こたつのある、特別な1日

    作者:悠久

     とある日の休み時間、たまたま学生食堂の近くを通りかかった君は、目に入ってきた室内の光景にひどく驚いた。
     いつもならテーブルと椅子が並んでいるそこに、いくつものこたつと座布団が鎮座していたためだ。
    「最近寒いから皆のやる気が出ないんじゃないかって、学生食堂の職員さん達が心配してくれて。特別に、今日1日だけ設置したそうだよ」
     君の疑問に答えた声は、背後から聞こえた。
     いつの間にか、そこには宮乃・戒(高校生エクスブレイン・dn0178)の姿がある。
    「いいよねぇ、こたつ。あったかいし、ふかふかしてるし」
    「……ん、ぽかぽかしてて、眠くなる」
     と、柊・久遠(小学生ダンピール・dn0185)も戒の背後からひょこんと顔を覗かせて。
    「寝るのはいいけど、お昼ご飯食べ損ねたりしないようにね」
     久遠の言葉に戒が苦笑する。もちろん、寝坊して午後の授業をサボる……なんてのももってのほかだ。
     ちなみに、普段学生食堂を利用しない――購買部の利用者であったり、お弁当を持参している生徒に関しても、こたつだけ使用してOKとのこと。

     ――今日も寒い。
     せっかくだから誰か誘ってみようか、と。君は、友人達の顔を思い浮かべた。


    ■リプレイ

     その日、学生食堂に足を運んだ生徒達を迎えたのは、部屋中に設置されたこたつと座布団だった。
     今日も寒い。窓は室内と外の温度差を示すように冷たく曇り、露を滴らせている。
     七飛・白霧(愚屍・d27423)は早速、隅っこのこたつに潜り込み、ほう、と大きく息を吐いた。
     あたたかいのは好きだ。冷えた体に染みる温もり。白霧はこたつにくたーっともたれかかる。柔らかく欠伸をして、ぼんやりと彷徨う視線。
     その姿に人を拒絶するような雰囲気はない。強いて表現するとするならば――。
    (「……ふんにゃり?」)
     浮かぶのは、不思議と馴染むその言葉。
    「おや、ミハエルさんもこたつの誘惑に誘われて?」
    「貴様もか。……その土地に合った、暖の取り方に興味があるだけよ?」
     学食の前、無記名・マヤミ(高校生ダンピール・d09387)とは偶然、ミハエル・パブロヴナ(魔弾の射手・d31701)と遭遇。
     昼食片手に、せっかくだからと連れ立ってこたつへ向かう。
     マヤミが食べるのは揚げたてコロッケを乗せたあつあつのそば。
    「うん、やはりこたつはいいもの。……もう教室に戻らなくてもいいよね」
     温もりを満喫しつつも、ここは猫がいてしかるべきでは? と周囲を見回してみるが、見当たらない。零犬なら見かけるのだが。
     対するミハエルが食べるのは温かなブリヌイ。イクラとバターの組み合わせに、ほっとするのも束の間。
     よからぬ気配に銃を手にするも、刹那、肩には温かな感触。
     何のことはない。マヤミがミハエルにもたれかかり、暖を取っていたのだった。
    「私相手に、なんとも無防備なことだ」
     ふと、肩の力が抜けた。
     昼休みが終わるまではこのままでいいだろう。起きないようなら……無理矢理引きずっていくまでだ。
    「wao! ジャパニーズ、コタツ! コレ本物?」
     室内の光景に、タイ育ちのレヴィ・ベレッタ(小学生ストリートファイター・d32497)は大はしゃぎ。
     こたつに近付き、レヴィはおそるおそるこたつ布団を持ち上げた。ほっこりとした温もりに、頬がぱっと染まる。
