ビブリオの悪魔

    作者:菖蒲

    ●vibrio
     しん、と静まり返ったその図書館はアンティーク作りのこじんまりとした雰囲気が地域住民に人気なのだそうだ。
     並べられた書物は、寄贈された物も多く手作りの図書館の雰囲気が溢れている。
     世間は注連縄に角松と年の瀬を越え、新たな日の出を祝っている頃だろう。
     ひた、と忍び足で近付くのは人ならざるもの。
     静謐溢るる書物の館に、人の影は無く、只、人ならざる何かが近寄ってくるだけ。
     書籍へと手を伸ばし、人ならざるもの――ブエル兵はあんぐりと口を開いた。
     
    ●library
    「晦先輩が危惧した通り――ブエル兵の残党が動き出したみたいなの」
     眉根を寄せた不破・真鶴(中学生エクスブレイン・dn0213)は「明けましておめでとう」と困った様に呟く。
     晦・真雪(断罪の氷雪狼・d27614)が危惧したブエルの新たな動きは、舞台を図書館へと移して居た。
    「改めて武神大戦獄魔覇獄、お疲れ様。無事でよかった……。
     それでね、その時に獄魔大将をしてたソロモンの悪魔・ブエルの動きが分かったの」
     ブエルは武神大戦で力である知識の多くを失い弱体化しているらしい。その知識を再収集するのがブエルが起そうとしている動きなのだ。
    「知識を得るために図書館に。図書館は年末年始の休館期間だから人的被害はないのだけど――図書館の本すべてが犠牲になっちゃうの」
     本を『食べる』とは中々にシュールだと真鶴は肩を竦める。休館開けに図書館で本を読む為に訪れる人々の前に広がるのは荒らされた状況と言うのはなんとも度し難い物だ。
    「本を食べられちゃって楽しみを奪われるのも可哀想。それに、ブエルが力を取り戻すのは脅威だもの。ここで、何としてもブエルから図書館を護らなくっちゃいけないわ」
     ぐ、と両の掌に力を入れる真鶴。場所は兵庫県に存在すると言うこじんまりとした図書館だそうだ。
    「アンティーク作りの洋風の建物に、並んだ本はどれも寄贈されたものばかり。
     手造り図書館の様に見えてとっても素敵な場所なの……だけど、」
     ブエル兵はその寄贈書コーナーから本を食べ出すのだと言う。
     最奥に存在するそのコーナーへ直ぐに足を向ける必要があるだろうと真鶴は付け足した。
    「ええと、入口から右に児童書、左にはヤング向け。奥に向かってハードカバーの本が並んでいるわ。順番は、ミステリー、ラブロマンス、エッセイ、専門書……それから寄贈書物ね」
     奥から順番に食べて行こうとしてるみたいなの、と付け足して真鶴は眉を顰める。寄贈書物は様々な種類があり食べ易いのだろうと彼女は推測したのだろう。
    「ブエル兵は元となった人間の知識を攻撃に使うの。数は四体いて、食べる事を阻止すれば此方へ攻撃してくるの」
     本の被害を減らす為に迅速に攻撃し、意識を逸らす事が大事なのだという。
    「ハッピーエンドは皆の手で! 素敵な本を護るのだって、正義の味方のお仕事ね。
     ブエルの今後を左右するのだもの――何としても阻止、しなくちゃ」


    参加者
    周防・雛(少女グランギニョル・d00356)
    不破・聖(神籟カデンツァ・d00986)
    火室・梓(質実豪拳・d03700)
    桃里・楓(月夜烏・d10181)
    白鳥・悠月(月夜に咲く華・d17246)
    イリス・エンドル(高校生魔法使い・d17620)
    ガーゼ・ハーコート(自由気ままな気分屋・d26990)
    晦・真雪(断罪の氷雪狼・d27614)

