クリスマス直前に彼女にふられたから、リア充燃やすわ

    作者:志稲愛海

     俺の中の獣が疼いているのは――きっと、初めて彼女と過ごすクリスマスが近いからに違いない。
     なんて思いつつも、日々理性を保ちながらこれまで頑張ってきたんだけれど。
    「もうアンタと一緒にいるの無理。好きな人できたから、別れて」
    「!?」
     突然、恋人のユキに告げられたのは、別れ話。
     クリスマス直前のこんな時期に!? いや、クリスマス直前だからか??
     勿論、必死に全力で引き止めるも……もう、ユキは「無理」の一点張りで。
     頷くしかできずふられた俺は今、とぼとぼと一人寂しく帰宅中というわけだ。
    「てか、張り切ってクリスマスのレストラン予約してるのとか、買ったプレゼントとか、どーすんだよ……クリスマスに温泉行くって言う家族にも、俺は予定あるってどや顔で断ったってのに……まさに、正真正銘のクリスマスぼっちじゃねーか!」
     高校生だから大した店じゃないけど、生まれて初めて夜飯の予約とかしたってのに!
     でも、このまま予約キャンセルってのも、なんか癪だから。
     もうこうなったら、周囲に誤解されてもいいから!
     ひとりでクリスマスを過ごすのは、今のこのメンタル面で無理すぎるから!!
     親友のケンと、男同士の楽しいクリスマスディナーを満喫しようじゃないか!!
     ……と、思って電話してみたのに。
    『おう、アリ充。何か用か? ……あークリスマスな……俺、彼女できたから、すまん』
    「!!?」
     ちょ、いつの間に!?
     ――というか。
    「えっ、あれ、ケンとユキじゃね……?」
     遠目に見える公園のベンチでキスしてんの、さっき別れた元カノと親友じゃね!?
     キラキラ輝くクリスマスツリーの傍でイチャイチャしている二人。
     いや、二人だけじゃない。よく見回せば、周囲はリア充だらけだ。
     なんだよ……なんかめっちゃ腹立つんですけど!?
     ええ、完全なる妬みですよ、悪いか!
     ていうか。
    『……グオオオォォ、オオオオオオッ!!』
     クリスマス直前に彼女にふられたから――リア充燃やすわ!!
     

    「なまじ気合入ってた分、ショックが大きかったんだろうね……」
     飛鳥井・遥河(中学生エクスブレイン・dn0040)は、気の毒そうに呟いた後。集まってくれてありがとーと灼滅者達へと礼を言い、察知した予知を語り始める。
    「一般人が闇堕ちして、イフリートになっちゃう事件が察知されたよ。イフリートになるのは、有馬・充(ありま・みつる)っていう名前の、高校生の男子でね。その名前と彼女がいたってことから、リア充にかけて『アリ充』っていう渾名で呼ばれてるみたいだけど……クリスマス直前に、アリ充がリア充じゃなくなっちゃうんだ。さらに、別れ話された直後に親友と元カノがキスしてるところを目撃して、そのショックで充は闇堕ちしちゃうよ」
     事件が起こるのは、日が落ちた頃の公園。
     イルミネーションで飾られたクリスマスツリー煌く公園内は、まさにリア充にはうってつけの環境で。事件が起きた時も、充の親友達を含め4組のカップルが公園内にいるという。
     放っておけば、リア充達は獣と化した充に燃やされてしまうだろう。
    「みんなが現場に到着した直後くらいに、充はイフリートになってしまうから。理性を失って暴れるイフリートの充を数人でひきつけている間に、残りの人がカップル達を避難誘導してあげてね」
     イフリートと化した充は、イフリートのサイキックと、炎を伴う蹴りや弾丸で攻撃を仕掛けてくるという。理性は失われてはいるが、まだ堕ちた直後だからか、幸せそうにのろけたり等する者がいれば、若干優先的に狙ってくるかもしれないらしい。そして充に灼滅者の素質がもしあれば、灼滅者として生き残る可能性も残っているという。
     戦場となる公園は広く、障害物などは特に無い。時間は暗くなった頃だが、街灯やイルミネーションの光があるため、視界的にも問題はないだろう。
    「恋人とは別れちゃったみたいだけどさ。充……アリ充のこと、クリスマス前に救ってあげられたら一番いいよね」
     彼女と過ごすクリスマスは、勿論幸せで楽しいに違いないが。
     恋人とではなくても、クリスマスを楽しく過ごすことは、多分できるだろうから!
    「充がリア充を燃やしちゃって完全なイフリートになる前に、彼のこと止めてあげてね」
     遥河は、よろしくお願いするね、と。灼滅者達にもう一度、頭を下げるのだった。


