13段目の階段

    作者:陵かなめ

    「うちの高校に伝わる七不思議の一つ、『13段目の階段』って知ってる?」
    「知ってるよ。真夜中の校舎に忍び込んで段数を数えながら上ると、一段増えてるってやつでしょ?」
     福岡県にあるこの高校では、学園七不思議が生徒の間で語り継がれてきた。これはその一つ、『13段目の階段』の話。
     真夜中の校舎の段数を数えながら階段を上る。すると、昼間は12段しかないはずの階段が13段に増えているというのだ。そして、13段目を数えてしまった者たちは、死んでしまうという。
    「いきなり死んじゃうって、怖すぎるよね」
    「それに、一段増えるって言うのも、それだけで怖いよ」
     噂話をしていた生徒達は、顔を見合わせ身震いするのだった。
     
    ●依頼
    「天生目・ナツメ(大和撫子のなり損ない・d23288)さんと、千布里・采(夜藍空・d00110)さんから、九州の学校で多数の都市伝説が実体化して事件を起こしているという報告があったんだよ」
     千歳緑・太郎(中学生エクスブレイン・dn0146)が話し始めた。
    「場所が九州に特定されているよね。だから、HKT六六六及び、うずめ様の関与が疑われているんだけど、確証は無いんだよ。どっちにしても、このままだったら沢山の学生達が被害にあっちゃうから、急いで解決に向かって欲しいんだ」
     そのように前置きをしてから、太郎は詳細な説明に入った。
    「今回みんなにお願いするのは、福岡県の高校に伝わる学園七不思議『13番目の階段』だよ。みんなには、都市伝説として実体化した『13番目の階段』の灼滅をお願いしたいんだ」
     4階建て校舎の西側にある階段のどこか一つが『13番目の階段』だという。各階の階段は、構造は同じ。前半12段目が踊り場になっており、後半の階段は本来13段目からとなる。ところが、都市伝説の現れる階段は、なぜか踊り場が13段目になってしまうのだ。
    「どこの階の階段が増えるのかは、実際にやってみないと分からないよ。みんなで一つずつ試してみるか、いくつかの班に分かれてそれぞれの階段を数えてみるか、それはお任せするね。13段目を数え終えた瞬間都市伝説が出現するから、油断だけはしないようにね」
     次に、戦闘についての説明もあった。
    「現れる都市伝説は、石でできた人形のような風貌だよ。殴ったり、投げたり、石化の呪いの攻撃を仕掛けてくるよ」
     攻撃力はそれほど脅威ではないが、ポジションはディフェンダーであり、体力は高いようだ。
    「油断しなければ大丈夫だと思うけど、みんなでよく相談して気をつけて言ってきてね」
     そう言ってから、太郎はぎゅっとくまのぬいぐるみを握り締めた。
    「それから、何者かの気配は感じるんだけど、襲ってくることはなさそうなんだ。事件を解決したら、安全のため、すぐに帰還してね」


    参加者
    科戸・日方(高校生自転車乗り・d00353)
    森田・供助(月桂杖・d03292)
    望月・小鳥(せんこうはなび・d06205)
    乾・剣一(紅剣列火・d10909)
    ティート・ヴェルディ(九番目の剣は盾を貫く・d12718)
    クレイ・モア(ロストチャイルド・d17759)
    多鴨戸・千幻(超人幻想・d19776)
    雨宮・夜彦(高校生人狼・d28380)

