赤々と燃ゆる刃金の意志

    作者:陵かなめ

    「ソウダ、ガイオウガサマノフッカツコソガ、ワレラノヒガン」
     暗い夜の山の中、再び1人になったアカハガネは、確認するように大地を見下ろした。
    「ゴクマハゴクハオワリ、クロキバハヤブレタ。ワレラノヒガンハハタサレヌママダ。クロキバノホウホウデハダメダッタ」
     少女の姿をしたイフリートはじっくりと力を練り上げ、炎を纏い始める。
    「ガイオウガサマノフッカツヲ」
     その炎は、周囲を煌々と輝かせた。
    「ワレニチカラヲ」
     もっと力を。もっともっと、力をと。アカハガネは更に力を練る。
    「ガイオウガサマノフッカツコソガ、ワレラノヒガンナノダ。ソノタメニハ――」
     炎は膨れ上がり、巨大な力は静かな山の植物をも周囲を震撼させた。
     
    ●依頼
     教室に現れた千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)が、いつにも増して真剣な表情で話し始めた。
     獄魔大将であったクロキバが敗北した事で、イフリートの穏健派が力を失ったようだということ。残された武闘派のイフリート達が、自分達の力でガイオウガを復活させる為の行動を始めるようだということが最初に説明された。
    「それで、その方法が、自らが竜種化イフリートとなること、なんだって」
     竜種イフリートとなると、知性が大幅に下がり、目的を果たす為に短絡的に行動するようになる。今回の場合は『ガイオウガ復活の為に、多くのサイキックパワーを集めようと暴れまわる』事となるだろう。
    「もちろん、こんな方法でガイオウガ復活は果たせない。でもね、穏健派に抑えられていた反動と、それが無くなった勢いで、実行してしまうイフリートが多数出てしまうみたいなんだ」
     それから、と。
     一通りの説明を終えて、太郎がぎゅっとくまのぬいぐるみを握り締める。
    「みんな、アカハガネのことは覚えている?」
    「まさか、アカハガネちゃんも竜種化しようとしているの?」
     太郎から告げられた名前を聞き、陽野・鴇羽(焔盾・d22588)ははっと顔を上げた。
    「うん。そうなんだ」
    「そんな。それじゃあ、止めに行かないと!」
     鴇羽が言うと、太郎が頷く。
     アカハガネは北関東の山中の源泉近くで竜種化しようとしている。その阻止に向かって欲しいと太郎は皆を見回した。
    「最初に言うと、アカハガネを灼滅するか説得できたら、依頼は成功だよ」
     灼滅か説得か。
     その方法を含め、皆が説明に耳を傾ける。
    「彼女に色々思うところがある人も居ると思うけど、説得するためにはまず戦わなければいけないんだ。もちろん、灼滅する場合でも、ね」
     アカハガネに『竜種になったとしてもすぐに倒されてしまうんじゃないか?』と思わせることができれば、竜種化をやめるように説得する事も可能というわけだ。そして、そう思わせるためには、戦闘してある程度ダメージを与えなければならない。
     武闘派の彼女を説得するには、やはり実際に殴って分からせないことには、と言うことらしい。
    「気をつけて欲しいのは、10分経過すると竜種化してしまい、戦闘力が強化されてしまうんだ」
    「10分か。もし、経過しちゃったら?」
     鴇羽が問う。
    「その時は、説得は不可能になっちゃうよ」
     太郎は力無く首を振った。
     戦いになれば、アカハガネはファイアブラッド相当のサイキックを使ってくる。皆で相談し、戦い方を決めて欲しい。
    「大変な依頼だと思うけど、皆頑張って」
     太郎が皆の顔を見る。
    「説得か灼滅かは、現場の状況で判断して欲しいんだ。でも、竜種イフリートになってしまえば説得は不可能になるから……」
     一旦間を置き、太郎は最後の言葉を口にした。
    「時間内に説得が無理だと思えば灼滅に切り替える必要があるよ」
     厳しい表情で、説明を終えた。


