無人の山道を紅色の獣が駆けてゆく。
見た目は鹿に似ているだろうか。
立派な角を持ち、牛に似た尻尾を揺らし、馬のような蹄が大地を力強く蹴った。
――モウ、ガマン、デキナイ。
獣の脳裏にクロキバの言葉が過ぎる。
(「考えるのは俺達がするから、お前達は待ってるだけで良い――」)
そう言っていた結果が獄魔覇獄の敗北。
獣は無意識のうちに鼻を鳴らす。
(「ヨワムシノ、イウコトナンテ、シンジラレナイ」)
と、突然、獣の目の前がぱっと明るくなった。
木々の合間に広がる源泉――目的地に着いた獣はゆっくりと足を止める。
どこか幼さを残している顔立ちの獣は暫し源泉を見つめていたが、おもむろに泉に近づいて行った。
彼らを頼ることはせず自分たちの力でやるしかない。
「ガイオウガサマ、ギンシュガ、フッカツ、サセル――!」
朱色の獣を真っ白な煙が包み込んだと思った瞬間、紅色の巨大な龍が空へと駆け上っていった。
「武闘派イフリートが、動き出すのが、視えた――」
灼滅者たちを久椚・來未(中学生エクスブレイン・dn0054)は抑揚のない声でポツポツと語りだす。
獄魔大将であったクロキバが敗北したことで、イフリートの穏健派が力を失った。
一方で、残された武闘派のイフリート達は、自分達の力でガイオウガを復活させるための行動を始めたようだ。
その方法とは、自らが竜種化イフリートとなること。
竜種イフリートとなると、知性が大幅に下がり、目的を果たす為に短絡的に行動するようになる。
今回の場合は『ガイオウガ復活の為に、多くのサイキックパワーを集めようと暴れまわる』ことになるだろう。
「もちろん、こんな方法で、ガイオウガ復活は、果たせない」
來未はゆっくりと首を横に振り、きっぱりと告げた。
だが、穏健派に抑えられていた反動と、それが無くなった勢いで、実行してしまうイフリートが多数出てしまうのだ。
だから源泉に向かってイフリートの竜種化を阻止してほしい、と來未は言う。
竜種化しようとしているイフリートの名前はギンシュ。6~7歳くらいのメスだという。
紅色の輝く鬣を持つ朱色の獣で、見た目は麒麟に近いと言えるだろう。
戦闘時はクラッシャーでファイアブラッドとガトリングガン のサイキック、及びシャウトによく似た技を使う。
ただし戦闘開始10分程で竜種化してしまい、戦闘力が強化されてしまう。
「でも、説得、できないわけじゃない」
ある程度ダメージを与え、竜種になったとしてもすぐに倒されてしまうんじゃないか? と開いてに思わせることができれば竜種化を思いとどまらせることが可能なのだ。
ギンシュはまだ幼いイフリートゆえ、彼女にとって目新しいものには心惹かれるようだ。
甘いお菓子やキラキラしたもの。幼い少女が心奪われそうなものには興味を示しそうだ。
イフリートを説得するか灼滅かは現場の状況で判断してほしい。
竜種イフリートになってしまえば説得は不可能になるので、時間内に説得が無理だと思えば方針を切り替える必要がある。
「相手は、幼くても、イフリート。油断は、ダメ」
教室を後にする灼滅者の背を見送り、來未は小さく唇を動かした。
――どうか、気をつけて、と。
参加者 | |
---|---|
花凪・颯音(花葬ラメント・d02106) |
領史・洵哉(和気致祥・d02690) |
久志木・夏穂(純情メランコリー・d06715) |
柿崎・法子(それはよくあること・d17465) |
ミス・ファイア(ゲームフリーク・d18543) |
暁月・燈(白金の焔・d21236) |
八角・雛姫(高校生殺人鬼・d21951) |
リュータ・ラットリー(おひさまわんこ・d22196) |
●炎獣の願い
