ヒトデって手裏剣に似てね?

    作者:のらむ


    「クッククククク……ようやく完成した……!!」
     六六六人衆が1人、『亜門』は、とあるスクランブル交差点を見下ろせるビルの屋上で1人、ほくそ笑んでいた。
     サバみたいな銀色のスーツを全身に着こみながら。あと靴も銀色だった。
     亜門が右手に装着しているのは、、蒼く光る巨大なヒトデ。ではなく、ヒトデのような形をした巨大な手裏剣甲であった。
     どうみてもヒトデだけど。
    「ク、ククククククク…………これが私の海洋生物ウェポンコレクションの1つとして相応しいか、試させてもらおう!!」
     亜門はそう叫ぶとビルの屋上から飛び降り、スクランブル交差点のど真ん中に降り立った。
    「くらえい!!」
     亜門がヒトデ的手裏剣甲からヒトデ的な手裏剣を投擲すると、周りにいた一般人の体を切り裂き、一瞬で辺りが血に染まった。
    「ほう、これは中々……」
     スクランブル交差点にいくつもの悲鳴が飛び交う中、亜門は右手に嵌めた手裏剣甲をしげしげと眺め、満足そうに頷いた。
    「う、うわあああああ!!」
     近くにいた数人の男性が、恐怖に慄きながらも亜門に飛びかかる。
    「ん、何だ。邪魔だぞ?」
     亜門は足元から無数のウミヘビの様な武器を生み出し、男達に喰らいつかせた。
    「さて、こっちはどうだ……?」
     亜門が複数の手裏剣を周囲に撒き散らすと、そこら中で爆発が引き起こされ、一般人の身体を吹き飛ばした。
    「…………いいだろう、これを私の海洋生物ウェポンコレクションに加えるとしよう。フハハハハハ…………!!」
     スクランブル交差点の中で高笑いした亜門は、早く武器の使い勝手に慣れる為に、周囲の一般人達を惨殺し続けるのだった。

    「んー……海星さん。あなたの推理、どうやら的中したようですよ。信じがたいことに」
     神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)は赤いファイルを開き、教室に集められた灼滅者達の1人、星見乃・海星(ぼくは星を見るひとで・d28788)に1枚の資料を手渡した。
     ヒトデの手ってどこだろう。
    「え? ヒトデみたいな手裏剣を武器にする六六六人衆が現れるっていうぼくのアレが? 本当かい?」
     海星がヒトデ姿で最大限に驚きを表現しながら資料を眺めている間に、ウィラが事件の説明を始める。
    「事件を起こすのは、六六六人衆序列五五一位、『亜門』です。彼はどうやら海の生物に由来する武器にこだわる六六六人衆の様です」
     亜門はとある日、新しく作ったヒトデ的な手裏剣の使い勝手を試すためにとあるスクランブル交差点へ訪れ、多くの一般人を殺害してしまうらしい。
    「酷い話だね…………ところで、そのスクランブル交差点はどういった場所なんだい?」
     海星がウィラに問いかけると、ウィラはパラリと資料をめくって答える。
    「綺麗に東西南北に別れた交差点ですね。事件発生時そこには約250人の一般人がごった返していて、その内150人が、亜門の手によって殺害されてしまいます」
     灼滅者達は亜門が交差点の中心に降り立ってから、事件に介入できる。それ以前に一般人の避難や目立った行動、亜門との接触等を起こそうとすれば、亜門のバベルの鎖に予知されてしまうだろう。
     海星はウィラの言葉に頷きながら、資料の内容を読み上げる。
    「なるほどね……資料によると亜門の能力は気魄術式寄り。更にポジションはディフェンダーで体力が多いけど、決して攻撃力が低いわけではない、と……序列五五一位だし、決して油断は出来ないね」」 
     ウィラは海星の言葉に頷くと、ファイルをパタンと閉じた。
    「説明は以上です。ふざけた相手の様に見えますが、その実力は本物です。一般人の方々の保護も大事ですが、皆さんの身体も同じく大事です。怪我には気をつけて。皆さんが無事に、全員で帰ってくることを願っています。お気をつけて」


    参加者
    科戸・日方(高校生自転車乗り・d00353)
    小圷・くるみ(星型の賽・d01697)
    穹・恒汰(本日晴天につき・d11264)
    日向・一夜(雪花月光・d23354)
    氷灯・咲姫(月下氷人・d25031)
    凍月・緋祢(コールドスカーレット・d28456)
    星見乃・海星(ぼくは星を見るひとで・d28788)
    天輝・五星(クリスタルひとでちゃん・d30247)