    参加者
    一橋・智巳(強き魂に誓いし者・d01340)
    神虎・闇沙耶(悪鬼獣・d01766)
    殺雨・音音(Love Beat!・d02611)
    刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)
    天神・ウルル(天へと手を伸ばす者・d08820)
    ハリー・クリントン(ニンジャヒーロー・d18314)
    陽野・鴇羽(焔盾・d22588)
    左藤・大郎(撫子咲き誇る豊穣の地・d25302)

    ■リプレイ


     暗い夜の山の中に、獣の咆哮が響く。
     草木は震撼し、その場所だけが赤々と燃えているようだった。
     生い茂る枝葉を分け、飛び込んだ神虎・闇沙耶(悪鬼獣・d01766)は見た。
     巨大な角と猛々しい牙を持ち、何より激しい炎を纏った獣。まさしく、イフリートだ。
    「アカハガネ……さんですね?」
     慎重に距離を見計らいながら、相手を窺う。
    「オマエ、タチハ」
     獣姿のアカハガネが低い姿勢を取り警戒を始めた。
     灼滅者達が次々に茂みから飛び出し配置につく。
    「アカハガネさんは絶対に止めてみせるのです! 話を聞いて欲しいのですよ!」
     天神・ウルル(天へと手を伸ばす者・d08820)が叫んだ。
     足元がやはり少し暗い。ハンズフリーライトを点灯する。
     他の仲間達も、用意したライトのスイッチを入れた。
    「久しぶりでござるなアカハガネ殿、暑くて夏バテするよりも、寒い冬の方が好みでござるか?」
     クロキバとは獄魔覇獄で対立したけれど、良い関係は築けていたと思う。アカハガネとも話し合いで事を収める事が出来たなら。あの夏バテの知らせを思い出す。あの時見舞いに言った縁もあると、ハリー・クリントン(ニンジャヒーロー・d18314)は考えていた。
    「兎に角何としても、竜種化は止めなきゃ! つっきー、一緒に頑張ろう!」
     陽野・鴇羽(焔盾・d22588)が霊犬のつっきーを呼んだ。
     アカハガネと会うのは初めてだ。だが、竜種化は止めなければと、強く思う。
    「ワレノジャマヲスルカ」
     武器を構える灼滅者を見て、アカハガネが前足で大きく地面を叩いた。腹に響く重低音とともに、地面が揺れる。
     こうして向かい合うとイフリートの強大な力を実感した。
     アカハガネ……武神大戦ではクロキバに助力しなかったらしいのだが、何故だったのだろう?
     左藤・大郎(撫子咲き誇る豊穣の地・d25302)はゴーグルで目を保護しながらアカハガネを見た。
    「その疑問も問題も全ては竜種化を阻止してから、ですね」
    「そう言う事。言いたい事、聞きたい事は色々あるが、そんなのは後でやりゃぁいい」
     一橋・智巳(強き魂に誓いし者・d01340)が頷く。
     その時、再びアカハガネが大きく咆哮を上げた。
     否が応でも緊張が高まる。
    「好戦的な種族とは言え、一般人に被害が出ることは見過ごせないな」
     予兆のことも気になると刻野・渡里(大学生殺人鬼・d02814)。
     獣と化したアカハガネが理性を無くし暴れたならば、その被害は計り知れない。
    「うわ~ん。戦いとか、怖いかも~☆」
     仲間の後ろから殺雨・音音(Love Beat!・d02611)がウサ耳をぴょこぴょこ上下させる。
     とか言いながら、しっかりと武器を手にしていた。
    「とりあえず先に拳のコミュニュケーションと行こうぜ」
     準備の整った仲間達を見、智巳が走り出す。
     同時にアカハガネも地面を蹴った。


