木枯らしが吹く中で……

     輪舞・未兎(絢爛玉兎・d28416)は、こんな噂を耳にした。
     『木枯らしで色んな物を飛ばす都市伝説がいる』と……。
     この都市伝説は着古した道中合羽を羽織り、ボロボロの三度笠を頭に被った渡世人風で、長い楊枝を咥えて人気の少ない夜道をフラついているようだ。
     しかも、都市伝説はターゲットを見つけると、木枯らしを吹かせて、相手の服を切り裂いてしまうらしい。
     万が一、相手がキレたとしても、まったく動揺する事なく、『あっしには関りのねぇ事でござんす』と言って、その場を去ってしまうらしく、被害者とのトラブルが絶えないようである。
     だが、あまりしつこくすると、『あんたは、よほど冥土が見たいようでござんすね』と胡散臭げに呟き、木枯らしを吹かせて命まで奪ってしまうようだ。
     そういった意味で都市伝説は強敵。
     最悪の場合は全裸で都市伝説と戦う事になるだろう。


    参加者
    芳賀・傑人(明けない夜の夢・d01130)
    シャルリーナ・エーベルヴァイン(ヴァイスブリッツェン・d02984)
    真白・優樹(あんだんて・d03880)
    十束・御魂(天下七剣・d07693)
    黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)
    御影・ユキト(幻想語り・d15528)
    月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)
    風輪・優歌(ウェスタの乙女・d20897)

    ■リプレイ

    ●季節外れの木枯らし
    「また、不思議な都市伝説ですね。ただでさえ寒いのに木枯らしを手段にするとは……」
     御影・ユキト(幻想語り・d15528)は仲間達と共に、都市伝説が確認された場所に向かっていた。
     都市伝説は木枯らしを自在に操って、相手の服を切り裂いているらしく、その被害も深刻なようである。
    「冬の木枯らしは唯でさえ身を切るような寒さだっていうのに、本当に物理的に切って回るとか迷惑この上ないね」
     真白・優樹(あんだんて・d03880)が、あまりの寒さに身体を震わせた。
     こんな寒い時に服を切り裂かれるのは、正直言えば遠慮したいところだが、こうなってしまった以上は文句を言っていられない。
    「まぁ、時代遅れの格好には目を瞑るとして……、ターゲットを見つければ見境なく飛ばしまくるのは好ましいとは言えないな」
     芳賀・傑人(明けない夜の夢・d01130)が、警戒した様子で辺りを見回した。
     都市伝説が現れているせいか、辺りにほとんど人気はなく、異常なほど静まり返っていた。
     そう言った意味で、都市伝説に狙われる可能性は高くなっているが、全く人がいない訳ではないため、油断する事も出来ない。
    「ひょっとして、痴漢の願望が呼び起こした都市伝説なのでしょうか……?」
     風輪・優歌(ウェスタの乙女・d20897)が、疑問を口にする。
     都市伝説がどのような噂から生まれたのか分からないが、外見からして最初の頃は渋めな設定だったのだろう。
     だが、その噂が広まるにつれて歪んだ形で変化していき、このような結果を招いてしまったのかも知れない。
    「ひっ、ひい、誰かああああああああああああああ。た、助けてくれええええええええええええええ」
     次の瞬間、半裸姿の男が現れ、転がるようにして、優歌の後ろに逃げ込んだ。
     その視線の先には都市伝説が立っており、クールな表情を浮かべて優歌達をジロリと睨みつけていた。
    「やれやれ……。この寒い時期に、とても迷惑な都市伝説ですねぇ」
     シャルリーナ・エーベルヴァイン(ヴァイスブリッツェン・d02984)が、深い溜息を漏らす。
     だが、都市伝説はまったく気にしておらず、その視線は男に対して向けられたままだった。
    「お、おい! 何とかしてくれよ」
     男が驚いた様子で悲鳴を上げる。
    「怪我したくなければ、ここから離れてね」
     月居・巴(ムーンチャイルド・d17082)が、男を守るようにして陣取った。
     その言葉を最後まで聞く事無く、男が脱兎の如く逃げていく。
    「……そこを退け」
     都市伝説が優歌達に対して警告をする。
     おそらく、都市伝説の目的は、この男……。
     仕留め損ねた獲物を狩るため、ここまで追いかけてきたのだろう。
     それは都市伝説にとって、あってはならない事。
     故に、すべてをなかった事にするため、男を始末しに来たのかも知れない。
    「見た目は渋いのに、なんなんでしょうね、この変態は……」
     黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)が、嫌悪感をあらわにした。
    「あっしが変態……? 何やら人違いをしているようでござんすな」
     それでも、都市伝説は動じない。
    「いえ、人違いではありません」
     十束・御魂(天下七剣・d07693)が、キッパリと言い放つ。
     次の瞬間、都市伝説が木枯らしを発生させ、御魂の服を切り裂いた。

