●しあわせのゆめ
バージンロードを歩き、愛する人と結ばれていく友人。
ようやくチャンスをもぎ取ったのだと、意気揚々と海外へ飛んでいった友人。
大学の頃からコツコツと努力を重ね、着実に日々を乗り越え毎日幸せそうに笑っている友人。
全てを見送るだけの女が、ここには居た。
名を、リナ。
夢を追いかけ、日々修練を積みながらバイトに明け暮れている女優の卵。
自分が日々辛い練習を重ねながら嫌な客や変な客に笑顔で応対しているさなかにも、就職を選んだかつての友人たちは次々と結婚へ、幸せへと向かっていく。
働くことに意義を見出し、メキメキと頭角を現している友人もいる。小さなことが幸せだと、日々笑っている友人がいる。
でも、これが自分の選んだ道。これでいいんだと思っていた、言い聞かせていた。
けれど友人の吉報を聞く度に、そう言い聞かせている自分に気付く。友人に嫉妬している自分に気づく。……道を間違えたのではないかと、不安にかられる日もある。
両親からは、そろそろ満足したか? との手紙もやって来る。お見合いの話もあるらしい。
「……」
動けないまま、リナはぼんやりを眺めていた。
友人がバージンロードを歩き、愛する人と結ばれていく光景を。
友人がチャンスをもぎ取り、意気揚々と海外に飛んで行く光景を。
友人が、小さな幸せを積み重ねている光景を……。
何度も、何度も、何度も……夢の中で、何度も。
全てはシャドウの創りだした夢の中。
輝く世界の眩さに動けなくなってしまいそうな女の、悪夢の中……。
●夕暮れ時の教室にて
灼滅者たちを出迎えた倉科・葉月(高校生エクスブレイン・dn0020)は、真剣な表情で説明を開始した。
「リナさんという女性を悪夢に囚えているシャドウがいる……そんな光景を察知しました」
ダークネスにはバベルの鎖による予知能力があるため、接触は困難。しかし、エクスブレインの導きに従えば、その予知をかいくぐり迫ることができるのだ。
「とは言え、ダークネスは強敵。ソウルボード内では弱体化するシャドウといえど、です。ですのでどうか、確実な行動をお願いします」
続いて……と、葉月はリナが囚われている状況についての説明を開始した。
リナ。二十代半ばの女性で、女優を夢見て日々修練を送っている。が、練習を重ねてもオーディションを重ねても芽が出ない、バイトでもトラブル続き……といった形で、少しずつ心が削られていた。
そんな折、次々と友人の吉報が届いた。リナは祝福しながらも、嫉妬している自分に気付く。そんな自分も嫌で……などといった事を繰り返している内に、そういった心の疲れや闇をシャドウに突かれて悪夢を見せられている……と言う状況である。
「悪夢世界は、リナさんが見送った友人たちが輝く世界へと……結婚や栄転と言った形で旅立っていく光景を次々と繰り返している……そんな世界。皆さんが赴く時は、ちょうど友人の結婚式ですね」
そんな状況で、リナを悪夢から救い出すことになる。
「方法はお任せします……が、そうですね。リナさんは今、分岐点に差し掛かっています。このまま女優の夢を諦めずに目指すか、諦めて田舎へと帰るか……。どちらが正しいのかはわかりません、ですが……」
その背中を押すことができたなら、友人たちを心から祝福することができる。悪夢から抜け出すこともできるようになるだろう。
そうして悪夢から救い出したなら、邪魔されたことに起こったシャドウがウェディングドレス型の眷属を引き連れ襲い掛かってくる。
シャドウの力量は、配下がいる状態で灼滅者を相手取れる程度。
妨害能力に秀でており、幸せな幻影を見せることによる心を惑わす、悔いを呼び起こさせる事により心の痛みを与える、影縛り……の三種を用いてくる。
一方、ウェディングドレス型は防衛役。シャドウを守りながら、鐘の音色を鳴らす事によって身を癒やし、毒などを浄化する……といった行動を取ってくる。
