炎は猛り竜となる

    作者:天木一

    「クロキバ、ヤクニタタナイ。アイツラ負ケタ」
     山道を登る一匹の獣。炎を纏う羊が苛立たしげに地面を蹴った。
    「アイツラ、ダメ。オレ、ガイオウガ様、復活サセル」
     羊が険しい道の先に辿りついたのは湯気が昇り沸き立つ源泉だった。
    「力湧ク、オレ、強クナル」
     羊は迷うことなく高温の湯に足を踏み入れ、体を浸すと段々と体を膨張させていく。毛が抜け、皮膚は硬く変質し、口には鋭い牙が生える。その姿は太古の恐竜のものだった。
    「ギィォォオオオオ!」
     言葉を無くし、竜と化した獣は猛々しく咆えた。
     
    「あけましておめでとう。新年早々集まってもらってすまないねぇ」
     能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)が冬休みの教室で灼滅者を出迎え挨拶を交わす。
    「実は獄魔大将のクロキバが敗れた事で、今まで大きな勢力だったイフリートの穏健派が力を失ってしまったみたいなんだ」
     それは反対の勢力が盛り返すきっかけとなる。
    「その結果、どうも武闘派のイフリート達がガイオウガ復活の為に動き出したみたいなんだよ」
     だが元々勢力で劣っていた集団だ。今なら手の打ちようがある。
    「そのイフリートが考えた手段というのが、竜種イフリートとなる事みたいなんだ」
     竜種イフリートとなり、暴れまわってサイキックパワーを集めようと考えているらしい。
    「こんな方法じゃあガイオウガは復活できないみたいなんだけど、あまり考えるのも得意じゃないんだろうね。歯止めがなくなったイフリート達は行動を開始してしまうんだ」
     イフリートはそれぞれ源泉に向かい、そこで竜種へ変化する。
    「みんなにはこれを阻止してもらいたいんだ」
     放っておけば竜種となり、知能を退化させたイフリート達が暴れる事になる。
    「イフリートがどの源泉に向かっているかは分かってるよ。道中は山道で遭遇するのは難しいと思うから、源泉で迎え撃ってもらう事になるよ」
     イフリートは昼過ぎに源泉に到着する。余裕を持って待つ事ができるだろう。
    「ただ10分もするとイフリートは竜種になってしまうんだ。だからその前に倒すか、きついお灸をすえて竜種となっても敵わないと思い知らせて説得して欲しいんだよ」
     イフリートは考えるのが得意ではない。力で体に教え込むのが一番の近道だろう。
    「灼滅するか、説得するかはみんなの判断に任せるよ。お正月にいきなりの事件だけど、どうかよろしくお願いするね」
     灼滅者達は頷き、事件の起きる山へと向かった。


    参加者
    森野・逢紗(万華鏡・d00135)
    時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753)
    行野・セイ(オブスキュラント・d02746)
    結島・静菜(清濁のそよぎ・d02781)
    八握脛・篠介(スパイダライン・d02820)
    下総・文月(夜蜘蛛・d06566)
    イブ・コンスタンティーヌ(愛執エデン・d08460)
    クラウディオ・ヴラディスラウス(ドラキュリア・d16529)