     アカハガネが纏う炎は更に勢いを増したように見えた。だが、迷っている時では無い。
     説得を目指すのは全員の思いだ。そして、何よりまずは戦闘で勝つことを考える。
     智巳はアカハガネの懐へ飛び込んでいった。
    「目の前の喧嘩に外の理由を持ち込むなんてのは野暮だ、そうだろう?」
     練り上げた闘気を雷に変え拳に纏わせる。
    「めいっぱい楽しまなくっちゃなぁ!」
     ぐっと身を屈め、勢いよく飛び上がりアッパーカットを繰り出した。
     一瞬身をのけぞらせたアカハガネが、前足で智巳の身体に払いをかける。とっさに身を捩じらせ払いを避けた智巳と距離をとるように、アカハガネは後ろへ飛んだ。
     獣型のイフリートは、器用にいくつかの木を足場にして進む方向を変える。
    「タタカウ、ワレハタタカウノダ」
     前足に集めた炎と共に、アカハガネがウルルとの距離を詰めてきた。
    「アカハガネさん、その方法じゃガイオウガさんは復活できないのですよ」
     とっさに身構えるも、相手の攻撃のほうが少しだけ速い。
    「ナニヲイウ、トニカクチカラダ。チカラガアレバガイオウガサマノフッカツモ、オソラク、ナル」
     牙をむき出しにして迫ってきたアカハガネは、炎を纏う前足の爪でウルルの身体を抉った。
     直後、炎が束になって纏わり付いてくる。
    「穏健派が復権してくれれば争い避けられそうでイイんだけどな~」
     それを見た音音が天星弓を構えた。
    「クロキバちゃんもアカハガネちゃんもネオンのタイプだし☆」
     ウルルに向かって癒しの矢を打ち出す。
     治癒を受け、ある程度傷の回復したウルルはまっすぐアカハガネを見据えた。
    「温泉で茹だった頭をわたしのパンチでクリアにしてあげるのです!」
     臆することなく向かって行き、オーラを集中させた拳を幾度も繰り出す。
     あなたにはもっとやるべき事があるはずだから、もっと周りを見ることができるはずだから。
    「だから、何もかもを投げ捨てないで。その方法が正しいかもう一度考えて、みんなを止めて欲しいのです! 竜種化しちゃダメなのです!」
     ガイオウガの復活を望むイフリートが他にも竜種化しようとしていると聞いた。だが、このままだと皆無駄死にしてしまう。そのような事になれば、ガイオウガの復活も遠のくと、ウルルは必死にアカハガネに語りかけた。
    「ウルサシッ」
     撃たれた箇所を庇いながら、アカハガネが跳んで逃げた。だが、彼女の身体を纏う炎は勢い劣らず、まだまだ戦える様子だ。
    「竜種化なんて、絶対駄目だよ!」
     次に鴇羽がシールドを構え飛び上がった。
     同時につっきーはウルルの回復に走る。
    「もし竜種化したら、アカハガネちゃん自身の友達の事、忘れちゃうかもしれないんだよ?」
     動き回るアカハガネに追い縋り、シールドで思い切り殴りつけた。
    「ソノヨウナコト!」
     疾走していたアカハガネは、殴られた場所にチラリと視線を移し身体を反転させて鴇羽目掛けて突進してきた。
    「悪いですが、負けるの嫌いでしてね……」
     と、その時。
     無敵斬艦刀・無【価値】を構えた闇沙耶が、アカハガネの側面から迫った。
    「この勝負、勝たせていただきます!」
     言うなり、振りかぶった刀を力任せに振り下ろす。
     流石のアカハガネもバランスを崩し、走る速度を緩めた。
     この時だと、渡里が黒死斬を繰り出す。続けて大郎は激しくギターをかき鳴らしソニックビートを放った。
    「回復は足りているか?」
    「もう一手、欲しいかも~!」
     音音の返事を聞き、渡里は霊犬・サフィアに回復を命じた。
    「ではキャリバーさんは攻撃ですね」
     大郎は自身のライドキャリバー・キャリバーさんに追撃を促す。
     畳み掛ける攻撃にアカハガネが逃げ走る場所を失った。
     そのタイミングでハリーが急ぎ間合いを詰める。
    「ニンポー・黒死斬ッ!」
     放った斬撃が、アカハガネの身体を斬り割く。
    「ヌ、ゥ」
     アカハガネは唸り、それでも倒れず、一つ首を振りまた走り出した。