また、シャドウは戦うにつれて頭が冷えていくのか、戦闘開始から十分後には逃走準備を開始、早くて十五分……妨害しても二十分後にはソウルボード内からは撤退してしまうだろう。
「以上で説明を終了します」
現地までの地図などを手渡し、締め括る。
「リナさんの最善がどの道なのか……それはわかりません。ですが、決してシャドウが乱して良い感情ではありません。どうか、全力での戦いを。何よりも無事に帰って来てくださいね? 約束ですよ?」
参加者 | |
---|---|
鹿嵐・忍尽(現の闇霞・d01338) |
華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389) |
宮代・庵(小学生神薙使い・d15709) |
神音・葎(月黄泉の姫君・d16902) |
天草・水面(神魔調伏・d19614) |
客人・塞(荒覇吐・d20320) |
葦原・統弥(黒曜の刃・d21438) |
梶間・宗一郎(無為無窮の拳・d30874) |
●夢に迷い、色を、涙をなくした
ステンドグラスが彩る幸せな色。神の見守る場所、祝福に抱かれていく二人。
灼滅者たちもまた、祝福を与えるものとしてその世界に降り立った。
けれど担わず探していく。
夢に迷いし一人の女性、リナを。
「……」
扉に最も近い場所。
祭壇へと向かう二人をもっとも早く祝ったであろう場所に、彼女はいた。
痛々しいほどに輝かしい笑顔を浮かべながら。かすかな光しか宿らぬ瞳で、ただただ二人を……新婦を眩そうに見つめながら。
灼滅者たちは頷き合い、結婚式を邪魔しないよう低い姿勢で扉の近くへと向かっていく。
いち早く到達した神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)が声をかけた時、世界が止まった。
「えっ……」
戸惑うリナの隣へと、葎は落ち着いた調子で移動する。戸惑いの色を浮かべる瞳を真っ直ぐに見つめ、真摯に語りかけていく。
「夢を追うのは苦しいですよね。若輩者ですが……私にもわかります。けれど今までのあなたの時間は、苦しいばかりでしたか? 輝いて、いませんでしたか!」
「……」
状況がわからずとも、言葉は届いたのだろう。リナは視線をそらし、俯いた。
だから宮代・庵(小学生神薙使い・d15709)は正面へと回り込み、言い放つ。
「リナさん! 人生をどう歩むか決めるのはあなたですのでそのことについてわたしから言うことはありません。ただ、言えるのは大切なのは自分の信じた道を歩むことです。たとえ、信じた道で失敗したとしてもそれはいつかきっと大切な経験になるはずです!」
「リナさんよりも年若い俺では、リナさんが今までしてきた努力や苦労を推し量る事はできないよ」
梶間・宗一郎(無為無窮の拳・d30874)もまた静かに言葉を投げかけた。
人のことをとやかく言えるほど立派な人間でないとの自負はある。
けれど、この夢は……このシャドウがやっている事は気に食わない。だから俯いたまま震えているリナに、輝ける世界に押しつぶされそうになっているリナに語りかけ続けるのだ。
「夢を諦めるのも、夢を追うのもリナさんの自由だ。ただ……どの道を選んだとしても、リナさんの今までは無駄では無い。そう思っているよ」
「……」
静かな眼差しを向ける先、リナは静かな息を吐く。顔を上げ、震えた声音を響かせていく。
「私は、分からない。自分が、何を信じていたのかすら……」
色の篭もらぬ言の葉が広がると共に、世界は変わるモノクロに。
それでも、今までの言葉も届いているはずだから。リナの夢世界に変化があった以上、心を動かすことができているはずだから……これからの世界をリナの色に染めるため、華宮・紅緋(クリムゾンハートビート・d01389)は小さく一礼した。
「こんにちは、お姉さん。夢を追うのは立派なことだと思います。でも、それで地面から足が離れていませんか?」
