
都内某所、かって大作ファンタジーTCGを作成しようとして頓挫し、莫大な借金を作って廃業した会社カタパルトカンパニー。
社長及び社員の幾人かが自殺した曰くのあるその会社のあったビルの近く。
ブレイズゲート化した人気の無い路地裏に、奇妙な空気の流れが現れ、落ち葉や埃を舞い上げ、中央の空間に吸い込まれる様に渦を巻く。
その中心に赤い閃光が煌めき、1枚のカードが現れる。
対角線上の角を軸とし、くるくると回転したカードが地面に落ちると、また閃光が煌めき、赤い鎧を華美に着飾り、薔薇を紋章化した図案の旗を持つ騎士が現れた。
「ちっ、ここは何処だ? キュールの姿も見えん」
現れた騎士は眉に手を当てると、眼を細めて辺りの様子を確かめる。
「また探しに行かねばならんのか……ったく不肖の弟を持つと苦労する」
嘆息した騎士は薔薇の旗を手に周囲の探索を始めた。
「おい、そこのお前ら、2本のレイピアを持った騎士を知らんか?」
ブレイズゲート内部で起きる事件はエクスブレインでは予知できない事と、連続してカードの敵が都市伝説として現れている事もあり、有志の灼滅者達がチームを組んで、カタパルトカンパニーのあったビル周辺を見回っていた。
そのうちの1隊が、薔薇の旗を持った騎士と遭遇し声を掛けられた。
「……知る訳ないか。遭っているのならお前らは死体の筈だしな……つまらん事を聞いた。侘びとしてこの最強騎士国グレートナイト最強の騎士、『盛装の騎士』クライダー・シュランクが、なるべく苦しまない様に殺してやろう」
着飾った騎士……盛装の騎士クライダー・シュランクは、そう言って灼滅者達を睨みその旗を翻す。
最強騎士国グレートナイト……都市伝説として実体化するというTCGの国の1つであり、その名を聞いて引き下がる灼滅者達ではない、灼滅者達はそれぞれ得物を構えると、クライダー・シュランクに相対したのである。
| 参加者 | |
|---|---|
![]() 歌枕・めろ(黄金の林檎・d03254) |
![]() 近衛・朱海(朱天蒼翼・d04234) |
![]() ウェア・スクリーン(神景・d12666) |
![]() 立川・春夜(花に清香月に陰・d14564) |
![]() 巳越・愛華(ピンクブーケ・d15290) |
![]() 夜久・葵(蒼闇アンダンテ・d19473) |
![]() 類瀬・凪流(オランジェパストラーレ・d21888) |
![]() 鷹嶺・征(炎の盾・d22564) |
●
「この最強騎士国グレートナイト最強の騎士、『盛装の騎士』クライダー・シュランクが、なるべく苦しまない様に殺してやろう」
薔薇紋の旗を翻したクライダーが、灼滅者達を睨む。
「騎士なのにレディ相手に挨拶の仕方も知らないのね。お行儀からやり直しなさいな」
「わ、本当にゲームに出てくる騎士さんだ~っ、華やか! ……っと、その言葉、そっくりそのままお返ししますっ!」
その視線を気にする事無く言い返した歌枕・めろ(黄金の林檎・d03254)が、嘆息と共に飴色の瞳で睨み返し、人差し指を突き付けた類瀬・凪流(オランジェパストラーレ・d21888)が、リズムをとる様にステップを踏むと、彼女のナノナノ『助六』がそのステップに合わせて踊る様に宙を舞う。
「へぇ~っ、ちょっとナルシストっぽいけど、結構イケメーン……兄弟揃ってるところが見てみたかったかも」
「揃ったら揃ったで厄介よ。折角の各個撃破の機会なんだから、ちゃんと倒してあげないとね」
そのクライダーをじーっと見返した巳越・愛華(ピンクブーケ・d15290)が、腰に手を当てそう評を下し、近衛・朱海(朱天蒼翼・d04234)が霊犬の『無銘』の頭を撫でる。
「夜久葵、と申します。正々堂々と勝負させていただきますね」
「初にお目に掛ります、鷹嶺征と申します。盛装……華やかに着飾ることでしたか。いやまあ確かに華やかというか、派手ですね。……なんにせよ、倒させていただきましょう」