    ■リプレイ


     静謐溢るるその居住いは図書館と言う、膨大な知識の詰まった館だった。
     異国の血を感じさせる空色の眸を細め、赤煉瓦の壁を見上げた白鳥・悠月(月夜に咲く華・d17246)は口元を月と雪ひとひらを描いた扇子で隠し、白雪を思わす挑発を揺らす。
    「ブエル兵は本も食べれるのだな……食べて知識を吸収するのもなんだか不思議だ」
    「本を食べて知識を得るなんて、勉強が得意じゃないイリスには羨ましいね。でも、お腹壊しそう……」
     図書館へと続く石畳を歩きながら、晴天色の瞳に困惑した色合いを見せたイリス・エンドル(高校生魔法使い・d17620)はその玲瓏なる美貌とは裏腹に勉学を苦手にしているのだと肩を竦める。趣味はサブカルチャーとなれば、それも頷けることだろう。
     巫女服に身を包んだイリスのちぐはぐな言葉に、どこか人懐っこい笑みを浮かべた不破・聖(神籟カデンツァ・d00986)は、怜悧なおもざしに柔らかな子供らしさを抱いている。無愛想にも見える雰囲気は、その薄氷を思わせる髪からくるものなのだろう。悠月やイリスの言葉に楽しげに笑った聖はふ、と表情を強張らせる。
    「食べれば、覚えられる……ってのも、凄い手軽だけど。
     それじゃ、本はなくなって、何も、いいことないし……さっさと片付けよう」
     ふる、と身体を震わせるのは吹く風の所為。周囲に吹き荒れる冬風は、聖の華奢な身体には堪えるものだ。寒さに何処となく機嫌が悪そうな雰囲気を見せた彼はチョコレートを頬張りながら小さく息を吐く。
     本を食べて全て覚えてしまう――そんな安易な事が出来るならば羨ましいとからからと笑って見せた桃里・楓(月夜烏・d10181)は夜の帳に隠した星を思わせる瞳に好奇の色を浮かべている。思い切りの良い彼女の事だ、空飛ぶ箒を取り出し、アンティーク作りの建物目掛けてふわりと飛び出す。
    「ぜんぶ覚えられるなら羨ましい気がしなくもないが、仲間と回し読みする楽しみがなくなっちまうさね。
     ここをきっちり守って敵サンに余計な事を流さない事にするか……それにしたって、知識を蓄えたブエル兵と食べればその知識もこっちに回ってくるなんて事はないよな?」
     冗句めかして告げた言葉に、イリスが「お腹壊しそう……」と再度肩を竦める。紙媒体を食べるのと、ブエル兵を食べるのは大いに違う。相手はダークネスの配下だ。如何に美味しそうでもご当地怪人を食べるのかは――定かではないのだろうが。
    「コイツらって食べる事でしか知識を得られないのかな? ……ゲーム食べたら、秘奥義とか使えたりする?」
     知的好奇心の強いガーゼ・ハーコート(自由気ままな気分屋・d26990)が気になったのはまたも別の事だろう。
     人が姿を変えてブエル兵になる――そんな不思議な状況に、ゲーマーがブエル兵になったのならば、ガーゼご期待の知識を使用するブエル兵も居るだろう。ゲームを食べれるのならば、彼女の知識欲も大いに刺激されるだろうが。
     箒に腰かけた彼女の月色の瞳は、普段の気だるげな色よりも、好戦的なものが強く輝く。ブエル兵は滅するという嫌悪の心が全面的に押し出されて居るのだろう。
    「まさか、とは思って居ましたが」
     予測した現実が目の前に存在した場合、人間とはどんな反応を見せるのか。感情を荒げることなく、淡々とした雰囲気を持つ晦・真雪(断罪の氷雪狼・d27614)は人に害為す悪を良しとしない潔癖さを前面に押し出しながらも木の実色の瞳を細める。
    「何とも複雑な心境ですね……ですが、予測していたのだから、さっさと片を付けてしまいましょう」
    「では、ブエル兵を倒しに行きましょうか。本もしっかりと護らないといけないですしね」
     頷いて、気合を入れる様に火室・梓(質実豪拳・d03700)がスレイヤーカードを解除する言葉を口にする。結い上げた髪が揺れ、半袖の制服の下でも寒さをも跳ね返す意志の強さで、踏み込んだのは静まり返った小さな図書館の入り口だった。


