男の娘(ルビはおとこのこ☆)

    作者:一縷野望

     そもそも、だ。
     男の娘なんてものは殊更主張しちゃいけないものであーる!
    「……だって。買専の大学のOBに唾飛ばされちゃった」
    「そんなこと言ったって、上手く化けれたらアップしたいじゃーん」
     携帯端末には自分のページ、可愛いアニメキャラにコスプレした自分の写真がぺったぺた。
     頭に煌びやかな旗をつけた『万国旗が俺の嫁だが、海外旅行はぼったくり』のヒロインにコスプレした彼女の声は妙に野太い。ぱっと見はかんっぜんに女の子なんだけどね!
    「なんかでも、男の娘アピしてる奴を狙うヤバイ奴がいるってよ」
     とにかく刺して刺して刺して刺して、服破いて破いて破いてするらしい――と、顰められた眉に男の娘は言うわけだ。
    「えー、俺アタシヤバいー?」
     信じちゃいないけど。
     けらけら笑い声が響くイベントの休憩スペースにて、黒柳・矢宵(マジカルミントナイト・d17493)は、髪を結わえるマカロン飾りをぴくりと揺らす。
     

    「矢宵さんの嫌な予感は的中! いたよ都市伝説。名付けて『男の娘が慎ましやかじゃなくてどうする!』」
     バーン!
     チョークで綴った文字を灯道・標(小学生エクスブレイン・dn0085)は示す。
    「略して『オトツツ』でいいかなー?」
    「オトツツ……呼びやすくて、いいと、思います」
     矢宵にこくりと頷く機関・永久(リメンバランス・dn0072)は、アンバランスに伸びた左髪をふわり。
    「んで、オトツツは男の娘を狙うよ。はい矢宵さん説明して」
     エクスブレインが説明をぶん投げた!
    「男の娘っていうのはね、矢宵的にはなんだけどー……」
     以下略。
     ――わかりやすく言うと、女装した男性がいればそいつを執拗に狙います。
    「本気じゃないファッション男の娘には苛烈な攻撃が飛んでくる。逆に心まで男の娘だったら多少は緩むから、アピールはガンガンやるといーよ」
     もちろん敢えてファッション男の娘をやったり、女装嫌がりで殴られるのだっていいだろう。あなたがそれでいいなら、男らしい!
    「あとねー『男の娘に対する萌え』を語ったら、話し込むから隙が出来て攻撃が当たりやすくなるよー」
     萌えを語るのは男女どちらでもよいので、存分に語るといい。
     しかしこの都市伝説は、男の娘が好きなのか嫌いなのか一体どっちなんだ。
    「攻撃は、遠近どちらも単体が対象で、服破りがついてくる」
     ですよねー。
    「事前準備はお任せ! 矢宵、張り切ってお手伝いしちゃうよ」
     ずらり、指に挟んでみせるメイク道具。この人やる気だ。
    「男子がいない時のために、生け贄も用意したから」
    「?」
     ポンと背中を押された永久は、まだなにも気がついていないらしい。
     ――まぁ、存分に男の娘をやったり語ったりしてくるといいんじゃないかな!


    参加者
    普・通(正義を探求する凡人・d02987)
    鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)
    北澤・瞳(覇謳曖胡・d13296)
    黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)
    黒柳・矢宵(マジカルミントナイト・d17493)
    猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)
    黒絶・望(死を視る死神・d25986)
    ルクルド・カラーサ(生意気オージー・d26139)

    ■リプレイ

    ●鼻血ブーでもまだ負けてない
    『なんという……』
     わなわなわなわな。
     都市伝説『男の娘が慎ましやかじゃなくてどうする!』略して『オトツツ』は、握った拳を振るわせて口元抑え蹲くまる。
    「ふふふ、きれいでしょう?」
     愛らしい乙女声の普・通(正義を探求する凡人・d02987)は金魚のように袖をひらり、紅の髪飾りも艶やか、完全に振袖を支配下に置いているぞ!
    「ちゃんと男の子なんですよ、僕!」
     例え攻撃が苛烈になろうとも、ルクルド・カラーサ(生意気オージー・d26139)は主張を忘れない。そんな彼はシックな黒ゴスの裾をふわり。お値段500円(あげるから着てって言われた)逸品です。お座り田中・カラーサもお揃いの黒、は地毛ですね。
    「初めまして、オトトツさん。のぞみん、とお呼び下さい」
     瞳を隠した所が神秘的な黒絶・望(死を視る死神・d25986)には、服だけでなく仕草に清純さが滲んでいる。戦闘時は外す目隠しは珍しくつけたままだ。
    「女の子の格好してても、ぼくは男の子ですからっ」
     ロングスカートを抑え凛とした所作は憧れのあの人習い、鈴虫・伊万里(黒豹・d12923)の隣ではあわせたように清楚ないちご。ワイルドが様になるレヴィまでよりどりみどりだ!
    『けっけしからーん!!』
     抑えた手から滲み出るこれは、鼻血? ずらり揃った男の娘に既にノックアウト寸前。そんな戦う前から勝っている灼滅者達の舞台裏はこちらである。