「たった一人……しかし、最強を名乗る程なのでしょう、油断はできませんね……」
夜久・葵(蒼闇アンダンテ・d19473)がスカートの裾をつまみ優雅に一礼すると、続いて血色の瞳を向けた鷹嶺・征(炎の盾・d22564)も礼に則り 頭を下げる。そのやや後ろで、ウェア・スクリーン(神景・d12666)が白い長髪を肩の後ろへと流し、クライダーの佇まいを洞察していた。
「はっ、見知ったメンツと、ってのは普段以上に心強いもんだな、さーて、さくっと騎士サマと対決といきますか!」
そんな仲間達を見て歯を見せて笑った立川・春夜(花に清香月に陰・d14564)の左耳にイヤリングが揺れる。
「数を揃えれば勝てると思っている輩の多い事よ。戦いとは量ではなく質である事を知らしめてくれよう」
灼滅者達の名乗りを聞いたクライダーが、ドン! と戦旗の石突で地面を打って腰を落とす。
「そう簡単に抜かせはしませんよ」
「私の名はウェア……、クライダーさん、参りますよ……」
征が夜霧を起こして仲間達を包む中、槍を手にしたウェアが、白い着物の裾を翻して地面を蹴り、仲間達がそれに続いてクライダーへと駆け出した。
●
「刺し穿ち、加速する一撃を……」
「私たちの前に一人で来たのが運の尽きよ!」
ウェアの槍が捻りを加えながら突き出され、朱海の持つ刀纏旭光の反った刀身がクライダーに叩き込まれる。
「力無き者が幾ら集うても無駄な事ッ!」
2人に続いて距離を詰めた凪流ら前衛陣を、纏めて戦旗で薙ぎ払うクライダー。
前衛陣が裂傷を刻まれ押し返されるが、
「上から目線で語ってくれるじゃねーか。そーいう『いかにも』ってカンジ、嫌いじゃないぜ、全力でお相手させてもらおうじゃねーの、いくぞ夜久!」
押し返された前衛陣と入れ代る形で、春夜らスナイパーの2人が仕掛ける。
葵が突く槍を戦旗の柄で跳ね上げたクライダーだったが、その空いた脇腹に春夜が回転する杭を叩き込む。
「まだまだっ、無銘、みんなも回復して!」
いち早く無銘から浄霊眼での回復を受けた朱海が、他の仲間の回復を指示しつつ、クライダーへと跳び掛かる。
「やはり大言を吐くだけの事はありますね」
身の周りをウロボロスブレイドで固め息を整えたウェアも、裂かれて赤く染まった着物に手を当て、再びクライダーへの距離を詰める。
「愛華、避けてっ!」
クライダーの目の動きを見て声を上げた朱海だったが、反応するより早く戦旗を掲げて踏み込まれ愛華が吹っ飛ばされる。
「その踏み込みの速さ、流石です……ですが、私も負けてはいません」
「てめぇ、何してくれてんだ!」
ウェアと春夜が怒気も露わに、愛華を吹き飛ばした体勢のクライダーに躍り掛かった。
「旗が武器ってカッコイイですね。ただ……少し、盛装すぎる、かも? 歌枕さん、類瀬さんよろしく。」
一突き突き入れ、ウェアと征と鍔迫り合いを演じるクライダーに、ふふっと笑った葵がスカートの裾を翻して跳び退くと、
「OK夜久ちゃん。さぁ、痺れてしまいなさい」
「葵先輩了なの。めろちゃんに倣って痺れろっ!」
めろが腕に嵌めた杭打機が高速で回転しながら繰り出され、続いた凪流が赤い交通標識を叩き付ける。
「ぬ……腕が……」
多重にパラライズを刻まれたクライダーは、素早く視線を泳がせると、風を唸らせ舞う様に戦旗を振り回す。
「フラッグ・ウェーバーみたいね。クライダーちゃんは騎士を辞めても食べていけるよ」
押し返されためろが感心する様に言い、
「見てるだけなら美しいのかもしれませんね」
「ナノナノ~」
葵が祝福の言葉を風に変えて味方を癒すと、それに応じる様に助六もふわふわハートを飛ばす。
「ほら、感心してばかりもいられないよ。みんなで畳み掛けないとねっ!」
凪流の言う様に、振り回した旗の柄をドン! と地面に突き立てたクライダーは、掌を開いたり閉じたりして麻痺の回復を確認している。
「そうね。舞をみているだけでなく、戦いという名の舞踏を一緒に踊らないとね」
汗で張り付いた髪を掻上げた葵が地面を蹴り、仲間達もタイミングを合わせて躍り掛かる。