    「セ・ボン、内装も雰囲気もとってもヒナ好み」
     柔らかに瞳を細めた周防・雛(少女グランギニョル・d00356)は桃色のフリルとレースに包まれて、幸せそうに瞳を輝かせる。アンティーク趣味のある彼女にとって、この図書館は居住いが好みに当て嵌るのは頷ける。
     かつん、と鳴らした靴底がフロアで音を立て、緊張した様に雛は書棚を抜けて行く。並べられた本の抜けは利用者が居る事を感じさせ、愛されている土地である事が良く分かった。
    「……出来れば、プライベートで来たかったわ」
     不機嫌そうに唇を尖らせた彼女に寒さが緩和された事で先程までの震えを少し和らがせた聖が頷く。
     彼らが足を向ける先に存在するのはブエルの兵士。その奇怪な風貌と見えるのは灼滅者ならではの仕事とも言えるだろう。
     寄贈と掲げられた看板の下、ゆっくりと動く生物へと視線を向けて音を遮断した悠月がマテリアルロッドをくるりと指先で器用に回す。彼女のその仕草に頷いて、箒に乗ったまま一気に奇襲をかけたガーゼが帯を射出し、ゆっくりと本を漁って居たブエル兵を貫く。
    「全力で行かせて貰うよ」
    「図書館ではお静かに」
     唇に指先を当て、怜悧な瞳を細めた真雪は装着した縛霊手の祭壇を展開する。霊的因子を強制停止させる為の結界を周辺に張り巡らせ、書物と規律を護るためにと確固たる意志を持つ彼の宵闇の色をした髪が動きと共にゆっくりと揺れた。
     プリズムの様な材質で出来た十字架を降臨させた聖が、無数の交戦を放つ。肩を竦め寒さを堪える様に己を抱き締めた彼は唇を尖らせブエル兵を見据えている。握りしめたクルセイドソードの切っ先がブエルの兵士を捉え、標的として放さない。
    「寒いんだから、さっさと」
     終わりにしようとその容姿からも感じられる冷徹さを前面に押し出したのは冬の所為。しっかりと着込んだ兎のフードがひょこりと揺れ、地面を踏みしめる聖の背後から跳び出した梓は灼滅者から最も遠い位置に存在するブエル兵へと狙いを定めた様にその拳を振り上げる。
     暁色の髪を揺らし、師の教えを覚える様に、殴って倒す――!
    「本を食べるだけで良いなら他人を襲う必要もありませんよね?」
     それでも本を無事に回るのは使命なのだと梓が振り翳す拳にブエル兵が怒りを露わにした様に彼女へと至近距離で放った攻撃が、思わず尻持ちを付かせる。そんな様子にさえも楽しげに、楓がバベルブレイカーを装着したまま前線に飛び込んだのは『食べたくない』対称だからだろうか。
    「申し訳ないけどさ、本は置いてってくれるかね?」
     猪突猛進。止まることなく楓が繰り出す一撃にブエル兵が数ある手を伸ばす。鏤めた星を煌めかせ、唇に笑みを乗せる楓の背後、とん、と厚底のヒールが音を立てる。
    「オイデマセ、我ガ愛シキ眷属達!」
     スカートを持ち上げて、仮面を付ければ、その両手には影の業。普段から手にしたオベロンとティタニアは今は彼女の『眷属』の様に少女の殺戮本性を物語る。仰々しいまでに告げた言葉は、殺戮の人形(ピエロ)と化した雛の性質を十分に感じさせた。
     人形を動かす為の糸がしゅるりとブエル兵へと纏わり付けば、足元で警戒心を露わにしていたボンボンが小さく声を漏らす。
     凍て付く光りを打ち出して唇を尖らせたイリスは本棚へと近づこうとするブエル兵を遠ざける様に攻撃を重ねて行く。只、意識するのは『倒す』事。
    「勉強しないから良く分かんないけど、本って美味しい?」
     その言葉はある意味で冗句。ある意味では真剣な問い掛けだったのだろう。勉強が苦手な彼女にとって、充実した青春の一角である『勉学』はハードルの高い存在でしかない。
     しかし、怒り心頭のブエル兵が問い掛けに応える訳もなく。書籍から灼滅者へと標的を映したように一気に飛び込んだ。