    参加者
    日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)
    音鳴・昴(ダウンビート・d03592)
    皇・銀静(銀月・d03673)
    千歳・ヨギリ(宵待草・d14223)
    エアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)
    神西・煌希(戴天の煌・d16768)
    志水・小鳥(静炎紀行・d29532)
    シュネー・シュヴェルツェ(中学生魔法使い・d30790)

    ■リプレイ

    ●俺の前で惚気るリア充、まじ燃やすわ
     恋人と過ごすロマンティックな聖夜。
     そんなリア充全開なひとときを、楽しむはずだったけれど。
    『……グオオオォォオオオッ!!』
     これからリア充爆発しますので――クリスマス中止のお知らせです!!

     アリ充こと有馬・充がリア充を燃やすべく、獣と化したその時。
     現場に駆けつけたのは、8人の灼滅者達。
    「つか、燃やされたくなかったら早く逃げろ」
     降り出した雪の様に白い霊犬ましろを伴い、パニックテレパスを発動しながらも。
    (「ぶっちゃけ、これ止める必要あんのか? てきとーに暴れたらスッキリして勝手に人に戻りそうな気がすんだけど……」)
     自棄になっているアリ充を見遣りつつ、一般人に声掛けるのは音鳴・昴(ダウンビート・d03592)。
     でも充は今、理性なきイフリート。
     放っておけば、世のリア充を無差別に爆発させようとするかもしれないし。
    (「まぁ、それで一般人に被害出す訳にいかねーし、止めりゃいーんだろ、止めりゃ」) 
     マジめんどくせー……と、昴は溜め息をつきつつも。
     慌てるカップル達へとワンッと吠えるましろと共に、一般人の避難誘導を。
     エアン・エルフォード(ウィンダミア・d14788)も、すかさず元彼女への視界を遮る位置に立ちながら。
    (「まるで糸が絡まってしまったかのような状況だけど、信じていた人に裏切られるような状況を目撃したら……まあ、闇堕ちもしたくなるかもね」)
     可愛い恋人がいる身として、ちょっぴり同情するも。これ以上リア充が近づかぬよう、殺界を形成する。
     クリスマスは確かに、恋人達の一大イベント。
     だが決して、リア充の為だけのイベントではない。
    (「クリスマスは楽しいお祭り、よ……裏切られて悲しくても……誰かを傷つけちゃ……だめなの……」)
     サンタ帽をかぶせてみたお気に入りのぬいぐるみを、ぎゅっと抱き締めて。
    「ここは危険なの……早く逃げて……!」
     彼を人殺しには……させない、わ……と。
     標的となるであろう充の元カノと親友へ声を投げる、千歳・ヨギリ(宵待草・d14223)。
     そして、思うところは正直色々とあるものの。
    「逃げなさい! 有馬さんは怒りで正気を失っています!」
     二人が逃げる方向をさり気なく確認しつつも、今は元彼女達を逃がすべく動く、皇・銀静(銀月・d03673)。
     そしてそんな銀静の声に。
    「え、有馬……?」
     ふと一瞬立ち止まり、周囲を見回す親友のケンだが。
     まさか――目の前で自分達を燃やそうとしている獣が充だとは、思ってもいないだろう。
     そしてまずはそんなケンとユキを爆発させんと、イフリートが動き出そうとした刹那。
    「なあ、お前はクリスマス当日はどこに行きたい?」
     割って入り、颯爽とリア充姿を見せつけるのは、神西・煌希(戴天の煌・d16768)。
     そんな煌希に、日野森・沙希(劫火の巫女・d03306)も嬉し気に笑んで。
    「ダーリンと一緒だったら、どこでもいいのです♪」
    「可愛いこと言ってくれるなあ、俺もだぜ。学校が終わってからイルミネーション見に行くのも悪くねえかもしんねえなあ」
    「イルミネーション、楽しみなのです」
     展開されるのはまさに、リア充的会話!!
     いや、ただでさえ、リア充は燃えて欲しいというのに。
     目の前のカレシはイケメンで、巫女服姿の可愛いカノジョがいて……さらに、車(ライドキャリバー)持ちだなんて!
    『グオォォオオォォッ!!』
     メラメラと、より嫉妬の炎を燃やす充。
     その意識は完全に、目の前でいちゃいちゃする煌希達へと向いていて。
    「!」
     刹那、リア充を燃やすべく噴出される激しい炎。
     だがそんな、上手く自分達へと向ける事が出来た炎に。
    「まあ、アリ充の心中お察しするぜ。だがなあ、いくらショックを受けたからって燃やしちまうのはいけねえなあ」
     天藍に輝く双眸をふっと細めた煌希は、雪の舞い降る空へと聖剣を掲げ、瞬間、白き光煌く衝撃を振り下ろす。
    「言いたいことがあるなら男らしく面と向かって言っちまえ!」
     そして沙希も、煌希と恋人を演じ続けながらも。
    (「アリ充さんは名前のせいでリア充に拘っているのでしょうか」) 
     リア充を燃やす事で頭がいっぱいな獣を見遣る。
     充が自分の事だけでなく、恋人の事も考えてあげていたのならば……また結果は変わっていたかもしれない、と。
     でも、恋人には振られてしまったけれど。
    「ダークネスになって本当の恋愛ができなくなる前にこちらに連れ戻しますです」
    『! ガアァッ』
     煌希のライドキャリバーに轢かれ呻くイフリートを、より自分へと目を向けさせるべく、構えた盾で殴打を見舞う沙希。
     そんなリア充役の二人が、アリ充を相手取っている間に。
     志水・小鳥(静炎紀行・d29532)は、雪の中跳ねるシベリアンハスキーの黒耀と一緒に、被害が及ばぬ位置まで一般人を逃がして。
    (「不幸が重なって暴れたくなるのは分かるが、関係の無い人まで巻き込むのはいただけないな」)
     嫉妬の炎を繰り出すイフリートを見つつも、囮役の仲間の様子に気を配る事も忘れない。
     そして公園の出口でふと、炎吐く獣を振り返ったケンとユキに。
    「ここは僕たちに任せて、逃げてください」
     シュネー・シュヴェルツェ(中学生魔法使い・d30790)は白雪の如き長い髪を靡かせつつ言って。去る二人を見送り、ミステリアスな青の瞳を細めるのだった。
     公園にいたリア充達は全員、無事に外へ逃がす事ができた。
     これであとは――嫉妬に燃えるアリ充をぼこるだけ!
     こっぴどく振られた今の充は確かに不憫だけれど。
     でも、彼の為にも……クリスマスを中止にさせるわけには、いかないから。