    「コレ、面白い!」
     きゃあっと歓声を上げ、すっかりこの日本文化にも馴染んで。
     こたつの上に並べたのはブロックタイプの栄養補助食品とみかん。
     さあ、45分、この温かさを満喫しよう。
     ロード・イルファン(走馬灯・d30182)の姿は、さながらこたつむり。
     穏やかな笑顔を浮かべ、手元でせっせと編み針を動かす。
    「こんにちは。何を作っているのか、聞いてもいいかな?」
     みかんを乗せた食堂のトレイ片手に通りかかった宮乃・戒(高校生エクスブレイン・dn0178)がそう尋ねれば、顔を上げたロードはええ、と頷き。
    「帽子を作ろうと思っているんです」
    「へえ、そうなんだ。編み物って、コツとかあるのかな」
    「それはですね……」
     休むことなく手を動かしながら、ロードは戒へ編み物を色々と教えて。
     他愛ないお喋りは、室内へ温かく溶けていく。
    「おぉ、本当にこたつなのです……」
     思わずそう呟いたのは紅月・春虎(世間知らず御札使い・d32299)。足を運ぶまでは半信半疑だったのだ。
     とはいえ、こうなればしっかり満喫するまで!
     食堂や購買部でデザートを買い、天板の上にばばっと広げる。
     和菓子や洋菓子、アイス。まずは何を食べようか、この瞬間が幸せなのだ。
    「おひとついかがですかっ?」
     近くのロードと戒にもデザートをお裾分け。
     そのまましばらく談笑に興じて、ちょうどよく柔らかくなったアイスを食べよう。
    「えへへ、やっぱり寒いなかこたつで食べるアイスは美味しいのです」
     にっこり笑う春虎。釣られるように、ロードと戒も笑顔を浮かべる。
     ああ、昼休みにはこの温かさとお別れだなんて。
    (「……あぅ、ずっとここに居たいのですがそうもいかないのです……っ」)
     こたつの誘惑に負けてしまいそうだ。
     なんかずるい、と葛木・一(適応概念・d01791)は思う。
     だって、入ったら最後、出られないではないか。
     だが――学校が用意してくれたというのなら仕方ない!
     いそいそとこたつに潜り込みもっふもふの狼へ変身する一。霊犬の鉄と一緒に向かう先はリュシール・オーギュスト(お姉ちゃんだから・d04213)の膝の上だ。
    「……全くもう、変身能力って卑怯よねー」
     親分に飯をよこすのだとばかり、こたつからにゅっと顔を出す鉄と一。リュシールは苦笑しながらお弁当のサンドイッチの残りを差し出す。普段のスカートめくり小僧ならともかく、外見がこうではどうにも甘やかしてしまう。
    「日本のこのコタツって凄いわよね……あー、こんなに穏かな気持ちになっちゃう。……あら、あれ久遠じゃない」
     と、リュシールは少し離れたこたつでうとうとしている柊・久遠(小学生ダンピール・dn0185)の姿を見つけ、ふふ、と微笑。それから膝の上のふさふさなわんこ共に目をやって。
    「いっそあなた達も寝ちゃいなさいな、悪戯者ども。平和になるってものよ」
     その背をリズムよく優しく叩き、頭を撫で、眠りへ誘ってく。
     温かさと撫でられる気持ちよさに、一は呆気なく陥落して。
    (「膝で寝るとかちょっとしゃくだけど……ま、いっかな」)
     やがてすやすやと寝息を立て始めた一に、リュシールは優しい笑みを向ける。
    「ま、時間前には起こしてあげるわよ。……チャイムで跳ね起きるよりいいでしょ?」
     もし久遠が寝ていたら、彼女もきちんと起こしてあげよう。