     ブエル兵達の意識を逸らす事を目的にしていた梓が手招きし、体内から炎を噴出させる。
    「兎に角、本を食べられる前に一刻も早く……ですね?」
     拳に力を込めて『力こそ』が攻撃手段なのだと踏みこむ彼女の背を追いかける様に魔力弾を打ち出すイリスが牽制を送る。出来る限り室内である事に気を配った彼女の戦い方は丁寧そのもの。
    「馬鹿じゃないよ? 勉強しないだけだもの」
     むっと唇を尖らせたイリスの結った髪が大きく揺れる。粒子を放ったようにも見える一抹の煌めきが、イリス目掛けて跳び込んだ事に気づき、妖の槍で受けとめたガーゼが眠たげな眼を少しばかり擦って見せた。
     気だるげでありながら、ブエル兵には強い忌避感を感じている彼女は書棚をちらりと見据え、月色の瞳を瞬いた。
    (「人から新しい知識を奪い取り続けるとか、気に喰わないよねー」)
     それでも、知的好奇心は働くのだろう。ブエルとブエル兵の関係性が無いならば一匹程度捕まえて、実験したい程に興味深くはある。クルセイドソードの切っ先を振りおろし、攻撃を代わりに請け負った彼女を標的と言わんばかりの勢いで襲い掛かるブエル兵へと勢いよく槍を突き刺した悠月が玲瓏なる瞳を細めて唇を小さく吊り上げる。
     感情の起伏を感じさせない表情からは些か解り辛い不器用な彼女の思い遣りだったのだろう。弓の形に仕立てられた杖を手に、彼女が前線へと跳び込む事でブエル兵達は混乱に満ち溢れる。
     反撃と掠めた攻撃に形の良い眉を寄せた悠月がブエル兵の丸い瞳を、その視線が克ち合った事に背筋に嫌な汗を一筋垂らす。
    「またコイツを見ることになるとは思わなかったな……以前は人の知識を奪っていたのだが……」
     悠月の言葉に小さく頷いたのは状況の予測を行っていた真雪。眼鏡の奥で冷ややかな瞳が図書館内で忙しなさを見せるブエル兵を嫌悪する様に歪められる。
     伸び上がる黒き影が獣の様にブエル兵を絡み取り、締めつければ、狙いを定めた様に雛の『ドールズ』が舞い踊る。
     ふわりと揺らした桃色のスカートの中でレースが揺れる。仮面の奥で仄かに笑った少女の指先に誘われる様にテディベアと少女人形がくるりと踊る。
    「パルドン、お食事中にごめんなさい。図書館ではお静かに――ルール厳守でしてよ」
     芝居がかった雛の言葉に同調する様に真雪の影が襲い掛かる。
     刃の感触に華奢な指先が小さく震え、聖はチョコレートを頬張りながらクルセイドソードを振るい上げる。煌めく切っ先が怒りをその身で露わにするブエル兵へと叩きつけられ、衝撃に微かに眉を寄せる。
    「ッ――余所見禁物。俺はここだよ?」
     小さく笑んだ聖の声に合わせて跳び込むガーゼは箒の上から狙いを定める。
     地に融け逝くブエル兵を飛び越えて、悠月が打ちだす弓は暴力的な衝撃と共に魔力をその体内へと流し込む。
     口元を隠す様に寄せた袖の下、彼女の唇は弧を描いているのだろう。ぐるぐると咽喉を鳴らしたボンボンが跳び込んで、楓を狙う攻撃を受けとめれば雛は「ボン、メルシー」と柔らかに笑みを浮かべる。
    「御退場遊ばせ? サァ、アソビマショ!」
     殺戮人形が踊る様に身を捩れば、足元で主人の機微を感じとる様にボンボンが尻尾を振る。
     右手首に飾られた巨大な刃を振り翳す楓が放った一太刀がブエル兵の身体を分離させていく。
     微かに響く呻き声に眉根を寄せて、梓が殴りつけた拳の衝撃に、反撃する様に口をばくりとい開けたブエル兵が本の代わりに彼女の腕へと喰らい付く。
    「ッ――」
    「面倒な輩がいるものですね」
     ズレる眼鏡を指先で治し、影で捕まえたブエル兵の姿へと真雪が告げた言葉はやはり、冷ややか。
     規律に則らないその行いに苛立ちを隠せない彼へと小さく頷く聖もまたブエル兵との闘いに苛立ちを抱くかのように唇を尖らせる。幾ら室内と言えど、書棚の並ぶこの空間は空気が冷え切っている。
     陽も差さぬ空間は、奇妙な空気感を感じさせ身震い一つ。瞬く聖の眼前へと飛び込むブエル兵の唇が微かに何かを喋った気がして彼は小さく声を漏らした。
    「戯言を――」
     呆れとも取れる悠月の声は攻撃と共にブエル兵へと届けられた。冷ややかな雰囲気を纏った彼女は月夜に舞う一片。花弁を思わせる優美な舞いは攻撃の武芸なのだろう。
     彼女に負けず劣らず、ダンスを踊る雛は戯曲を思わせるステップを踏みしめてブエル兵を舞台へと誘っていく。
    「アーレ、ドールズ!」
     掛け声とともに笑ったティタニア。恐怖神話を思わせるその空間を切り裂く様に振り翳されたガーゼの刃が異形の身体を切り裂いた。
     好戦的ないろは、爛々と最後の一匹へと狙いを定める。
     地面を踏みしめて、その掌の感覚に師の教えを乗せた梓が焔の血を昇らせながら前進していく。
     流れる髪が波打って、彼女の動きを一瞬一瞬、切り取る様にその赤を印象付ける。
    「御免遊ばせ?」
     くすり、と笑った雛の言葉に合わせる様に。
     梓の拳がブエルの兵士を溶かしていく。
     泡となり逝く様に消えゆくブエルの兵士へと視線を送り、瞳を伏せった真雪はじっと見送った。