    ■リプレイ

    ●真夜中の校舎
     しんと静まり返った校舎の中、灼滅者たちは皆で階段を上り、その段数を数えていた。
    「夜中の学校ってホント、何か出てきそうだよなー」
     腰につけたランタンで足元を照らしていた科戸・日方(高校生自転車乗り・d00353)が上階を見上げる。
     暗い廊下や階段の先を想像すると、昼間とは違う何かが起こりそうな気持ちになった。
     自分たちの周辺は持ち寄った明かりがあるけれど、少し先まで視線を延ばすと、そこは吸い込まれるような闇色に感じられる。
    「夜の学校はやっぱりちょっとわくわくするですね」
     5段、6段と階段を上り、ビハインドのロビンを従え先頭を歩いていた望月・小鳥(せんこうはなび・d06205)が辺りを見回した。
     校舎内には自分たちの姿しかない。
     昼間は生徒の活気で賑わう場所も、時間が遅いと言うだけでこの静けさである。
     日常では起こりえない、特別な何かがあるかもしれないと感じさせる。夜の校舎は、それほど昼間とは違った印象を抱かせる。
    「7……、えーと、8……、あれ、ってなんか俺だけ数えるの遅くね?」
     ふと多鴨戸・千幻(超人幻想・d19776)が顔を上げた。いつの間にか周りのみんなとカウントがずれているような、そんな気がする。
     急がないと、いや、ええと、何段まで数えたか?
     その時、上のほうから森田・供助(月桂杖・d03292)の声が聞こえた。
    「おーい、そろそろ踊り場だぜー?」
    「……」
     千幻は咳払いをして皆に追いつき、さらにその先に足を進めた。
    「階段のカウントは任せた。俺は前方を見張っておく」
     キリッと顔を引き締めた表情で振り返り、宣言する。けっしてじょうずにかいだんをかぞえられないとか、そういうわけではないのだぞ。
    「お、おう。そうか頑張れ」
     返事をして供助もその後を追った。
    「しかし、九州はずっと落ち着かねぇな」
     何か起こるたびに赴く対処療法より、自分たちを探っているであろう何らかの気配の顔くらい拝みたいものだと思う。
    「HKTの関与か……無事に帰れるといいんだが」
     クレイ・モア(ロストチャイルド・d17759)がその後に続いた。
     12段目で踊り場に到達し、次の階へ足を進める。
    「まぁ今はひとまずここの高校から脅威を払わないとね」
    「敵自体は強くないにせよ、気は抜かずに行こうぜ」
     話をふられ、雨宮・夜彦(高校生人狼・d28380)が頷いた。
     一応、一般人がいないかどうか確認するように周辺を伺う。どうやら、次の階にも一般人はいないようだ。
     とはいえ、もしかしたらギャラリーも見ているかもしれないし、と乾・剣一(紅剣列火・d10909)。
    「武蔵坂の手際ってヤツを見せてやろうじゃないか」
    「ですよねー」
     クレイが笑顔で頷く。
     話を聞いていた小鳥が振り向いた。
     都市伝説のほうはさほど問題ないとは思うが、気配が気になって仕方がない。
     いや都市伝説もちゃんとしないとダメだだけれども。
    「『Wake not a sleeping lion』ですね」
     そんな風に話しながら階段を上る。
     仲間の会話を耳に入れながらティート・ヴェルディ(九番目の剣は盾を貫く・d12718)は欠伸をかみ殺した。
     夜の学校に来たこと自体、結構面倒なことだ。
     正直、とっとと倒して帰りたい。
     都市伝説は強いのだろうか。弱かったらガッカリだが、強くて楽しければ良いなと思う。
     一階から二階への階段では都市伝説は現れなかった。
     灼滅者たちは、次の階段を一から数え始めた。