     デルタ・フリーゼル(物理の探究者・d05276)は『オーパーツ研究部』の面々とこたつを囲み。
    「冬はやっぱりこたつが定番だな」
    「こたつ……日本の冬の風物詩、欠かせないアイテムですね。そしてやはり、こたつと言えばミカンです」
     うんうんと頷き、土岐野・有人(ブルームライダー・d05821)がこたつの上に置いたのは、みかんが山盛りの籠。
     これだけは欠かせない、と急いで近所で買ってきたのだ。
     クラブの仲間達にひとつずつ手渡してから、有人は自分もみかんの皮を剥いて。
     デルタの取り出した魔法瓶からは、白く湯気が立ち。ふわん、とたちまちいい香りが漂う。
    「今日は寒いだろう、温かい紅茶でもいかがかな?」
    「どうぞ、私の手作りの玉子焼きです。良かったら味見して下さい」
     時乃瀬・静香(妖精の花・d23935)も持参したお弁当から玉子焼きを摘まみ、仲間達に振る舞う。
    「わぁ、ありがとう!」
     思いがけないお裾分けに神楽火・天花(狂ヒ咲キノ赫・d05859)は喜色満面。ちなみに彼女の昼食は、学食のナポリタンと――バニラアイス。
    「こたつで食べるならやっぱりアイスだよね!」
     温かさと冷たさのハーモニーが心地よく、甘さも相まってなんとも贅沢な気持ちになるのだ。
    「デルタさんの紅茶、温かくて良い香りですね。静香さんの玉子焼きも柔らかくて美味しいですよ」
     のんびりゆっくり、有人は並んだ食べ物や飲み物を味わって。
    「今日は何の本を読んでいるのですか?」
    「ん……児童文学、かな」
     ふと、有人の向けた視線の先、静かに佇む不破・九朗(ムーンチャイルド・d31314)の姿は、いつもより心なしかリラックスしてしているようにも見える。
     こたつの魔力か、はたまたクラブの仲間達といるからか――どちらだろう?
     頁を繰る合間、デルタから頂いた紅茶を飲んで。玉子焼きの味見はもちろん、みかんの汁が本に飛ばないよう、注意するのも忘れない。
    「こうやってのんびりするのも、楽しいひと時だなって思うぞ」
     持ち寄ったものを味見しながら、デルタは仲間達を見回し、優しい笑みを浮かべる。
    「はい。こたつで温もると、何だか和みますね」
     と、静香はみかんを口に入れて。
    「んー。甘くて美味しいですね」
     こたつにみかんは定番だ。静香の口元が幸せそうに緩む。
    「うんうん! ああ、幸せー!」
     頬を抑えるようにして、天花も口の中の贅沢を思う存分味わっている。
     九朗は、本を読む手をふと止めて。
    (「たまには、こういうゆっくり流れる時間ってのもいいよね」)
     さながら、45分の贅沢――。
     他愛ないお喋りの合間、またひとつ、有人がみかんを仲間達に手渡す。

     寒くて嫌になる毎日にはこたつが一番。
    「学校でそのこたつに出会えるとは素晴らしいじゃないか。なぁ、まもちゃん?」
    「ホントにねー。どうせなら1日といわず冬の間ずっとオコタで勉強してたいよ」
     奏・律嘩(漆闇の現・d01011)に篠守・鎮(暢気な恠鳥・d00349)はほくほくと頷き。
    「ほら、集中するには”頭寒足熱”がいいって言うじゃない!」
    「でも、まもちゃんは雪合戦とかの方が似合う気もするな」
     犬は外駆け回りとか子供は風の子とか言うし、と律嘩。僕はやらないが、と付け加えるのも忘れない。
    「失敬な……それは僕が子供だってコト? これでもリっちゃんよりは年上だよ! 10ヶ月くらい!」
    「10ヶ月くらいで年上だと言われてもな……」
    「それに見てよ、僕だって寒さのあまり爪が紫だよーサムイサムイ!」
    「って紫はやばいだろ」
     こたつに手ぇ突っ込んどけ、と少し慌てて鎮の手を掴む。
     冬のこたつと言えば、みかん。当然ながら用意済。
    「ほおら剥いてやったみかんだ」
    「んじゃ遠慮無くいっただきまー……ってあぁ!」
     鎮が口に運ぶ寸前、その手が引かれ、みかんは律嘩の口の中へ。
    「そんなコトすると、リっちゃんにはお茶注いであげないんだから」
     と、鎮が見せたのは律嘩の好きな甘茶。ん、と律嘩が顔を明るくする。
    「流石だなまもちゃん分かってる。さっきのは勿論冗談さ」
     さぁどうぞ、とみかんを差し出す律嘩に、鎮は満足そうに頷いて。
    「仕方ない。リっちゃんのみかんと甘茶を交換だ。ね?」

