清純派アイドル淫魔の社員勧誘

    作者:相原あきと

    「あ、あの、私は清純派なので……その、そういうのはちょっと……」
     天下の往来で斬新コーポレーションの派遣社員5名に詰め寄られ、艶やかな黒い長髪の少女がタジタジと後ずさりする。
    「おいおい、あんたがラブリンスターの元はやりがいのある職場だって誘って来たんだろう?」
     黒いスーツの男が詰め寄り。
    「そうよそうよ! 私達、言ったわよね? 私達の斬新な活動を成功させてくれるなら、あなたの言う事務所に再就職するって!」
     20代後半のキツ目のOL風も詰め寄り。
    「いや、でも……」
     迷う黒髪の少女にさらに3人目が。
    「ほら、ここで立って通行人に笑顔!」
     グレーの背広の若い男が詰め寄り、4人目のブラウンスーツのおじさんが声を張り上げ通行人に大声で告知する。
    「はいはーい! 通行人の皆さん! 今ならこの斬新なティッシュを特別価格で販売中ですよ! 風邪も花粉症も一発で治る! 斬新コーポレーション試作の『紙やすりティッシュ』!」
     もちろん、通行人はスルーだ。
    「あの、それ、やっぱり売れないんじゃ……」
     黒髪の少女がおずおずとツッコむも。5人目のメガネのリーダー格が。
    「だからあなたに協力して貰うのですよ」
     そう少女に言うと、メガネも大声を張り上げる。
    「通行人の皆さま! 今なら斬新な購入特典が付きますよ! この売れない清純派アイドル初花(ういか)さんが、購入1枚につき、服を1枚ずつ脱いでくれます!」
    『……(ざわっ)』
     通行人の数人が足を止め、ニヤリと笑ったメガネが続ける。
    「さあ、1枚たったの千円です。さぁさぁ、早い物勝ちですよ!」
     殺到してくる愚かでスケベな通行人たち。
    「や、やめて下さい! わ、私は、清純派なんですー!?」
     自称清純派アイドル淫魔の初花の涙声の叫びが、大通りに響き渡った。

    「みんな、ラブリンスター配下の淫魔が、勢力建て直しのために仲間を集めているのは知ってる?」
     教室の集まった皆を見回してエクスブレインの鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が言う。
    「実は、霧月・詩音(凍月・d13352)さんからの情報で、その仲間集めの一環として斬新コーポレーションの強化一般人を誘おうとしているみたいなの。大きな事件じゃないけど、一般人の皆さんに迷惑をかける行為なのは間違いないから、止めてきてくれないかしら?」
     誘われている斬新コーポレーションの強化一般人は、派遣社員という立場であるらしく、斬新な方法で会社の為に働こうとしているらしい。
    「派遣社員の人たちの働く意志を止めることは難しいわ、つまり、元に戻す事はできないの」
     しかし、ラブリンスター配下の淫魔については、説得すれば戦わずに引き上げてくれる可能性もあるという。もちろん、説得方法を間違えば、派遣社員達と一緒に敵に回る可能性もあるだろうと珠希は言う。
    「まぁ、ラブリンスター派とはいえ、淫魔もダークネスだし、淫魔をどうするかは現場の判断に任せるわ」
     淫魔と派遣社員たちが活動している場所は、とある都市の大通りらしい。灼滅者の皆が到着した時点では、まだ派遣社員の呼び込みに一般人は足を止めずにスルーし続けているタイミングなので、なんとかする方法はあるだろう。
    「それで、皆が倒すべき派遣社員なんだけど、全部で5人いるわ」
     黒スーツの30代男はジャマーで殺人鬼と縛霊手に似たサイキック。
     20代後半のOL女はジャマーで殺人鬼と魔導書に似たサイキック。
     グレー背広の若い男はジャマーで殺人鬼と解体ナイフに似たサイキック。
     ブラウンスーツの男はジャマーで殺人鬼とクルセイドソードに似たサイキック。
     メガネのリーダー男はメディックで殺人鬼とクルセイドソードに似たサイキック。
    「それと、一応淫魔の方の戦闘能力も教えておくわ。彼女はサウンドソルジャーとWOKシールドに似たサイキックを使って、基本的に誰かを支援する戦い方が得意みたい」
     そこまで言うと、珠希は腕を組み悩んだ風に。
    「あと、その淫魔は初花って言う名前で、自称清純派を売りにしているみたいなの……そのあたりを説得に取り入れれば、うまくいくと思う」
     淫魔なのに清純派って意味わからないわ、と呟きつつ、頭を切り替えるようにパチンと手を打ち、真面目な顔で灼滅者達を見つめ。
    「なんにせよ、斬新コーポレーションの斬新京一郎社長は、白の王セイメイとの交渉に失敗したけど未だに健在よ! 彼が再び動き出す前に、斬新コーポレーションの戦力を削ぐ事は必須事項、失敗しないよう気を付けて!」


