのはちょっとした事故というかなんというか、ご友人の方もある意味被害者といいますか」
    「最初から誤解だったんすよ。決して悪意ではなく、逆に友人の善意があったからこそ起こった悲劇だったっす……」
     宥氣が切り出したことで、後を継いだジュラルとレミは真実を語り。
    「親戚の子が食べてしまった事をお友達は知らなかったんだよ」
    「も、もちぃ。そんなこと今更知らされても……」
    「朱鷺さんも本当はわかっているのだろう? 相手にとっても中が空だったのは不測の事態だったんだと」
     三人の口から語られた真相に狼狽える元少女を真っ直ぐ見て、口を開いたのは作楽だった。
    「い、いや本気で図られたと……あ、ああ、本当は解ってたもっちぃよ?」
     その直後、元少女の暴露話に表情筋は動かさず膝を抱え込んで座り、ご当地怪人に気遣われるまでがワンセット。
    「誰にだって、手違いはありますよ」
     だが、透歌のかけた声は仲間ではなく、糸切りモッチアに向けたモノだったと思いたい。
    「そう、もちぃか?」
    「そんな姿になってまでに気落ちをしてるのに、友人さんにあたっていないのは、朱鷺さんが本当は理解しているからに他ならない」
    「美味しい糸切餅を分けてくれるような良いお友達だと思うなら……信じてあげて下さいっ!」
     疑問に揺れる瞳を見つめた灼滅者達は、人としてあるべき方へ言葉で元少女こと朱鷺の背を押す。
    「情報屋としては恥ずかしながら、糸切餅って知らなかったっすよ」
    「知らなかった?」
     立ち上るお茶の湯気越し、突然告白したレミは思わず立ち上がろうとしたご当地怪人を制す様に、餅の全てを賞賛し、続ける。
    「だからこそ朱鷺さんがやることは伝える事、糸切餅を愛する者として普及に尽力しないのはもったいないっす。今の時代は情報戦っすよ?」
     そこに嘘はない。だが、重要なことはもう一つあった。
    「いや、そっち側では痴女認定……げふんげふん、色々危険なんすよ!」
     咳き込みつつもびしっと指さしたのは、お餅の伸縮限界を試すかのような豊かな二つの膨らみ。
    「とにかく落ち着いて。周りをと自分を冷静に見つめ直すの。今の自分の格好を考えて見なさい? その、男の子だっているんだし……そんな格好のままでいいの?」
    「そうです、女の子がそんな恰好してちゃ、はしたないですよっ。おなかも冷えちゃいます!」
     我が意を得たりとあんず達も加勢し。
    「その格好で街中を走り回るのは色々と不味いから早く正気に戻った方がいいと思うんですよ。私的にはいいぞもっとやれって感じ……いや、なんでもないっす」
     誰かに睨まれてジュラルは応援を引っ込めたが、男性の目に毒なのは既に血塗れの誰かを見れば、火を見るより明らかである。
    「もちぃ?」
    「っ、……そんな気はしてたのに」
     あんずは知っていた。前に救った闇もちぃ少女も自分の格好を疑問に思わなかったことを。だからこそ、何を言ってるのと言わんがばかりに可愛らしく小首を傾げたご当地怪人の姿に頭を抱え。
    「と、とにかく早く助けましょ。あんな格好させておけないし」
     このままでは色々な意味で朱鷺も危険だが、約一名が失血で倒れかねない。
    「わかっていて猶悲しくて、悲しみの発露の仕方が解らないなら……私達が受け止めてみせるから、全力でかかってこい」
     じっと元少女を見据えていた作楽はあんずの提案に同意してか、スレイヤーカードを取り出し。
    「そして、悲しみが消化されたら、友人さんの所に戻ろう?」
     朱鷺に呼びかけ終えるなり、封印を解いた。
    「一期は夢よ、ただ狂え」