何者かが踏みしだいた山道を8人の男女が急ぎ足で駆け抜けてゆく。視界が木々に遮られ、目的の朱い獣の姿は目視することはできない。
と、唐突に先頭を進む花凪・颯音(花葬ラメント・d02106)の視界がぱっと開けた。その先に陽の光を受けて紅色に輝く鬣が見える。あれがイフリートのギンシュに違いない。灼滅者たちには気が付いていない様子のギンシュに颯音はゆっくりと近づいてゆく。
「ダレ?」
人の気配を察したのか、ギンシュはピンと背筋を伸ばし警戒する姿勢を見せた。
颯音は敵意を見せぬように気を付けながら穏やかに声をかける。
「初めまして。俺達は灼滅者。君に話を聞いて貰いに来たよ」
「スレイヤー……?」
ギンシュは怪訝そうな顔で首を傾げた。と、どこからともなく甘い魅惑的な香りが漂ってくる。
(「ナンダ……?」)
ピクリと鼻を動かし匂いの元を探していたギンシュの視線は久志木・夏穂(純情メランコリー・d06715)の胸元でぴたりと止まった。
「どう? キレイでしょっ」
夏穂はにこっと友好的な笑みを浮かべ胸元のネックレスをギンシュに見せたが、ギンシュはぶんぶんと頭を横に振るとぷぃっと背を向けそっけなく呟いた。
「ギンシュ、イソガシイ。ハナシ、キカナイ」
そして、一歩、二歩とギンシュは源泉へと近づいて行く。
「待って!」
思わず柿崎・法子(それはよくあること・d17465)は大声で叫んだ。
「キミ、源泉で何をするつもり? 確かイフリートにとって源泉は大切な場所だって前に君の仲間から聞いたよ」
法子の声に驚き足を止めたギンシュだったが、煩わしそうにパタンと尻尾を一振りし、ぽそりと声を漏らす。
「ギンシュ、ハヤクツヨクナリタイ。スレイヤー、ウルサイ」
「ダメ……竜種化してはダメだよ!」
そんな方法じゃ、君の望みは叶わない――。
ギンシュを止めようと咄嗟に法子は彼女の行く手を塞ぐように前へ出た。しかし、彼女の想いに気付いていないギンシュにしてみればそれは妨害以外の何物でもなく。
「ジャマスルナ!」
ギンシュはカッと紅い瞳を見開くと炎を纏った蹄を大きく蹴り上げ、法子に向かって襲い掛かる。
(「しまった……!」)
衝撃を堪えようとぎゅっと目を瞑る法子だったが、いつまでたっても痛みは来なかった。
そっと目を開けると彼女の目に映ったのは金色の髪。
「大丈夫ですか?」
警戒していたおかげか誰よりも早くギンシュの攻撃に反応した領史・洵哉(和気致祥・d02690)が身を盾にして法子の前に立っていた。
「貴方の朱色も凄いけど、ファイアのも凄いんだからね!」
言うや否やミス・ファイア(ゲームフリーク・d18543)は炎を纏った激しい蹴りを放ち自らの炎を見せる。説得する前に、まずは自分たちの力を示す必要がある。だから、手加減はしない。
「ミスター!」
ファイアはすぐさまライドキャリバーのミスターを呼び寄せ、ギンシュに向かって突撃させた。
「やはり、強さを見せないとわかってくれないようだね」
ギンシュを見据え、八角・雛姫(高校生殺人鬼・d21951)が両手に持った解体ナイフを器用にくるっと回してぎゅっと握りしめる。
雛姫の言葉にええ、と頷き、暁月・燈(白金の焔・d21236)はまっすぐにギンシュを見つめた。
「幼く純粋ゆえに、思い込んだら一直線なのですね」
とはいえ、短絡的に竜種になられても色々と困る。燈は大地を蹴り勢いをつけると真っ白な巨大な籠手をギンシュに向かって振り下ろした。
「ここは阻止させていただきましょう」
●強さを求め
紅い鬣を風になびかせ縦横無尽に大地を駆け回るギンシュは灼滅者の攻撃に怯む素振りを見せない。
「スレイヤー、ジャマ! ギンシュ、キライ!」
苛立ちを含んだギンシュの咆哮に合わせ、バラバラと炎が雨粒のように前衛に向かって降り注いだ。