    参加者
    若生・めぐみ(歌って踊れるコスプレアイドル・d01426)
    遊木月・瑪瑙(ストリキニーネ・d01468)
    神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)
    一之瀬・暦(電攻刹華・d02063)
    近江谷・由衛(貝砂の器・d02564)
    風真・和弥(無能団長・d03497)
    ミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)
    天城・翡桜(碧色奇術・d15645)

    ■リプレイ


    「セクハラはその辺にしたらどうですか?」
     鼻の下を伸びつつあった通行人より早く、ティッシュ売りの集団に批判の声を浴びせたのは若生・めぐみ(歌って踊れるコスプレアイドル・d01426)だ。
     初花が突然の出来事にポカンと。
    「初花ちゃん、お久しぶりです。……あれ、めぐみのこと忘れられてます?」
    「もちろん覚えてますよ? お互い頑張りましょうって励まし合った仲じゃないですか!」
     めぐみの手を取り小首を傾げて微笑む初花。そのまま今回はちゃんとお互い自己紹介。
     と、2人の会話が一段落したのを見計らい、派遣社員達が口を挟めない絶妙なタイミングで初花に近づくはミルフィ・ラヴィット(ナイトオブホワイトラビット・d03802)。
    「初花様、、お久しゅうございますわ、、御健勝でしたかしら、、?」
    「あ、もしかして、バニー服のアイドルと対決した時にいた……?」
    「はい、、いつぞや、わたくしのヴィクトリアンメイド服をお気に召してらしてましたわね、これは、貴女様用に仕立てたヴィクトリアンメイド服ですわ」
     しれっと初花に特注のメイド服の入った紙袋を渡すミルフィ、感激する初花がミルフィのように着こなせるでしょうか? と話込む。もちろん、放っておかれた社員達が黙っちゃいない。ミルフィやめぐみに文句を言いながら詰め寄ってくる。
    「ねぇ、さっきから、うるさいんだけど」
     その間に立ち塞がったのは遊木月・瑪瑙(ストリキニーネ・d01468)だ。
     剣呑な言葉に反応した野次馬根性の数人が足を止める。だが――。
    「くだらないことに時間使ってないで、帰りなよ」
     ESP効果もあり瑪瑙の威圧感にそそくさと野次馬達がいなくなる。もっとも、初花が脱ぐと聞いて足を止めていた者達は少し離れた位置からこっそり様子を伺っていたのだが……。
     それ以上一般人を追求せず、瑪瑙は社員の持つ『紙やすりティッシュ』を指差し。
    「……斬新と残念って、結構紙一重だよね」
    『なっ!?』
     くだらない、と見下すような瑪瑙の目に5人の社員が一斉に顔を赤くし。
    「ふ、ふざけるな! この斬新なティッシュは使ってみれば解るんだ! だから、まずは手に取ってもらえるよう我らもアノ手コノ手を使って――」
     初花を指差し憤慨する社員。
    「貴方達、何を言っているの。彼女、嫌がっているじゃない」
     近江谷・由衛(貝砂の器・d02564)が社員の言葉の腰を折り、さらに隠れているスケベな一般人にも聞こえるよういつもより大きな声でしゃべる。
    「仕事だからって、嫌がってる女の子を助けないなんて……どうかしらね?」
     振り返り、目星をつけていたこっそり様子を伺う一般人に冷たい視線を投げる。
    「その通りです。無理強いはよくないですよ?」
     由衛の思惑に天城・翡桜(碧色奇術・d15645)が乗り、一緒になって初花の味方をする。どうやら分が悪いと脱ぐのを待ちつつ隠れていた一般人達も去っていく。さりげなくサウンドシャッターを発動させておく翡桜。
    「だいたい、何かをしてくれれば女の子が服を脱いでいく……という手法は、古典的で斬新さは皆無だと思うぞ」
    『!?』
     割って入ってきた風真・和弥(無能団長・d03497)の言葉に、ショックを受ける社員5名。
     背中に『風の団』の紋章がついたジャケットを着た和弥がドヤ顔をする。
    「……いや、でも。事務所に入ってくれるなら何でもするって言って来たのはあの淫魔なんだが……」
    「え、そうなの?」
     思わず初花の方に聞く和弥。
    「だ、だって……今、事務所が人手不足で……なんとかするって方針で……」
     ウルルと涙目で売れないアイドルの悲哀を語る初花に。
    「初花さん」
     初花の肩に手を置いて話しかけるは神夜・明日等(火撃のアスラ・d01914)。
    「半年前、公園の野外ステージでの小さなライブ……あなたは一生懸命だった。清純派でいたいなら、こんな奴等と関わらない方がいいわ」
    「あなたはバックダンサーで踊ってくれた……」
     軽く挨拶を交わす明日等。あんなブラック企業ならぬブラック社員など、アイドル事務所に相応しくないわ、と。
    「そうそう。清純派のアイドルがこんな汚れ仕事、するべきじゃないさ」
     一之瀬・暦(電攻刹華・d02063)が明日等に並んで初花にいう。
    「それに、アイドルの売り方として之は何か間違って入る気がするね。路上で歌を歌ったりとかならわかるけど」
     そして足を止める一般人がいないことを確認しつつ、殺界形成を発動させるのだった。


