カンナビス灼滅作戦～獄魔大将を灼滅せよ

■リプレイ

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「そろそろお付き合いも終わりにしたいっすよね」
　長杖を手にアプリコーゼ・トルテ（三下わんこ純情派・d00684）は言いながら物陰から周囲を見渡し、その場所へと視線を向ける。
　視線の先にあるものは朽ち果てた廃病院――かつての殲術病院。
　さきの武神大戦獄魔覇獄において獄魔大将であった智の犬士・カンナビスはあの廃病院の院長室にいる。灼滅者達はカンナビスを灼滅すべく、この場所へとやって来た。
「油断なく、確実にここで灼滅いたしましょう。不本意な思いをしたであろう、同胞が為に」
　カンナビスは人造灼滅者達の遺体をアンデッドとして蘇らせ、配下として従わせている。石神・鸞（仙人掌侍女・d24539）ら人造灼滅者達にとっては因縁の深い相手だ。
　死者を弄ぶ事は決して許される事ではない。神の名の下、カンナビスを断罪すべく深海・水花（鮮血の使徒・d20595）は視線をカンナビスがいるであろう場所へと向けると、同じような思いを胸に本田・優太朗（歩む者・d11395）も準備を整える。
　エクスブレインの説明では廃病院には出入口がいくつかあり、カンナビスに逃げられる可能性がある。なので今回の作戦は５チームで遂行する事になり、ここにいる仲間達はもう１チームと共に、防衛線が築かれている正面入口から進攻する。
「早くカンナビスさんにあって見たいけど、ガマンだね」
　そう言いながら真波・悠（強くなりたいと頑張るココロ・d30523）は連絡を確認した。
「犬士カンナビス……色々と仕掛けてくれたけど、確り灼滅させて貰うから其の心算で首を洗って待っていろよ」
　御子柴・天嶺（碧き蝶を求めし者・d00919）の決意を耳にレナス・アグロン（白銀の盾・d30051）も白銀の盾と身の丈程の白銀鋼の大剣を構えると、リデル・アルムウェン（蒼翠の水晶・d25400）も藍の瞳をその場所へと向ける。
　正面には数多くのアンデッド達が見え、受けた説明通りに防衛線を築いていた。
（「この援軍は命を懸けてまではカンナビスを助けないだろう……そう思うが……」）
　この周辺にはソロモンの悪魔・ハルファスの配下達が監視するように動いているとの事だが、援軍が来る前に正面の制圧を済ませてカンナビスを灼滅しなければ。リデルはビハインド・リリィを背にクルセイドソードに手をかける。
　準備は整い、物陰に身を潜める灼滅者達は作戦開始のタイミングを待つ。
　そして――、
　その時はやってきた。
　
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「いくっすよ！」
　光の奔流の中、魔法少女衣装に変身するアプリコーゼの目前を天嶺と鸞が駆けて行く。
「お前達の相手は私だ！」
　月のような輝きを放ち、閃く一撃は目前のアンデッドの体を貫き、鸞のライフブリンガーと両手持ちのマジカルな長杖をライフルのように構えるアプリコーゼのフリージングデスが放たれるとその攻撃に2体のアンデッドが崩れ落ちる。
　グオオオォォ！！
「させるか！」
　崩れ落ちたアンデッドを越え、3体のアンデッドが飛び掛ってくのを目にレナスはひらりとかわし、マテリアルロッドを構える優太朗と共にコールドファイアを放ちそれらを倒す。
　さらに襲い掛かるアンデッド達の攻撃をリリィと共にリデルは防ぎ、返す刃で叩き伏せ、水花はレイザースラストを繰り出すとエアシューズを駆り悠はスターゲイザーを放つ。
　煌きの一撃にアンデッドは倒れるが、その後から新たなアンデッド達が前に出る。
「多いな」
　さすが防衛線を築いているというだけあり、数は多い。盾を左に持ったまま白銀鋼の大剣を構えなおしてリデルはちらりと視線を向ければ、共に正面で戦う仲間達も武器を手にアンデッドへと立ち向かっていた。
「僕達も負けていられないね」
　優太朗の言葉に頷くと得物を手に天嶺は地を蹴りアンデッドへと一撃を放つ。
「さっさと片付けてカンナビスを倒すっすよ！」
　アプリコーゼはミニスカ衣装にロングジャケットを翻し、イカロスウイングを目の前に立ち塞がるアンデッド達へと放った。
　防衛線を築くアンデッド達だが、灼滅者18人との戦いで徐々にその数を減らしていく。