     四分、五分と時間が過ぎる。
     アカハガネの炎は凄まじく、隊列を焼き払うような炎は、一度に複数の仲間に大きなダメージを与えてきた。当然、一人を狙った攻撃も重い。
     だが灼滅者達は声を掛け合い、あるいは庇いあい、敵の猛攻を防いだ。
    「うらぁっ」
     智巳の放った蹂躙のバベルインパクトに、アカハガネの身体が吹き飛んだ。
    「グ」
     相手はすぐさま体勢を立て直すが、確実にダメージを与えている感触がある。
     そして六分を告げるハリーのアラームが鳴った。
    「竜種化したくらいで拙者達に勝てると思わぬで欲しいでござるな」
    「ナニヲ……」
     攻撃を繰り出しながら、ハリーはアカハガネの出方を窺う。
    「それに、そちらがその気ならこちらもまだ闇堕ちと言う切り札を残しているのでござるよ!」
    「そう言うこと! 他の竜種イフリートを倒して来たからアカハガネちゃんも倒せるぞ☆」
     仲間を回復しながら、音音も声をかけた。
    「ここで暴れたところで、また俺達に止められるだけだ」
     慎重に距離を取るアカハガネに、渡里がディアーズリッパーを叩き込んだ。
     攻撃の手数が多いため、ここまで随分体力を削ってきた。自分達には暴れるイフリートを止めるだけの力があると、示せたはずだ。
    「今まで竜種化してきたイフリートが灼滅されてきた事、知ってる? アカハガネちゃんが竜種化するなら、このまま灼滅しなくちゃいけなくなる」
     出来れば灼滅したくないとも思う。
     癒しの力に転換したオーラで傷を癒しながら、鴇羽も言葉を重ねた。
    「ガイオウガさんの復活だって、出来なくなるんだよ?」
    「……」
     アカハガネが黙り込む。
    「オマエ自身、竜種化を本気で望んでいるのか?」
     戦いの中、今まで攻め続けていた智巳もまた、アカハガネに話しかけた。戦闘は戦闘、説得は説得。しっかりと切り離して考える。
    「イフリートは只の獣じゃねぇ、誇り高い獣だ」
     周りの期待や、アフリカンパンサーに関わる事に焦っているのではと智巳は言う。
    「どのみち俺らに勝てないようじゃ、竜種化したってとどかねぇぜ、奴には。時期を待て。誇り高いまま、強くなれ」
    「竜種化って、出来ればやりたくないことなんだよね? ネオン達だってわざわざ敵対したいわけじゃないし~、もっと大事な時の為に、奥の手は取っとく方がイイんじゃないかにゃ~?」
     音音の明るい声が続いた。
     アカハガネがじりじりと、灼滅者達との距離を開ける。
    「竜種化。恐るべき力です」
     仲間は全員まだしっかりと立っているし、こちらが押していると大郎は判断した。
    「使われたら我々も貴方を灼滅する以外に道が失くなってしまいそうなほどですが、まったく問題なく使えるのでしたら最初から使っていますよね?」
     慎重に声をかける。
    「竜種化することは本当にガイオウガ復活に繋がっているのですか? 考えることを放棄しているだけではないのですか?」
    「竜種化してもわたし達には勝てないのですよ! わたし竜種倒した事ありますもん、アカハガネさんが竜種になっても勝つ自身があるのです! それでもしますか?」
     ウルルは叫ぶ。アカハガネは炎を立ち上らせるだけで、攻撃には慎重になっているように見受けられる。あともう一息でこちらの声が届くかもしれない。
    「イフリートを纏める者が居なくなれば、ガイオウガ復活どころか、イフリートが他のダークネスの尖兵にされ、イフリートの誇りさえ無くなってしまう」
     互いの様子を感じながら、闇沙耶は落ち着いてアカハガネに語りかけた。
    「もう一度落ち着いて考えて貰えませんか?」
    「……カンガエル」
     絞り出すような声でアカハガネが呟く。
    「一般人に被害が出るような行動をすれば、俺達がその都度動く」
     最後の一押しをするように渡里は更に言葉を続けた。
    「そういう意味では、暴れるのは得策じゃ無い」
    「もう一度、自分で考えてください」
     アカハガネはこちらの話に耳を傾けている。大郎はそう確信する。
    「勝者こそ全てが野生の理なら、この場は退かれるが良いでござる」
     ついにハリーがアカハガネに退くよう促した。
    「ムウ」
     一つ唸り、アカハガネが後方に飛躍する。そして、炎がひときわ大きく立ち上った。
     瞬間、灼滅者達に緊張が走る。
     まだ森の夜は明けない。
     赤々とした炎が草木を照らしていた。


