新感覚!? 強襲、ずんだシェイク怪人!

    作者:飛翔優

    ●ずんだシェイク怪人ズンダズンダズンダ
     ずんだシェイク。
     仙台発の新感覚ずんだスイーツ。
     バニラテイストのシェイクに特製ずんだをブレンドしたこのスイーツに魅せられ、活動を開始した怪人が一体。
    「シェーシェシェシェ! 新感覚、仙台発のずんだシェイクだクー! ほらほらほら、飲むんだクー!」
     名を、ずんだシェイク怪人ズンダズンダズンダ。
     ずんだシェイクカップの頭を持ちずんだシェイク色のマントを羽織りすり鉢の盾とすりこぎを持った怪人は、まずは宮城を制覇だと仙台周辺の街へと出没しては、人々にずんだシェイクを配って回っている。
     だが、冬であるためかどうもウケが悪い。断られることもあるのだが……その際は、無理矢理飲ませてしまう事もある。
     一度飲んでもらえれば魅力わかる、好きになってくれる。ゆくゆくは世界征服に繋がるのだと信じて……。

    「どんなに美味しくても、無理矢理はいけないよね!」
     教室でメモを眺めていたルリ・リュミエール(バースデイ・d08863)は、力強く頷き立ち上がった。
    「知らせよう、本当なら解決しないと!」
     メモを片手に歩き出し、教室の外へと向かっていく。
     エクスブレインへと伝えるため。真実ならば解決策を導かなくてはならないのだから……。

    ●夕暮れ時の教室にて
    「それじゃ葉月ちゃん、後をよろしくね!」
    「はい、ルリさんありがとうございました! それでは早速、説明を始めさせていただきますね」
     倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)はルリに頭を下げた後、灼滅者たちへと向き直った。
    「現在、宮城県でご当地怪人、ずんだシェイク怪人ズンダズンダズンダが活動していることが判明しました」
     本来、ダークネスにはバベルの鎖による予知能力があるため、接触は困難。しかし、エクスブレインの導きに従えば、その予知をかいくぐり迫ることができるのだ。
    「とは言え、ダークネスは強敵。色々とあるご当地怪人といえど、です。ですのでどうか、全力での行動をお願いします」
     続いて、葉月は地図を広げていく。
    「皆さんが赴く当日の午後三時頃、ズンダズンダズンダは宮城県にあるこの商店街に出現します」
     目的は、仙台発のずんだシェイクを広めるため、そのためにもまずは宮城を制覇だと、宮城県の各地を巡っている。当日は、その街の商店街がターゲットとなった、と言う話である。
     ズンダズンダズンダは商店街にやって来た後、道行く人々に声をかけてはずんだシェイクを配っていく。
     断った者に対しては、無理やり飲ませる事もある。
     一度でいいから味を知ってもらうこと。それこそが魅力を広め、ゆくゆくは世界征服に伝わるのだと信じているのだ。
    「ある程度目立つように歩いていれば、向こうから接触してくるはずです」
     後は人払いを行った上で迎え打つなり、別所へと誘導して闘いを挑むなりすれば良い。
     敵戦力はズンダズンダズンダの他、ずんだ色のシャツを着た配下が三名。
     ズンダズンダズンダの姿は、ずんだシェイクカップの頭を持ちずんだ色のマントを羽織りすり鉢の盾とすりこぎを持っている怪人。力量は、配下がいる状態ならは八人を相手取れる程度で、攻撃特化。
     すりこぎを巨大化させて一定範囲内を加護ごと押しつぶすずんだシェイクプレッシャー! すり鉢の盾を掲げてずんだの力を広げることで毒などに抗う力を得るずんだシェイクシールド! ずんだシェイクを飲むことでずんだシェイクパワーを充填し、格闘乱舞を行い近づくものを打ち据えるずんだシェイクグラップルスペシャル! の三種の技を使い分けてくる。
     一方、配下は防衛役。ズンダズンダズンダを護る傍ら、すり鉢シールドで毒などの浄化と自己治療を行いながら、すりこぎハンマーで加護を砕いてくる。
    「以上で説明を終了します」
     地図などを手渡し、締めくくりへと移行した。
    「おいしい物を広めたい、その気持は十分にわかります。しかし、無理矢理は行けません。嫌われてしまうかもしれませんし、アレルギーの恐れもありますし……ですので、どうか全力での行動を。何よりも無事に帰って来てくださいね? 約束ですよ?」