    ●振られて自棄になった獣を、全力でぼこるわ
     嫉妬の炎に塗れ、闇に堕ちたアリ充。
     理性を失い、武蔵坂風に言えばすっかりRBな獣と成ってしまったが。
     今ならまだ、彼が今年のクリスマスを楽しめる可能性が残っているから。
     充を救うべく、声と物理で説得する灼滅者達。
    「リア充になりたいのはクリスマスの為なのですか? そんな嫉妬に塗れたら彼女はもう永遠にできないですよ」
     邪を祓い清める神威の鈴を、シャンッと鳴らして。
     沙希は彼氏役の煌希と連携をはかりつつ、煌希の炎を纏う蹴りと同時に、拳の閃きを充へと連続で叩き込んで。
     不憫な彼を咎めるのではなく、胸の思いを吐き出させて聞いてあげたいと。
     ヨギリはそう思いながらも、雪の鈴の様な可愛らしい槍を握り締めて。
    「でも……いくら悲しくても、幸せな人を傷つけてはだめなの……。ユキさんが振ったことを後悔するくらい……かっこよくなって見返せばいいの。だから……暴れるのはやめましょ……」
     スノードロップの花咲き綻ぶ螺旋の一撃でイフリートを穿てば。
    「リア充爆発って、俺もよく言われるんだけど……祝辞だと思っていた」
     漆黒の殺気を無尽蔵に放出しつつも、そう呟くエアン。
     そんな彼が常々思うのは。
    「リア充、つまり『リアルが充実している』という意味なら、何も恋人がいて甘い日常を過ごす事だけがリア充ではないんじゃないか」
     恋人がいなくても、充実した時間は過ごせるはず。
     そして、あと本来クリスマスは家族と一緒に過ごすものだと、真顔で言った後。
     エアンはさらに続ける。
    「クリスマス? もちろん家族同然である彼女と一緒に過ごすよ」
     リア充爆発してください!(祝辞)
     それから、めんどくさいと口では言いつつも。
    「そのまま完全にイフリートんなったら、一生彼女できねーだろ」
     前へとましろを送り出し、神秘的な歌声を戦場に響かせる昴は。
    「人として見返してやらなくていいのか……お前」
     炎を繰り出す合間にも煌くクリスマスツリーに八つ当たりしている充に、そう声を掛ける。
     そして。
    「……辛いですよね……苦しいですよね……悔しいですよね!」
     今の充の気持ちが痛いほど分かる、銀静。
     彼と似た想いをして、絶望し慟哭したけれど。
    「でも……貴方は一人ではない! 貴方は……貴方は己を捨てた外道の為に消えてはいけません!」
     その時の絶望と悲しみを、握る『Brionac』に乗せて。螺旋を描く衝撃を繰り出す銀静。
     そして小鳥の、クリスマス予定は!
    「美人な女子と一緒に遊んで、夜は別の可愛い女の子と過ごす予定だぜ。すっげー楽しみだなぁ」
     美人な『友達』と可愛い『妹』と、楽しく過ごします!
    「……彼女じゃないっていうのが悲しくなってきたけど、本当に楽しみです、はい」
     さらに。
    「俺、良い人で終わるタイプでな。彼女居ない歴=年齢だぜ」
     おう、悲しくなんかないからな……と。厄介な炎を積極的に打ち消すべく『祝福の言葉』を風に変換しながらも、自分を慰める彼に。
     あーそんなヤツいるよなー的な同情の視線を向ける、イフリートなアリ充。
     だがその隙にすかさず黒耀が、煌希を蝕む炎をわふっと癒して。
    「クリスマスの前に振られて、更には親友に取られてしまったなんて、とても心が傷ついたことでしょう」
     その言葉は彼女の正直な気持ちか、はたまた嘘なのか。
     シュネーはまずは、充の心境を汲む声を投げるも。
    「でも、だからといって、他の方を燃やすのは間違っています。っていうか、なんでもかんでも自分が嫌なものは燃やしてしまおうなんて、甘っちょろいんですよ!」
