同族拒絶

    作者:一縷野望

    「バッ、バケモノ……」
     妹の唇は、はっきりそう紡いだ。
     でたらめに手足をばたつかせる父の首を咥えた兄は僅かに瞳を眇めるも、すぐににたりと唇を歪め、破かれた腹から肉をはみ出させる母を指さす。
    「かーえでぇ、父さんの血、おいしいよぉ? 母さんのは残しといたからぁ」
     妹は紐で操られるように、母の亡骸に跪き絨毯にひとさし指を添える。
     じゅく……。
     水っぽい音をたてた赤は、なによりも贅沢な甘露に思えた。けど震える舌が触れるギリギリで、止まる。
    「いや……違う。わたし、違う」
     わたしはバケモノじゃない!
    「いやぁあああああああああっ」
     これ以上兄の前にいるのが怖くて、妹・茅原楓は泣き叫び部屋を飛び出した。
     

    「茅原楓さんっていう、高校1年の女性が闇堕ちしかかってるよ」
     敢えて淡々と灯道・標(小学生エクスブレイン・dn0085)は口火を切った。
     ささやかな倖せや哀しみ、そんな当たり前に翻弄されながらも、平凡に一生を終えるはずだった少女は、大学生の兄の闇堕ちに引き摺られてしまった。
     完全に堕ちてしまった兄の方は既に行方をくらましてしまい、残念ながら今回灼滅は叶わない。
     ……でも妹はまだ助かる可能性が、ある。
     彼女が灼滅者になれるかどうかはわからない。けれどもし素質があるのなら、闇堕ちから救いだして欲しい。
    「もちろん、無理な場合は灼滅して」
     それもまた灼滅者の役目だから。
     
    「介入できるのは、深夜、コンビニ帰りの二人組を襲う時点」
     残念ながら、事前に彼らを遠ざけるのもこの中の誰かが身代わりになるのも叶わない。
    「幸いなのは、被害者が即死じゃないってトコかな」
     一人は無傷で一人も首を噛まれ怪我をしているがなんとか自分で動ける状態。
    「もし避難させるなら、可能なら色々気遣って欲しい……かな」
     楓が少し前まで所属していた『日常』の住民が怯える様は、さぞかし彼女の心を抉り蝕む事だろう。
    「――バケモノ」
     標は声をのせず唇だけそう動かした。
     それは楓が兄へ投げた台詞でもあり、恐怖に煽られた被害者達が普通に発してしまいそうな台詞でも、ある。

     ダンピールとサイキックソードのサイキックを駆使する楓は、バケモノと指さした兄と同じモノになりつつある自分に絶望している。
    「でも、ね……キミ達だから、楓さんの絶望をなんとかしてあげられるんじゃないかなって思うんだ」
     バケモノ。
     そう指さされてもおかしくない領域に至ってしまっているのが灼滅者だ。
     同族にして、同族に堕ちていない者達からの真摯な言葉であれば、届くのかも、しれない。 
     普通でなくなってしまった彼女へ、絶望以外の未来を示してあげられるのかも、しれない。
    「楓さんがダークネスになり果ててしまった場合は、灼滅してあげて。絶対に」
     自分の姿をしたモノがヴァンパイアとして生きるなんて、楓は耐えられないだろう。
     ……それが最期の慈悲だ。
    「でもできれば……」
     助けてあげてと祈り口ずさみ、標は下げた拳を握り締めた。


    参加者
    ヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253)
    アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)
    鬼神楽・神羅(鬼祀りて鬼討つ・d14965)
    御印・裏ツ花(望郷・d16914)
    アムス・キリエ(懊悩する少年聖職者・d20581)
    七篠・零(旅人・d23315)
    三好・遥(トークライ・d31724)
    エメラル・フェプラス(エクスペンダブルズ・d32136)

