武人達の抗争

    作者:緋月シン

    ●武人達の抗争
    「ふむ……トレーニングに混ざりに来た、というわけでは、なさそうだな」
     そう言って呟くと、男――ガイは、動かしていた腕を止め、今やって来たばかりの男達へと視線を向けた。思い出したかのように全身から汗が噴き出し、流れるも、ガイも男達も気にした様子はない。
     周囲の者達はそんな光景に一瞬視線を向けるも、すぐに自分達のことへと意識を戻す。掛け声と音が、周囲へと響き渡る。
    「それで、俺に一体何の用だ?」
     男達は――ガイも含め、人間ではない。アンブレイカブルだ。まさか遊びに来たなどということはなく……或いはここは道場であるため、ガイのようにトレーニングに来た、という可能性ならばあったが――男達の雰囲気が、それを否定していた。
     そしてそれを肯定するかのように、男達の中の一人が一歩前に進み出る。
    「用件は単純だ。俺達の組織に加われ」
     それは端的であるが故に、分かりやすかった。
     ガイと男達は同じアンブレイカブルではあったが、所属している派閥が異なる。ガイはケツァールマスク派であり、男達はシン・ライリー派。元々は共に行動をしていたのだが、とある事情により分かれ、現在は抗争が発生している状態となっているのだ。
     つまりこれは引き抜き――というよりは、強要であり、脅迫だろう。断ればどうなるかということは、その人数と態度が示していた。
     だが。
    「断る」
     はっきりと、ガイはその言葉を叩き付けた。その顔には、笑みすらも浮かんでいる。
    「死にたいのか、貴様?」
    「別にそういうわけではないが……これはつまり、俺に対する挑戦状だろう? ならば受けなくて、どうする」
    「……貴様らのそういうところは、心底理解出来んな」
    「これは俺達がやりたいからこそやっているだけだ。理解してもらおうなどと、最初から思ってはいない。ただ、今日はトレーニングだけのつもりであったため、マスクは持ってきていないのだが……まあ、それもまた一興だろう」
     それ以上の言葉は必要なかった。
     直後、その場に周囲のそれとは比較にならないほどの轟音が鳴り響いた。

    「くっ……裏切り者にやられる、か……だが、それもまた一興、だな」
     酷い有様であった。それはガイのみならず、周囲の状況も、である。
     巻き込まれた者達は一人の例外もなく肉塊へと代わり、綺麗だった道場は文字通りの意味で跡形も無い。対する男達も無事とは言い難いものの、勝敗は明らかであった。
     しかしそれをガイは悔やむでもなく、男達も喜ぶわけではない。ただ、一人が進み出ると、その拳を構える。
     そして。
     ガイの命を奪うためのそれが、振り下ろされたのであった。

    ●シン・ライリーの動向
    「獄魔大将シン・ライリーの動きが、幸喜さんのおかげで判明したわ」
    「あ、呼ばれた時からもしかしてとは思っていたんですけど、やっぱりですか!」
     双葉・幸喜(正義の相撲系魔法少女・d18781)の言葉に、四条・鏡華(中学生エクスブレイン・dn0110)は頷いた。今回の功績は、間違いなくその予測にある。
    「確か私は、ケツァール達がシン・ライリーと反目して独自行動する……と、予測したはずですが!」
    「ええ、そうね。だからこそ、分かったこともそれ関連……シン・ライリーの配下とケツァールマスクの配下が抗争を行っている、というものよ」
     その原因が獄魔覇獄の失敗にあるのかは分からないものの、そういったことが起こっている、ということだけは確かだ。
     とはいえ、本来であれば、ダークネス同士の抗争に関わる必要はないが――。
    「この抗争に巻き込まれて、多くの一般人が被害を受けてしまうわ」
    「なら、放っておくわけにはいきませんね!」
     幸喜の言葉に、鏡華は再度頷く。つまりは、そういうことだ。
    「抗争が起こる前に現場に向かって、抗争を未然に防いでちょうだい」
    「つまり、その前にアンブレイカブルを灼滅するってことですか!」
    「とは、限らないのだけれどもね」
     要は抗争を起こさなければいいので、その前にアンブレイカブルを撤退させる、という手段でも構わないのだ。
    「ただし、シン・ライリー派のアンブレイカブルが襲撃してくる、と伝えたところで、逃げ出すことは有り得ないわ」
    「アンブレイカブルですからね!」
    「だから被害を抑える為には、シン・ライリー派のアンブレイカブルが来る前に、最低限戦って撃退する必要があるでしょうね」
     ケツァールマスク派のアンブレイカブルの名前は、ガイ。ストリートファイターとバトルオーラ相応のサイキックを使用するも、ケツァールマスク派というだけあり、その戦闘方法は何処かプロレスラー的だ。
    「獄魔覇獄は失敗に終わったけれども……シン・ライリーがこのまま引き下がるとは思えないわ」
    「今回の事件も、新たな作戦の前哨戦なのかもしれませんね!」
    「ええ。でも何よりまずは、今回の事件を無事防いでからよ……よろしく頼むわ」
     幸喜の言葉に三度頷くと、鏡華はそう言って話を締めくくったのであった。