    ■リプレイ


     六六六人衆序列五五一位、『亜門』。
     彼は自分が作った武器の出来を試すという、ただそれだけの理由で、数多くの人間を殺害してしまう。
     そしてそれを阻止するため、事件が起こるスクランブル交差点には、多くの灼滅者達が集結していた。
    「ク、ククククククク…………これが私の海洋生物ウェポンコレクションの1つとして相応しいか、試させてもらおう!」
     亜門はそう叫ぶとビルの屋上から飛び降り、スクランブル交差点のど真ん中に降り立った。
     ヒトデ的な手裏剣甲を構え、亜門は一般人達に狙いを定める。
    「くら……えい?」
     しかしそれが放たれる直前に、亜門の視界を巨大な盾が覆った。
    「そうはさせないぜこの野郎!!」
     亜門の前に飛び出した穹・恒汰(本日晴天につき・d11264)が、盾を大きく振りかぶった攻撃を仕掛けたのだ。
    「武器を試すのはいーけど、人に迷惑がかからないところで試してくれよ!」
     巨大な盾は亜門の鼻先にぶち当たり、その身体を地面に叩き伏せた。
     そして恒汰に続いて他の4人の灼滅者たちも現れ、一斉に亜門を取り囲んだ。
     同時に3人の灼滅者たちと、彼らの補助をするために訪れた灼滅者達が、一斉に一般人達の避難誘導を開始した。
    「交差点中央に通り魔がいる! 危ないから、みんな中央から離れて!」
     割り込みヴォイスを使用した日向・一夜(雪花月光・d23354)の声が、喧騒の中にいる人々の耳に、しっかりと届いた。
    「そして初めまして、亜門」
     声の調子を落とした一夜が、異形化させた腕で亜門の顔面をもう一度殴り飛ばした。
    「ウグオオ……痛いものは痛い……なんだ貴様らは。この私を通り魔扱いとは……」
     ボタボタと鼻から流れ出す血を手で抑えながら、亜門は灼滅者達を睨みつける。
    「タチの悪すぎる通り魔の間違いだったな。悪い悪い」
     科戸・日方(高校生自転車乗り・d00353)はそう言って盾を構え、亜門に急接近する。
    「そして俺達は灼滅者だ。覚えとけよ」
     日方は盾を使った強烈なアッパーカットを放ち、亜門の鼻に3度めの打撃を与えた。
    「ウヌオォ…………いい加減にしろ!」
     突然激高した亜門が、怒りに任せて手裏剣甲を構える。
     放たれたヒトデ手裏剣が、前衛の灼滅者達に向かっていく。
     小圷・くるみ(星型の賽・d01697)は自身に向けて放たれた手裏剣を斧で弾き飛ばし、亜門の前に立つ。
    「……素敵な武器ね、灼滅者を殺せば、もっと箔が付くんじゃなくて?」
     くるみはそう言って笑みを浮かべ、斧を振り上げて亜門の懐まで一瞬で移動する。
     そしてくるみは至近距離からの斧の振り下ろしを亜門に放ち、その左肩を大きく切り裂いた。
    「クククク…………中々に面白い考えだがな、灼滅者如き殺した程度じゃあ……といった所だ」
     亜門はくぐもった笑いを響かせながら、足元から無数のウミヘビを放ち、灼滅者達に喰らいつかせていった。
    「くっ……!! かなり強烈ですが……」
     纏わりつくウミヘビを振り払い、凍月・緋祢(コールドスカーレット・d28456)が両手に魔力を集束させる。
    「貴方の行動には、海の生き物への愛が全くありません!」
     そして緋祢は手を掲げる。
     すると形成された魔法の矢が一斉に亜門に向かって放たれ、亜門の全身を貫いた。
    「小娘が生意気な……まあいい。お前らに理解される必要も無い」
     そう言って亜門は懐からビチャビチャのわかめを取り出して食らうと、何故か全身の傷が塞がっていく。
    「…………さて、来たまえよ」
     銀色のスーツの乱れを整え、亜門が落ち着いた様子で灼滅者達を見据える。
     戦いは、まだ終わりそうにない。