    「おこたでお弁当食べられるなんて超幸せ♪」
     とは、陽瀬・すずめ(雀躍・d01665)の言だ。前の授業は体育。冷え切った足にぬくもりが染み渡る。
    「さむさむ……やばいめっちゃヘブン……」
    「いやーやっぱり炬燵は最高だね。寒い日はこれに限るよー」
     陽瀬・瑛多(高校生ファイアブラッド・d00760)もいそいそと潜り込み。
    「今日はこのために午前中居眠りしなかったからね」
     時間つぶしの漫画も用意したのです! と笑顔の兄に、すずめは呆れ半分。
    「やっぱ早弁してる……そうだと思った」
     対するすずめがお弁当箱を開いて。
    「ウィンナーはあげないからね?」
    「まあそう言うなってー。このメロンパンを少し分けてやろうじゃないか」
    「ぐぬぬ……メロンパンとトレードなら一個だけ」
     やがて、お弁当箱を空にしたすずめが次に取り出したのは、とっておきのみかん。
    「お母さんがスペシャルデザート入れてくれたわけよー。やっぱり炬燵にはこれじゃない?」
    「な、なんだって! あの蜜柑はおこた用だったのか……」
     自らの早弁を悔やむ瑛多だが、過ぎたことは仕方ない。
     昼食を食べ終えたら、あとは思う存分温もりを味わって。
    「もー出たくない……私ここで生活したーい」
    「一度入ったらしばらく出られないよー。これが45分だけなんて……」
     チャイムの音が鳴ったら、楽園はおしまいだ。
    「学園てことを忘れちまいそうだなぁ」
     八槻・十織(黙さぬ箱・d05764)はこたつにのんびり足伸ばし。
     向かいの賀正・紀明(隠遁波旬・d07548)はと言えば、
    「45分俺のものか……悪くない」
     意味ありげに見つめる先は十織――のナノナノ、九紡。温かさに赤らむ顔も可愛らしい。
    「……ぼんやりしてどうした?」
     訝しげに紀明を眺めつつ、十織はこたつの上、どんと購買の袋を置き。
    「今日は特別に俺の奢りだ。遠慮せず食え。オススメのコロッケパンだぞ」
    「パンかよ……。ま、当社比ってやつだよね」
     感心した矢先のガッカリ感は、しかし九紡のつまみ食いの早業にかき消され。
    「コラ九紡、勝手に食うんじゃねぇ!」
     やれやれ、と十織は僅かに残った欠片を口に入れ、無事だった方を紀明の前へ。
    「……お前のパンも狙っとるようだ」
    「はいはい。それじゃ有難く」
     はむっとパンを咥えた紀明が、不意に表情を明るくして。
    (「これ、両側から食べてったら、ごく自然に九紡とちゅってできるんじゃ……?」)
     どうぞ、とパンを向けた途端、眼前には九紡のアップ。
     はやっ! と思う間もなく、もっちーん!
     顔面に直撃を受け後ろにダウン。大丈夫かー、と十織の声はどこか遠い。
    「ちゃんとふわふわハートかけとけよ、九紡」
     やがて、満腹顔の九紡が大人しくなったら、牛乳で乾杯といこうか。
    「もちろん牛乳も奢りだよな?」
    「ああ。こっちは18本のロウソク代わりな」