    参加者
    長谷川・邦彦(魔剣の管理者・d01287)
    神田・熱志(ガッテンレッド・d01376)
    焔野・秀煉(鮮血の焔・d17423)
    雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)
    堺・丁(ヒロイックエゴトリップ・d25126)
    犬塚・小町(壊レタ玩具ノ守護者・d25296)
    果乃・奈落(果て無き殺意・d26423)
    神鳴・洋(高校生サウンドソルジャー・d30069)

    ■リプレイ

    ●新感覚和のスイーツ
     子供たちおやつの時間だと家に戻り、空も陰り始めていく午後三時頃。
     宮城県の商店街を灼滅者たちは歩いていた。
     夕市に向けての準備時間……といったところだろう。商店の賑わいは抑え気味で、主婦たちの姿もあまり見えない。
     ゆえに目立つ。
     ずんだ大好きと記されたのぼりを背負う、神鳴・洋(高校生サウンドソルジャー・d30069)は否応にも。
    「ずんだシェイクは飲んでみたいZ!」
     その他にもずんだ柄の上着で人々の視線を集めながら、灼滅者たちはずんだシェイクに関する話題を肴に商店街を歩いて行く。
     すると、誰かが近づいてくるのを感じた。
     視線を向ければ、ずんだシェイクカップの頭を輝かせ、シェイク色のマントをはためかせ、すり鉢の盾とすりこぎを持った怪人……ずんだシェイク怪人ズンダズンダズンダが、ずんだ色のシャツを着た三人の配下を従え灼滅者たちの方へとやってきた。
    「シェーシェシェシェ! 新感覚、仙台発のずんだシェイクだクー! ほらほらほら、飲むんだクー!」
     無理矢理押し付けてきたずんだシェイクを受け取って、洋は軽く口をつける。
     ずんだのつぶつぶ感が口の中に広がった時、香りと共にもたらされるすっきりとした甘み。夏ならば旨味となっただろう、冷たい喉越し。
    「うん、甘い!」
     洋は素直な感想を述べた上で、申し出る。
    「実は、飲ませたい友人がいるんだZ!」
    「飲ませたい友人クー?」
     小首を傾げていくズンダズンダズンダに、雨時雨・煌理(南京ダイヤリスト・d25041)が駐車場の方角を指し示した。
    「知り合いが、向こうの駐車場で待っている。良かったら、一緒に来てはくれないだろうか?」
    「シェーシェシェシェ! もちろんだクー! ずんだシェイクを求める人に、遠慮はいらないクー!」
     心よい笑い声とともに、ズンダズンダズンダは頷いた。
     いざ、駐車場へ! と向かう道中、灼滅者たちはズンダズンダズンダとずんだシェイクについて語り合う。
     その情熱、何よりもずんだシェイクを気に入ったからだろう。長谷川・邦彦(魔剣の管理者・d01287)は意気投合し、肩を組んで歩く程になっていた。
    「良ければ、ずんだシェイクの美味しい店を教えてくれないか」
    「もちろんだクー! まずは何よりも元祖……」
     楽しげに美味しいお店が語られていく横では、犬塚・小町(壊レタ玩具ノ守護者・d25296)が満面の笑みでずんだシェイクを飲んでいる。
     ずず、と空気を吸う音が……ずんだシェイクがあと少しでなくなる、と言う段階まで至った時、振り向き問いかけていく。
    「良ければレシピを教えてくれないかな? こんなに美味しいもの、自分でも作ってみたいんだ」
    「もちろんだクー! 教えるから、メモの準備をしてくれだクー!」
     快く、レシピを披露していくズンダズンダズンダ。
     概ね語らう事も尽きた頃、彼らは石が敷き詰められている駐車場へと到達した。
     待っている知人、と言う存在しない人物を探し始めていくズンダズンダズンダたちから、灼滅者たちは距離を取る。
     小首を傾げていくズンダズンダズンダに対し、神田・熱志(ガッテンレッド・d01376)はスレイヤーカードを引き抜いた。
     定められたワードを紡ぐと共に赤を基調とし、武将の服を模した戦闘服に身を包み……ガッテンレッドへと変身する!
    「火事と喧嘩は江戸の華ねガッテンレッド!!」
     さらなるポーズを取ることで、ガッテンレッドは己等の立場を表明した。
     更には堺・丁(ヒロイックエゴトリップ・d25126)が横に並び、同様にポーズを撮って武装する。
    「境を繋ぐ堺の守護ヒーロー、ここに参上!」
    「クー!」
     二人の言葉、そして残る灼滅者たちの行動から状況を悟ったのだろう。
    「だ、騙したクー! ならば……ずんだシェイクを好きになってくれた方たちと戦うのは心苦しいけど、でも、邪魔をするなら容赦はしないクー! このずんだ餅怪人ズンダズンダズンダ様が、お前たちにずんだシェイクをもっと、もーっと好きになってもらうクー!!」
     配下たちを前面へと押し出した後、自身はすり鉢の盾とすりこぎを構えていく。
     ずんだシェイクを巡る戦いが、ひと気のない駐車場にて開幕する!