    ●羞恥心は投げ捨てるモノ
    「うぐっ、もちぃぃ!」
     透歌に殴られた時引っかけられた網状の霊力に引っ張られながらも、ライドキャリバーから放たれる機銃の弾を元少女はかわしてみせる。
    「この子、色々危ないんだけど!!」
     救う為の戦いへと突入し、氷柱を撃ち出す宥氣が感じたことはその叫びに集約された。動けば、揺れて、弾み、たわわな何かに引っかかっているお餅の端っこに対して限界への挑戦を強いるのだ。
    「眼福眼福ってなもんですが戦闘は真面目にやらんとですね。軍師殿、援護を頼む」
     ジュラルは息を吐くと、サーヴァントに指示を出しつつガンナイフとガトリングガン、銃器二丁を構えた。
    「ナノ」
    「くるもちぃか?」
     ナノナノの軍師殿もこれに呼応し、敵意に反応して糸切りモッチアも振り返ったが、攻撃を回避したばかりの身体は回避の姿勢をとるに至れなかった。
    「乙女の柔肌に銃弾ブチ込むのは気がひける、ちゃちゃっと終わらせよう」
     まるで決定事項のような一言を叶えんかとすべく、撃ち出された弾丸が、元少女へ当たるよう不自然に軌道を変える。
    「もぢっ」
    「琥界、ゆいなさん、行くぞ」
     説得で弱っているからか弾丸の誘導性故か、弾が命中して動きの止まったところで、作楽が己の影を操りながら号令を発す。
    「くっ、な」
     撃たれた箇所を押さえ糸切りモッチアが起きあがるがもう遅い。
    「大丈夫、ゆいナースはおなたの味方ですっ! だからお友達を、私達を、そしてこの糸切餅を信じて、少しだけ……耐えて下さいねっ!」
     呼びかけながら、ゆいなは鋼糸を踊らせる。作楽のビハインドと挟み込む形で迫る鋼糸を避ければ、背にビハインドが一撃を見舞い、奇跡的に双方をかわせても作楽の影に呑まれることまでは避けようもない。
    「私もいるっすよ!」
     更には、手の指に夥しい手裏剣を挟んだレミまでが元少女を見据えていたのだ。敵意の籠もった目で主に胸を。
    「も、もぢゃぁぁぁぁ」
     弱ったところを袋叩きだったで、ある意味間違っていない。
    「も、戻ってきなさいよ。誤解だったんでしょ」
     呼びかけながら、あんずはマテリアルロッドを振り下ろす。誤解は解けたと思う、だが。
    「急がないとっ、急いで戻してあげないとっ」
     拳にオーラを集中させて殴っている最中の伊万里の視界内、少女の体を隠すお餅は影の刃でズタズタに斬り裂かれていたのだ。
    「誰にだって、手違いはありますよ」
     うん、誰が犯人とは言わないが、お餅はいくつかの切れ端になりつつあり。
    「六型終式『火鞠神楽舞』!!」
     もはや失血で青ざめながら宥氣は炎を宿す日本刀を松明の様に照らしながら舞うが如く元少女へと向けて飛ぶ。
    「っ、糸切りキィィィック」
     元少女も両手を地面についてバネとすると宥氣めがけ跳び蹴りを放った。はいてなかった。
    「ぐふっ」
    「それは、反則……だって」
     二つの影は空中で交錯し、着地と同時に双方が崩れ落ちる。戦いは終わったのだ。

    ●こうしてまた一人
    「……私」
    「あ、気がついたっすか?」
    「大丈夫?」
     あんずのコートと宥氣の羽織を被せられていた少女が意識を取り戻し、最初に見たのは白衣を広げてモモンガのマネでもするかのようなポーズのレミとすぐ側で顔を覗き込んできたあんずだった。
    「……ん」
    「とっきー」
    「う?」
     ご当地怪人だったときが嘘だったかの様な無口さと無表情で小さく頷いた朱鷺は身を起こすと、背に投げられた声に振り返る。
    「はい、これは仲直りへの第一歩ですっ! はい、あーんっ♪」
    「くれるの?」
     トマトジュースでの一服ついでにジュラルがつまみ食いしようと狙っていた糸切り餅、最後の一個。ゆいなが差し出すそれを見た瞬間、朱鷺の顔に表情が宿った。言葉で表すなら、驚きと戸惑いと喜びか。
    「もちろん! 要らなかったらゆいなが食べちゃいますけどね?」
    「要るに決まってますっ、あーんっ」
    「じゃあ、あー、あ」
     悪戯っぽい微笑みに即答した朱鷺の口に入るはずだった餅は少し手前でポロリと零れ。
    「こんな所で落とし、あ、ひゃあああん!!」
    「きゃぁぁぁっ」
     落ち行く餅をキャッチしようとした二人がもつれるようにしながら派手に転倒する。
    「うぎぎ、二人揃って餅合わせとか私に対する挑戦っすか?」
    「ほほはほほはひほ」
     ちゃっかりお口で餅をキャッチした朱鷺が血の涙でも流しそうなレミに弁解するが。
    「うぐっ」
     目を瞑ったまま血塗れになったのは、宥氣だった。止まってたはずの鼻血だったが、声とキーワードでつい先程までの記憶がフラッシュバックしたのだと思われる。
    「さて。あなたは偶然にもあたしたちと同じ力を手に入れてしまったわけだけれど……良かったらあたしたちと一緒に来る気はないかしら? 同じ境遇の仲間とたくさん出会えるはずよ」
    「そうっすね、武蔵坂学園なら同じ餅族の人もいるっす」
    「良かったら学園こない? 面白い人沢山いるよ」
     やがて、事情説明を兼ねた約一名の止血処理が終われば、当人を含む三人から、マフラーをかけられた少女へと手が差し伸べられ。
    「……ん、私まだお礼してない」
     だから、ついて行く。言葉少なげに少女は頷きを返すのだった。
     

    作者:聖山葵 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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