    ■リプレイ

    ●源泉
     獣道しかないような人の手が入っていない林を突っ切った先、開けた場所には湯気が昇り、ぐつぐつと煮えるような湯が地面から噴き出ていた。
     寒い冬だというのに、その周囲だけは自然の暖房のようにぬるい風が流れている。
     そこに少年少女が集まりじっと何かを待ち構えていた。
    「イフリートの竜種化……気になるけど、止められるなら止めないとね」
     真剣な表情で敵を待つ森野・逢紗(万華鏡・d00135)の髪の両脇の白毛部分が耳のようにぴこぴこと動いた。
    「宿敵とはいえ自分が自分でなくなるような力に呑まれるのを見るのは気分が良くないからな」
     だから止めてやろうと、時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753)は重々しい大剣を地面に突き立てる。
    「随分と性急というか、短絡的な手に出たもんだ」
     焦る気持ちは分からんではないがと、下総・文月(夜蜘蛛・d06566)は先の戦いで勢力を弱めたイフリートに少しだけ同情する。
     その時だった。ガサガサと草木を踏みしめる音が聴こえた。視線を向けるとそこには4つ足の獣。白い綿のようなものを全身に纏い、口から吐く白い息には火花が混じる。羊のイフリートが目視できた。
    「新年早々に干支と対面か……」
    「新年から縁起ものな干支の未イフリートさんと遭遇です。折角のモフモフウール、お守りしなければいけませんね!」
     山を登ってきた羊と対峙し、行野・セイ(オブスキュラント・d02746)はアラームの時刻を9分後に合わせ、その隣でもふもふの羊を眺める結島・静菜(清濁のそよぎ・d02781)は、ぐっと握り拳を作って気合を入れた。
    「年始早々干支と逢えるとは縁起が良いのう」
     八握脛・篠介(スパイダライン・d02820)も羊を見て嬉しそうに笑みを浮かべる。
    「ナンダ、オ前タチ。ココ、オレノ場所。邪魔者ハドケ」
     自分のテリトリーに侵入した灼滅者達を見た羊は、足を止めて怪訝な様子で警告する。
    「武蔵坂学園です。獄魔覇獄では、すみませんでした」
     先の戦いの事を静菜が頭を下げて謝る。
    「ムサ……ガクエン……オ前、敵カ!」
     何の事かと悩んでいた羊の瞳に闘志の炎が宿り、炎を纏って戦闘態勢へと移行する。
    「新年一発目の闘いです。羊狩と行きましょう」
     口元に笑みを浮かべたイブ・コンスタンティーヌ(愛執エデン・d08460)は、準備は出来ているとカードを取り出した。
    「Schau mich an.(私を見て)」
     イブがカードを解放すると、そっと隣にビハインドのヴァレリウスが寄り添う。イブの黒い殺気が羊を包み込み、ヴァレリウスが霊波を叩き込む。
    「オ前ラ、邪魔シニ来タ! 返リ討チ!」
     羊が炎の塊のように頭部の角を向けて突進してくる。それを霊犬のシュビドゥビが駆け、咥えた刀で受け止めた。
    「まずは、聞かせてちょうだい。貴方の言葉を、願いを。貴方は、何を望むの」
     真剣な表情でクラウディオ・ヴラディスラウス(ドラキュリア・d16529)がイフリートに問いかける。
    「オレ、強クナル。ソウスレバ、ガイオウガ様、復活スル! ダカラ邪魔スルナ!」
     猛る羊が炎の渦を巻き起こした。熱波に触発された源泉が高く吹き上がり、周囲に熱湯が雨のように降り注ぐ。
    「集まって」
     仲間に声をかけながら、逢紗が風を起こして雨を吹き飛ばした。