    参加者
    狐雅原・あきら(アポリア・d00502)
    斉藤・歩(炎の輝光子・d08996)
    神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)
    双葉・幸喜(正義の相撲系魔法少女・d18781)
    麻古衣・紬(灼華絶零・d19786)
    空月・陽太(魔弾の悪魔の弟子・d25198)
    矢矧・小笠(蒼穹翔ける天狗少女・d28354)
    梶間・宗一郎(無為無窮の拳・d30874)

    ■リプレイ


     男は、一人でいた。周囲には沢山の人がおり、しかしそこに埋もれていないのはその存在感故か。
     どの人物がガイであるのか、探すまでもなかった。
     その姿を視界に収め、空月・陽太(魔弾の悪魔の弟子・d25198)の目が細められる。
    (「ダークネスは灼滅、と言いたいところだけれど、状況が状況だ。せいぜい有益な情報を持っていることを期待しよう」)
     しかしすぐに逸らすと、周囲を見回す。まずは一般人の避難誘導が先であり、そのためにもと、ガイへと近づいていく者が一人。
    「すいません、ちょっといいっすか?」
     斉藤・歩(炎の輝光子・d08996)だ。
     その言葉に、ガイが振り返る。その顔に驚きがないのは、何者が来ているのかということに気付いていたためだろう。
    「……トレーニングに来たというわけでは、なさそうだな」
    「はいっす。自分等の『挑戦』受けてくれないっすか? ルールは10カウントとギブアップ有りで」
     自分達の要求のみを端的に述べる歩に、ガイの口元が僅かに歪む。しかしそれは不快のそれというよりは、何処か楽しんでいるようであった。
    「自分等、ということは、一対一ではないということか」
    「流石に実力差が大きいからね。八対一での戦いを申し込みたいかな」
     その言葉には梶間・宗一郎(無為無窮の拳・d30874)が答え、さらに別の場所から言葉が放たれる。
    「あ、それとボク達が勝ったら聞きたいことがあるのでインタビューいいカナ?」
     狐雅原・あきら(アポリア・d00502)だ。
    「インタビュー?」
    「まあ、ちょっと聞きたいことがあるって感じっすね。それと、自分等が勝ったらケツァールマスクさんに伝言頼みたいんっすけど、それも出来るだけ早く」
    「こちらが負けた負けた場合は、そちらの利益になる情報を渡す、ということではどうかな?」
     続けて歩と宗一郎が条件を加え――そこに被せるように、言葉が付け足される。
    「無論、熱い闘いはお約束しましょう! それが一番の報酬のはず!」
     双葉・幸喜(正義の相撲系魔法少女・d18781)だ。
    「相撲とプロレスの異種格闘技戦です!」
    「……ま、いいだろう。挑戦とあらば受けないわけにはいかないからな」
     それらの言葉にガイは頷き、早速とばかりに構える。
     だが。
    「その前に、一般人の方々を避難させてしまってもよろしいでしょうか? 私達の戦闘に巻き込み危険に晒してしまう可能性がありますので」
     問いかけたのは、神音・葎(月黄泉の姫君・d16902)だ。
    「ふむ……ここでは仕方がない、か」
     その答えに安堵しながら、葎は一般人を避難させるために動き出し――ふと思う。
    (「獄魔覇獄は随分と尾を引いておりますね。何れにせよ、姦計は叩き潰す。それだけです」)
     勿論避難誘導は皆も手伝い、殺界形成や王者の風を使用しつつ、順調に進んでいく。
    (「何故、敵対することになったのでしょうね……」)
     麻古衣・紬(灼華絶零・d19786)は誘導を続けながらもガイへと視線を向け、しかしすぐにその思考を打ち消した。
     確かに気にはなるものの、関係ない人間が巻き込まれるのはよろしくない。それを尋ねるのは、これを終え、そして勝ってからだ。
     そうしているうちに避難も終え、そこに残るのは九人のみ。先ほどからガイは構えたまま、いつでもいいと言わんばかりの体勢だ。
     その姿を眺めながら、矢矧・小笠(蒼穹翔ける天狗少女・d28354)はここで本来起こるはずであったことを思い出す。
     従わなければ殺すというやり方は酷いと思うし、ご当地ヒーローとしては見過ごせない。
     だから。
    (「正々堂々、言うことを聞いてもらいましょう」)
     激突した。


