ダークネス、空手教室訪問

    作者:時任計一

     ひょろりと背の高い男が、街中を歩いている。彼はふと、そこに会った掲示板を見た。そこには、『実践空手教室 入門者募集!』といった張り紙が出されていた。
    「ほう、『実践』か。結構なことだ」
     興味なさげな口調とは裏腹に、男の目は張り紙に釘付けになっていた。いたく興味があるようだ。
    「ふむ……実践を名乗るからには、それなりの心得があると見ていいのだな?」
     男は無造作に掲示板から張り紙を破り取り、また歩き出す。その口は、わずかに笑っていた。
    「さて、これはどれほど俺を楽しませてくれるのかな?」
     男の歩く先が変わる。その足は、張り紙にある空手教室のある方へと向かっていた。


    「アンブレイカブルが、とある空手教室を襲撃するわ。あんた達にはその前に、このアンブレイカブルを迎撃してほしいの」
     真剣な表情で、藤堂・姫(しっかりエクスブレイン・dn0183)がそう切り出した。
    「アンブレイカブルの名前は大石・柊也(おおいし・しゅうや)。背の高い、細身のアンブレイカブルよ」
     柊也はある日、実践空手を教える道場の張り紙を見て、その道場の人間と戦ってみようと思う。だが、いくら『実践』とはいえ、ただの人間がダークネスに勝てる道理はない。結果として、道場にいる人間すべてが、柊也の手にかかって殺されてしまうだろう。
    「さすがにそれをさせる訳にはいかないわ。幸い柊也の歩く途中には、人気のない空き地がある。あんた達には、柊也をそこに誘い込んで戦闘を仕掛けて、柊也を灼滅して欲しいの」
     相手は相当の実力者のようだ。気を抜けばタダでは済まない。だがそれでも、これを成し遂げなければ、多くの人が犠牲になってしまうだろう。
    「で、ここが問題の空き地よ」
     地図を指示し、姫が言う。住宅街から外れた、広い空き地。戦闘にはもってこいだろう。
    「当日の午後2時、柊也はここの近くの道路を通るわ。そこであんた達が注意を引いて空き地まで引っ張り込んで、戦闘に持ち込めばいいわ」
     しかし、柊也は冷静沈着なアンブレイカブルだ。下手な挑発は一切効かないだろう。
    「柊也の目的は、強い奴との戦いよ。だから、あんた達の力を見せれば、戦いに乗ってくるわ。早い話が、サイキックを使って見せればいいのよ」
     灼滅者に力ありと見れば、柊也は戦いの申し出に快く乗ってくる。後は実力が物を言うだろう。
    「柊也は強いわ。特に、攻撃を受け流すのが得意のようね」
     攻撃を当てやすくする手段を持って行かないと、かなりの苦戦を強いられると思われる。
    「柊也は、ストリートファイターとバトルオーラのサイキックを使ってくるわ」
     ポジションはクラッシャーに位置する。重い一撃を覚悟しなければならないだろう。
    「実際、かなりの強敵よ、こいつ。一筋縄じゃいかないでしょうね。念入りに準備をしてから、戦いに向かった方がいいわ。十分に注意してきて。じゃあこの件、あんた達に任せたわよ!」


    参加者
    小碓・八雲(鏖殺の凶鳥・d01991)
    朝間・春翔(プルガトリオ・d02994)
    城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)
    戯・久遠(悠遠の求道者・d12214)
    霧ヶ峰・海璃(絶切刃・d15615)
    鉄・紅子(鉄拳・d28633)
    鴨川・拓也(修練拳士・d30391)
    若桜・和弥(山桜花・d31076)