    ●少し前の舞台裏
     1人で着替えるわけじゃないのなら、目隠しするしかない。ごくりと喉を鳴らし望は白い布で瞳を隠す。
    (「きっと大丈夫。耐えてみせます……」)
    「あ、ごめんね」
     悲壮な覚悟でワンピースをつまみ上げる望の肩に当り詫びるルクルドは、黒のゴスロリ。
     コルセット装着、頭のリボンも完璧! でも女装に染まってるわけじゃないんだと強く言い聞かせ。
    「まあ、うん。やりますよ、女装」
     鮮やかな振袖を違和感なく着こなす通は、幼少期から厄除けと称して着せつけられてきた、謂わば女装のベテラン。
    「うふふふーこわくないこわくなーい♪」
    「やるからにはトコトンお手伝いするわよー!」
     おててわきわきの黒柳・矢宵(マジカルミントナイト・d17493)に、イイ笑顔ではりきる北澤・瞳(覇謳曖胡・d13296)
    「ちょ……」
     後ずさり1人壁ドンな機関・永久(リメンバランス・dn0072)の躰が九十度傾いたかと思うと捕獲される。
    「ぶれにゃんナーイス!」
     やよ殿の視線の意味に気付き、猫乃目・ブレイブ(灼熱ブレイブ・d19380)助太刀でござる。
    「力……強い、ですね」
     絶望帯びた紫眼を励ますようにブレイブは真っ直ぐに言い切った。
    「よくわからないものの、皆をみているときっと可愛いものなのでござろう」
     ――淀みなし。
     傍らではエプロンドレスの庵胡にすりすりされて、ラメデコふりふりリボンのテツくんも得意げだ。2人(?)も新しい扉を開く事を全力でお勧めっぽい。
    「永久さんにはこれよ」
     瞳が掲げたのは深紅のチャイナにふわっふわの羽扇子。傍らの鞄にはアクセがみっちみち。
    「永久ちゃん」
     菜々乃が鞄から引っ張り出したのは――メイド服、魔法少女にアイドル系と盛りだくさん。
    「衣装替えはよりどりみどりですよ」
     笑顔で言われた!
    「お団子のリボンは目にあわせた紫かしら?」
    「矢宵は赤も似合うと思うなー」
    「むむ、これもいいでござるな」
     ブレイブが掲げたのは浅黄色、渋い。
    「ぶれにゃんに似合いそう!」
     結わえ髪にまきまき蝶結び。
    「永久さん、靴のサイズ何cm?」
     チャイナにあわせたパンプスもあるよ!
     振り返れば最後の砦――。
    「レイラさん」
    「コレモキオクヲトリモドスキッカケニナルカモ……」
     最後の砦は既に敵だった……差し出すボクサーパンツが気遣いか。
    「せめて、自分で着替え、ます」
     入れ替わり脱衣所からでてきたのは完璧美少女。
    「ぼくが男の娘かといわれると……」
    「私にとってはこれが自然なんです」
     自覚はないと言い切る伊万里と兄を前に、黒岩・りんご(凛と咲く姫神・d13538)は、鼻高々……と、ちょっと嫉妬。
    「悔しいですけどわたくしよりも可愛いと言わざるを得ないです」
     色つきリップでほんのり桜の伊万里と、着々とナチュラルメイクを仕上げる兄へ胸逸らし。なんだかんだ言ってりんごにとっていちごは自慢の兄である。
    「レヴィ、タイのladyboy、ナカマナカマ! 本場のメイク、教エテアゲル!」
     既にこの年でガチである少年は愛用コスメ広げ突撃だ!
    「色選びが大胆ですね」
     興味深げな伊万里とルクルド。通と望は遠巻きにちらちら。
    「わお、永久くん美人系!」
     下地を生かし瞳の手で仕上がる永久に、都市伝説を見つけた矢宵さん役得。
    「どこをとっても女子力に溢れてます」
     新たな知識を吸収しつつナチュラルに麗しく仕上がっていく2人を前に、りんごは開始前から既に大満足なのだ!