     水城・恭太朗(ニュートラル・d13442)に誘われ、駒瀬・真樹(深層アネクメネ・d15285)が赴いた先は学食。てっきりデートかと思ったのだが、まあこたつがあるから良しとしよう。
    「俺うどんにするけど何食べる? 誘ったんだし、この位は出すよー」
     冷凍みかんだけ持ち込み、恭太朗は明るくそう尋ね。とはいえ、内心少し緊張しているかもしれない。なにせ、付き合って1年経つのに1度もデートに誘えていないのだ。
     友情期間が長かったために壁は高く厚く。だが、もはや悩み、考えるより行動だ!
    「いやぁ、こういうまったりしたのがいいよね。なんつーかデートに誘おうと思えば思うほどなんか何もできなくて、ものすごく初級から来ましたって感じなんだけど。お付き合いありがとうございます」
    「いや、それは全然良いのだけれど……キョタロー家にいる時とあんまり変わんないよね」
     ぺこり頭を下げる恭太朗。特に不満があるわけでもなく、真樹はそう返す。
     こたつに突っ伏し冷たいみかんを食べて。向かいの恭太朗が食べている最中のうどんのつゆが飛んでくるようなら、手にしたみかんの皮からぴゅっと汁を飛ばし返す。
    「痛たっ」
     見事、目に命中。恭太朗が悲鳴を上げて。
     だが、それだけでは収まらない。続けてこたつの中、真樹は自分の足を絡め、恭太朗の足の関節を決めた。
    「痛たたた! ごめん! 謝る、謝るから!」
    「こういうのは、普段の教育が大事だから」
     さらりとそう返す真樹。やがて恭太朗はふ、と口元を笑みに緩ませて。
    「ずっと前から言ってるけど、次はケーキバイキング行こう」
     ――そのときは、今度こそちゃんとしたデートで。

    「……はあ、さすがに気が緩みますねえ」
     こたつにのんびり足を伸ばし、睦月・恵理(北の魔女・d00531)から零れた呟き。
     いかに北方の魔女の筋とは言え、日本のこたつの魔力には一目置かざるを得ない。――まあ、そもそも血筋の主は日本人なのだが。
    「はぁ~……コタツってどうしてこんなにほっこりするんだろうね?」
     望月・みとわ(碧い風は陽光とともに・d04269)の顔も柔らかな笑みに溶ける。祖母の影響で暑いところよりは寒いところの方が断然好きだけれど、それもサウナやコタツがあってのこと。
    「あ、クゥもこっちにおいで」
     手招きした霊犬も、どこかぽかぽか上機嫌。
    「う~ん、あったかいねぇ」
     ぎゅーっとしがみ付き、1人と1匹、幸せな笑みを浮かべる。
    「ふふ。クゥちゃん、こちらも温かいですよ。どうぞ」
    「クゥさんのお喜びを見る限り、魅せられるのは人だけではないのですね」
     みとわとクゥ、恵理と顔を見合わせ、柔らかく笑う穂之宮・紗月(セレネの蕾・d02399)。温かさとひんやり感を楽しむように、頬をぴったりと天板にくっつけて。
    「はぅ……ぬくぬくです」
     このまま猫になってしまいたい。呟く声は夢見心地だ。
     こたつの上には定番のみかんとおもち。厨房で炙ってもらったおもちへ、恵理は楽しそうに海苔を巻く。
    「あぁ、お餅の香ばしさがまた……食べるか寝るか、それが問題です」
     呟く紗月は、既に半ば夢の世界。お腹が満たされれば、眠気もより強くなって。
     空色小箱の部室ではいつもにぎやかな面々だけれど、たまにはこうしてのんびり過ごすのも悪くない。
     ゆったりと流れる時間に、みとわは笑みに目を細める。
     けれど、楽しい時間はあっという間。
    「そろそろチャイムが鳴る頃ですね……皆さん起きてます? ふふ」
    「え、ちゃいむ? ううん、あと5分だけ……」
     紗月はどこか寝ぼけ眼。でも、窓ガラスでひんやり冷やした恵理の手のひらがそーっと近付いて。
    「……って起きますからそのひんやりだけはご勘弁をーっ!?」
     ぴたっ! とくっつく寸前、悲鳴にも似た叫びを上げてしゃきっと起き上がる。
     2人のやりとりに、みとわはふふ、と笑って。
    「ほら、予鈴が鳴ったよ。午後からもガンバろうね」
     やがて鳴り響くチャイム。冷たい窓ガラスの外は相変わらずの寒さ。
    「雪でも降りそうな寒さですが……こたつにはよく似合いますね」
     恵理の零した呟きが、窓を白く曇らせた。

    作者:悠久 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月29日
    難度:簡単
    参加:25人
    結果:成功!
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