     亜門との戦闘開始後、灼滅者達は避難誘導を行っていた。
    「はいはい、ちょっと強引ですけど我慢して下さいね! 超緊急事態なので!」
     交差点北側で、氷灯・咲姫(月下氷人・d25031)は騒ぎの中で足をくじいた人達を抱えて安全圏まで搬送していた。
     一般人を運び終えた咲姫は亜門の現在位置を確認し、装着していたヘッドセットに手を当てる。
    「亜門との交戦場所は、交差点のやや東寄りになってきています!」
     咲姫が連絡しているのは、『RiskBreaker』の4人。
    「…………了解だ。引き続き、情報の収集を頼む」
    「亜門達はやや東側に移動してきているらしいよ。東側の皆は注意してね」
     咲姫から送られた情報を、割り込みヴォイスで周囲の灼滅者達に拡散させていく。
    「皆慌てずに。落ち着いて、建物内に避難するんだ」
     天輝・五星(クリスタルひとでちゃん・d30247)がラブフェロモンを使用し、一般人達を落ち着かせつつ避難誘導を行う。
    「あの少人数で、持ちこたえられるだろうか……早く終わらせないとな」
     五星は仲間の身を案じつつも、冷静に行動していく。
    「通り魔だよ! みんな隠れて!」
     交差点南側で、星見乃・海星(ぼくは星を見るひとで・d28788)は避難を呼びかけ、同時にラブフェロモンを使って一般人達を誘導していた。
    「ぼくの前でヒトデを使うなんて……早く避難を終わらせて、皆に合流しなきゃ!」
     海星はそう言って気合を入れ、更に避難誘導を行っていく。
    「海星さん。五星さん。お二人の無事を空に輝く星とこの世界の全てのヒトデに祈っております。頑張ってい下さい」
    「うむ……頑張れ、海星。お兄ちゃん応援してるからな」
     海星と五星と同じヒトデ仲間のシャリンとリヒトが、2人の無事をこっそり祈っていた。
    「おい、そこの嬢ちゃん。1人で歩けるか? ……無理そうだな、よし掴まれ」
    「押してはならぬぞ!我が守るゆえ、落ち着いて逃げるのじゃ!」
     交差点西側で、玲迦や落葉が避難誘導を行っていた。
    「こころ、この人達を運びましょう!」
    「了解。シロガネ、そっち持ってくれるー? 早く避難させなきゃね」
    『日輪の双璧』の2人が、協力して一般人達を運んでいく。
    「そこの坊主、大丈夫か? こっちのフードの兄ちゃんについてったら大丈夫やからな。奈落ちゃん、この子お願い!」
    「お、おい。俺に押し付け……あぁ待て無くな。俺が近くに居てやるから大丈夫だ」
     啓太郎と奈落の2人も、いい感じに協力していた。
    「落ち着いて下さい。すぐに治します」
    「はいはい、そこでじっとしてて。これで大分良くなるわ」
     炯と山吹は、混乱の中で怪我を負った一般人達へサイキックでの治療を行っていた。
    「これで……かなりの一般人達は避難させる事が出来たようだな」
     五星はそう呟き、咲姫や海星と合流する。
    「そうですね……戻りましょう! あちらの戦況も心配ですし」
     咲姫が頷き、殲術道具を構える。
    「あとはわたくし達が引き受けます。海星さんは奴を!」
    「うん、ありがとう! 後は頼んだよ!」
     りんごの呼びかけに海星が応え、3人は戦場へと戻っていく。
    「頑張って下さいー」
     スヴェトラーナがパタパタと旗を振って応援していた。


