恐怖、人食いラフレシア

     立花・銀二(黒沈む白・d08733)は、こんな噂を耳にした。
     『人食いラフレシアが暴れまわっている』と……。
     このラフレシアは都市伝説で、植物園にやってくる見物客を襲って、空腹を満たしているようだ。
     都市伝説は常に空腹状態にあるらしく、細長い触手を周囲に張り巡らせており、獲物を見つけると動きを封じ込めて、そのまま口の中に放り込み、じわりじわりと溶かしていくようである。
     中には消化の途中で逃げ出す一般人もいるようだが、そういう場合は両足を傷つけて歩けなくした上で、味わうようにして溶かしていく。
     しかも、都市伝説の触手は他の植物に紛れているため、見分ける事は困難で気が付いた時には掴まっている事も……。
     その事を踏まえた上で、都市伝説を倒す事が今回の目的である。


    参加者
    伊丹・弥生(ワイルドカード・d00710)
    白鐘・睡蓮(フレイムペネトレイター・d01628)
    佐藤・志織(大学生魔法使い・d03621)
    立花・銀二(黒沈む白・d08733)
    汐崎・和泉(碧嵐・d09685)
    阿久津・悠里(キュマイラ・d26858)
    綱司・厳治(真実の求道者・d30563)
    日輪・典(汝は人狼なりや・d32392)

    ■リプレイ

    ●某植物園
    「……植物園か~。割と地味っぽいから、あまり来た事がないんだよなぁ。ラフレシアも動くだけだったら、面白いアトラクションになれたのに……」
     伊丹・弥生(ワイルドカード・d00710)は残念そうに溜息をつきながら、仲間達と共に都市伝説が確認された植物園に向かっていた。
     都市伝説が現れた事で植物園は半ば閉園状態にあり、他の植物も手入れされておらず、無法地帯と化していた。
     そのため、辺りに全く人気はなく、ほとんど貸切状態であった。
    「人食いラフレシア……、ホラー映画のような依頼ですね! しかも、単独行動は死を招くとは……。『こんな所にいられるか! 先に帰らせて貰う』とか完全なフラグですね。ネタでも言わないようにしないとー」
     佐藤・志織(大学生魔法使い・d03621)が、自分自身に言い聞かせる。
     迂闊な事を言うと、うっかり死亡フラグを踏んでしまうため、色々な意味で危険な状態。
     最悪の場合は何気ない一言で、ぽっくりあの世逝きという事態にもなり兼ねない。
     それが分かっていても、何となく死亡フラグに関する言葉を口にしてしまいそうで怖かったりするのだが……・
    「まあ、一言で言えば燃えやすそうな感じだな……」
     白鐘・睡蓮(フレイムペネトレイター・d01628)が、自らの考えを述べる。
     しかし、都市伝説が臭い事を考えると、燃やす事はある意味で自殺行為。
     最悪の場合は、シャレにならないほどの異臭が辺りを包み、地獄のような思いをする事になるだろう。
    「とりあえず、お前に頑張ってもらう必要がありそうですね」
     立花・銀二(黒沈む白・d08733)が、ナノナノを見つめてニコリ。
     その途端、ナノナノがあからさまに嫌そうな顔をしたが、銀二はまったく気にしていない。
    「なんかこう、身を張るナノナノと、銀二の絆にちょっと涙が出そうだぜ……」
     汐崎・和泉(碧嵐・d09685)が、目頭を熱くした。
     それに気づいたナノナノが、『それは違う! 違うから!』と言わんばかりに首を横に振っているが、和泉もまったく気づいていない。
    「ナノナノくん、きみの尊い犠牲は忘れない」
     阿久津・悠里(キュマイラ・d26858)も、号泣。
     ナノナノが『あ、あれ? 何かおかしくない? 絶対におかしいよ!』と思って仲間達の顔を見ても、みんなスルー。華麗にスルー。
     まるでナノナノが自分の意思で、囮になったような雰囲気になっていた。
    「初めての武蔵坂学園での戦闘だけど、しっかり気を引き締めないとね……!」
     日輪・典(汝は人狼なりや・d32392)も、自分自身に気合を入れる。
     まったく関係ない事だが、ナノナノが美味しそうに見える、物凄く。
     人狼というか、ニホンオオカミの血が影響しているのか、ナノナノが美味しそうに見えている。
     これならば都市伝説が引っかかっても無理はない。
     むしろ、都市伝説が襲ってきても、当然であるかのように思えた。
    「場合によっては、命を落とすかもしれないが……、頑張ってくれ」
     綱司・厳治(真実の求道者・d30563)が殺界形成を使った後、ナノナノに視線を送る。
     ナノナノも断る事が出来なくなってしまったため、覚悟を決めた様子で深い溜息をもらして、植物園の奥に進んでいった。