    「清純派アイドルの活動、大事なのでしょう? それを考慮しない人たちとの営業なんて、今後続いていかない」
     由衛の言葉に苦しそうに言葉を漏らす初花。
    「そ、れは……」
    「貴女が我慢出来たとしても、アイドルの矜持を曲げなければならないのだもの。ラブリンスターも悲しむと思うわ」
    「………………」
     複雑な表情で黙る初花。ちらりとめぐみを見れば、その衣装から尊敬する先輩の姿がダブって……。
     そこで言うは翡桜。
    「初花さん、清純派は騙されやすいとかは、分からないでもないですが……本当に清純派のていを大切にしたいのでしたら、この社員さん達と組むのは止めるべきです」
    「それは……」
    「現に、貴女が嫌がっているのにこうやって脱がそうとされて、商売道具になる所だったんですよ? 売れないアイドルの弱みにつけ込むなんて、最低です」
     自分は初花の味方だと言うように、社員達を指差し避難する翡桜。
    「私達は、弱いものが食い物にされるようなのを見過ごせない」
     さりげなく初花と社員達が対立するような言い回しを冷静に挟む暦。
     それに怒る派遣社員達だ。特にリーダー格のメガネが青筋を立てて怒ってくる。
    「いい加減にしろ! 弱者だ弱みだアイドルだと、それがどうした! こいつは淫魔だろう! エロい事を強制して喜ばれどすれ、本気で嫌がってるわけがないだろうが!」
    「気に入りませんわね、、貴方がたの、淫魔だから脱いで当然みたいな、その物言いは――」
     社員達を睨みつけるミルフィ。
     一瞬気圧される社員達だが。
    「い、いや、違うだろう! 淫魔は淫乱だろうが! 俺たち何も間違ってないだろうが!!」
     ――ちなみに、世界観的には社員達はとても正しいです、まる。
    「……ふぅ」
     メガネの剣幕にため息を付き、初花に向き直るのは瑪瑙。
    「意志表示は、はっきりした方がいいんじゃないの」
     さらに何か言おうとしたメガネに、瑪瑙は一歩前に出て足音をわざと立てる事で黙らせる。
     言おうとする言葉を吐くには勇気がいるのか、初花が迷うと。
    「何故か、貴女の事は気になりますのよね、、」
    「ミルフィさん……」
     助けを求めるような初花をミルフィは見つめ。
    「貴女は、貴女らしく振舞えば宜しいですわ、、ラブリンスターは、確かにHですが、それを貴女に強要はしないでしょう?」
     こくりと頷く初花。
    「これは……知ってるよな」
     和弥が取り出したのは『花言葉はホワイトローズ』と書かれた自主制作のCD。
    「私のCD!?」
    「いちファンとして言わせてくれ。清純派云々以前の問題として、俺は初花が身売りのような真似をしている姿は、見たくない」
     正面からの想いと、そしてファンという言葉に初花が目を潤ませ、その涙が落ちる前に手でぬぐい、キラリと水滴が振り払われる。
    「私……間違っていました。売れない私に、やっと回って来た仕事だからって、多少辛くてもやり遂げるのがアイドルの姿だって思ってたけど……ファンを、裏切っちゃいけませんよね」
    「ああ」
     和弥が頷き、初花が他の灼滅者達を見回せば皆が初花の決断に頷いてくれた。
     大声で反論しようとした社員達に、今度は瑪瑙だけでなく暦と由衛も一歩踏みだし黙らせると、初花が社員達に90度のお辞儀をする。
    「斬新なんとかの社員さん、今回のことは無かった事にして下さい」
     そして、くるりと灼滅者達の方を振り向き、満面の笑顔でお礼を言う初花。
    「皆さんのおかげです、私、これからも清純派アイドルとして頑張ります!」
    「あなた、去年といい今回といい、変なのに絡まれやすいみたいだし、気をつけなさいよね。それと、無闇な勧誘はもうしないように」
     そっぽを向きつつ忠告する明日等に、笑顔で「はい!」と。
     それでは……と帰って行く初花だったが、何を思い立ったかすぐに戻ってきてめぐみに耳打ちする。
     と、めぐみが慌てるように。
    「このきぐるみはリスペクトですから……馬鹿にしているとかふざけているとかという訳ではないですよ」
    「そうだったんですか……てっきり、ウチの事務所に入りたいのかと……」
     残念そうにする初花だが、「それでは、ありがとうございました」と頭を下げ、少し行った路地を曲がっていなくなったのだった。