    ●奮闘! ずんだシェイク軍団
    「さて、それじゃあ毎度おなじみ押し売りご当地怪人!! そのお決まりのセールストークごと、俺の炎で燃やしつくしてやんぜ!」
     焔野・秀煉(鮮血の焔・d17423)は告げ、大地を駆ける。
     ライドキャリバーの黒王号が機銃をう放つ中をくぐり抜け、先頭に位置する配下の下へと到達する。
    「まずはこいつからだ!」
     ギターに炎を走らせ振り下ろし、印代わりに炎上させていく。
     後を追う形で、洋はステップを踏み始めた。
    「くらえ!ずんだシェイクダンス」
     華麗なダンスを刻みながら、炎に包まれた配下をガトリングガンでぶん殴る。
     更にはガッテンレッドがドラゴンを模した形状の赤く巨大な鉞を振り下ろしたけれど、配下の持つすりこぎによって阻まれた。
    「くっ……」
    「……」
     果乃・奈落(果て無き殺意・d26423)もまた螺旋状の回転を加えた槍を防がれて、フードの奥に隠している瞳を細めていく。
    「邪魔をするな」
    「シェーシェシェシェ! 我が配下たちにこの程度の攻撃、どうってことないクー! 行くぞ、ずんだシェイクプレッシャー!」
     一方、ズンダズンダズンダは笑いながらすりこぎを巨大化させ、前衛陣に向かって放ってきた。
     配下たちもすりこぎを握りしめ、前衛陣へと殴りかかっていく……。

     配下たちの動きは、それほど優れているわけではない。
     が、タフな体で灼滅者たちの動きを阻害していく。ズンダズンダズンダを庇う時を除けば大きく邪魔される事もなかったけれど、それでも、削れているのかわからないほどに攻撃が通らないタイミングも存在した。
     それでも……!
    「……二人目、だね」
     小町操る非物質化された剣が、配下の宿す偽りの力を切り裂いた。
    「残りは一人だけど……全体的に削れてたはずだから、多分、あと少し……」
    「っと」
     頷きかけた邦彦が、右側の配下が放ってきたすりこぎハンマーをバックステップで回避。
     すぐさまフロントステップで距離を詰め、炎を走らせた刃を横に薙ぐ。
     壁際へとふっ飛ばし、配下を昏倒させていく。
     邦彦は静かな息を吐いた後、ズンダズンダズンダへと向き直った。
    「さあ、後はお前だけだ、ズンダズンダズンダ」
    「クー……だが、そちらも徐々に辛くなっているはずだクー! 行くぞ、ずんだシェイクグラップルスペシャル!!」
     強がりながら、ズンダズンダズンダはずんだシェイクを取り出し飲み干した。
     ずんだシェイクパワーを充填し、前衛陣の間を舞闘を描くかのような華麗さで駆けまわり、拳を脚を打ち込んでいく。
     社交ダンスでも交わすかのような華麗さで、煌理は拳を、脚を避けて行く。
     気付かれぬよう少しずつ、少しずつ後方へと離脱し……横を、ビハインドの祠神威・鉤爪が駆けた。
     祠神威・鉤爪が得物を振り下ろした瞬間に、煌理は滑りこむような勢いで急接近。
    「隙あり、だな」
     下からえぐり込むような襲撃を、ずんだシェイクカップの頭に叩き込む!
    「クー……」
    「そこだ」
     戦況を把握する暇など与えずに、奈落が影を宿した大鎌風の槍で後頭部をぶん殴った。
     前後からの衝撃を受けよろめくズンダズンダズンダからは退かず、紅く輝く刃を軽く振るい右脇腹を切り裂いた。
    「クー……」
    「……」
     奈落はズンダズンダズンダがうめいても、動かない。
     瞳に殺意を宿したまま、ただただズンダズンダズンダを見据えている。
     ……否。
    「クー……良くもやったクー! 喰らえ、ずんだシェイクプレッシャー!」
     動く必要がないのだと、奈落は笑う。
     振り下ろされていく巨大なすりこぎは、丁が防いでくれるから!!
    「っ……奈落、大丈夫かな?」
    「ええ、おかげさまで」
     丁がライドキャリバー、ザインの力を借りて巨大なすりこぎを跳ね除けていくさまを眺めながら、奈落は改めて距離を取っていく。
     身を守るためではなく、攻める機会を伺うため。
     少しでも早く、ズンダズンダズンダを灼滅することができるように……。