    ●羊のイフリート
    「メェーー!」
     炎の息を吐きながら羊が駆け出して突っ込んでくる。
    「強くなりたいなら、力に呑まれるんじゃない。自分の意思で戦え!」
     向かって来る羊の正面に立ち、竜雅は突き刺した剣を振り抜く。地面ごと持ち上げるように羊を掬い上げて宙に浮かせた。羊は空中で姿勢を整えて着地する。
    「どんな強くなっても、一人で出来る事は限りがあるのよ」
     着地する羊の動きを予測して逢紗が帯を撃ち出していた。羊は避ける間もなく胴体を貫かれる。
    「ベェェ!」
     怒ったように羊は血を流しながら突進してくる。その体に影の縄が巻きついた。
    「わしの名は八握脛・篠介じゃ。できればお前さんの名を教えてもらえんかのう」
     影で動きを止めた篠介は名前を尋ねる。
    「敵二、名ノル、イラナイ!」
     羊は影を燃やしつくし、止まっていた足を動かし地面を蹴る。
    「どうせ口で言うだけじゃ理解できねぇだろ、竜種化なんざしても意味は無ぇって事を手っ取り早く教えてやんよ」
     駆けて勢いをつけた文月は跳躍して、一直線に羊に向かって飛び蹴りを放つ。
    「ベェー!!」
     直撃を受けた羊は吹き飛ばされて地面を転がった。
    「ナツさん。みんなを守ってくれ」
     セイは指示を出しながら駆け出し、オーラを纏った拳で羊に連打を浴びせる。
    「メェーー!」
     羊は炎の壁を作って拳を防ぎながら起き上がって火を撒き散らす。ビハインドのナツは鞭のようにリボンを操って飛び散る炎を止めた。
    「セイメイやパンサーに対するならばただ暴れまわるだけではダメです、あなたの力は強大ですが、一人では太刀打ちできないでしょう」
     イブが機械仕掛けの縛霊手を振り抜き、手刀で羊の足を切りつけた。膝から血と共に火が噴き出る。
    「竜種となっても、ガイオウガの復活は叶わない、わ」
     クラウディオが指輪を煌かせると、羊の体が石化を始める。
    「メメェー!」
     羊はそれでも動こうと、足を引きずって歩く。
    「無駄、だと言っている、の……それでも行うの、かしら」
     羊の口から火を帯びた息が吐き出される。口を大きく開けると、高温の炎が圧縮されていく。
    「強いイフリートのあなたが残ったのは、これからにこそ力が必要だからですよ」
     その正面から静菜は腕を巨大化させて振り抜く。羊も炎の玉を吐き出して対抗するが、腕が焼け付いても止まらず、拳は炎を貫き羊の顔面を捉えた。
    「怪我は俺が治す。安心して戦ってくれ」
     静菜に向けてセイは符を飛ばして炎を浴びて焼けた皮膚を治療する。
    「メェーーーー!!」
     逆襲に羊が炎を纏って飛び掛かる。
    「ナノ、庇いなさい」
     鋼糸を操る逢紗の指示を受け、ナノナノが代わりに敵の攻撃を受ける。
    「掛かったわね」
     敵の動いたところで、張り巡らせた鋼糸を引く。すると四方から糸が羊に巻き付いて身動きを封じた。
    「中々ガイオウガを復活出来んのは、強さが足りんのじゃなく、方法が違うからとは思わんか」
    「ベェ~!」
     放たれる炎を篠介はオーラを纏わせた拳の連打で相殺する。
    「暴れて復活するなら他のダークネス勢力も同じようにするじゃろ」
     そしてそのまま踏み込んで右の拳をボディに叩き込んだ。
    「強クナレバ、ガイオウガ様、キット起キル!」
     よろめきながらも踏み止まった羊の足元から影が膨れ上がり、その体が呑み込まれてしまう。
    「あなたはガイオウガ様の気高き幻獣なのでしょう? その誇りと尊さを捨てないで下さい」
     影の伸びる先には静菜が立っていた。
    「きっと1人1人なら俺達よりもお前の方が何倍も強いだろう。だがそんな弱い俺達も仲間と協力すれば強いお前とも渡り合える」
     文月は拳に影を纏わせ動けぬ羊を殴りつける。
    「こんな風にな」
     そう言って文月が飛び退くと、入れ替わりに竜雅が大剣を上段に構えて踏み込んだ。
    「竜の力に頼らなくてもお前はここにいる誰よりも強い。でも俺達は仲間と力を合わせることができる」
     羊は炎の壁で振り下ろされる大剣を受け止めようとするが、切り込んだ刃はそのまま炎を切断して羊の背中を斬りつけた。
    「竜種化してパワーアップしたとしても、頭を使わなければ勝てませんよ。ガイオウガの復活を望むのなら、今一度冷静になるべきです。抑えてください」
     イブの足元から影の薔薇が咲き乱れる。そこから伸びる影の茨が羊の体に巻きつき棘が突き刺さった。
    「オレ、頭使ッテル、バカニスルナ!」
     頭を振り回して角で影を引き千切った羊は、周囲一体に火炎の渦を振り撒き、近くにいた灼滅者達を燃やす。
    「竜種化を強行すれば、貴方達は灼滅されてしまう、わ。そうしてガイオウガを復活させる者が、誰一人として残らない。それでもいいの、かしら」
     クラウディオは十形道路交差点ありの標識を突き立てる。すると仲間の負った火傷が癒されていく。