    ●そんなわけでよりどりみどり
    「というわけで♪」
    「あわわわわっ!?」
     はぎゅっ☆
     りんごは伊万里と兄を抱き寄せて都市伝説へ挑戦の眼差し。
    「この本物を傷つける事が出来ますか?」
     ふふーんと2人の肩をもきゅもきゅ、両手に花のりんごはなんだかおっさんポジショ……なんでもない。
    「ちょっと、りんご」
    「ち、近すぎますよっ」
    『……でっできる!』
     どうして都市伝説は半泣きなのか。
    「きゃぁっ!?」
     破けた肩口を押さえ抗議の涙目、しかし伊万里はあまり痛くない。心まで男の娘認定された?!
     仲間の悲鳴にムムと眉根が寄るブレイブは上段構えで踏み込みずんばらり。
    「ぶれにゃん」
     カンペと指さす矢宵と瞳の間から駆け出す庵胡は丸い瞳を金平糖のように煌めかせ伊万里を癒す。
    「永久さん、行って」
     手塩にかけて仕上げた偽娘(ウェイニャン)お披露目! 瞳の天使の歌声にあわせ、
    「しぇ、しぇいしぇい」
     片言中国語で中国茶器を差し出し、あ、糸も伸ばしときます。
    「……」
     一方のブレイブはカンペを見て固まっていた。
     どうしよう、台詞もさる事ながら頬を桜色に以下略とか細かな指示があるよ!?
    「こ、これは……!?」
     やよ殿の見つけた依頼、是非拙者としても力になりたいでござる――そんな心意気は未だ、未だ……しかし! だがしかし!
    「隙をつくるため、ぶれにゃんならできるよ!」
     そんな矢宵はテツ君と情熱ダンス後、激写の構え。おっと、ファインダーに現われた望は指を組み小鳥のように愛らしく首を傾げているぞ。
    「一応性別は男ですけどある彼にバレンタインのチョコをあげようかなと」
     ――嘘は言っていません。
    「私、ワンピース以外の服なんて持ってませんよ」
     ――5歳から9歳の頃までは。
     心の声にあわせて影で戒めぎゅぎゅっとな。
    『貴様! 生粋の男の娘だな!』
     ずびし!
     と、指さす先に現われたのは、黒いリボンのゴスロリ乙女に擬態したルクルド、黒レースで飾ったおててをひらひらにっこり。
    「何故、男が女装し、尚且つそこに惹かれる人間がいるのか」
     語り出した。
    「それはやはり普通にはない性の危うさというものがあるから」
     更に語り出したぞ!
    『己が身を女装に窶しなおかつ萌えを語るとは。なんという……』
     ハイレベルって台詞はルクルドの祭壇に張り飛ばされて虚空の彼方へ。
    「服選びも兄に教わるんですよ」
     オトトツの気を更に逸らすように兄が如何に可憐か語るりんご。
    「チアした時も兄の方がファン多いくらいで」
     そばで照れるいちごがますます可愛いのでもっと語る!
    「「それはそれとして、よくも伊万里さんを……!」」
     りんごといちごの声が綺麗にハモり攻撃もほぼ同時にヒット!
     こつり。
    「……失礼しますね」
     ノックバックでできた隙を逃さずに、楚々と襷に手を添え杖をオトトツのこめかみへ添えるたのは通。
     どっかん☆
     おおっと魔力炸裂!
    「着物って」
     ふふ、と嫋やかに微笑む通の形良い唇から零れ出すのは豆知識。
    「胸がない方が着やすいので、女装にもってこいだったりするのですよ」
    『なんと!』
     オトトツは、ひとつかしこく、なった!