その美しさに思わずリュータ・ラットリー(おひさまわんこ・d22196)は感嘆の声をあげる。
「おぉっ! 赤いのカッコイイな! でも、俺の白い炎もカッコいいぞっ」
リュータの掛け声とともに白い炎が傷ついた仲間たちを包み込んだ。予知をも妨げる白き炎は癒しを与えると共にジャミング能力も高める。
(「嫌い、か……」)
怒りのこもったギンシュの言葉は颯音の胸に深く突き刺さった。だが、今は灼滅者たちの力を示すことが先。
「ギンシュに俺達の想いを伝えよう!」
颯音が放った白い帯はまるで生きているかのように動きながらザシュっと勢いよくギンシュの左前足を貫いた。噴き出た血は炎となってギンシュの身体を包み込む。
夏穂が炎を纏ったチェーンソー剣を勢いよく薙ぎ払うと、間髪入れずに死角へと回り込んだ雛姫が両手に握った解体ナイフを目にも止まらぬ速さで左右に振るった。
ギンシュの放った燃え盛る紅蓮の炎が灼滅者たちへと襲い掛かる。熱風は容赦のない痛みともに身体にみなぎっていた力を奪い去っていった。
「任せろっ、回復するぞー!」
即座にリュータが癒しの白い炎で前に立つ仲間たちを一斉に包み込む。続いて燈の霊犬であるプラチナが仲間を庇って深い傷を負った主を浄霊眼で癒した。
「ありがとう、プラチナ。でも、私はまだ大丈夫ですから」
心配そうな視線を向けるプラチナを安心させるように燈はダイナミックな蹴りをギンシュに一発。その白いエアシューズの軌跡は空を駆け抜ける星のような煌めきを見せる。
見た目に反して強烈な蹴りに怯んだギンシュの隙をついて洵哉がクルセイドスラッシュで斬りかかった。態勢を整えるとすぐに法子はトラウマナックルを、そして夏穂は抗雷撃を撃つ。だが、ギンシュも負けてはいない。
両者の力は拮抗したまま、時間は刻々と過ぎてゆく――。
はっと空気が変わったのは7分経過を告げる雛姫のアラームが鳴り響いた時だった。
だが、灼滅者たちは冷静に状況を判断し攻撃を続ける。
「ギンシュ、ガイオウガサマ、ゼッタイ、フッカツサセル!」
ギンシュが大地を揺るがすかのごとく大きな咆哮をあげると同時に身体の傷が癒えた。と、再びピピッとアラーム音が響く。
「8分過ぎました! そろそろ全力でいきましょう!」
洵哉は声を張り上げ残された時間を伝えるとクルセイドソードを構え神霊剣を放った。その攻撃はギンシュの身体を貫き霊魂を直接切り裂く。洵哉はギンシュに声を掛けた。
「戦っていても痛くて辛いだけです。ここで死んでしまってはガイオウガにも逢えませんよ?」
だが、ギンシュはフンと鼻を鳴らしてそっぽを向く。
「ギンシュ、ヨワムシチガウ。サイゴマデタタカウ」
「おや、今の私達に苦戦している様であれば竜化しても無意味だと思うよ」
死角へと回り込んだ雛姫がギンシュの耳元で囁いた。そして素早く解体ナイフでギンシュの腱を絶つ。ズンと足に重い枷を付けられたかのような感覚がギンシュを襲う。
「ウ……ウルサイッ!」
雛姫の言葉にギンシュは反論するも、先程までの勢いは見られない。
「ファイア、貴方が変身したって負ける気ないよ」
ふふん、と胸を張ったファイアはミスターを呼び寄せるとひらりと飛び乗り、ギンシュに向かって突っ込んでいった。そしてギンシュにぶつかる直前、ぱっとミスターから飛び降りると華麗な飛び蹴りをお見舞いする。
完全に不意を突かれたギンシュは堪え切れず声にならない咆哮をあげて再び傷を癒した。
「まだ諦めるわけにはまいりません」
キッと薄緑の瞳をギンシュに向け、燈は炎を纏った蹴りを放った。と同時にばっと勢いよく後方から飛び出してきたプラチナが口に銜えた斬魔刀を一閃。ギンシュの大腿部に血が滲む。視線を交わした灼滅者たちはギンシュに言葉をかけるチャンスを伺いながらも攻撃する手を休めない。仲間の回復に徹していたリュータも攻撃に回り、説得の機会を作る。