    ●13番目の階段
    「10、11……」
     階段を数える夜彦の声に緊張の色が混じる。
     いつの間に増えたのか、普通ならば次の数が踊り場になるはずなのに、見えるのは階段部分だ。
     確実に増えている。
    「12」
     クレイも確信する。間違いない。12を数えてまだ踊り場にたどり着かないと言うことは、13番目があるという事。
     顔を見合わせ、足を進める。
    「……13」
     そして日方もその数を数え、13段目の階段である踊り場に足をかけた。
    「13番をカゾエタ、な」
     どこからともなく、冷たい声が聞こえてくる。
    「出たか」
     千幻が呟いた。
     瞬間、灼滅者たちは戦う態勢を整え立ち場所に散った。
    「13番目は、ココデシ、タ」
     抑揚のない声が告げる。
     同時に足元が崩れた。
     踊り場だった場所がいくつかのパーツに別れ、再び別の形に組みあがっていく。皆が足をかけた場所そのものが、都市伝説となったように見えた。
    「……っと」
     都市伝説の登場に足を取られないようバランスを取りながら剣一が走る。
     ライドキャリバーに足止めの指示を出しながら、自身はエアシューズを使い飛び上がった。
     今回は、可能ならば手早く済ませたいところだ。
    「と言うわけで、行くぜ」
     いまや石の人形の姿に組みあがった都市伝説に向け、煌きと重力の力を乗せた飛び蹴りを放つ。
    「おとなしく、死んでしまえばいいの、に」
     一瞬バランスを崩した都市伝説は、倒れることもなく腕を振り上げてみせた。
     だが、振り上げた腕が誰かを殴りつけるその前に、槍を構えたティートが都市伝説の懐へ滑り込む。
    「へえ、打たれ強いってのは本当らしいが、まさかそれだけってことは無いだろうな?」
     槍を手元で器用に操り、下から上へ突き出した。
     続けて、無敵斬艦刀・千刃紗波を手にした小鳥が敵の前へ躍り出る。
    「お仕事のお時間です、推して参らせて頂きます」
     いかにも硬そうな石の身体めがけて、斬艦刀をふり抜いた。さらにロビンが霊障波で追撃をかける。
     激しい攻撃に、都市伝説が身体を後退させた。
    「13段目のふりして待ち構えてたってわけかよ」
     だが、逃がすはずも無く、供助が追う。
     仲間の様子をちらりと横目で確認した。皆上手く足場を確保したようだ。踊り場の中央に都市伝説、それを囲むように灼滅者たちが位置を取っている。
    「それじゃ、攻撃に集中させて貰うぜ」
     言って、槍で敵を穿つ。
     都市伝説は思い足音を響かせ何度かバランスを取り戻すためステップした。
    「そう、13番目は怖い、ぞ」
     そして、態勢を整えなおし、再び腕を振り上げ向かってくる。
     仲間達は武器を取り、次々に攻撃を仕掛けた。

    ●13番目は、怖イ
    「さあ潰シテしまう、ぞ」
     都市伝説が突然走り出した。
     重量感ある身体にしては、すばやい動きをする。腕で殴ると言うより、体全部の体重で潰しに来るイメージだ。
     受ける構えを取ったが、狙われたクレイの身体が吹き飛んだ。
     そのまま壁に身体をぶつけて止まる。
    「あ~、いってって……」
     打たれた腕を庇いながらすぐに身体を起こした。力強い攻撃だが、見た目ほど重いダメージではない。
     その間に、日方が敵の死角に回りこんだ。
    「七不思議なんてドコの学校にもあんだし、実体化すンなってんだ!」
     稼動部分を繋ぐ関節を狙い、何度も斬りつける。
     目の端に千幻が飛び込んでくる姿を捉え、日方はすぐに距離を取った。仲間の動きを意識し、一人前に出過ぎないよう行動しているのだ。
     敵への道が開かれ、千幻がバベルブレイカー・アサルトスパイクを振り上げた。
    「さんぽは回復な」
     霊犬のさんぽにクレイの回復を命じ、千幻はバベルブレイカーの杭を都市伝説の硬い身体に無理矢理ねじ込む。
    「ねじ切れっ」
     十分食い込んだことを確認し杭を高速回転させた。
     石でも都市伝説でも関係なく、敵の身体を力強く破壊する。
    「あ、あ、痛い、ゾ」
     砕けた身体を庇い、都市伝説が逃げるように走った。
    「うん。石化の攻撃は、まだ飛んで来ない、な」
     後列に位置している夜彦は、常に敵の遠距離の攻撃に注意を払いながら動いている。
     戦いが始まってからは耳と尻尾を出し、狭い足場を器用に走り回っていた。
    「じゃあ、行くぜ」
     そして、獣化した腕を構え壁を蹴る。急速に方向転換し、敵を追い越したところから鋭い銀爪を突き立てる。
     暴れる敵の身体を押さえつけるように蹴り、力任せに傷口を引き裂いた。
    「何をす、る。何を」
     必死に逃れようとしている都市伝説に向かって、クレイが日本刀・モンデンキントを振り下ろす。
    「……石なだけあって手ごたえが硬いな」
     重い一撃は、斬るというよりも叩き割る感触がした。
    「けど、もう一押しだよな」
     続けて供助も攻撃する。
    「そうだな」
     頷き、剣一がレーヴァテインで畳み掛けた。
    「早く消せないと俺の炎は石だって焼くぜ?」
     言葉の通り、炎が都市伝説の石の体に纏わり付く。
    「もう一つ、氷も追加です」
     さらに、敵の周辺を凍らせたのは小鳥のフリージングデスだ。
    「さっさと終わらせようぜ」
     ティートも炎を叩き付けた。
     だが、その瞳はすでに敵への興味を失っているようにも見えた。どうやらこの都市伝説は、ティートの心を燃え滾らせるほどには強い相手ではなかったと言うことだろうか。
    「あ、ア、あ、怖いだろ、う? 13番目は、怖イ」
     抑揚の無い声で石の人形が喚く。
     灼滅者たちは敵の終わりが近いことを感じ、狙いを定めた。