    「ここで躍起になられると厄介? でも我武者羅になる分隙増えそうだしチャンスかもっ」
     音音の言葉に、仲間達は表情を固くした。まだ時間に余裕はあるはずだが、もし限界まで戦うと言うのなら灼滅も視野に入れなければならない。
     膨れ上がった炎の勢いが少しずつ静まってきた。
    「リュウシュノチカラヲモッテ、オマエタチトテキタイスルハ、トクサクデハナイノダナ」
     炎から姿を現したのは、獣姿ではない、つまり少女の姿をしたアカハガネだった。
    「アカハガネちゃん! 話を聞いてくれて、本当にありがとう!」
     少女の姿を確認し、鴇羽が嬉しそうに心からの感謝の思いを伝える。
     仲間達も顔を見合わせ、ひとまず武器を下げた。
     こちらとの距離は相変わらず少し離れているが、アカハガネにはもう戦闘の意志は無いようだ。
    「……怪我をさせてしまったのはすみません」
     闇沙耶が再びアカハガネに声をかけた。
    「進むべき道のあり方をもう一度だけ、ゆっくりと考え直していただけませんか?」
    「ソレハ……」
     アカハガネの顔が曇る。
     竜種化して武蔵坂と敵対しても良いことは無いと納得してくれたはずだ。何が彼女の憂いになっているのか。
    「どうしたの~? 何かあるなら聞くよ~☆」
     音音の言葉に、アカハガネが実に深刻な表情で語った。
    「ダガワレハツギニナニヲスベキカ。ソレガワカラヌジョウタイデ、タダトキヲマツワケニハイカヌ」
    「なるほど、進むべき道、何をすべきか、分からない状態でただ待つだけは出来ないと」
     根気良く、闇沙耶が話の筋を確認する。
     それぞれ思うところはあったが、ひとまずアカハガネの話の続きに耳を傾けた。
    「チカイミライノキボウ、アルイハガイオウガサマノフッカツノタメスベキコトガナケレバ、マタオナジコトガクリカエサレルカモシレナイ」
    「ふーむ。近い未来の希望か、ガイオウガの復活のためやるべきことが無いと、今回のような事件が繰り返されるかもしれないと言うのでござるか」
     ハリーが腕を組む。
    「ソノヨウナコトガナイヨウ、デキルダケナカマヲオサエヨウ」
    「ありがとうございます。その間に、あなた達も何をすべきなのか考えるのですか?」
     大郎の問いに、アカハガネはますます表情を険しくした。そして、チラッと灼滅者達に視線を向ける。
    「ソレハ、ムズカシイコトヲシアンスルハ、ムズカシイ。ダカラ」
    「だから?」
     智巳が首を傾げた。
    「ソコハ、ナニカナイカ? カンガエテオイテクレ」
    「オレ達が?」
     近い未来の希望か、ガイオウガの復活のための何かか、とにかくアカハガネ達がこれから何をすべきかを考えろと言うのだろうか? 渡里が問い返すと、アカハガネは更に一歩後ろへ跳んだ。
    「ワレハ、イマハココデヒコウ。カンガエルケン、ヨロシクタノンダゾ」
     それだけ念を押して、アカハガネは闇に消えていった。

    「色々聞きたい事はあったのですが、それより前に頼まれてしまいましたね」
     残された灼滅者達は、アカハガネの言葉をそれぞれ思い起こしていた。
     大郎の言葉に、ウルルが頷く。
    「え~と。近い未来の希望か、ガイオウガさん復活のため何をすべきか、でしたよね~?」
    「って、アカハガネちゃん、考えるの苦手なんだね」
     と鴇羽。
     つまりは、難しいことを考えるのは苦手なので、何か考えて欲しいと言うことなのだろう。
    「帰ってから、ゆっくりと考えてあげますか」
     それが、『友』の役目だと。闇沙耶が皆の顔を見た。
     そして、アカハガネが消えた闇へ目を向ける。
    「……ふふっ、私も丸くなったものだ」
     一人呟いた言葉も静かに消えた。

     暗い森に、もはや炎の獣は無い。
     残された灼滅者達は、託された頼みを胸に、学園へ帰るのであった。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 10/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 5
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