    ●仲間
    「ガイオウガに貴方達イフリートが必要なように、仲間と共に立ち向かう方が、強くなれるわ」
     腕を鬼の如く巨大化させた逢紗が羊を殴りつけ、その体を吹き飛ばした。
    「力を合わせれば、超えられないものはない。それを教えてあげるわ」
     更に踏み込んで起き上がるところを殴る。羊は炎を噴出してガードしながら何とか体勢を立て直す。
    「オレ、ヒトリデモ強イ」
    「理性を失って、誇りをも失うつもりですか」
     静菜は注射器を突き刺して毒薬流し込む。すると刺された胴が変色して激痛をもたらす。だが羊は地を蹴って駆け出す。
    「ワシ等一人ひとりはお前と比べりゃ弱い、じゃが集まればこうして強くなれる」
     羊の突進を篠介はロッドで受け止める。伝わる熱気が皮膚を焼く。それでも踏ん張りロッドを振り抜いて押し返した。
    「ガイオウガの復活を、望むのならここで無駄死にする事は、ないでしょう? 少し、冷静になるべき、よ」
     クラウディオが指輪を篠介に向けると、力が流れ込み傷を癒し力を与える。
    「メェェーー!!」
     仕切りなおした羊がまたもや駆け出す。前に出たナツとシノさんが羊の突進を受け止めようとして撥ね飛ばされる。だが衝撃に羊の足が鈍った。
    「竜種化して力を増したとしても、1人のままじゃ結果は同じだ。ただ暴れるより、もっといい方法が無いかお前も仲間と考えてみたらどうだ?」
     そこへ横から接近した文月が縛霊手で殴ると、霊糸が絡み付き体の自由を奪う。
    「メェ~! オレ強イ、負ケナイ!」
     縛られた羊がその場で地面を叩き付けるように蹴る。
    「炎がくる! 気をつけろ!」
     セイが鋭く警告の声を発し、地面から次々と吹き上がる炎の柱にオーラの塊を撃ち込んで威力を減衰させる。その炎の柱を突っ切って羊が突進してくる。
    「おおおぉ!」
     炎に巻かれた竜雅が雄々しい声をあげると髪が逆立ち炎が消し飛ぶ。そして迫る羊に十手のようなロッドを向けてその突進を受け止めた。勢いに押され足が地面を削っていく。だが後ろにある木を蹴った反動でその勢いを押し留めた。
    「言っても分からないなら、身体に教え込んで差し上げます。お仕置きですよ。覚悟は良いでしょうか。」
     そこへイブは手にした通行止めの赤い標識を振り回し、遠心力を乗せて羊に叩き込んだ。
    「ベェッ!」
     羊が潰れたような声をあげる。
    「力を求めるのは確かに魅力的だけれど、その為に失う多くを、貴方は悔いないの? そう思う事も、できなくなってしまうのだろうけれど、ね」
     クラウディオが手にした標識に緋色のオーラを纏わせて振り下ろす。まるで刃のように表札の先端が羊を斬り裂いた。
    「オレ、強イハズ、ナノニ!?」
     傷だらけの羊は灼滅者を遠ざけようと自らの周囲に炎の渦を巻き起こす。
    「俺ら灼滅者の力は弱い。けどその力をめいっぱい活かせばそうやられはしない」
     吹き荒れる炎の渦に対して、セイはナイフを振るって夜霧を生み出す。それは炎の熱を阻害し仲間を守った。
    「君は一人で辛くないか? 仲間と組んだ方がうまくやれるだろう」
    「メェーー!」
    「言いたい事があるなら聞いてやる。ここで鬱憤を晴らしておけ」
     駆け出す羊に文月が横から蹴りを打ち込む。
    「たっぷりと力を見せつけてあげます。その体で感じてくださいね」
     ぐらりとバランスを崩す羊に、返す一撃を浴びせて吹き飛ばした。
    「クロキバが負けたってそれで終わりじゃないんだ。お前さん達も目的が同じイフリート同士、力を合せたらどうじゃ? 誇りを失うより得るものがあるかもしれんじゃろ」
     羊が立ち上がると、杭打ち機をジェット噴射させて篠介が突っ込む。その勢いのまま杭を突き立てた。
    「メェメェ……クロキバ役ニ立タナイ、ジャナクテ、敵ガ強イ?」
     先程から一人も灼滅者を倒せない事に、羊顔に困惑の色が浮かぶ。
    「メェー! イフリートノガ強イ、ハズ!」
     迷いを振り切るように羊は炎の玉を次々と口から飛ばす。
    「言ったでしょう? 仲間と共に力を合わせれば、強くなれるって。これが力を合わせるってことよ」
     逢紗は風に舞うようにひらりひらりと木を蹴って跳んで炎を躱すと、羊の頭上から炎を纏った蹴りを浴びせた。
    「誰かが傷付けば他の誰かが庇い、傷を癒す。お前から見たら焚き木レベルの炎でも、一つに合わせたら劫火に変わるぜ!」
     大剣で炎の玉を切り裂いた竜雅が羊に迫る。羊は逃れようと木々の中へ駆け出すが、追う竜雅は大きく踏み込んで大剣を振り抜く。大きな刃は邪魔をする木を両断し羊の後ろ足を斬り落とした。
    「あと一手で、あなたを灼滅します。もしも止まってくれなければ、それも止む無しです」
     静菜は腕に装着した巨大な杭をいつでも撃ち出せるようにして、羊の眼前につきつけた。
    「メ……メェー……」
     纏っていた炎が消え去り、弱々しく羊は鳴く。それと同時にタイマーのアラームが鳴り響いた。