    ●ゆにせっくす☆
    「女形(おやま)の美麗さは、性別を超越した魅力を追求する和の伝統的文化でもある訳よね」
    「ええ、お芝居の男役に女性が惹かれる事に通ずる部分があるのではないでしょうか!」
     ドレッシーな庵胡の眼差しと瞳の符で再び軽くなった躰を生かし、ルクルドはひらり漆黒レースとベルトをひらめかせる。
    『成程、役者が包み隠さず演じるのは我輩も認めたい所だな……』
     額にベルト刺しながら言う台詞じゃない。
    「ドレスチェンジターイム☆」
    「そうね。結構破れてるし」
     どん☆
     矢宵と瞳のコンビネーションはこちらでも発揮。蹌踉けた永久を待ってましたとカーテンで包むはレイラ。
    「特に小さい男の子は可愛くならずして何とする! 天然物も素晴らしいで……は!」
     皆に見とれていた菜々乃は素早く服を取り出しぱぱぱのぱっ☆
    「ナチュラルメイク? レヴィ、masterシタヨ!」
     小さい男の子だが妖艶美女なレヴィ、大胆胸元に永久をひっぱりこみメイクアップ!
    「永久さん、巫女服いきましょう!」
     ぐってレイラに拳握られた、うん露出少ないしそれでいいです。
    「私の友達も男の娘なんですよ。4人グループなんです」
     ――ただし望含む半分は女装癖なし。
    「私で良かったら好きなだけ見てくださいね」
     天然銀髪を指でくるり、望はふわぁと柔らかに口元を崩す。
    『なんというあざとさ……』
     赦さぬとお仕置きビーム。
    「きゃ」
     避けるようにしゃがんだら目隠しの結び目に当たってしまう。
    「あ……ッ、嫌」
     ダメージはさほどではないが過去のトラウマが蘇りガタガタ震え出す望に、ブレイブはカンペをぐぐっと握りしめる。
    「これ以上の狼藉は赦さぬでござる……いざ!」
     ぴろ。
     もう一回ひらいて確認。よし、憶えた!
    「拙者、男の娘に萌え萌えきゅんきゅーん!」
     祈りの形に指組み桜色の頬で瞳うるうる、きゅんきゅーんにあわせて頭フリフリ、リボンふわっふわ。
    「……でござる!」
     ――なんという侍!
     余りの事にオトトツは虚を突かれている、そこに鋭い蹴打を入れるのも侍の嗜みだ。 
    「ぶれにゃん、バッチリだよ!」
     決定的瞬間は矢宵のカメラがぱちり☆
     テツ君とカラーサが望を庇うように左右から回り込み、更にその前に通が躍り出る。
    「気をしっかりもってくださいね?」
     辛うじて頷く望を確認し通は固めた拳でオトトツをガッ! あくまで優雅にな?
    『貴様、プロの男の娘だな?』
    「はわわ、言わないで下さいよぅ」
     恥じらいポイントが高いので返すオトトツの拳は緩い、しかし振袖は破く!
    「男の娘の服を破るなんてうらや……許せない!」
     矢宵さん本音本音。
     一方、りんごと伊万里はアイコンタクト。本物の男の娘認定を受けかなり軽傷、であれば――。
    「兄と違い男装もするようですけど、女装に抵抗はないですし……伊万里さんの可愛さは反則です」
    『男装だと?!』
     どうして裏切られたって顔をするのかオトトツ。
    「女の子の格好してても、ぼくは男の子ですからっ」
     ぐっと胸を反らし腰の辺りで手を握れば、コルセットベストとロングスカートをレトロワイルドに纏めるベルトがしゅるり。
    「きゃっ」
     ベルトが飛び立つ拍子にめくれるスカートを伊万里は押さえ込み赤面。
    『……うぐっ、このおお』
     鼻っ面をしこたまベルトにしばかれて涙目のオトトツへ、りんごが喚びし神の刃が降り注ぐ。
    「想い人の事は応援してますが、これで男子っぽくなるなら勿体ないですよねぇ」
    『相手は女子なのかあああ?!』
     オトトツの心が、なんだか砕けたっぽい。