    「非常事態ではあるんだろうけどね。まぁ折角の機会だ。楽しんで戦おうか」
     言葉と同時、真っ先に飛び込んだのは宗一郎だ。その全身は異形化しており、瞳は金色に、白目の部分は反転したかのように黒く染まっている。
     鈍色のオーラを纏った拳が撃ち出され、それを迎え撃つのはガイの拳。拳と拳が重なり、鈍い音が響き――弾かれたのは、当前のように宗一郎のそれだ。
     しかし崩れかけた体勢で、強引に持ち上げた足に纏っているのは、炎。
     拳が身体へと突き刺さり、だがその代わりとばかりに蹴り抜いた。
     宗一郎の身体が吹き飛び、ガイの体勢が僅かに崩れる。しかし僅かであれども、それは隙には違いなく――見逃さず踏み込んでいたのは葎。
    「一手、ご教授願えますか」
     纏っている紅い光が軌跡を描き、鬼が舞うかの如き光景の中、差し出されるのは黒き魔剣。
     防御に回された腕の隙間を縫い、もう一歩を踏み込む。螺旋の如き捻りを加えながら、貫いた。
     腕に確かな感触を覚え――だが感じた悪寒のままに飛び退く。
     眼前を轟音が過ぎ去ったのは、その直後。それが回し蹴りであったのだということに気付いた時には、既に逆の足が迫っていた。
     それは着地するよりも早く――しかし響いたのは、硬い激突音。
     目の前に、遮るようにしてあるのは炎を宿した杖――紬だ。
    「『殺し合い』はしませんから、できれば言うことを聞いてほしいですね」
    「ふん……それをさせるために、今こうしているのだろう?」
     なるほど確かにと頷くも、均衡を保っていたのは僅かな間のみ。力で勝るガイの足が振り抜かれ、しかし紬はそれに付き合わない。
     力を流すように杖を滑らせ、叩き付ける。それはあまり迫力のある光景ではなく――だが流し込んだ魔力が、直後に爆ぜた。
     衝撃に一瞬ガイの膝から力が抜け、しかし倒すには程遠い。それでも僅かに顔は下を向き――その耳に響いたのは、からんからんと鳴る、下駄の音。
    「てんぐ様のお通りであるっ!」
     小笠だ。
     その顔には天狗面。宙を駆るその足には、暗緑色の天狗の高下駄を模したもの。さらに下駄の音を響かせながら、渦巻く大気を車輪と化し、蹴る。
     構えるそれの名は、ユピテル・ランペッジャメント。神の雷の如き勢いで以って、突き進み――貫いた。
     だがその直後に、小笠は気付く。その口元には笑みがあり、その目は欠片も死んでいないことに。
     まずいと思った時には遅かった。身を貫かれていることなどは微塵も気にせずに、拳が振り下ろされる。
     轟音と共に小笠の身体が地面に叩きつけられ、跳ね上がったところに踏み込んだ足。蹴り抜かれ――響いたのは、硬質な音。
     割り込んだ陽太は盾を構えており、しかしフードを脱いだその顔には、普段の笑みは無い。無感情の瞳をガイへと向け――。
    「この手の武器は苦手なんだけどね」
     嘯く手元には、隠者の報復。死角から回されたそれがガイの身体を斬り裂き、血がしぶく。
     だがガイは変わることなく、拳が振り抜かれた。盾ごと陽太の身体が吹き飛ばされ、しかし変わるように踏み込んだのは、あきら。
    「どう戦おうと、ボクは何時も通りにしか出来ないんでネ。いつまでお互い立っていられるか、見せてもらうヨー」
     構えるのは、先端に宝石を埋め込まれた黒い槍――異端審問。
     だがそう言いながらも、多少は相手に合わせるつもりはあるのか――。
    「さー! 音楽デス! えーっと、スカーレットバスター! ……でいいんですっけ」
     プロレスってことはやっぱりキン何とかバスターデスね! などと呟きつつ、その手に握る槍が振り抜かれる。
     音楽と言いつつ明らかに物理だが、あきらはそんな細かいことを気にせず――ガイもまた、気にはしない。
     貫かれたこともやはり気にせず、流れるように取った構えに淀みはない。
     そしてその前へと堂々と進んでいく影が一つ。
    「俺の名前はアルクだ。さぁ、始めようぜ!」
     歩だ。その口調を普段のものと変え――。
    「いくぜ、メタルラリアット!」
     腕を硬化させ、敢えて技名を叫ぶ――相手に合わせてのそれに、ガイの笑みがさらに濃いものとなった。
     突き進むその動きは無駄に大きく、しかしガイはむしろそれを受け入れるかの如く構える。直撃し、だが即座に放たれるのは、先の歩同様のもの。
     歩の顔にも笑みが浮かんでおり、庇おうとした仲間を、視線で制す。正面から受け止め、吹き飛ばされた。
     さすがに歩は即座の復帰は出来なかったものの、その代わりとでも言うかのように、前に出たのは幸喜。
     先の言葉を実現すべく、その動きに小細工は無い。眼前の空間へとつっぱりを放ち、撃ち出されたのは、本人曰く相撲魔力。ミサイル状となり突き進み――ガイはそれを、やはり正面から受けた。
     衝撃に仰け反り、しかしすぐに戻った身体が、幸喜へと向けて踏み込まれ――幸喜もまた、避けることはない。
     突き出された拳を派手に受け、吹き飛んだ。