    ●危険な風来坊
    「ふ、風来坊の様な感じでいきなり服を切り裂いてくる……中々にレベルの高い相手ですね」
     御魂が胸元を隠して、都市伝説をジロリと睨む。
     ほんの一瞬だけ油断してしまったとは言え、都市伝説の動きが見えなかった。
     幸い、不自然なもやが発生したので、誰にも裸を見られる事はなかったが、この状況では戦えない。
     すぐさま、用意しておいた服に着替えたものの、都市伝説が存在している限り、再び服を切り裂かれてしまう可能性が高かった。
    「ううっ……、見てるだけで寒いんですけど……」
     ユキトがコートを羽織って、寒そうに身体を震わせた。
     だが、都市伝説は涼しい顔。
    「あっしには関りのねぇ事でござんす」
     まるで他人事のように、軽く流している。
    「それにしても、あんまり趣味のよくない恰好だねえ。木枯らしを吹かせるなら、もう少し木枯らしに相応しいような恰好が有るような気もするのだけれど……」
     そんな中、巴が都市伝説の格好にダメ出しをした。
    「これは由緒正しき木枯らしスタイル。木枯らしと言えば、これでございやす」
     だが、都市伝説は表情ひとつ変えず、クールなまま。
     それが当然の答えとばかりに胸を張っている。
    「えぇっと……、戦い辛いのですけれど……」
     シャルリーナがニットのワンピース姿で、都市伝説の前に立つ。
    「あんた……、よほど冥土が見たいようでござんすね」
     次の瞬間、都市伝説が木枯らしを発生させ、シャルリーナ達の服を切り裂いていく。
    「や、ちょっ……」
     被害はそれだけでは済まず、りんごの小袖も切り裂かれ、サラシに巻かれた胸元があらわになった。
    「うきゃー!」
     その巻き添えを食らって、優樹も全裸。
     無駄に不自然な光が味方してくれなければ、取り返しのつかない事になっていたのは間違いない。
    「まさか、こんな品が役に立つときがくるとは……」
     そんな中、優歌が都市伝説によって切り裂かれた服を脱ぎ捨て、長袖の白いワンピースに着替えた。
    「さすがに、この状況は放っておけないか」
     傑人が視線のやり場に困りながら、スレイヤーカードを解除する。
     それと同時に都市伝説が目つきを鋭くさせ、女性陣に狙いをつけた。