    ●戦い終わり
    「もう一息、最後まで気を抜かず行こうぜ」
     仲間を鼓舞するように叫び、夜彦がエアシューズを走らせる。
    「ア、あ、13番目を見つけた者は死、ね」
     掴みかかって来る人形を空中でひらりとかわし、天井を蹴って方向転換した。
     その勢いを殺さず、敵の体を蹴り上げる。
     仲間達は、これに続き次々と攻撃を繰り出した。
     ティートがマテリアルロッドで殴り飛ばし、クレイが青緑色の光の刃を撃ち出す。
    「死ね、死、ネ、死」
    「相棒、左前方機銃掃射。アレを足止めしろ」
     壊れたように死を繰り返す敵に剣一も仕掛ける。
     ライドキャリバーに短い指示を出し、自身は反対側から走った。
     キャリバーの攻撃に気を取られている石の人形に炎を叩きつける。
     千幻もグラインドファイアを繰り出した。供助が畳み掛けるように異形巨大化した腕で殴りつける。
     都市伝説の体がぐらりと揺れた。
     かろうじて人形の形を保っているが、動きも鈍り力強い攻撃を繰り出すことはもうできない様子だ。
    「あと一息、行こうぜっ」
     日方が交通標識を担ぎ上げた。
     すでに十分状態異常を重ねられた。あとは強力な攻撃を叩き込むだけ。
     一気に距離を詰めた日方は、勢いのままに敵を殴りつけた。
    「それでは、これで終いにしますっ」
     砕け、崩れていく都市伝説に、小鳥が最後の一撃を叩き込んむ。
    「じ、ジ、ジュ……」
     繰り出した超弩級の一撃が、敵のすべてを粉砕した。

     戦い終わり、予定通り速やかに校舎から退出する。
    「……もう誰も居ねぇよな?」
     都市伝説が消えていった場所を振り返り、日方が呟く。校舎の中からは、異常な気配は感じられない。
     校庭まで移動した後、供助が身を潜めることのできるような場所を見つけ皆を手招きした。
     自分たちを見張る気配はあるのか、それはいったい何者か、もし何か動きがあればと様子を伺おうと言うのだ。
     静かに身を潜めながら、夜彦は感覚を研ぎ澄まし周辺に優位を払う。
     何か、見られているような変な感じはないだろうか?
     2分経ち、3分経ち、現場に動きが無いまま5分が過ぎようとしていた。
    「そろそろ時間だ。無茶せず帰ろうぜ」
     ティートが皆に帰還を促すよう声をかける。
     約束の5分だ。
    「しかし、よくわからねえもん待つのは素直にビビるな……」
     何か情報を掴みたい気持ちはあるが無理はできない。千幻は促されるまま立ち上がった。
     他の仲間たちも、何も無ければ帰還をするということに、異論は無い。
     皆立ち上がり、歩き出す。
    「みんなお疲れ様」
     何事も無ければ、それで良い。
     クレイがほっと一息ついて声をかけると、皆の表情が少しずつ緩む。
     ともあれ、都市伝説を無事倒し、灼滅者たちは学園に帰還した。

    作者:陵かなめ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月31日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 5/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