    「貴様等、解っているんだろうな!」
     殺気立つ社員達に真っ向から言い返すは暦。
    「悪いけれど、お前達には首になってもらう――善悪無き殲滅(ヴァイス・シュバルツ)!」
     言葉と共にその左拳に五指型ガントレットが装備される。
    「起動(イグニッション)!」
     暦に続けと和弥も殲術道具を解放する、一瞬で装備された防具に、背後でめぐみが「もっと早くそのメイド服を……」と小さく呟くが、和弥は気にせず社員達へと突っ込んで行く。まず狙うは黒スーツ、中段の構えから一閃、切れ味に特化した刃が風の如く敵の脇腹を斬り裂く。
    「さあ、たっぷりサービス致しますわよ! アームドナイトオブホワイト――展開!」
     純白の光帯がミルフィを守るように出現、僅かに社員達の意識が逸れ、その隙に和弥は囲みを突破。リーダー格のメガネが舌打ちし残りの4人に指示を出す。
    「各自役割を忘れるな……斬新に、行くぞっ!」

     戦いが始まり、社員達も持ち前の連携技で灼滅者達を苦しめる。OLが怒りをバラまけばグレー背広の若い男が、それを加算するかのようにジグザグに攻撃を重ねてくる。
    「まったく、こんな下衆な人たちはラブリンスターさんの配下には相応しく無いです」
     怒りをくらったのを理解しためぐみは攻撃せず、自身のオーラを癒しの力に代えて冷静さを取り戻しながら言えば、ナノナノのらぶりんもコクリと頷きつつふわふわのハートを仲間に飛ばす。
     灼滅者達が体勢を立て直そうとしているのを見て、社員達も黙ってはいない、さらに攻撃を加えようと――した瞬間。
    「う、がっ」
    「なに!?」
     ジャマー4人を囲むように結界が発動、マヒと同時に自身の根幹が痺れるような痛みを覚える。
     由衛だ。
     縛霊手に内蔵された祭壇を展開させつつ由衛が社員達に言う。
    「まだ、こちらのターンよ? 大人しくしてて」
     普段より僅かに鋭くなった目で社員達を見据える由衛。
     さらに出鼻を挫かれ動きの鈍った社員達を、蛇の意志を持つかのような瑪瑙の蛇腹剣が次々に切り裂いていく。もちろん社員達もやられっぱなしではない、狙われたのは攻撃役の瑪瑙と和弥だった。しかし、そんな2人の前に立ち塞がるは翡桜とそのビハインドの唯織。
     2人を庇う翡桜と唯織。
    「私と唯織さんがいる限り、あなた方の好き勝手にはいたしません」
     ふわりと翡桜の横にビハインドの唯織が降り立つ。
     一方、翡桜達が仲間を守る為に動いたのとは別に、逆に社員達の集団に向かって行ったのは暦だ、飛んでくる炎や毒を振り払い、そして――。
    「ジャマーばかりとか、この、嫌がらせ集団が!」
     暦の足下から鎖形状の影が幾重にも伸び、仲間に隠れるように立っていた黒スーツの足を捕まえる。
     思わず影の鎖をふりほどこうとする黒スーツだが、その足下に何かの影が落ちる。
     見上げると巨大なタイヤが視界をいっぱいにする。そう、それは猫の顔がついた明日等のライドキャリバーだった。
     上空からの社員の1人を押し潰したライドキャリバーは、そのまま猫が跳び跳ねるがごとく身を翻す。
     その瞬間、黒スーツを巨大なビームが飲み込んだ。
    「お……の、れ……」
     それがトドメだったか、言葉を最後まで言い終えずに黒スーツは倒れ伏したのだった。