    ■リプレイ

    ●糸
     ――ふつり。
     糸が、切れた。
     それは案外太くしっかりとしていたけれど実は中身はスカスカな糸、別の名を『正常』という。
    「ひ……ッ」
     粘っこい鮮血で口元を汚した少女が剥き出しの犬歯で襲い来る。まるで恐怖映画の序盤、まさか自分が被害者になるなんて……。
     半狂乱の悲鳴はしかし、背筋を氷点下に引きずり込むような風に阻まれた。
    「騒がず落ち着いてこちらに来て下さい」
     風の主は10にもならない幼い少年、アムス・キリエ(懊悩する少年聖職者・d20581)
    「彼女の事は私達に任せて」
     柔和にして堂々たる態度で言われれば、虚脱状態の彼らに逆らう気持ちが起るわけもない。
     ところで――。
     強い叱責に対して浮かぶモノにの中には『恐怖』や『怯え』があるのではなかろうか?
    『そんな目で……みっ見ないで!』
     別方向からの圧力で消沈に至る刹那被害者達が浮かべでしまった感情は、楓の心へと突き刺ささってしまう。
    「今晩は」
     咄嗟に視界を遮るように立ったのは御印・裏ツ花(望郷・d16914)だ。堂々と胸を張り豪奢な巻き髪を指で弾くと彼女の名を口にしかける。
     が、
     細い月の如く目を細める七篠・零(旅人・d23315)が、柔和につり上がる唇に人差し指をあてたのに気づき、別の言葉へ切り替えた。
    「今宵は一寸、貴女を救いに参りました」
     背後を意識しいつでも眠りへ導く風を指に纏わせながら。
    「怖がらないで」
     その間に零は楓のおでこを肩に押しつけて完全に視界を塞ぐ。
     彼女の中、破裂しそうな恐怖と狂気、更には見知らぬ者達に囲まれる混乱、それらを少しでも和らげたい、と。
    「……これで痛みは消えるはずだ。気をしっかりもつがよい」
     ふらつく負傷者を回り込むように支えた鬼神楽・神羅(鬼祀りて鬼討つ・d14965)は、首筋へESPで生成した薬を塗布する。
    (「一瞬たりとも気は抜けぬ。茅原殿の為にも彼らを守らねば」)
     楓の方を気遣いつつも手際よく祭壇の光で手当する。
    「あくまで応急処置だから。病院に早く行って」
     三好・遥(トークライ・d31724)は深い襟で隠した口をもごもごと動かす。その物言いは気怠げと鋭さが同居する不思議なものであった。
     神羅と遥は遮蔽を意識して立つ、もちろん楓の心を護るためだ。
    「……怖かったよね?」
     屈託ない笑顔のエメラル・フェプラス(エクスペンダブルズ・d32136)は、無気力な彼らの手を取り戦場外へと優しく導いていく。
    「大丈夫です」
     更に現われたのは、目を見張るような絢爛豪華な身なりの少女・アリス・クインハート(灼滅者の国のアリス・d03765)
    「此処には、皆さんを『脅かす』方は『初め』からいらっしゃいませんから」
     不運な巡り合わせを愁い、けれど悲劇が確定せぬよう力を尽くすとアリスは心に誓う。
    「落ち着いて。こっちだ」
     感銘と虚脱が混ざり合いもはや混迷に陥り始めている二人の背を押して、ヴァイス・オルブライト(斬鉄姫・d02253)は完全に戦場から待避させる。戻ってすぐに殺界形成、再びの被害者が生まれぬよう手を打った。