     ビシイッとそう言い放ち、成した魔法の矢でも彼を射抜いて。
    『ガアァッ!!』
    「! きゃっ」
     炎纏う強烈な蹴りを、沙希へと見舞ったアリ充であったが。
    「おっと、大丈夫か?」
    「ありがとうダーリン♪」
    『!? ウォオオオーーンッ!!』
     すかさず彼女を支えた煌希と、彼と恋人の演技を続ける沙希の言葉に、大きく地団駄を踏む充。敵視するリア充にナイスアシストをした自分が、悔しいっぽい。
     そんな彼にエアンは青の瞳を向け、ふと思う。
     彼の親友と元恋人の事を。
    (「彼等は知っているんだろうか。自分達が充と親しかった事を」)
     知っていたのならば強い想いがあるのだろうし。知らなかったとしても、充がショックだった事には変わりない。
     だからと言って、仕方がないと割り切れるものでもないとは思うが。
     自棄は起こして欲しくないから。
    「運命の人は誰にでも居るよ」
     炎は炎でも、嫉妬のものではなく。円卓の騎士の如きオーラを纏うエアンは、摩擦から生み出されし炎の蹴りを充へ叩き込んで。
    「本当の恋はその人を好きになることであって、クリスマスの付属物じゃないのです。リア充はその結果なのです」
     沙希も異形化させた腕で充を殴りつけ、網状の霊力でその身を縛り上げる。
     本当の恋はこれからなのです、と、彼に投げかけながら。
     そして地を蹴り、瞬時に充の懐に入って。
    「貴方なら新しい道を見つけられる! だから!! 戻ってきなさい!! 怒りに飲まれず己を保ってください!」
     銀静はぐんと伸ばしたその腕で、しっかりと彼を掴むと。
    「クリスマス! 皆で楽しみたいのでしょう!」
    『……ッ!!』
     クリスマスを皆で楽しみたい――その言葉に一瞬動きを止めた充へと、思いを乗せた投げ技を強烈にお見舞いする。
     そんなアリ充が楽しいクリスマスを過ごす為に必要な、一歩。
     貫くその先に喜びと光があるようにと生命力溢れる蔦の和弓を番え、昴は彼の背中を押す。
    「友人とか元カノとかとは自分できっちり話しつけこい」
     いや、昴だけではない。
    「不満があるなら相手に直接話し合いでぶつけちまえ。そんで自分の気持ちをすっきりさせとけ、有馬充!」
    「男なら男らしく、そんな力で燃やしてしまおうなんて考えないで、本当の自分で自分自身が想ってることを、2人にぶつけてきなさい!」
     煌希の握る聖剣が破邪の白光を放ち、シュネーが詠唱し紡ぎ上げた魔力が再び鋭き一矢と成る。
    「気持ちをぶつけてすっきりした方が、心は更に傷つくかもしれないけど、燃やすよりは絶対にいい!」
     傷つくのを怖がっていても、きっと前には進めないから。
     そして灼滅者達の説得や衝撃で、動きが鈍っているイフリートへ……いや、闇の中にいるアリ充へと。
    「ヨギ達の学校に、来ない……? お兄さんみたいな人……たくさん、いるわ……」
     そう声を掛けるヨギリ。
     指先に集めた霊力で仲間を蝕む炎を浄化しながら、小鳥もヨギリの言葉に頷いて。
    「そうだな、武蔵坂学園に来いよ。そこでいっぱい友達作って楽しめば良い。俺らも有馬に協力してやれるから」
    『! ガウゥ……ッ』
     先程まで、あんなにリア充を燃やす事しか頭になかったイフリートが。
     向けられた小鳥の言葉に尻尾を振りつつ、完全に動き止めたのだった。
     そんな彼を、今こそ救う為に!
    「ヨギ達と楽しいクリスマス、一緒に過ごそ……?」
     イフリートに浴びせられるのは、『あらぶる!ふるぼっこ☆おーら』を纏ったヨギリの、メラメラした容赦ない連打。
     そして大の字に倒れた獣は――灼滅者の少年・アリ充の姿になったのだった。