    ■リプレイ

    ●戦いの誘い
     時刻は午後2時頃。とある道路の真ん中で、8人の灼滅者が集まっていた。目的は、アンブレイカブル、大石・柊也と接触すること。既に若桜・和弥(山桜花・d31076)のESPで、周囲の音は遮断されていた。一般人の方も、鉄・紅子(鉄拳・d28633)が目視で確認している。
     ややあって、一人の背の高い男が歩いてきた。あれが柊也だろう。鴨川・拓也(修練拳士・d30391)は、まず彼の前に立ち、声をかけた。
    「押忍! 自分は鴨川拓也と言います! 大石柊也さん、一手ご指南願います!」
    「む……小僧、何故俺の名前を知っている? いや、それに、俺にも一応用事が……」
    「一般人の空手教室を襲うよりは楽しめると、自負しています!」
    「……!?」
     やや驚いた様子を見せる柊也。そんな彼に、和弥は一足飛びで近付き、言った。
    「空手の前に実践合気道はいかが? 対ダークネス用の特別仕様」
     同時に彼女の刀が、柊也の体を斬り裂く。間髪入れず、霧ヶ峰・海璃(絶切刃・d15615)も同様に彼を斬り、締めに城橋・予記(お茶と神社愛好小学生・d05478)が、体に纏う意思を持つ帯で、柊也の体を貫いた。全ての攻撃に、柊也はとっさに対応するが、命中だけは避けられない。
    「ぬ……!」
    「ボク達の方が手応え有ると思うんだ……向こうの空き地で手合わせ願って良い?」
     事実上の宣戦布告をする予記。彼に続いて、紅子と海璃も言葉を繋げる。
    「一般人なんぞ相手にする前に、オレたちがタマ張って相手してやんぜ」
    「命がけの相手の方が、戦いも楽しめると思うけど?」
    「………」
     柊也は黙り込んだまま、予記の帯を引き抜く。ダメージ自体は、大したことは無いようだ。
    「実践がご希望なら、こっちは実戦を山ほどくぐり抜けてきている技だ。人間相手より戦い甲斐があると思うぞ」
     何も言わない柊也にそう言ったのは、小碓・八雲(鏖殺の凶鳥・d01991)だ。続けて、朝間・春翔(プルガトリオ・d02994)も口を開く。
    「貴方が向かう先の道場は一般市民の通う場所。サイキックも使えない弱い者と戦って、果たして楽しめるのか?」
    「無論、こっちはアンタを満足させに来たわけじゃなく、倒しに来たんだけどな」
     八雲は更に、そう言葉を繋げる。それを聞いて、とうとう柊也も反応を返してきた。
    「分かった。その戦い、受けよう。戦いの場があるのだろう? 案内をしてくれ」
     柊也の承諾を受けて、彼と灼滅者達は場所を移す。その間に戯・久遠(悠遠の求道者・d12214)は、柊也に声をかけた。
    「丈に合った相手を探すというのも、大変なのだな」
    「全くだ。だが、その相手が来てくれたのなら、こんなに嬉しいことは無い。この戦い、精々楽しませてもらおう」
     そう言う柊也の顔からは、微かな笑みがこぼれていた。