     両の手に抱え上げた本の重さに聖が小さく息を吐く。ブエル兵から護り切った物の、散らばった本はそのままにはしておけない。
    「……寒い」
     尖らせた唇は、勝利への仄かな昂揚を掻き消す様に静寂から感じる冷たげな雰囲気に拗ねたかのよう。
     本棚へと本を並べながら楓が手にとったのは養父が好んで読んでいた本。何時もならば本は眠くなるだけだと倦厭する物の、折角の機会だから一冊読んでみるのも良いかなとぼんやりと考える。
    「う~ん、これ食べて頭良くなると思えないんだけどね……」
     ブエル兵が手に取って居た専門書を数ページ程、目で追いながら頭を抱えたイリスはそっと本を棚へと並べる。
     勉学を苦手にするイリスにといっては『食べる』だけで知識になるならそれに越した事は無い。読むだけでは頭が良くなる所が頭が痛くなる気がして、云々と唸って見せたイリスは仲間達を眺めて息を吐いた。
    「ブエルさん達のやる事は分からないよ……」
     掃除に気を配って居たガーゼと真雪が顔を見合わせて肩を竦める。アンティーク作りの図書館の出来に息を吐いていた雛の手にも一冊の本。
     寄贈の書物から飛び出して居たのだろう絵本は少しばかり汚れてしまった気がして、彼女は「綺麗にしましょ」とプライベートでこの場所を訪れる事を夢見ながら傍らのボンボンの頭を撫でた。
     静寂に包まれたアンティーク作りの書簡。只、静かな時を送れるようにと――閉められた戸は普段通りの侭。

    作者:菖蒲 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 4/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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