「ギンシュ、よく聞いてくれ」
手にした槍を振るいながら颯音は優しく諭すようにギンシュに語りかけた。
竜種になったら可愛い物や美味しい物を集めてあげられないこと、ガイオウガと話も出来ないこと。果たしてそれでギンシュの望みは叶ったといえるのか。
「せっかくガイオウガが目覚めても、一緒に喜んであげられないのは……とても寂しいよ」
哀しそうに視線を伏せる颯音を見て、ギンシュの中で何かが揺らぐ。だが、そんな想いを打ち消すかのようにギンシュはぶんぶんと激しく首を横に振った。
「ギンシュ、ガイオウガサマ、フッカツスレバ、イイ。ダカラ、ツヨクナル」
ギンシュは最後の力を振り絞り再び炎を纏った蹄を撃ちつけようとするが、それよりも速く非物質化させた剣を構えた法子が動く。
「バカっ!!」
法子の剣はギンシュの霊魂を直接攻撃したのでギンシュに外傷はない。だが、もうギンシュに動く力が残されてはいないのは明白だった。必死に立ち上がろうとするギンシュに対し法子は一喝する。
「『死んだら動きたいと思っても動けないし遊びたいと思っても遊べないんだよ!』」
「……」
ピピピッ、ピピピッ、とアラームが静まり返った森の中に鳴り響いた。
それは、10分が過ぎたことを示す合図だったが、法子の勢いに気圧され硬直するギンシュが竜種化する気配はない。
「良かった……」
法子はほっとした表情を浮かべ、静かに剣をおろした。
●夢破れ、為すべきことは
戦闘が終わった森に幼い少女のしゃくりあげる声が響き渡る。獣から人間へと姿を変えるなりギンシュがわっと声をあげて泣き出したのだ。
「ギンシュ、マケタ……ツヨク……ナレナカッタ……」
止まることなくぼろぼろと流れ続ける涙を小さな手でぐいっと拭いながら、ギンシュは嗚咽交じりに言葉を紡ぐ。
「コレジャ……ガイオウガサマ、フッカツデキナイ」
「ギンシュ、泣くことなんてないよ。落ち着いて」
予期せぬ展開におろおろしながら颯音がギンシュを慰めようと編みぐるみを取り出せば。
「貴女は負けたわけではありませんよ。今回は引き分けですからね」
洵哉はキラキラと輝くビー玉を見せてギンシュの気を惹いて宥めようとした。心配そうな法子や燈が何と声をかけようかと迷っている横でリュータは優しくポンとギンシュの背を叩く。
「一気に色々言うと混乱するよなー。なぁ、ギンシュ。思ってること全部言っていいぞ」
思いがけない言葉にギンシュがきょとんとした顔で見上げると、リュータはにかっと陽だまりのような笑顔をギンシュに向けた。ギンシュはパチパチと瞬きを繰り返した後、ごしごしと両手で目をこすると消えそうな小さな声で呟く。
「ガイオウガサマ、アイタイ……」
「そっかー、ギンシュはガイオウガが大好きなんだな」
がしがしと頭を撫でるリュータにギンシュは素直にこくんと頷いた。
「でもな、竜種化してもガイオウガには会えないぞ」
衝撃の事実を告げられ、ギンシュは驚きのあまり目をまん丸に見開きポカンと口を開けている。びっくりしたあまり涙が止まったことにも気づいていないようだ。
「ギンシュはガイオウガのために何かしたかったんだよな? けれども間違った方法だとガイオウガのためにならないぞ」
暫しの沈黙の後、ギンシュは擦れた声で呟いた。
「ギンシュ、ドウスレバ、イイ? ワカラナイ……」
しょぼんと俯くギンシュの問いには答えず雛姫はさっとお菓子を差し出す。
「泣きつかれただろう? 難しいことを考える前に甘いものを食べるといいよ」
勧められるがまま、おずおずとお菓子を齧ったギンシュは初めて食べる甘い味にぱっと顔を輝かせた。