    ●柔の使い手
     数分後、灼滅者達と柊也は、戦場となる空き地に立っていた。拓也によって、殺界も形成してある。準備は万端だ。
    「では、始めようか。かかってくるといい」
     柊也はそう言い、柔らかく構える。それと同時、和弥は両拳を眼前で強く撃ち合わせていた。鈍い痛み。暴力……教えに反する力を使うことを忘れぬための、必要な儀式。
    「それでは……行きます! 紅子さん、続いてください!」
    「おぅ! 鉄紅子、推して参る!」
     同時、和弥と紅子が、柊也に飛びかかる。和弥は柊也の体の腱を狙い、紅子は武器に炎を宿しての、両者正確な攻撃だ。
    「たぁぁぁっ!」
    「バーニング!!」
     共に振り切る。命中はした。だが柊也は、それをうまく受け流し、最小限の被害に留めている。
    「ふむ、狙いは正確か。だが……」
    「まだまだ、驚くのは早いよ」
     衝撃波が、柊也を襲った。放ったのは、先の2人と同時に動いていた海璃だ。だが柊也は、この攻撃も直撃だけは避けていた。
    「合気に近い動きか? 良い勘と目をしてる。なら……」
     八雲はそう言い、武器を構え……。
    「それ以上に疾く! 尖く斬り込むだけだッ!」
    「ぬっ!?」
     そう言う八雲は、一瞬で柊也の死角に潜り込んでいた。予備動作も無い、見事な瞬動だ。
    「久当流……始の太刀、刃星ッ!」
     閃く刀が、柊也を斬る。しかし、柊也の動きに無駄は無い。身を裂く八雲の刃を上手く捌き、即座に反撃の体勢を作っていた。
    「先の3人を仕留めたいが、お前が邪魔か。ではまず、お前からだ」
     柔の動きから、剛の拳打が放たれる。凄まじい威力の正拳が、八雲に襲い掛かっていた。
    「その攻撃、通す訳にはいかんな」
     その間に立ってそう言ったのは、紺青の闘気を纏った久遠だ。彼は八雲に代わり、その攻撃を受け止める。重い衝撃。それでも久遠は、次の手を打っていた。
    「ぐっ……我流・堅甲鉄石。風雪、お前も頼む」
     久遠は自身を回復させ、自らの霊犬、風雪にも回復を求める。取り戻せる体力は、この2手でおおよそ取り戻すことができた。
    「隙はやらん」
     その間に、春翔が柊也を急襲していた。狙いと足止め、そして連携に重点を置いた鋭い斬撃。彼に続き、狙いの正確な海璃、紅子、和弥が攻撃を仕掛ける。だが、柊也は未だ涼しい顔だ。
    「なるほど、手の内を全て知られているかのような気分だな。ならばこちらも、それを前提にして攻めるか」
     柔らかくそう言って、柊也は電撃を帯びた拳を、久遠に叩き付ける。やはり重い一撃。同時に柊也は、エフェクトへの耐性も得ている。
    「そう来たんなら……有嬉、あっちは頼んだよっ!」
     そう言って予記は弓を取り出し、柊也に狙いを付ける。数瞬の照準の後、発射。放たれた矢は、正確に柊也……正確には、柊也の得た耐性を撃ち貫く。それと同時に、予記のナノナノ、有嬉は、攻撃を受けた久遠に、回復の支援を送っていた。
    「戯さん! こちらからも回復を!」
     そして、攻撃を受けてなお、柊也をけん制する久遠に、拓也も回復のサイキックを使った。じりじりと追いつめられているが、久遠も最大限の体力を確保している。そして柊也に、挑発に近い言葉を投げかけた。
    「さて、俺だけを相手にしていて良いのか?」
    「ふむ、それもいいが……いや、あちらも同時に潰させてもらう」
     柊也はそう言うと、拳から気弾を発射した。気弾は後方にまで鋭く飛んでいき……回復を担う拓也に向かって襲い掛かった。
    「くっ……!」
     狙われたことに気付いた拓也は、素早く構える。そして、回し受けの要領で、気弾を回避しようとした。ある程度の受け流しには成功する。だが、完全には捌き切れない。強い衝撃が、拓也に襲い掛かった。
    「流石に……重いですね」
    「まぁ、一撃では沈まんか。だが、まだこれからだ」
     灼滅者と柊也の攻防が続く。柊也は、久遠と拓也に狙いを絞ったらしく、集中攻撃を仕掛けてくる。対して灼滅者側は、守りの位置に着く予記と有嬉でダメージを分散しながら、狙いの正確な海璃、紅子、和弥を中心にして柊也の体力を削り、同時に弱らせていった。
    「さぁ、次はこれだ」
     柊也の連打が、久遠を襲う。
    「させないよっ!」
     しかし、間に割り込んだ予記が、その攻撃を代わりに受ける。彼にも、相当なダメージが蓄積されていた。だが、一瞬の隙を突き、海璃が柊也の足を裂く。
    「足を止めた。今がチャンスだよ」
    「オレが行く。久当流……外式、禍津日ッ!」
     動きが遅くなった柊也を、八雲の奇襲めいた斬撃が捉える。しかし柊也は冷静に対処し、一歩退いて自身を回復させた。積み重なっていたエフェクトも、これで多くが取り除かれる。
    「さて、一区切りか。お前達も、まだこんなものではないだろう。さぁ、続けようか。心ゆくまで、な」
     活き活きとした笑顔を浮かべ、改めて構える柊也。その視線は、鋭く灼滅者達を捉えていた。