    ●魂を示す、名
     遥の掲げるさすまたの先にゆらり、暖か色の光が灯る。
    「初めまして、お嬢さん。俺は七篠零。君の名は?」
     肩に押しつけた瞳から零れる無言の涙が落ち着くのを待って口火を切る。
    『……かえで』
     名はその人を形作るモノ、だから最初は必ず彼女の口から聞きたかったのだ。
    「ありがとう、楓」
     残酷な世界の理に投げ出された彼女の寄りかかれる縁になりたい、そんな想いをいつも浮かべる笑みに足して。
    「楓、ですね」
     裏ツ花もまたそう呼ぶと、口元に弧を描く。
     希望を抱けなどと軽々しく口にするつもりはない、ただ此処で命を諦めて欲しくないから尽くす……言葉も、力も。
    「こんばんは、私、アリス・クインハートと申します」
     小さな淑女は蜂蜜色のさら髪を揺らし深々とお辞儀する。
    「ご安心下さい、楓さん……貴女を助けに参りました」
     何故皆が此処にいるのかを明確に告げ穏やかに微笑みかけた。
    「先程は心に負担を強いてしまい申し訳ありません」
     すかさず清廉なる十字を携え背筋をぴんと伸ばしたアムスが、静々と頭を垂れる。
    「あれは私の力に怯えたのです。決して楓さんへではありません……そう、私達も人ならざる力、闇を知っています」
     続きを引き取りヴァイスは説明を補足する。
    「でも、力には必ず『持つ意味』が存在する」
    「わたくし達の力は貴女と同じようなもの」
     要は使い方次第との裏ツ花に、ヴァイスは瞳を閉じて添えた。
    「無論、誰かを傷付ける為の力ではない……誰かを護る為の力だ」
    「わたくしも過去にこの力で大切な人を救う事ができました」
    『ちから……』
     まざまざと蘇る、先程彼らを襲い肩をつかみ血を啜った自分。彼らは違うと言うけれど、自分は傷をつけてしまった!
     ……両親を殺し生き血を啜っていた兄と同じ事をしてしまった!
    『アあ、アッ……』
     顔を覆い崩れる楓を支えるように、灼滅者達は各々楓の名を呼びかける。
    「楓さん、私達は化け物ではありません、勿論楓さんだって人間です」
     身を屈めアリスはそっと肩を撫でる。
    「どうかお心を強く、闇に負けないで、私達もついています」
    『触るなッ』
     しかし縋り付くようにアリスの手を握る。
    「楓ちゃんこんばんは!」
     腰下げのライトより目映く笑うエメラル。その不安定さに楓は気付かず、だが楓の『中身』は気が付いた。故に、返るのはにぃと牙を剥きだした獰猛な嗤い。
    「くるくるまわる気持ちに追いつけないの?」
    『くるくる……そう、わたしがわたしじゃなくなるみたいに……』
    「不安で怖くて悲しいの?」
     小首を傾げるエメラルへ、楓は震えるように頷いた。
    「それなら大丈夫だよ、人である証拠なの」
    『……ひ、と?』
     縋るような声、しかしすぐに……、
     ふ。
     灯りを消す様に闇へ、堕ちる。
    『楓は追いつけてないけれど、わたしは理解しているわ』
     無造作に放たれた逆十字を遥は敢えて避けずにその身に刻ませた。引き裂かれ晒された赤き血肉は、しかし即座に彼自身の叫びで癒される。
    「ほら、治った」
     破けた裂け目をつまみ上げた瞳は細い三日月。その所作に驚愕を隠しきれないのは――ダークネス。
    「君の攻撃なんて僕等にとっては普通の人が普通の人を殴ったのと何も変わらない」
    『う、煩い……黙れ!』
     カンテラの明かりの中、ヒステリックに喚く楓に浮かんだのは、希望。
    「君の方が煩いよ」
     遥は淡々とそう制すると、重たげな瞼から覗く紅を少女へと注ぐ。それだけで彼女の中の闇が、竦む。
     遥の示した『普通』は、非常に効果的に楓の心を『日常』へと揺り戻していた。
    「貴女は人。だから抗い、悲しみを覚える」
     裏ツ花は瞼を下ろす。
     何もかもをなくせばラクになれるかも、しれない。
     でもそんなことは、させない……させる、ものか!
    「――」
     それまで見守っていた神羅は、すと指を掲げた。
     目覚めたばかりの闇は揺らぎやすい、つまりまだまだ覆せる可能性が、濃い。
    「強大な力と理性は同時に存在し得る!」
     目を醒ませと、神の刃で鼻先を斬り裂いて、まずはその『制御された力』を神羅は見せつける。