トン、トンと、周囲を歩き足音を響かせながら、続けていく。
「人は夢を目指して地面を歩く生き物です。夢を見ずにただ生きてるだけの人や、自分を省みず夢を追うだけの人は、本当の意味で生きているとはいえないと思います。そして、夢は現実から逃げ込むための場所じゃありません」
夢は叶わないから夢、と言い切りたくはない。けれど、叶わない夢ならば一生を捧げるのは虚しいこと。
それでも構わないというなら、止めはしないけど……。
「どうでしょう、女優への夢がいつまでに叶わなかったら故郷に帰るのは? 期限があった方がやる気も出るでしょうし、いつまでも叶わない夢を追って人生を棒に振ることもなくなります。ちょっと考えてみてください」
提案を挙げると共に立ち止まり、改めて一礼して退いた。
代わりに客人・塞(荒覇吐・d20320)が歩み出て、箒に腰掛け浮いていく。
驚くでもなく、小首を傾げるでもなく、ただただ灼滅者たちを見回していくリナの視線を箒に乗って追いながら、穏やかな調子で告げていく。
「既に気付いてるかもしれないがこれは夢だ。この夢があんたを苦しめるのは心に迷いがあるから……違うか?」
「……これが夢……うん、そうね。こんなこと、現実で起こるはずがないもの」
素直に受け入れてくれたリナに、塞は言葉を続けていく。
「俺は今すぐ夢を諦めることも勧めないし、ずるずるいつまでも夢を引きずることも勧めない」
今はまだ、リナが直面しているような岐路に立った経験など持っていない。本当の意味で理解などできはしない。
けれど、簡単に諦めてほしくはない。一方で、だらだらと続けて更なる後悔を感じるようなことにはなって欲しくはない。
だから……。
「どうだろう、紅緋も言っていたが、期限設けて、それまでに心を決めるというのは。そこまでは全力で夢を追いかけるといい」
「期限を……夢に……」
リナは紅緋と塞の顔を見比べ、再び俯いた。
世界に変化は……ない。
結論がまだ出ないだろうことは、彩りの加わらない世界の様子から察せられた。
鹿嵐・忍尽(現の闇霞・d01338)は、少しでも良い道へと導くため、後ろから優しく語りかけた。
「例え今諦めたとしても、リナ殿の重ねた苦労の日々は無駄ではないでござるよ」
結果のみが全てではない。
苦難とわかっていた道、辛い話。歩き続けてきたリナは立派だと、言葉に思いを込めて紡いでいく。
「貴殿は挑戦し続けたのでござる、夢を実現しようとしたのでござる。もし最初から無理と諦めて何もせずにいたとしたら、やはり後悔したのではないでござるか?」
一呼吸の間を置いて、リナは手のひらを見つめ始めた。
思い出を巡らせるのに十分な時間を置いた上で、忍尽は更に言葉を重ねていく。
「田舎に帰ったとして、それでもまだ己の中に女優の夢が生き続けた時は、また挑戦すればいいでござるよ。夢を捨てない事もまた、リナ殿の自由でござるのだから」
拳を握り、リナは顔を上げていく。
「……そうね、田舎にも劇団はあるかもしれない。でも……」
先を語らせぬため、葦原・統弥(黒曜の刃・d21438)は口を挟んだ。
「今は苦しいですが、それは無駄な事ではありません」
笑顔で、穏やかに。
夢を追いかけ努力を積み重ねてきたリナに敬意を表し、少しでも役に立ちたいとの思いのまま。
「リナさんが夢を諦めないのなら、この苦しみは演技に深みを加えると思います。新たな道に進むとしても、今までの努力はきっとその道の役に立つ筈です」
振り向くリナに、力強く頷き返す。
リナは唇を震わせ、紡いだ。
「この経験も、役に立つ……考えたこともなかった」
瞳を閉ざし、口ずさむ。
経験を、辛かった思い出を。嫉妬していた自分を。
涙など、とうの昔に忘れてしまっていた自分を。
世界が白へと染まっていく。
空を水色が塗りつぶしたのなら、地面を覆い尽くしたのは黄緑色。風は暖かく、日差しはまばゆく……雲ひとつない青空の下にある草原が顕現した!