　自身の、仲間達の攻撃により倒れていくアンデッド達。元は病院灼滅者である彼らを目に出来れば傷付けたくないと思う水花だが、元凶であるカンナビスを断つ為には必要な事と考え、ホーミングバレットを放つ。
（「必ず仇はとります……だから、どうか」）
　崩れ落ちるアンデッドを前に瞳を伏せる水花だが、残る数はわずかだ。
「どどーんとカッコよくいくよ！」
　元気よく放たれる悠のオーラキャノンにアンデッドが倒れると、手近にいる残りのアンデッドも仲間達があっという間に倒してしまった。
　気付けば正面の防衛線は総崩れとなり、数えきれぬほどのアンデッド達は灼滅者達の手により倒されていた。視線を向ければ共に戦う別チームも残りのアンデッドを倒し終えたようだった。
「入口付近のアンデッドは粗方片付いたようだな」
　周囲を見渡すレナスは仲間達と共に正面ロビーへ向かうと、共に正面から進攻した別チームの徹が地図を見ながら険しい表情で病院を見まわしていた。
　ＤＳＫノーズを使用した徹によれば、まだ内部に強力な敵が残っているという。
「先行して内部の敵は見送るか、それとも片付けながら院長室を目指すかのどちらかでしょうか」
　その説明に少し考え、口にする天嶺。
「中のアンデッドを無視して進む訳にいきません。左右に分かれて掃討しながら院長室を目指しまょう」
　徹の提案に徹と共に行動するユーリーはこくりと頷き、ここで分かれる8人の仲間の顔をじっと見つめた。
　どうか、ご無事で。
「皆様に神のご加護を」
　短い言葉と共に向く笑顔に水花も優しい笑みを返す。
　共に戦った16名の灼滅者達は左右に分かれ、院長室へと向かう事にした。
　
●
「連絡こないね」
　分かれた8名の仲間達を見送った悠は手にする携帯へ視線を落とすと、ぽつりと呟いた。交戦の連絡はリデルにも届いていない。
「もうカンナビスと戦ってるのかな？」
「そうかもしれませんね」
　各チームに連絡する余裕すらない状況なのだろうか。不安そうな悠の言葉に水花も同意し、
「もし戦っているなら急いだ方がいいね」
「そうだな、私達も急ごう」
　リデルとレナスも頷いた。
　心霊手術を施そうとする優太朗だが、一人で二人にそれを行うのは時間がかかりすぎる。一同は予定通りに院長室へ向かう事に。
　薄暗い病院内を灼滅者達は照明用のランプの灯りだけを頼りに警戒しながら進んでいく。
　……ゥゥ、ゥゥ。
「なんすか？　犬っすか？」
　どこからともなく聞える不気味な呻りにアプリコーゼは周囲を見渡し言うが、ランプで照らされるのは荒れた病院内だけだ。
　警戒を強めて進んでいく中、鸞はその気配に気付く。
「……悠様！」
「わあっ！」
　背に焼けるような痛み。振り向けば大柄なアンデッドが立っているではないか。
　グオオオオォォォォォ！！
　驚いたまま立ち尽くすその体を切り裂こうと巨大な腕を再び振り上げる！
「リリィ！」
　その声に髪をなびかせビハインドは一撃を防ぐとクルセイドソードを手にリデルも切りかかった。
「大丈夫ですか？」
「な、なんとか」
　受けた不意打ちのダメージに顔をゆがめる悠は癒えた傷の礼を水花に言い、
「よくもやったな！」
　お返しとばかりにエアシューズを駆ると天嶺、鸞がそれに続いた。
「背後から攻撃なんて卑怯っすよ！」
　ばしんと弾き、避けようとするそのタイミングを狙っての攻撃を攻撃はざくりと腕を切り裂くが、余裕のようだ。優太朗とレナスの攻撃をものともせず、大柄なアンデッドは腕で受けると、
　オオオオオォォォォ！！
　声を響かせ腕を薙ぐ。鋭い爪が閃くその攻撃は灼滅者達へと向くが、ビハインドと共にリデルが防ぐ。
「助かったっす」
　リデルはアプリコーゼの礼に頷き応えると、リリィ共にアンデッドへと攻撃を繰り出した。
「しぶといですね」
　鸞とアプリコーゼの攻撃を受けるアンデッドを目に優太朗はぽつりと口にする。攻撃は当たっているのになかなか倒れないのだ。
「ですが、ここで時間をとる訳にはいきません」
「そうだな」
「さっさと倒して進むっすよ！」
　正面で戦ったアンデッド達とは違い、このアンデッドは攻撃、防御共に高いが、動きは鈍い。
　水花の言葉にレナスとアプリコーゼは言葉を交わしアンデッドへ攻撃を繰り出した。
（「……朽ちかけた骸を勝手に縛り付けるなんて……」）
　戦いの中、得物を手に優太朗の胸にあるのはカンナビスへの怒り。