    ●お兄ちゃん、ごめんね
    『わたしは理性的よ』
     掌から伸びる実体無き刃に深緋の瞳をうっとり寄せて舌を這わせる。とたんに弾けた目映い光は前衛四人に牙を剥く。
    「楓ちゃん」
     爆砕晴れた後に、絶望に顔色を染めて立つ楓を見つけて、エメラルはすぐ様声をあげた。
    「楓ちゃんはやっぱり人だよ。ほら、そんなに悲しい顔してる」
     それは人の証だから嬉しい、でも。
     ナイフを翳し四人の疵を塞ぎつつ、少女はくるり。一回転すれば、ほら元の場所。背中の赤黒い翼をはたり、異形の姿を見せて。
    「……ちょっと姿変わることあるボクだけど、それでも普通に生きたいって思うの」
     同じだよ。
    「友達になりたいな!」
    『……あ、ぅ』
     無垢な声に伸びる指を包み込みエメラルはあどけなく口元を崩した。
    「そう、汝は得られるのだ」
     翡翠を眇めた神羅もまた手を差し伸べる。
    「仲間を。共に行こう!」
     人としての言葉を紡ぎ、超常たる力の意味示すべく救いへと導かんとする。
    『仲間……わたし、が?』
     戸惑うような声に灼滅者一同は大きく頷いた。
    「楓さん」
     アムスが十字を掲げれば懐中時計の鎖がちりり、まるでチクタクと時刻むような音にも聞こえる。彼女の時を止めたくは、ない。
    「私も同じ。心は人であろうと闇に抗い続けています」
     真摯な言葉と共に、楓の胸元にアムスは切っ先をあてがう。
    「恐ろしいならその衝動は私達が受け止めましょう」
     ――主よ、導きたまえ。
     ――闇に苦しむ者に救いを。
     今回は純粋に救うための力の行使、決して決して昏い破壊の衝動では、ない。
     まるで自らも赦しを請うように、アムスは彼女を杭で縫い止める。
    『わたしの……中の……この忌まわしい『奴』を杭で殺して』
     血を好むバケモノが杭に貫かれ死ぬ、そんな上辺の常識に引き摺られた言動は、奇しくも楓が人に戻りつつある事を意味する。
     ――Change suit The Heart!
     電子音がアリスの小さな耳朶をなぞり落ちる。
    「楓さん……ごめんなさい、少し、失礼しますっ」
     身を竦めた楓へ『止まれ』の気持ちを込めてレッドストライク! 導き顕す先端をつきつける。
    『くぅ……楓、躰を渡せ。殺されてしまう!』
     焦れたようなダークネスの舌打ち。
    「闇に呑まれてはいけません。全てを失ってしまうのです」
     裏ツ花は克明に告げ膨らんだ巨腕で張り飛ばす。
    「先程の痛みを忘れないで。わたくし達が貴女の痛みを受け止める」
     つけ込ませない、絶対に。
     悩み苦しんだ恋人を救い上げたこの鬼の手で、貴女も救う絶対に!
    「楓」
     落ち着いた声音でヴァイスはその名を呼んだ。
     自らの闇を引き出し力を高めようとしたが、存外揺らめく目の前のダークネスを屠れそうだと拳を固めた。
    「楓、どうか堕ちないで欲しい。兄が堕ちて悲しいのならばなおさら」
     渾身の力で殴りつけるヴァイスの眼差しは、鮮血に耽る奥で泣きじゃくる少女を捜し続ける。
     大切な人が闇堕ちして姿を消してしまう。その悲しみ、孤独は痛い程に――だからこそ、この力を使い迎えに行った。
     ……もう、彼女の兄には届かないのかもしれない、それでも。
    「君の力も大切な誰かを救う為にあるハズだ」
     できる事はあるはずだと言い切るヴァイスの脇で、一瞬だけ神羅は瞳を眇める。
     ……もしかして、自分たちは非常に残酷な事を楓に強いているのかも、しれない。
     ほぼ闇に堕ちきり望み無き兄を持つ妹へ、生きろと突きつけているのだから。
    (「それでも、救える人間は救いたい」)
     故に神羅の炎には一切の迷いはなく、ただただ少女の闇を灼き払う。
    『もうわたしの居場所はない。だから楓、絶望に疲れた楓……』
     吐息のように震える指先で構えるソードを遥のさすまたが払った。
    「君は化物なんて大層なものじゃないよ」
     気怠げな仕草で翳すそれは蛍のような柔らかな朱を放つ。
    「君が、君を、どう見るか」
    『わたし……ハッ! この娘は仲の良かった兄貴へ言ったのよ!』