     端的に結論から言ってしまうならば、回復役不足、である。それが満身創痍となった現状の、原因だ。
     確かに相手は直接的な殴り合いをこそ望むものの――それに応じられるのは、相応の力あってこそなのである。
     宗一郎の拳がガイの身体に突き刺さり、だがお返しとばかりに放たれた一撃で、顎が跳ね上がった。視界の端に構えられる拳を捉え――まずいとは思ったものの、どうすることも出来ない。
     踏み込みと同時に打ち込まれた拳に吹き飛ばされ、その意識ごと刈り取られた。
     ついに一人が倒れ、残りは七人。勿論ひたすらに打ち合う形となったガイも、無事とはいかないが……どちらがより深刻かは、何とも言えないところだろう。
     だが何にせよ、結局のところ引くという選択肢はない。
     ここが正念場。そういうことだ。
     その意思を示すように、四股を踏み、大地からご当地パワーを呼び起こした幸喜が、眼前の空間へとつっぱりを放つ。その魔力はリング状となり――しかし放たれたそれを、ガイは受けつつも、無視して突き進んだ。
     踏み込み、拳が放たれ――そして、最後までその心構えを変えることは無く。受け取った衝撃で、その意識ごと吹き飛ばされた。
     だがその隙を逃さず、陽太が違わず狙う。
    「隙だらけだ」
     放たれたのは、死角からの隠者の報復の刃。斬り裂き――。
    「今度は私と舞ってください」
     続いて舞ったのは、紅の光――月禍美神・絶。葎の放ったそれがガイの身体を貫き、当然そこでは終わらない。
     踏み込んでいたのは、紬。拳を放ち、さらに魔法の打撃が追撃を加える。
     そのまま引き――しかし視線で貫かれた気がしたのは、気のせいか。
     最後に目にしたのは、その場で構え、踏み出すガイの姿。直後、衝撃と共に暗転した。
     紬が倒れ、だがその隙を突くようにあきらが踏み込み――それは予想済みであったのか、視線の先には構えているガイの姿。
     擦れ違いざまに、拳を叩き込まれ――しかし。
    「残念だケド、ボクには倒れるなんて出来ないんだ……生憎、仲間を見捨てられないタチなんでネ!」
     ギリギリのところで踏み留まり、強引に腕の軌道を変える。握られていたのは、白いガトリングガン――PSYCHIC HURTS。宿したのは、自身の影。
    「ちょーっとトラウマっちゃうケド、ダイジョーブだよネー?」
     ぶち込んだ。
     僅かにその身体がふらついたのは、一体何を見たのか。しかしすぐに立て直し――そこに迫っていたのは、歩。
     だが引き絞られた拳が、諸共吹き飛ばす。
     満身創痍のところに受けた一撃。しかし歩は今にも途切れそうな意識を必死で繋ぎ、顔には笑みを浮かべる。耐えたぞと、その顔で語り――。
    「アンタは受けきれるか? 俺の、炎刃飛翔……シューティングクロスファイア!」
     助走を付けて跳び、空中で両手を交差させる。そのままガイへと目掛け降下し――接触の瞬間、炎を宿したその腕を、振り抜いた。
     そのまま衝撃によろける身体を押さえ込みにかかろうと動き――だがそこで、歩の身体にも限界が訪れた。その場に膝を着き――その耳に響いたのは、下駄の音。
    「私たちの勝ち――であるっ!」
     宙を蹴り、加速したその足がガイへと突き刺さり――勢いを付け過ぎたせいか、諸共倒れこむ。
     しかし小笠はすぐに立ち上がり――。
    「……なるほど」
     ガイは、倒れ伏したままであった。
    「どうやら、俺の負けのようだな」
     そしてそれが、戦闘の終了を告げる合図となったのであった。