     一般人達の避難は、かなりスムーズに行われていた。
     それは灼滅者達の人数が多かったことも理由の1つだが、亜門と戦闘を行っていた灼滅者達の貢献がかなり大きいだろう。
     灼滅者たちの多くが怒りを使用した戦闘を行い、亜門の気を一般人から逸らしたこと。
     更に灼滅者の全員がディフェンダーだったことで、列攻撃を多く持つ亜門にとってはその怒りを解除するメリットが少なく、積極的には解除しようとしなかったこと。
     それらによって、亜門は一般人を攻撃することなく戦闘が続いていた。
     ただしその代償として、灼滅者達全員の体力は大きく削られてはいたが。
    「クックククククク……!! やはりたかだか5人で私の相手をするなど、無謀な事だったのだよ! ククククク……!!」
     亜門は笑い、ヒトデ的な手裏剣を灼滅者達にばら撒く。
    「……5人じゃ、ないぜ」
     手裏剣によって身体を切り裂かれ、毒で身体を蝕まれつつも、日方は笑う。
    「ふ……笑っている余裕など貴様らにはなブゴッ!」
    「ちょっと失礼」
     亜門の言葉を遮って、背後から後頭部をヒトデの足的な部分で蹴り飛ばした海星。
     そして避難誘導を行っていた3人が戦闘に合流した。 
    「小癪な……!!」
     頭を抑えつつ呻く亜門に、一夜が攻撃を仕掛ける。
     足元の影を伸ばし、無数の触手を形成した。
    「避難は大体終わったし……後は亜門を追い払うだけだね」
     そう言って影の触手を伸ばし、亜門の全身を絡めとる。
    「早く帰って」
     そして一夜は亜門の全身をギリギリと締めあげた。
     亜門の動きが封じられた一瞬で、日方が追撃を仕掛ける。
    「そういうわけだ。海洋生物好きなら海にでも行って1人で泳いでろってんだ」
     ナイフを構え、亜門の背後に回りこむ日方。
    「お前みたいな奴に、そう簡単に人の命は奪わせねぇ」
     そして首筋にナイフを突き立て、一気に引き裂いた。
    「ゲ、ゴホガホッ!! ククククク…………」
     首筋を抑えつつ日方を睨みつけ、自身を縛り付ける触手を引き裂いた亜門。
     そして無言で足元から無数のウミヘビを生み出し、前衛の灼滅者達に向けて放った。
    「くっ……まだだ、まだ倒れない……! いくぞ、イチ!」
     恒汰は痛みに耐えつつも、ナノナノの『イチ』と共に亜門へ突撃した。
     両手の蒼き電撃を纏わせつつ、拳を固く握りしめる。
    「吹っ飛べ!!」
     恒汰は強烈なアッパーカットを亜門の鳩尾に放ち、その身体を一瞬浮き上がらせる。
     そしてその隙に亜門の下に潜り込んだイチが小さな竜巻を発生させ、亜門の身体を大きく打ち上げた。
    「今が好機ね……畳み掛けましょう」
     そう呟いたくるみは足に業火を纏わせ、地を強く蹴って高く跳び上がる。
    「そうはさせるか!」
     空中で体勢を整えた亜門は左腕をサメの牙に変形させ、接近するくるみに向けて振りかぶる。
    「無駄よ。少し動きが遅いんじゃなくて?」
     バベルブレイカーで牙を受け止めたくるみが、亜門の顎先に蹴りを放ち、亜門の身体を燃やしながら更に打ち上げた。
    「成る程成る程…………これは、連携攻撃の流れですね!」
     咲姫はなにか納得したようにしきりに頷き、滅茶苦茶高く跳び上がる。
     そして亜門の胸ぐらを掴み上げると、地面を見下ろす。
    「それはちょっと…………私の海洋生物愛に免じて勘弁してくれないか。すごく痛そうだ」
    「嫌です! 私の芽室愛に免じて大人しく喰らって下さいっ!」
     そしてそのまま地面まで急降下し、咲姫は亜門の頭を地面に思い切り叩きつけた。
     大きな爆発が起こり、交差点の中央にクレーターが出来た。
    「…………全く勘弁してくれ、禿げたらどうする。もっとわかめを食わなけりゃあならなくなるだろうが」
     よろよろと立ち上がりながら頭頂部を抑える亜門。
     未だ倒れる気配は無いが、確実に体力は削れてきている様だ。
     一方の灼滅者側の前衛も、体力の限界は訪れつつある。
     亜門は一般人避難組の合流後も、前衛のみに攻撃を重ねてきた。
     誰かが倒れるのも時間の問題だろう。
    「そうなる前に……何としても撤退させなければ。いくぞ、2人共!」
     五星が海星と緋祢に呼びかける。
    「いい感じの合体技だね! 任せてよ!」
    「任せて下さい!」
     海星と緋祢が頷き、3人揃って亜門の前に立ち塞がる。
    「ククククク……何の余興だ、これは」
    「それはもちろん面白い余興です」
     緋祢はそう言って両手を掲げて魔力を放出し、自身の周りに星を形どった無数の魔法の矢を形成した。
    「ヒトデは悪事に使うものじゃない……皆を守るために使われるべきなんだよ!」
     海星は緋祢の右側で跳び上がり、その全身に膨大なオーラを纏わせてグルグルと回り出す。
     そして五星も緋祢の左側で同じく跳び上がり、グルグル回ってオーラを纏わせる。
    「今だ……一斉射撃!」
     五星がそう叫ぶと、3人は一斉に攻撃を放つ。
     海星と五星がグルグル回りながら放った無数の星形のオーラの塊が、亜門に直撃する。
     緋祢も次々と星形の魔法の矢を放ち、亜門の全身を刺し貫いていく。
     とにかく数が多いオーラと矢を避けきれず、亜門の身体は吹き飛んだ。 
    「ゴフ…………クククク、いや、これは中々面白い」
     亜門はそう言ってまだ立ち上がり、手裏剣甲を構える。
    「最早ここには実験台の一般人共はいなくなってしまったか……ここに私が留まる理由は無い。が、貴様らの1人くらいは葬りたい所だ!」
     亜門が無数の爆発型ヒトデ手裏剣を放つ。
     その攻撃を受け止めた前衛たちだが、ギリギリその攻撃を耐え切った。
     そしてその攻撃が止んだ直前。灼滅者達が一斉に攻撃を仕掛けた。
     海星がグルングルンと回転しながら亜門に突撃し、その身体を切り裂き、
     緋祢が炎の蹴りを胸に放つ。
     くるみが杭で心臓を貫いて抉り、
     恒汰が放った魔の弾丸が肺に穴を開けた。
     五星が聖なる光条を放って全身を焼き、
     日方の放った影が亜門の全身を喰らった。
     咲姫の放った氷の刃が亜門の身体を凍りつかせ、
     一夜が杖でその氷を砕き、全身に魔力を流しこむ。
     そして再び交差点で大爆発が起こり、クレーターがもう一つ出来上がった。
    「ク、ククククク…………いやいや、まさかこうも追い詰められるとは。まあそれは貴様らも同じの様だが」
     亜門は全身から血を流しながら、灼滅者達を見渡す。
     そして一瞬、何かを考え、手裏剣甲を交差点に放り投げた。
    「これはボツだな。大した役にも立たなかった……さらばだ灼滅者、いつかまた貴様らと相対する事があるかもしれないし、ないかもしれないな! フハハハハハハハ…………!!」
     亜門はそう言って高笑いを上げながら、ギンギラスーツで一目散に交差点から走り去っていった。
     その元気な様子に、灼滅者達はため息を漏らすのだった。