     ――バケモノって。

    『…………いやぁあああああ!』
     自らの声を悲鳴でかき消すように夜を引き裂く甲高い声。
     フラッシュバックする、振り返りにたにたと笑っていた兄の顔。けれどあの時兄は、わたしがバケモノと言ったから……。
     がむしゃらに無我夢中に、伸ばした指で捉まえた腕に牙を立てる。
    「苦しいのは、人である証だよ」
     腕を噛ませた零が、最初から全く変わらない穏やかな声音でそう囁いた。
     ……最初に抱き留めてくれたように、残酷な現実から庇ってくれたように。
     また、涙が、零れた。
    「だからどうか、君は茅原楓である事を諦めないで」
    『う……』
     諦めてしまったお兄ちゃん。
     わたしが……諦めさせてしまったのかも、しれない。
     ……でも、わたしは。
    『わたし、は』
     牙が抜け、ずるりと崩れ落ちる楓の手を零はぎゅっと握りしめた。
     ぱし、ぱしぱしぱし。
     小気味の良い音をたてて、そこへ全員の手が重なっていく。

    ●答えを探したいから
     直後に膝を折った少女は堰ききったように泣きじゃくりはじめた。
    「泣くといい、気が済むまで」
     支え抱くヴァイスは吐き出させるように背中を叩いてやった。
     ……泣き疲れた彼女は零の「良かった」に照れたように俯く。
    「楓さん、お腹、空いてませんか?」
     愛らしいトランプ模様の紙箱をアリスが開ければマカロンが顔を出す。
    「心身ともに疲れていると思います」
     缶の紅茶を差し出しアムスも促す。
    「ありがとう」
     様子を見ながらアムスは学園についての説明をはじめる。皆も口々に言い添え補い、極力混乱させぬよう気遣った。
    「仲間って……」
    「そういう事なのだ、茅原殿。居場所はちゃんとあるのだ」
     安心させるように頷く神羅に楓は顔をあげるコトで応えた。
    「一緒にお話してー、遊んでー……ね?」
     あどけない仕草でぎゅうっと抱きつくエメラルに微笑み返し。
    「でも、わたしが学園に行っていいのか、な?」
    「おいでなさい、楓」
     裏ツ花はきっぱりと気持ちよく言い切った、共に歩みたい、そんな願いを滲ませて。
    「君の望む姿は何?」
     逸らしがちの視線だが、真っ直ぐな言葉を遥は嘯く。
    「未来に描いて信じなよ」
    「わたしの望み……は、お兄ちゃんを探し出すこと」
     自分が兄へ為したコト思うと胸がちりちりと痛くなる、でも……。
    「わたし、ちゃんと謝りたい」
     力強く零された言葉を後押しするように、皆が暖か色の眼差しで頷く。
     ――この後、彼女は学園に至りより深く残酷な現実を知る。兄がもう助けられないのだという現実を。
     けれど楓の心は決して折れるコトはないだろう。何故なら此処にいる仲間達が茅原楓という名を呼んでくれたから。
     個人を証明する唯ひとつの名前を、呼んでくれたから――。

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月11日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 5/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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