頬に筋を伝わせながらも微笑むリナの正面へと、天草・水面(神魔調伏・d19614)は移動。小さく一礼した上で、穏やかに語りかけていく。
「人の夢と書いて儚いと言うが、そもそも夢なんてのは初めから幻であって、目を覚ませばすぐに忘れられてしまう物なのさ。彼女が抱いているのは希望だ。たとえ結果がどうあれ、彼女の中に信仰として生き続ける尊い感情だ!」
「……分からない、これがあなたの……あなた達の言うとおり、私の希望なのか、夢なのか」
歌うように朗々と、リナは喉を震わせた。
「でも、分かった。全てが私の血肉となる、全てが私を彩る輝きになる。……迷ってよかった、悩んでよかった……私は今、ここにいる。……私は選ぶ。今はまだ夢を追いかける! 後一年、今、魂に刻んだ思いのままに!」
言葉が終わるとともに、花が咲く。
色とりどりな香りが溢れていく。
水面は微笑み、口を開いた。
「何も問題は無い。今の貴方は十分輝いてるよ」
敬意を持って一礼し、一歩前へと踏み出した。
リナを護るような位置に立ちながら振り向き、地平線の彼方を見据えていく。
「さて、儚い幻よろしく、悪い悪いシャドウを吹き飛ばしていこうかね……!」
光満ち溢れる世界に穿たれた、影。
「全く、安い言葉にほだされおって……そんなだから貴様は燻っていたのだぞ?」
地平線の彼方から、シャドウが一人歩いてきた。傍らに、女性の憧れたるウェディングドレスを従えながら……。
●悪夢より厳しい現実
輝きに満ち溢れた、夢世界。
眼鏡の位置をクイクイと直しながら、庵は語り武装する。
「すべての人間がわたしのように美しくて格好良くて天才でパーフェクトでなんでもできるとは限らないので傷つき挫折して悩むこともあると思いますが、その弱みに付け込むとは……おのれシャドウめ、許せませんね!!! さっさと尺滅してしまいましょう!」
語りつくすと共にたおやかな神楽を舞い始め、ウェディングドレスへと向かっていく。
庵がウェディングドレスへと到達した時、忍尽は印を結び防衛領域を広げながら黒い秋田犬のような霊犬・土筆袴に命じた
「土筆袴、庵殿をお守りせよ!」
「無駄だ!」
左右に飛び回りながら庵の、ウェディングドレスの下へ向かっていく土筆袴を抑えるかのように、シャドウは手をかざした。
手のひらを握ると共に、不愉快な波動が前衛陣の間を駆け抜ける。
「っ……この程度……!」
胸が、心が訴え始めた痛みを感じながら、葎は歌う朗らかに。
夢を選んだリナを護る盾として、檻を破った果てに辿り着いた光りあふれる世界を汚させぬため!
耐える力を与えるため、水面もまた標識に警告のサインを記していく。
「大丈夫、問題無いッス。後ろから支えるッスから、全力で攻撃していって欲しいッスよ!」
言葉に呼応するかのように、家電を纏いロボットのような姿をしているビハインド・ペケ太が駆け出し、ウェディングドレスに向かって得物を突き出していく。
ペケ太を飛び越える形で、塞は跳躍。
「まずはウェディングドレスから破壊する……!」
螺旋状の回転を加えた槍を突き出して、右肩部分を貫いた。
ゆらり、ゆらりと揺らめきながら、ウェディングドレスは鐘を鳴らす。
本来なら祝福をもたらすはずの鐘の音は、ウェディングドレスに生じた汚れや解れを消し去った。
シャドウが攻撃し、ウェディングドレスが護る布陣。
元よりそれは織り込み済みと、灼滅者たちはウェディングドレスを優先して攻撃した。中々のタフネスに見た目こそ攻撃が中々進まぬように思えたけれど……それでも、治療を重ね果敢な攻撃を継続した。
そして……おおよそ六分後。
庵の振り下ろした杖がウェディングドレスを捉え、魔力が爆発。
清らかなはずの布地を焼きつくし、葬り去った。
「流石わたしですね!」
眼鏡をクイクイと押し上げながら、庵はシャドウへと向き直る。
紅緋もまた向き直り、右腕を赤く肥大化させながら駆け出した。
「華宮・紅緋、これより灼滅を開始します」
「この程度で勝てると思うな!」
再び、前衛陣の間を不愉快な波動が駆け抜ける。
構わず、紅緋は殴りかかる。