「弟さんがドイツ語で冷蔵庫で、お兄さんが洋服ダンス……ホントにこの会社のネーミングセンスはどうなっていたんでしょう。……潰れるのも分かる気がします」
嘆息と共に呟いた征が、めろに向かって戦旗を振るうクライダーに影の鎖を飛ばす。
「これしきの小細工!」
腕に絡まる影の鎖を、強引に引き千切ろうとするクライダーに愛華。
「小細工だけならそうかもしれないけど、小細工の上にパワーが加わると厄介だよね?」
振り下ろされた巨大な刃の剣圧で、愛華のくせっ毛が揺れる。身を捩ったのか剣撃はかすめた程度だったが、砂埃の向こう、体勢を崩したクライダーに春夜達が畳み掛けている。
「お?」
自らも加わろうと刃を振り上げた愛華の体を、征のダイダロスベルトが覆いその装甲を強化する。
「ありがとね征くん。わたしたちも畳み掛けちゃおう」
「どんどんその武威を振るって下さい。僕は誰かの盾である事、それが望みですから……」
礼を述べ地面を蹴る愛華を見送った征は、その愛華と挟み込む形で斬撃を繰り出すウェアに、ダイダロスベルトを投じた。
●
「てめぇ、騎士のくせにちまちまと人の体力を奪ってんじゃねー!」
戦旗が振るわれる度にクライダーの傷が癒えるのを見た春夜が、胸元の蒼月の十字架を躍らせて跳び蹴りを叩き込む。……が、薙がれた戦旗が体に絡み付き、春夜の体は足が届く前に叩き落とされた。そこに振り下ろされる戦記。
「隙あり、だよ。もしかして二枚目半なタイプだったりする?」
「いいところを……」
そこに横合いから愛華。唸りを上げ振り下ろされる刃に、クライダーは春夜への攻撃を諦め跳び退いたが、着地したその体を穿つ鋼糸とダイダロスベルト。
「ふふっ、痛い? ねえ、痛いかしら? ……と、コホン」
「逃がさないよ。朱海ちゃん、ウェアちゃんやっちゃって!」
ダイダロスベルトを投じた葵が一瞬、邪な笑みを浮かべるが、仲間達と一緒である事を思い出し、咳払いしてすまし顔になり、鋼糸でクライダーの腿と脇腹からの出血を強いためろが、距離を詰める2人に声を上げる。
「調子に乗るな雑魚供が!」
激高したクライダーが振るう戦旗が、刃を振るった朱海の体に叩き込まれる。
「私が苦しむことで仲間が勝機を見つけられるならこのくらい!」
ぐっと堪える朱海に無銘が回復を飛ばし、逆側からウェア。
「動きを段々と追えてきましたね……これを避け切れますか……?」
うねったダイダロスベルトがクライダーの体を締め付ける。
「なんの、この様なもの……」
それを引き千切ろうとしたクライダーに巻き付く影の鎖。
「1たす1は2ではないのです。ちゃんとやれば10にも20にもなる」
征の影縛りが加わりクライダーの動きを縛る。
「という訳でお終いなの。ご苦労様でしたっ!」
その身動き取れなくなったクライダーの顔に、凪流が交通標識を叩き付けた。
大きな衝突音が響き、ゆっくりと仰向けに倒れるクライダー。
……だがその時、その手に握られた戦旗が、竜巻に巻き上げられる様に渦巻き、烈風に巻き上げられた砂塵が灼滅者達を襲う。
「ちっ、退けっ!」
発せられた春夜の声が耳朶を打つ前に、前衛陣が跳び退いた。
「今のは……危なかったぞ……」
倒れそうになるのを踏み止まり、前衛陣が退いた隙に己を鼓舞して回復したクライダーが、肩で息をしながら灼滅者達を睨みつける。
ある程度回復した様ではあるが、殺傷ダメージも大きい様で、当初の様な精細を欠いていた。
「しぶといね~、しつこい男は嫌われるよ」
助六がふわふわハートを飛ばすのを傍目に見ながら、凪流がひらひらと掌を振る。
「けど……あと一押しだよね? 一気に仕留めちゃおうよ! Jaegerらしくね!」
愛華が得物を肩に担ぎ上げると、皆が頷いて腰を落とし、戦旗を構えるクライダーに向かって地面を蹴る。
「この一突き、避けられますか?」
「蠅が止まる様な突きで偉そうな口を叩くな!」
繰り出された突きを戦旗の柄で跳ね上げ、そのまま柄と柄をぶつけ合い押し合う形になるクライダーと葵。