     灼滅者たちは着々と社員達を倒していく。黒スーツの次は、怒りで自らへダメージを集めていたOL、次に若い外見のグレースーツを灼滅。そして追い詰められた社員達は……。
     今までキュア役だった茶背広の男が、破邪の光を纏わせた剣で灼滅者達へと襲い掛かってくる。攻撃役がいなくなり自身が攻撃にまわる事にしたのだろう。
     狙われたのは……瑪瑙、だがその刃が届くことはなかった。
    「ユキさん、大丈夫ですか?」
     咄嗟に不可視のシールドを展開し、剣を受け止めていた翡桜。
    「僕は大丈夫、ありがとう」
    「どういたしまして……それでは、唯織さん」
     剣を防がれ隙だらけだった茶背広に、ビハインドの唯織から霊障波が飛び、さらに追撃だと接敵した和弥に黒死斬を叩き込まれる茶背広。フラフラになりつつ立ち上がる茶背広の前に立つはめぐみとナノナノのラブリン。
     ラブリンがめぐみの傷を回復させると同時に、めぐみは指にはめた契約の指輪を茶背広に向け……ピキピキピキ、同時に茶背広が足元から石化していく。
     焦る茶背広、それに気づいて慌てて回復しようとするメガネ……だが――。
    「遅い!」
     流星のごとく跳び込んで来た由衛の跳び蹴りが茶背広に命中、そのまま錐揉みして吹き飛んだ茶背広は、何度か地面にバウンドしそのまま動かなくなったのだった。

    「あとはアンタだけ……終わらせて、あげるわ!」
     明日等がオーラを手の平に集めるとメガネに向かって一気に放出する。それは一直線にメガネの胸元に命中する、だがメガネは両手でそのオーラの塊を受け止め、ザザーと大地を滑りなんとか耐えきる。
    「これ以上は……」
     メガネはくるっと踵を返すと明日等達に背を向け走り出す。
     しかし、何かに退路を塞がれている事に気が付き足を止める。
     それは明日等の猫型ライドキャリバーだった。
    「斬新という割に、あんた達の発想は貧困よね。逃げられるわけないじゃない」
     声が聞こえ、再び明日等達の方へ向き直るメガネ。
    「貧困ではない! 誰も思いつかない商品を、方法を、それらを実行するのは我らが使命」
    「そう? 大体、この後時勢ティッシュなんて……」
     それは暦の声、思ったより近くから聞こえた事に咄嗟にしゃがむメガネ、その下げた頭部ギリギリを暦の剣が通り過ぎる。メガネはそのまま手にした剣を逆手に持ち変え背後を突き刺そうと……だが、すでにそこに暦の姿は無い。
    「どこに!?」
     慌てるメガネと対照的に、暦は冷静に右手の巨大なブレイカーをメガネの死角から叩き込む。
    「お、のれ……」
     死の中点を貫かれドサリと倒れ、そしてメガネは灼滅されたのだった。

    「ふぅ、、また、淫魔に加勢する事になるとは、、」
     まんざらでもなさそうに嘆息するミルフィに、仲間もなんとも言えない表情を浮かべるのだった……。果たして、次にあの淫魔に逢う時は、敵か味方か……。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月31日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 0
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