肥大化した拳が影に阻まれた刹那、彼女の後ろから宗一郎が飛び出した。
「くだらない相手だ。せめて俺の糧になってもらおうかね」
死角を突く形で拳を放ち、鳩尾へとえぐりこませていく。
シャドウが揺らぐ事はない。
「はっ!」
一喝とともに跳ね除けられ、着地。姿勢を整え、仕掛ける機会を伺っていく。
既に七分の時が経過しようとしている。
予測通りならば。最短でも八分後……最長でも十三分後には逃亡してしまう……。
冷静さを取り戻した証……とでも言うべきか、シャドウの動きは徐々に守勢へと移行していた。
心の痛みをもたらす波動の頻度は少なくなり、代わりに幻影により心を惑わす、影で縛る力が増えていく。深追いすることもなく、灼滅者たちから距離を取ることも増えていた。
故に御しやすくなったとはいえ、強力な事に違いはない。
瞳に写り込む幻影を振り払いながら、葎は赤き呪詛を束ねし光の帯を纏っていく。
疲弊した精神を癒やしながら、言い放つ。
「灰は灰に。悪夢はより深い闇の底へ還れ!」
言葉と共に、紡ぎ始めるは優しい歌。
輝ける世界に相応しい、希望を導く明るい詩。
知らぬ内にリズムに乗りながら、塞はシャドウの下へと向かっていく。
十分に強化の力は、足止めの力は重ねたと。
既に十五分が経過しようとしている……これ以上、時を重ねるわけにはいかないからと!
「時間がない、一気に畳み掛ける」
「土筆袴は治療を頼むでござる。拙者は……このシャドウをぶっ飛ばすでござるよ!」
忍尽は体の前で素早く印を結び足を炎熱させた上で、拳を連打する塞の横を駆け抜けた。
シャドウの背後へと回り込み、振り向きざまの回し蹴り!
前後から齎された衝撃に、シャドウはうめき声を上げていく。
足もふらつかせていくけれど、炎をまとっても行くけれど……倒れる気配はない。
「ぐ……しくじったか……だが!」
「させるか!」
天に拳をかざし、逃げる気配を見せたシャドウを阻むため、統弥は黒い刀身に黄金の王冠が描かれている巨大な剣に炎を宿す。
掲げられている腕めがけてぶんまわし、引っ込ませることに成功した。
「ぐ……」
「もう、守りも何もない……行くよ、ペケ太!」
すかさず水面がシャドウを指し示し、光を放つ。
得物掲げるペケ太を導いた。
光を浴びながらも振り下ろされた得物をかわしたシャドウは、庵の杖が迎え討つ!
「この完璧な私から逃げられると思いましたか?」
先端が喉を捉えるとともに、魔力を爆破。
二歩、三歩と退かせたなら、その先には宗一郎が腰を落として待っている。
「……」
言葉なく、宗一郎は打ち込んだ。
拳を、何度も。
背中に、肩に太ももに後頭部にふくらはぎに……!
「……ちっ、手応えが鈍い」
「覚えたぞ、小童共」
……打ち込むも、貫くには至らない。
シャドウは改めて空に手を掲げ、穴を穿った。
吸い込まれるように跳躍しながら、言葉を残し消えていく。
「この場の勝利は貴様らにくれてやる。だが、命まではやらん。小童共、覚えておれ。いずれ、必ず……」
残されたのは、平和な世界。
輝きに満ち溢れる草原で……。
●輝ける世界へ
優しい風に抱かれて、胸元で手を握り佇む女性が一人。
紅緋は穏やかな調子で向き直り、一礼する。
「悪夢は終了。良い夢を」
「……はいっ!」
多くの言葉は必要ないと、リナは力強く頷いた。
迷うことはない茨の道。されど、進むにせよ戻るにせよ光ある場所へと繋がっている道を歩み始めたリナに、統弥は微笑みかけていく。
「女優としてのリナさんの姿を楽しみにしています。応援してますよ」
「……ええ、楽しみにしていて下さい!」
未来への契を交わすため。それが、進むための糧となるのなら……!
作者:飛翔優 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年1月12日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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