    ●激しい攻防の末
     ひゅっと鋭い息遣いと共に、和弥の刀が閃く。振り抜いた刀身は、柊也の腕をわずかに斬ると同時に、確実な隙を作り出していた。
    「今です、繋げて下さい!」
     和弥の言葉に応え、側面から海璃が衝撃波で仕掛ける。その反対方向では、紅子が赤い標識を振りかぶっていた。
    「こいつは試合じゃねーからな、思いっきり行くぜ!」
     紅子の標識が柊也に当たる。この3人の連携攻撃は、確実に柊也の体力を削っていた。しかし……。
    「ちっ……」
     紅子が舌打ちをし、その場を前衛に任せて下がる。柊也は今の攻撃も、最低限の被害で受け流していた。そして素早く、久遠への攻撃に移る。
    「ナノーーーッ!」
     瞬間、必死な鳴き声と共に、有嬉が久遠の前に出ていた。電撃を伴う、柊也の拳が振り抜かれる。代わりに攻撃を受けた有嬉は、体力の限界を超え、その場から消滅してしまった。
    「有嬉!? くっ……よくもやったねっ!」
     相棒をやられた怒りのサイキックエナジーを吸い、予記の纏う『意志を持つ帯』が鋭く伸びる。3本、4本と伸びた帯は、正確に柊也を捉え、貫いていった。
     同じ頃、拓也は拳を握り、一瞬の間考えを巡らせていた。このまま殴りに行くことはできる。しかし、今の彼の役割は回復と支援。当たる算段の無い攻撃をしている余裕はない。
    「小碓さん、これを!」
     拓也は考えを振り切り、八雲に支援の矢を送る。それにより感覚が強化された八雲は、すぐさま攻めの姿勢に出た。
    「喰らえ、久当流……封の太刀、撃鉄!」
     八雲の霊刀が、柊也を断つ。間髪入れず、狙いの正確な3人が攻撃を続け、最後に春翔が、刀身を非物質化させた剣を振り、重い一撃を加えた。攻撃の後、春翔は振り返り、柊也の様子を確認する。しかし柊也は、あくまで冷静にヒールサイキックを使い、体力を回復させていた。
    「まだまだ、休んでる暇はないよ」
    「ぬっ……!」
     言葉と同時に、海璃が柊也を斬り裂く。そこからまた連携が繋がり……締めには、すでにボロボロになっている久遠が影を操り、柊也に攻撃を仕掛けていた。
    「さぁ、来るといい。お前の相手は俺だ」
     自殺行為に近い挑発だ。だが柊也の返事は、つれないものだった。
    「いや、お前の前に、まずはあちらからだ」
     そう言うと柊也は、拳から気弾を撃つ。狙いはもちろん、集中攻撃をかけていた拓也だ。
    「しまっ……」
     誰かがそう言った。対して、狙われた拓也の方は、まっすぐ前を向いて受けの耐性を取る。しかし、攻撃が重すぎた。
    「くぅっ……ここまで、ですかっ……!」
     受け切ることができず、拓也の体は思い切り吹き飛ばされ、動かなくなる。気を失ったらしい。
    「……てめー、やりやがったな!」
     激昂の声を上げ、紅子が柊也に飛びかかる。拳の乱打、的確に捌く柊也。しかし、和弥は気付いた。紅子の気迫の攻撃に、柊也が苦しげな表情を見せたことに。
    「圧せます! 一気に攻めましょう!」
     刀を振ってそう言う和弥に、予記と海璃が続いた。灼滅者達の攻撃は、もうかなりの所まで柊也を追い詰めていたらしい。畳みかける攻撃に、柊也の苦しげな表情が、より露わになる。
    「気付かれたか……しかしまずは!」
     柊也は初めて強い口調で言葉を発し、久遠を正拳で貫く。血を吐く久遠。だが、彼は……笑っていた。
    「がふっ……ふふ、こちらの、勝ちだな」
    「かも知れん……が、まだ分からん」
     そう柊也と言葉を交わし、久遠は倒れた。そして息をつく暇なく、八雲が柊也に斬りかかっていた。
    「剣よ……応えろッ!! 久当流……外式、夜刀御雷ッ! 覚悟ッ!」
     直撃だった。何重にも足を止められた柊也に、攻撃を完全に避け切る手段はもう無い。だがそれでも、ここで柊也の回復が入れば、もう少し粘られてしまう。
    「間に合うか……?」
    「間に合わん。これで終わりだ」
     柊也の呟きを、簡潔にそう断じて、春翔はとどめの気弾を放つ。
    「ぐっ……!!?」
     気弾が柊也を貫く。彼はぐらりと体勢を崩し、膝をついた。
     数秒が経った。柊也は動かない。その代わりに、彼の肩から黒い煙が噴き出す。灼滅が始まったようだ。それに気付いた柊也は、一言、静かにこう言った。
    「なるほど、これは……俺の負けだ」