    ●植物園の奥に!
    「しっかし、すごい場所だな……急に出てこられたら心臓に悪そうだ」
     弥生はナノナノの後を追って、植物園の奥に向かっていた。
     植物園の奥はジャングルのようになっており、草木を掻き分けて道なき道を進んでいかねばならないほど。
     事前に貰ったパンフレットの地図を頼りにして、園内を進んでいるものの、まるで迷路に迷い込んでしまったかのような錯覚を受けた。
    「そういえば、ラフレシアって、すげー臭いらしいな。その臭いで、だいたい方向が掴めたら、いいんだけど……」
     そう言って和泉が、口元を押さえる。
     油断していたせいで、胸いっぱいに吸い込んでしまったが、とにかく臭い、シャレにならないほどに!
     それこそ、むせ返るほど臭いため、息をする事さえ困難だった。
    「こ、この臭いは……」
     厳治が警戒した様子で後ろに下がる。
     間違いなく、ここから先は都市伝説のテリトリー。
     異様な臭いが体に纏わりつくようにして、辺りに漂っている。
    「ナ、ナノォ~」
     その時、悲鳴が上がった。
     悲鳴がしたのは、臭いの元。
     つまり都市伝説がいるところ。
    「あ、あの声は……」
     睡蓮がハッとした表情を浮かべる。
     ナノナノは何かに襲われているらしく、途切れ途切れに悲鳴が聞こえていた。
    「なんだか釣れたみたいですね」
     その声を頼りにして、志織が草木を掻き分けて奥に進む。
     そこには都市伝説に食べられそうになっていたナノナノがおり、全身粘液まみれになって、ネバついた糸を引いていた。
    「ナノナノちゃん咀嚼してるぅぅー、いやぁー」
     志織が思わず目を背ける。
     しかも、デカイし、臭いし、キモイ!
    「た、た、た、助けないと!」
     その言葉とは対照的に、志織はあたふた、オロオロ。
     何とかしなければいけない事は分かっているが、あまりのグロさに動けない。
    「ナノナノぉー!?」
     すぐさま、和泉がナノナノを助け出すため、タックルを食らわせる。
     だが、ナノナノは既に虫の息。
     口から魂がひょろりと抜け出し、危険な状態に陥っていた。
    「うわぁ、すっげぇ痛そう……」
     和泉が青ざめた表情を浮かべる。
     霊犬のハルも明日は我が身とばかりに、カタカタと体を震わせている。
    「大丈夫! まだ傷は浅いですよ!」
     銀二がナノナノを摘み上げた。
     その間もナノナノの魂が頭上をクルクルと回っているが、銀二はまったく気づいていない。
    「よく見れば、ラフレシアも美味しそう……」
     そんな中、典がグウッと腹を鳴らす。
     だいぶ都市伝説の臭いに慣れてしまったせいか、だんだん食欲が湧いてきたようである。
     もちろん、迂闊に食べれば、腹を壊す事は確実。
     それが分かっていたため、『食べちゃダメだ』と、心の中で自分自身に言い聞かせた。
    「……!!」
     それに気づいた都市伝説が奪われた御馳走を取り戻すため、にゅるにゅると触手を伸ばしていく。
    「灰になって地質改善にでも協力したまえ、今なら私が無料で処理してやるぞ」
     次の瞬間、悠里がスレイヤーカードを解除し、その場から飛び退いた。

    ●ラフレシア
    「全く困った毒花だね。ナノナノくんでも食べて腹を下せば良いのに……」
     悠里が皮肉混じりに呟きながら、都市伝説の攻撃を避けていく。
     都市伝説は触手を巧みに操り、悠里達の動きを封じ込めようとしているが、なかなか思うようにいかず、苦戦をしているようだ。
    「そう簡単には捕まらないよっ!」
     典が素早い身のこなしで、都市伝説の触手を避けつつ、螺穿槍を仕掛ける。
     続いて弥生が閃光百裂拳を放ち、都市伝説の触手を牽制した。
     だが、都市伝説の触手は攻撃する事を止めず、粘液を撒き散らして弥生達を威嚇する。
    「本体に専念していろ。触手はこちらで捌く」
     それに気づいた厳治が仲間達に声をかけ、都市伝説にオーラキャノンを撃ち込んだ。
     その間も都市伝説が攻撃を仕掛けてきたが、霊犬のキントキが攻撃を防ぎ、志織が螺穿槍で都市伝説に反撃する。
    「これはッ、食われたナノナノのぶんッッ!!」
     次の瞬間、銀二が囮となって命を落としたナノナノを思い浮かべ、都市伝説にギルティクロスを炸裂させた。
     その後ろでナノナノが『一応、生きているんだけど……』とツッコミを入れようとしていたが、既に虫の息であったため、思うように体が動かない。
    「燃やすのは、お任せあれってなぁ!」
     それに合わせて和泉がレーヴァテインを仕掛け、都市伝説の体を炎に包む。
     案の定、むせ返るほど異様な臭いが辺りを包み、息をする事さえ困難になってきた。
     都市伝説はあまりの熱さに悲鳴を響かせ、鞭の如く触手をしならせ、大暴れ。
     その横にいたハルが何か異変があれば飛びかかっていきそうな勢いで、都市伝説を威嚇するようにして吠え立てた。
    「このまま消し炭と化せ!」
     それと同時に睡蓮がフェニックスドライブを仕掛け、都市伝説の体を再び炎に包む。
     都市伝説は最後まで必死に抵抗を続けていたが、やがて力尽きて、だらりと触手を垂らすと、あっという間に消し炭と化した。
    「いやぁ、ひさびさ怖い依頼でした」
     志織がホッとした様子で、溜息をもらす。
     都市伝説が消滅した事で、異様な臭いと禍々しい気配も消え去り、心なしか空気も爽やか。
     先程までの異臭が嘘であるかのように、清々しい空気に包まれている。
    「さぁ、仕事も片付いた事だし、ちょ~っと見学でもしてから帰るかね」
     そして、弥生達は戦いの疲れを癒すため、園内を見て回るのであった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
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