     その場で真っ先に動けるようになったのは、ガイだった。灼滅者側は皆疲労で座り込んでいたり、痛む傷を抑え倒れたままであり、これではどちらが勝者か分かったものではない。
     だが勝利に変わりはなく、ガイもそれに異論はないようである。そのまま黙って待ち、やがて灼滅者達も立ち上がる。
    「シン・ライリー派の人達とも手合せしてみたいけど……流石に無理だね」
     腹部を押さえながら宗一郎が呟くも、それは色々な意味で当たり前の話だ。しかし割と本気で残念そうなあたり、らしいとも言える。
     ともあれ、そのこともあるので、あまり時間も掛けられない。手短に終わらすべく、真っ先に手を挙げたのはあきらだ。窓からまだ件の者達が来ていないか確認しつつ、口を開く。
    「ガイサンに質問ー。シン・ライリーって人知ってマス? どんな人デス?」
    「名前は知ってるが、それだけだな……」
    「そうデスカ……」
     その返答にあきらは残念そうに呟くも、続いて紬が問いかける。
    「それでは、ライリー派と敵対する理由およびライリーの目的は知っていますか? どうして仲違いしたのか、もしかすると貴方達だけで済む話ではないかもしれない」
    「さてな。俺は知らん。興味がなかったからな」
    「なら両陣営の情報についても?」
    「同じだ」
     どうやらガイは大したことを知らないらしい。まあ元々今回の目的ではそれではなく、それも仕方のないことだろう。
    「そうですか……では、今回のことを伝えてもらってもいいですか?」
    「ん? ああ、そういえば伝言を頼みたいとか言ってたな。ふむ……」
     即断しなかったのは、何か理由があるのか。その様子を見て、必ず答える必要はないことを伝えようとしたが――
    「派閥の激突がある以上、トップ同士の激突もあるはず! それはいわば軍団抗争のメインイベントです! そこに行くと言う事は、ガイさんにとってもメリットがある……と言うか、レスラーなら絶対に行くべき場所です!」
     そこに言葉を付け加えた……叫んだのは、幸喜。
    「もしケツァールマスクの場所が分からないなら、同じケツァール派のレスラーと合流して探すのでもいいです!」
     それがどう伝わったのか、だがガイは苦笑を浮かべると、頷いた。
     これで話は終わりだ。しかし去る前に、宗一郎が告げる。
    「気をつけてね。できれば、キミとはもう一度戦いたいからさ」
     そして周囲を警戒していた歩が、終わったのを悟ると、ガイへと近づいていく。手を差し出し――。
    「次はもっと強くなってるから楽しみにしてろよ。マスクのアンタとリングで会える日を楽しみにしてるぜ」
    「……ああ。なら、俺もその時を楽しみにしてよう」
     ガイもそれに応え、二人の手がしっかりと重なり合うのであった。

    作者:緋月シン 重傷:梶間・宗一郎(無為無窮の拳・d30874) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月24日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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