「確かにあたなは強いのかもしれません。言いましたよね? わたし達を『数を揃えれば勝てると思っている輩』と……教えてあげる。ひとりではできないことも、みんなでなら可能ってことを」
言ってさらりと髪を掻き上げた葵の顔が、クライダーの視界から消える。代わりに現れたのは回転する2つの杭打機。身を屈めた葵の後ろから、めろと春夜が迫っていたのだ。
「これがその答えよ! めろ達の連携攻撃、存分に味わってね」
「さっきの猛攻を凌いだのは褒めてやるぜ。だが、今度はどうかな?」
2人のドクマスパイクが叩き込まれ、流石のクライダーも蹈鞴を踏む。
「ぐうぅ……バカな……」
焦燥の色浮かぶクライダーの瞳に映ったのは、しゃぼん玉と一緒に突っ込んで来る凪流。
「まだまだびっくりさせるよ。この蹴りをくらえっ!」
「小娘供が……」
凪流が焔を纏う蹴りを繰り出すが、カウンター気味に戦旗を叩き込まれて吹っ飛ばされた。更に追撃を掛けようとするクライダーの前に、
「貴方一人の邁進など、怖くない! 止めてやるわ!」
朱海が立ち塞がり、振るわれた戦旗を刀纏旭光で受け止めギリッと奥歯を噛む。
「ウェア、愛華!」
朱海の声に応じ、左右から躍り出たのはウェアと愛華。
「ちっ……なっ!?」
舌打ちして跳び退くクライダーだったが、その脚に伸びた影の鎖が、その行動を許さない。
「逃がしはしないのです」
焦るクライダーを見つめる征の血色の瞳が、いつもより赤くなっている様に思えるのは気のせいだろうか?
「私達が合わせた力が……その旗ごと断ち切ります……両断の一撃を」
「あの世で弟さんに宜しくね!」
ウェアの起こす風の刃が螺旋を描いてクライダーを穿った所へ、振り下ろされる愛華の巨大な刃。クライダーが渾身の力を込めて戦旗を振るうと、意外な程簡単にその刃が跳ね上げられ空中で回転し、勢い余ったクライダーがつんのめる。
「斬艦刀だけと思ったよね? 私がこれも持ってたの忘れてた?」
その目の前で体を一回転させ向き直った愛華の手には、一本の槍が握られており、その穂先がクライダーの喉に突き入れられていた。その隣に落ちて来た斬艦刀が、大きな音を立て地面に突き刺さると、戦旗を落としたクライダーの体も、ゆっくりと仰向けに倒れたのだった。
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「服を飾る前に、己を飾るべきだったな」
「如何な最強といえども、無敵ではない。一人では勝てないって言うことよ」
体の輪郭がぼやけカードに戻るクライダーを見て春夜と朱海が呟くと、
「皆さんお疲れ様でした。しかし一体どれくらいの『騎士』が存在するのでしょう」
その拾い上げた『盛装の騎士』クライダー・シュランクのカードが、ボロボロに破れていたのを見て、誰とは無しに征が問う。
「最強の騎士……と言っていたけれど、騎士さん以上に強い騎士さんはもう現れないのかな?」
「出て来た騎士は、皆、最強を自称していたと聞きますよ」
小首を傾げる凪流に別のチームから話を聞いていたウェアが応える。
「なんだ、それじゃ私達が最強って訳でもないのね」
残念そうなジェスチャーを取る凪流。
「どこかで弟さんに会って、自分がやられた相手の方が強かった。とか話してるんだよ、たぶん」
うんうんと頷きながらそう言ったのはめろ。
「じゃあ帰るわよ。お疲れ様でした」
スカートの裾を摘み、クライダーの消えた場所に一礼した葵が踵を返すと、Jaegerの面々もそれに続き、都市伝説が具現化するブレイズゲートを後にしたのだった。
| 作者:刑部 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
![]() 公開:2015年1月15日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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