    ●そもそも何故男の娘を脱がしたいのか?
     それがわからないオトトツの苦悩を見逃さず、灼滅者達はボッコボコにする。
     ちなみにその間、永久は巫女とメイド、更にまたチャイナ娘へ戻りました。
    『男の娘は服を着ていてこそ! なのに、なのにー!』
    (「男の娘が……好きなんですかね、この都市伝説」)
     結局最後までわからなかったと、通は金色散らした黒帯をささっと直しそのついでに巨腕で張り飛ばし。
    「永久くん、チャイナもメイドも巫女も撮ったよ! あとで見ようね♪」
    「……教室ではひろげないで、くださいね」
     ――口は災いの元。もう未来が見えたね。
    「そして相棒さんと共に分かち合う新たな萌えの形……! 本当に奥が深いわよねー?」
     歌姫のように清らかな声で萌えを語りついでにダメージも与える瞳に応えて、フリルテツくんは永久をガツンと庇い、庵胡はラブリィな瞳で疵を癒す。
    「永久さんって思いの外身長高くて体格イイのねー」
    「最近……ぐんぐん伸びて、ます」
     ああ、普通の会話に逃げ切りたい。でも瞳の眼差しは妙に熱を帯びていてそれを赦してくれない。
    「男の娘はねーやっぱりどことなく男性っぽい感じがするのもやよい好きだな」
     応援、これは応援なのか?
    「永久くんみたいなシロウト感も初々しくてやよい好きです!」
    「今度はアクセじゃらじゃらに挑戦してみない? お嬢様もいいわね」
     瞳はルクルドから、伊万里といちごを見回し全力でお勧めの構えだ。
    「普段とはまた違う華やかさにござるな」
     絢爛豪華な男の娘達を前に、ブレイブは感心したようにアーモンドの瞳をくるり。錫杖でも半円を描きオトトツの顎の下へどすり。
     流し込まれた魔力はオトトツの躰へ、晴れやかな言葉は永久のなにかへ追撃しまくりだー。
    (「即席ですがお肌のお手入れもしましたし」)
     是非これからも継続してくださいねと、菜々乃さんは拳をグッ!
    (「……くっ! 項垂れているのも、か、可愛い……頑張ってください応援してます!」)
     レイラの目にはダブル萌え萌え、写真は焼き増ししてもらおうと心に誓う。
     ――ぷつん。
    「ご主人様、結局男の娘と女装男子の差がワカラナイヨ。説明して、ください」
     お盆を押しつけついでに糸でざくざく。
    「Don't make light of ladyboy,Scum」
     口笛鳴らすレヴィが親指を下に向けにやり。
    「あっ……ぅう」
    「大丈夫ですかっ?」
    「…………」
     こくこく。
     伊万里に頷いた望は自らを帯で包み気を保つ。眼下に映る女装姿の自分にトラウマが刺激されるが、頑張る。これが終わったら帰れるんだ、帰れるんだから!
    「はしたなくてごめんなさい」
     ぴらっ!
     炎の踵よりスカートの中身に目がいった! そこへ伸ばされるは、りんごのさらし。
    「決める時はちゃんと男の子できるのがとても素敵だと思うんですよ♪」
     大事な部分を隠すように広がり更に伊万里の破れを繕うべくしゅるりん。『チッ! 見えぬではない……ふばぁ?!』
     ダイナミックアクションは止まらずオトトツを踵でガッである。
    「わおーん」
     伸び上がり一啼き、カラーサは後ろ足で踏み切ると六文銭をしゃーっと散蒔く。冥銭とっときなと言わんばかりだ。
    「女装をする時……」
     レースに包まれた腕を掲げ、ルクルドは真顔で唇を動かす。
    「男の娘は性と言う絶対的な宿命に向かい合い、それを越えずしかし抗うという矛盾した道を進まなければならないのです」
     ――わかりますか?
     問いかけに貫かれた胸を押さえて血反吐のオトトツは力無く頭を振る。
    『見せられた数々の男の娘としての覚悟……至らぬ我輩の負けだ』
    「あ、でも」
     しゅるっ。
     手元に引いたベルトを手に少年はしれとつけくわえる。
    「ちゃんと男の子なんですよ、僕!」
     女装はするけど男の格好の方が云々……ぐだぐだな状況で灼滅された都市伝説『男の娘が慎ましやかじゃなくてどうする!』さんマジ憐れ。
    「どんな依頼でも皆で力を合わせれば打破できない物はないでござる!」
     お、綺麗にまとまりましたね。
     これにて悪しき都市伝説の所行は一巻の終わりでございまーす。

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月29日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 3/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 8
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