    ●羊の名は
    「時間内に終われたな」
     セイはアラームを止めて息を吐き、言葉遣いを改めて羊を見下ろした。
    「新年から干支の動物を倒すような事にならなくて良かったです」
    「何とか言葉が届いたようじゃ。それで、改めて名を聞いてもいいかのう」
    「オレ、名前。ディップ」
     篠介が尋ねると、羊は素直に名乗る。
    「どうかしら、仲間と共に戦う強さがよく分かったでしょう?」
     逢紗の言葉に羊は悔しそうではあるがしぶしぶ頷いた。
    「ガイオウガを復活させたいってのはクロキバも同じなんだろ。だったら仲間割れするより協力した方が建設的だと思うがな」
     文月の至極当たり前の意見に、羊はなるほどーと感心したような頭を振った。そんな姿に灼滅者達は思わず敵でありながらも心配になる。
    「ところで、炎の竜というものには少し興味があります。どういうものなのですか?」
    「竜種はイフリートさんの先祖の姿なのですか?」
     イブと静菜の質問に羊は首を傾げた。
    「知ラナイ。竜、強クナル。聞イタダケ」
    「それでよくも、竜になろうと思った、わね」
     クラウディオは少し呆れたような声音を混じらせた。
    「暴れたい時はいつでも相手してやるから、弱い奴を狙うなよ?」
     竜雅の言葉に羊は分かったと答え、まだ消えぬ瞳の奥の炎を揺らした。
    「オレ、仲間ト強クナル。待ッテロ」
     そう告げるとこの場にもう用はないと、炎で傷を治した羊はのしのしと歩き去っていく。
    「宿敵に強くなるヒントを与えたか……」
     呟く竜雅は仲間と連携なんてされたら厄介な事になるだろうなと思いながらも、不敵に笑みを浮かべて羊を見送った。
    「ワタシたちも帰ると、しましょう」
     クラウディオの言葉に頷き、任務を終えた灼滅者達もその場を後にする。湯気の湧く源泉地帯を抜けて寒い山道を下り始めるのだった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月16日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