     だが結果的に、灼滅者達は一般人を全員救うことが出来た。
     灼滅者達の怒り攻めもそうだが、亜門はどちらかというと冷静な性格で、無理に一般人を殺すより目の前の厄介な灼滅者達に対処する方を優先した事も大きかっただろう。
    「いやー、中々厳しい戦いだったぜ! 皆お疲れさん! イチもな!」
     恒汰はそう言って地面に座り込み、仲間たちの健闘を称える。
    「確かに、綱渡りな戦いだったね。前衛陣の崩壊まで秒読みだったよ」
     一夜もそう言って、安心したようにほっと息を吐いた。
    「やりましたねっ! 海星さん!」
     一般人を守り切れたことに安堵し、緋祢が海星にギュッとした。ギュッと。
    「うん、そうだねえ……本当に良かったよ」
     海星がギュッとされながら、しみじみと呟いていた。
    「それにしても変な奴だったな……あまり関わりたくないタイプの」
    「うむ、それは分かるな。しかもヒトデ型の武器で人々に害を与える、許しがたい奴でもある」
     日方の言葉に、五星はクリスタルヒトデの姿でしきりに頷いていた。
    「まあ取り逃しはしたが……こうして一般人達は守り切ることが出来た」
     くるみはそう言って、交差点を見回した。
     ここには、数多くの死体が転がり血溜まりが広がっている筈だった。
    「…………それじゃあ、帰りましょうか! 学園に戻って、戦果を報告しましょう!」
     咲姫がそう仲間に呼びかけ、一同はその場を立ち去った。
     こうして六六六人衆と灼滅者の戦いは終わり、灼滅者達はその目的を達することが出来た。
     亜門もそうだが、未だ灼滅者と相対していない六六六人衆達も多くいることだろう。
     彼らといつ戦いが起きてもいいように、今は戦いの傷を癒やすとしよう。

    作者:のらむ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2014年12月26日
    難度:やや難
    参加:8人
    結果:成功!
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