    ●暴走、木枯らし!
    (「先程、男を仕留め損なったのは、女ではなかったから……。ならば、男など放っておけばいい」)
     都市伝説の脳裏に、黒い考えが過る。
     それは単なる思い込みであったが、都市伝説の暴走は止まらない。
     まるで獲物を狙う狼の如く、女性陣を見つめて舌舐めずりをした。
    「木枯らし吹くな、木枯らし吹くな、木枯らし吹くな! それに、服が破けたら寒いじゃないですか!」
     ユキトが身の危険を感じて、涙目になった。
    「……断る!」
     だが、都市伝説に迷いはない。
     ユキト達の不安を煽るようにして、大袈裟に構えた。
    「いきましょうか、シャルリーナさん」
     すぐさま、りんごがシャルリーナに声をかける。
     多少の犠牲は、覚悟の上。
     全裸になる事さえ気にしなければ、恐れる事など何もない。
    「はい、りんごさん。いきますよぉ」
     シャルリーナも力強く頷いた。
    「ふっ……、愚かな。後悔するぞ!」
     それに気づいた都市伝説が木枯らしを発生させ、再び女性陣の服を切り裂こうとする。
    「やらせない……!」
     即座に傑人がシャルリーナ達の前に陣取り、自ら盾となって木枯らしを受け止めようとした。
     しかし、木枯らしは傑人の真横をそよ風の如くすり抜け、背後にいたシャルリーナ達に襲い掛かる!
    「ば、馬鹿な……!?」
     あまりの出来事に驚き、傑人が大声をあげた。
     普通に考えればあり得ない事だが、その力が都市伝説の力であれば、何もおかしな話ではない。
    「シャルリーナさん、ごめんあそばせ?」
     その途端、りんごが反射的にシャルリーナの後ろに隠れる。
     自らの身を守るため、傍にいたシャルリーナを盾にするために……。
    「えぇっと……り、りんごさん? きゃっ……!」
     それと同時にシャルリーナの服が切り裂かれ、我儘ボディがあらわになった。
    「大丈夫ですか?」
     りんごが白々しく呟き、シャルリーナに視線を送る。
     だが、都市伝説の木枯らしはりんごの服も切り裂き、ふたり合わせてすっぽんぽん。
    「あ、あのぉ……、恥ずかしいですので、見ないでくださいよぉ……」
     その視線に気づいたシャルリーナが顔を真っ赤にした。
    「でも、隠さないと見えてしまいますよ♪」
     それでも、りんごは気にせず、自らの体を重ね合わせるようにして、シャルリーナを押し倒す。
    「り、りんごさん……! まだ戦闘中ですよぉ……」
     シャルリーナが恥ずかしそうにする。
     だが、嫌な感じはしない。
     むしろ、心地良さすら感じていた。
    「まだまだ、これで終わりではないでござんすよ!」
     都市伝説が狂ったように両手を振り回し、木枯らしを発生させた。
    「な、何でこんな目に……!」
     その途端、優樹が木枯らしに襲われ、納得のいかない様子で胸元を隠す。
     羞恥心を怒りで誤魔化してはいるものの、一瞬でも冷静になれば、その場から動けなくなってしまうほどの恥ずかしさ。
     それでも、『一刻も早く終わらせねば……!』と言う気持ちから、裸のまま都市伝説に向かっていった。
    「そちらが木枯らしなら、こちらは服破りで斬ってあげるよ」
     すぐさま、巴がティアーズリッパーを放ち、都市伝説の服を切り裂いた。
    「それが……どうしたァ!」
     次の瞬間、都市伝説が全身の筋肉を隆起させ、身に纏っていた服を内側から破って褌一丁になった。
    「これで服を破られる心配は……ない! 褌を破りたければ、破るがいい。だが、後悔するのはアンタ達でござんすよ」
     都市伝説が含みのある笑みを浮かべる。
     おそらく、見た者がげんなりしてしまうほど、褌の下にアレなものを隠しているのだろう。
     まるで『狙ってください!』と言わんばかりに、自らの股間を強調していた。
    「さあ、生まれたままの姿で、冥土に逝くでござんす」
     それと同時に都市伝説が最大級の木枯らしを発生させる。
    「冥土に行くのはアナタの方です」
     しかし、御魂は躊躇う事なく、捨て身の覚悟で、都市伝説に鬼神変!
    「このむっつり野郎、冥土に落ちろ―!」
     それに合わせて優樹も都市伝説めがけて、尖烈のドグマスパイクを叩き込む。
     その一撃を食らった都市伝説がアスファルトの地面に深々とめり込み、『む、無念……』と呟いて跡形もなく消滅した。
    「――おやすみ」
     都市伝説が消滅した事を確認した後、巴が胸元を隠してボソリと呟いた。
     ……戦いは終わった。
     だが、その犠牲は大きかった。
     女性陣は、ほぼ全裸。
     無駄に不自然な光が差していなければ、色々なところが丸見えである。
    「パーカーを用意しましたので羽織ってください。寒い方には火も用意しますね」
     そう言って優歌が仲間達にパーカーを配っていく。
     パーカーはゆったりサイズで、ぶかぶかしてはいるものの、柔肌を隠すには十分に役立った。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月17日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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