    ●勝者へ
    「ふふ、もう数人は落とせると思ったんだがな。少々甘かったか」
     膝をついたまま、柊也がそう言う。その言葉に、やれやれと言うように両手を広げ、海璃が返した。
    「冗談。僕たちの方だってギリギリだったよ」
    「そうか」
     そう一言だけ答える柊也に、今度は春翔が話しかける。
    「少しは楽しめただろうか?」
    「それなりにな。これが最期でも、文句は無い」
    「そうか。ならば、こちらとしても本望だ」
    「柳のような動きというべきか、それとも川や雲の流れに例えるべきか……」
     続けて話し始めたのは、八雲だった。
    「狂的に鍛えたパワーとかスピードで圧してくるアンブレイカブルは何人か見てきたけど、アンタみたいなタイプは初めて会った。その有り様はともかく、良い動きだった……見習いたいほどに」
     八雲の言葉に、柊也はわずかに表情を変え……目を閉じて、こう応えた。
    「見習うか……ならばそうすればいい。そして俺を超えていけ。それが勝者の特権だ」
     そう言う柊也の表情は、笑顔だった。戦いに酔うでもなく、ただ単純に嬉しがるような、そんな笑み。そんな風に見えた。
     黒い煙が濃くなる。もう柊也も、長い間、存在を保ってはいられないらしい。
    「お前達には礼を言う。ではな」
     最後にそれだけ言い……柊也は完全に黒い煙と化し、その場から消え去った。
    「「……押忍!!」」
     紅子と、意識を取り戻して立ち上がった拓也が、柊也がいた場所に向かって、構えたままそう叫ぶ。
    「ありがとうございました! よき修練となりました!」
    「てめーとの戦い、無駄にはしねーよ」
     そう言って、一礼する2人。その横では予記が、手合せへの感謝を込めて黙祷をしていた。
    「……苛烈な攻撃だったな」
     拓也と同様、戦いで倒れていた久遠が、そう言って立ち上がる。しかし、相当の怪我だ。気付いた和弥と予記が、慌てて駆け寄る。
    「大丈夫ですか、戯さん!? あんまり無理をしてはいけませんよ」
    「せめて、座ってた方がいいよ。怪我に障るし」
    「大丈夫だ。しかし俺も……俺達も、頂きを目指す為の鍛錬を怠らんようにせねばな」
     さっきまで柊也がいた場所を見つめ、久遠がそう言う。和弥と予記も同じ方向を見て、一言ずつ、呟くようにこう言った。
    「彼を超えていく……そうできるように、これからも努力していかなければいけませんね」
    「うん。僕も頑張らないと……どこまでだって、強くなってみせるよ」

    作者:時任計一 重傷:戯・久遠(悠遠の求道者・d12214) 鴨川・拓也(修練拳士・d30391) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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