「オイシイ!」
「ギンシュ、ケーキもあるよ。食べてみるかい?」
「良かったらこれもどうぞ。前に君の仲間にもあげたことがあるんだ」
颯音と法子からもお菓子を貰いすっかりご機嫌な様子のギンシュを見て夏穂は嬉しそうに声をあげた。
「甘いもの好きなの? 私も大好きっ! 一緒だね!」
人懐っこい笑みを浮かべた夏穂はちょこんとしゃがむとギンシュと目線を合わせて口を開く。
「私、夏穂っていうの。ギンシュちゃんって呼んでいいかな?」
夏穂が自己紹介をしたのを皮切りに灼滅者たちが次々と名前を名乗るとギンシュはたどたどしい口調で皆の名前を復唱した。そして、お菓子だけでなく燈の持ってきた果物も食べたギンシュの興味は次のものに移る。
「ナツホ、ソレ、ナニ?」
初めて会った時から密かに気になっていた夏穂の胸元で輝くおもちゃのネックレスを指差し、ギンシュはちょこんと首を傾げた。
「これはね、ネックレス。キラキラしてキレイでしょっ?」
夏穂はネックレスを外すとギンシュの首元につけてやる。物珍しそうにしげしげとネックレスを見つめているギンシュにファイアも声を掛けた。
「ギンシュ、こんなのもあるよ。どう?」
可愛いでしょ? と花のアクセサリーを見せるファイアにギンシュは瞳を輝かせ何度もこくこくと頷く。
「それじゃ、これはギンシュにあげるね」
お花の腕輪に首飾り。そして胸元のコサージュはギンシュの朱色の髪につけると白い花が映え一段と華やかになった。
「よくお似合いですよ」
燈の言葉に同意するようにプラチナも尻尾を振って応える。
「ギンシュ」
すっかり機嫌をよくしたギンシュと目線を合わせ、颯音は静かに語り出した。
「ガイオウガが復活するまで、果物や綺麗な石を集めるのはどうかな?」
「……キレイ、イシ?」
怪訝そうな顔のギンシュに雛姫が「こういうものだよ」と綺麗な原石のついたネックレスを見せると合点がいったようだ。再びじっと颯音を見つめる。
「折角目覚めるんだもの、可愛い物や美味しい物でお祝いしてあげようよ」
「ギンシュ、ミツケラレル?」
「そうだね、果実は山奥に沢山実っているし、綺麗な石は山奥の洞窟などにきっとあるよ」
雛姫の言葉にファイアもそうそう、と口を開いた。
「暖かくなればきっと花もいっぱい咲くと思うし。ガイオウガの復活前にいっぱい集めてみてもいいんじゃない?」
「ガイオウガサマ、ウレシイ?」
ギンシュの問いに燈もふわりと微笑みを浮かべ頷く。
「ええ、沢山、集めてあげたらとても喜ぶと思いますよ」
「ソウカ……」
こくこくと頷くギンシュに「そうだ」とリュータはキリンのぬいぐるみを差し出した。
「こいつと一緒に待てば、ギンシュも寂しくないだろ?」
ギンシュはおずおずと手を差し出しぬいぐるみを受け取ると物珍しそうに様々な角度から眺める一方、リュータもまた怪訝そうにむむむ、と呟く。
「ギンシュに似てるって聞いたから持ってきたけど、あんまり似てないなぁ……」
「ギンシュ、チガウ! モットカッコイイ!」
ぷぅっと頬を膨らませるギンシュを見て灼滅者たちは堪え切れず噴き出した。
――竜種化しないでくれて、よかった。
ギンシュに見送られながら、灼滅者たちは帰路へつく。
今はただ、あの炎獣の少女と敵対する日が来ないことを祈りながら――。
作者:春風わかな |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年1月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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