　今、目の前で行く手を阻むこのアンデッドは元は病院灼滅者である鸞、レナスの同胞だ。その仲間達の骸を使い、蘇らせる行為を許していい訳がない。
「……命の冒涜をこれ以上するなっっ！！」
　攻撃を正面から受け、アンデッドは苦しむように吼えた。まるで血を流すようにどす黒い何かが傷口から流れ、床に落ちる。
　オオオォォ……！！
「一気に片付けるぞ」
　アンデッドの様子に残り体力が少ないと気付いたレナスは大剣を振り上げ、切りかかる。ざん、と胴を裂く刃に低く、うめく声が響いた。
　大柄な体を支える事も難しいのか、ぐらつくアンデッドにリリィが霊撃を放ち、それと同時にリデルはクルセイドソードを手に神霊剣を繰り出した。
　戦う中、連絡がないかと悠とリデルはちらりと確認するが、やはり連絡は届いていない。このアンデッドとの戦いに時間をかけてはいられない。
　灼滅者達は畳み掛けるように攻撃を続け、徐々にアンデッドの動きが鈍くなっていく。
　そして、
「これで最後です！」
　仲間達の攻撃に続き、天嶺に渾身の一撃がアンデッドの体を貫いた。
　立て続けの攻撃を受けたアンデッドの体力は限界を超えており、その一撃は致命傷となったようだ。切り裂かれた腕がずるりと床に落ちると灰になる。
　オ、オオオォォォォ……！！
　断末魔にも似た声を上げ、アンデッドの体は腕同様に灰となり、消えた。
「手強かったですね」
「院長室へ向かいましょう」
　戦いを終え、息を整える灼滅者達だが時間はない。天嶺と優太朗が交わす言葉に仲間達は院長室へ向かおうとすると、
「みんなまって！」
　連絡を受けた悠が呼び止める。その声に仲間達は足を止め、連絡を聞く様子をじっと見つめて待つ。
「うん、うん……こっちは了解だよ。ありがとう」
　緊張が混じる声でやり取りをかわし、悠は仲間達へとその内容を告げた。
「カンナビス、灼滅できたって！」
　
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　秘密の通路から進攻したチームからもたらされたそれを耳にした灼滅者達は、続くであろう詳細を聞くべく悠へと視線を向ける。
　連絡によれば場所は秘密の通路。状況は分からないが、その場所でカンナビスを灼滅する事に成功したのだという。
「はぁ、何とか片付いたか……」
　武器を手にしたままの天嶺は様々な思いを胸に仲間達を見渡せば、満身創痍とまではいかないが、怪我をした者は多い。それだけ今回の作戦は困難であったという事が伺えた。
「あとは撤収するだけだな」
「そうでございますね」
　レナスの言葉に頷く鸞だが――、
「大変！　ソロモンの悪魔が来たって！」
　新たに伝わる連絡に慌てる悠。
『ソロモンの悪魔の一隊が、たった今病院へ侵入しました』
　それは裏口チームからの連絡だ。その内容に一気に緊張が駆け巡る。
「皆様、撤退しましょう。これ以上この場所にいるのは危険でございます」
「そうですね」
　ここに留まっていればやって来たダークネス達と戦う事になるかもしれない。鸞と優太朗の言葉に反対する者はいなかった。
「カンナビスを倒し、僕達の目的は果たした。ハルファスと戦うのはこの次だね」
　リデルは言い、頬を伝う血を拭うレナスも踵を返す。
「さあ帰るっすよー！　気合を入れて帰るっす！」
　ひらりとミニスカートを翻しアプリコーゼが駆け出すと、仲間達もその後を追うが水花の足取りは少し重い。
「水花さん、早く！」
「早くしないと敵が来ちゃうよ！」
「……すぐ行きます」
　水花はカンナビスが何か資料を残していないかを調べようと考えていたが、その時間はないようだ。優太朗と悠の呼びかけに病院灼滅者達の冥福を祈り、先を進む仲間達の元へ。
　
　こうして智の犬士であり武神大戦獄魔覇獄で獄魔大将であったカンナビスは灼滅者達の手により灼滅された。
　一人のダークネスが灼滅され、それによってこの先何が起こるのか。それはまだ誰も分からない。
　だが、いずれ、何らかの情報がもたらされるだろう。

作者：カンナミユ	重傷：なし 死亡：なし 闇堕ち：なし
種類： 公開：2015年1月16日 難度：やや難 参加：8人 結果：成功！
得票：格好よかった 6／感動した 0／素敵だった 0／キャラが大事にされていた 2
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