    ●ずんだシェイクよ永遠に
     配下を失ってなお、ズンダズンダズンダの攻撃の激しさに変化はない。が、追撃がないため対処は容易で、治療役一人でも十分に回復が間に合うようになっていた。そして、ズンダズンダズンダ自身守りに優れるわけでもないのか、みるみるうちに傷を刻むことができていた。
     それでなお抗わんというのか、ズンダズンダズンダは舞い踊る。
     舞闘を、前衛陣の間で。
     オーラで受け流した後、小町は霊力を込めた手甲で殴りかかった。
     頬を捉えるとともに霊力を解放し、ズンダズンダズンダの体を縛り付けながら、静かな言葉を告げていく。
    「ボク、ずんだ餅が大好きで。だからシェイクにするって発想聞いたときに衝撃を受けたんだ」
     静かな声音で、淡々と。
    「ずんだを愛する同志よ。だからこそこの広め方には同意できない」
     想いが、言葉が届くように
    「後はボクに任せて。ずんだシェイクは必ず広めてみせる」
    「クー……」
     決意と共に力を込めれば、ズンダズンダズンダは動けない。
     すかさず祠神威・鉤爪が霊障を放ち、更に押さえつけていく。
     その周囲を煌理はめぐり、脚を炎熱させ……。
    「実際に上手いのだから無理して広めずともよかろうて。それともあれか、餓鬼の我儘か。己のみが一番か? 貴様などずんだ餅で窒息死してしまえ」
     祠神威・鉤爪が僅かに力を緩めた瞬間に、炎の力を開放した。
     更に激しく炎上していくズンダズンダズンダの懐へと、秀煉が飛び込んでいく。
     脚に炎を宿した上で、サマーソルト!
    「今だ!」
     蹴り上げ、宙に浮かんでいくズンダズンダズンダ。
     呼応し飛び上がる、ガッテンレッドと丁……二人のヒーロー!
    「行くよ、ガッテンレッド!」
    「おう! 境を繋ぐ堺の守護ヒーロー、丁!」
     呼吸を揃え、空中で一回転。
     体を寄せて、蹴りを放つ!
    「ダブルご当地」
    「ダブルご当地」
    「堺市ヒーロー」
    「神田明神」
    「キック!」
    「キック!」
     ヒーローの力を秘めし二つの蹴りが、ズンダズンダズンダの胸元へと突き刺さる。
     二人がズンダズンダズンダを足場に飛び退けば、戦場全体に漂っていた敵意が消えた。
     丁は静かな息を吐きながら立ち上がり、ザインを手元へと招き寄せていく。
     静かな眼差しで、空を仰いでいくズンダズンダズンダを見据えていく。
     さなかに邦彦が歩み寄り、荷物からずんだシェイクを取り出していく。
     ストローをつけ、ズンダズンダズンダの口へと運んでいく。
    「今度生まれ変わってきたら俺が旨いうどんとずんだシェイクを腹いっぱい飲み食いさせてやる」
     告げていくのは、未来への約束。
    「お前が滅びてもずんだシェイクは滅びん。だから安心して成仏しな。……ま、次回はもっとマーケティングを考えるんだな」
     未来へのアドバイス。
     ずんだシェイクを一口飲み、ズンダズンダズンダは頷いた。
    「こんなに……好きになってくれて嬉しいクー……だから、頼んだクー……ずんだシェイクを……世界に……」
     言葉を途切れさせると共に倒れ伏し、爆散。
     ずんだの香りだけを残し、この世界から消滅した。

     各々の治療や元配下たちの介抱を行った後、灼滅者たちはズンダズンダズンダの残して行ったずんだシェイクに口をつけた。
     一口飲み、静かな息を吐いた後、奈落はひとりごちていく。
    「まぁダークネスは気に食わないが……ずんだシェイクは旨かったな。うん」
    「ずんだうまいよなずんだ。でも最近うぐいす餡って最近見ねぇな。ちょっと探しに行きてぇなぁ」
     秀煉もまたずんだシェイクを飲みながら、仲間たちい提案した。
     少し、観光していかないか、と。
     否を唱える者はいない。
     灼滅者たちは邦彦が尋ねた店の場所を中心に、観光へと動き出す。
    「あーまい甘い甘いずんだを召し上がれ♪」
     ずんだケーキを探したいと語っていた洋の鼻歌が響く中、人々の楽しげな輪に紛れていく。
     仙台発、新感覚ずんだシェイク。その元となったずんだ餡も、きっと、心惹かれる程に美味しいもの。
     ルーツを知り、楽しんでいく……そうすれば、より心に強く残る思い出となるのだろう。

    作者:飛翔優 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月1日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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