    ●灼滅者になったから、Xmas楽しむわ
     灼滅者の手により、無事救われた充。
     そんな彼にまず声を掛けたのは、銀静であった。
    「それじゃ……彼女さんと親友さんに会いに行きますか? 納得はできないでしょう?」
     ならば……聞きにいきましょう、と。言った彼に、充は少し考えてから。
    「もうユキとケンの事は、いいわ」
     そう、言葉を返して。
    「どうして捨てられたのか、どれほど苦しんだのか……思う事があるなら徹底的にぶつけなさい。吐き出すのも大切です」
    「いや、二人が恋人になったのってユキが俺に別れを告げた後かもって、今考えたら思うんだ。昨日までケン、リア充爆発しろって言ってたし。だからユキは一応ケジメつけてるわけだし……それに俺にも、振られて仕方ないとこ、あったしな」
     銀静はそんな彼のお人好しさに、大きく溜め息をつくも。
    「別に本人がいいって言ってるんだから、それでいいんじゃねーの」
    「充お兄さん自身で決着をつけてほうがいいみたい……」
     昴やヨギリは、そう言って。
    「邪魔する奴は馬に蹴られて、って諺を知らねえか?」
    「充さん、後は貴方次第です。貴方が今したいことをしてください。応援していますよ」
     煌希やシュネーも、彼の意思を尊重する姿勢を示せば。
    「それよりさ、皆でクリスマスパーティーするんだろ?」
     銀静へと、そう笑む充。
     振られた傷は癒えてはないだろうが。
     充に今必要なのはきっと、楽しいクリスマスの時間だ。
     そして。
    「よかったら、充さんも武蔵坂学園にきませんか? 武蔵坂学園には、たくさんの仲間がいます。それに……新しい恋も、みつかるかもしれませんよ」
    「暴れてすっきり出来たか? 有馬の人生はこれからなんだし、気持ち切り替えて行こう」
    「ああ、そうだな」
     クリスマスイルミネーション煌く雪空の下、シュネーに大きく頷いた後。
     充は差し出された小鳥のその手を、迷わずしっかりと、取ったのだった。

    作者:志稲愛海 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 5
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