ドキドキッ、野郎だらけの温泉回!

    作者:空白革命

    ●DVD版では霧が消える
    「ヘイ、ユー!」
    「ヘイ、カモォーン!」
    「オ・オ・オン・オッ、温泉カーイ!」
     三人の羅刹が同時にポージングした。
     漲る大胸筋。
     あふれる上腕二頭筋。
     きらめく半裸の三人衆が、タオル一枚を腰に巻き、なめらかなグラインドと共に露天温泉に向かって歩き始める。
     ラップのリズムで指を鳴らし始める赤ヘッドの羅刹。
    「俺たちしがないRASERU!」
    「ヘイRASETU!」
    「カモンRASETU!」
     タオルが飛んでいく勢いでブレイクダンスを踊り始める青ヘッドの羅刹。
    「一人じゃおちおち悪事もできない、灼滅者ちゃんが強すぎるゥゥゥイェア!」
    「イエイエイエエエア!」
    「カモカモカモォーン!」
     野外だっつーのにスタンドマイクを地面に立て、情熱的にシャウトする黄色ヘッドの羅刹。
    「だから俺たち!」
    「「RASETU!」」
    「手を組んだのさ!」
    「「RASETU!」」
    「三人寄れば文殊のォォォォ――」
    「「RASETU! イエエエエエエア!」」
     タオルを放り投げて歓喜に沸く羅刹三人衆。
     そんな彼らを。
    「あらヤダ、いい筋肉☆」
     柱の陰からガチムチの変態が覗いていた。
     変態っていうか、神楽・武(愛と美の使者・d15821)だった。
     
    ●副音声は三人衆による楽屋トーク
    「あー、それはアレですね。最近話題になり始めてきた羅刹三人衆ですねー」
     手人形をぱくぱくさせながら語るエクスブレイン。
     武は『美しき肉体のポーズ』をとりながら話を聞いていた。
    「昔に比べて灼滅者も強くなったでしょー。だから一人で御山の大将をやっていた羅刹も肩身が狭くなってきて、弱い羅刹が同盟を組み始めたんですねー。武さんが見たのは、今度沢山部下を作って地方を牛耳ってやろうと思っている人たちだと思います。今はそのための合宿という名の温泉旅行中ですねー」
     
     羅刹三人衆はパワーの赤ヘッド、テクニックの青ヘッド、音楽性の黄色ヘッドという組み合わせで構成されている。
     ノリで仲間になった割にはウマがあうようで、連携プレイはバッチリだ。強力な敵だけど……でも多分ノリで倒せるぞ!
     武は『美しき肉体のポーズ第二』を繰り出しながらこちらに振り返った。
    「さあアナタたち、灼滅者の肉体美……見せてやるわよ!」


    参加者
    タシュラフェル・メーベルナッハ(白茉莉昇華セリ・d00216)
    イオノ・アナスタシア(七星皇女・d00380)
    鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864)
    朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)
    神楽・武(愛と美の使者・d15821)
    小早川・里桜(花紅龍禄・d17247)
    旭日・色才(虚飾・d29929)

    ■リプレイ

    ●『おもしろくなればなるほど勝ち』なゲーム
    「はじめに言っておきます」
     イオノ・アナスタシア(七星皇女・d00380)は高く腕を振り上げ、人差し指だけを突き立てた。
    「今日は、温泉回です!」
    「えっ」
     ほとばしる効果線の端っこで、シルフィーゼ・フォルトゥーナ(に跪け・d03461)は世にも曖昧な顔をした。
    「温泉回?」
    「温泉回」
    「新展開の羅刹(らせちゅ)討伐依頼ではないのじゃな?」
    「ないのです」
    「……ほう」
     『ケロリソ』の桶を手に目を光らせるシルフィーゼ。
     無理矢理画面に映り込む強引なスライドインで朝倉・くしな(初代鬼っ娘魔法少女プアオーガ・d10889)が現われた。
    「温泉合宿を強奪する。悪鬼羅刹とはこのことですよ。ねっ」
    「『ね』と言われても……」
     小早川・里桜(花紅龍禄・d17247)は急に振られた話題にどう触っていいもんか分からず、垂れた前髪を指先でつまんで誤魔化していた。
    「羅刹は羅刹なんだよな。油断はしないようにしておくか、うん」
    「そう、油断は禁物☆ だってアタシの宿敵ダ・モ・ノ」
     神楽・武(愛と美の使者・d15821)が振り向きウィンクした。
     上半身裸の神楽武がウィンクした。
     全身をパンプアップした神楽武がウィンクした。
    「羅刹って……」
    「ほらほら、画面の濃度を著しく上げないの」
     武を押しのけ、タシュラフェル・メーベルナッハ(白茉莉昇華セリ・d00216)が割り込んだ。
     なんかキラキラ粒子を散らしながらウェーブヘアを中指でかきあげつつ割り込んだ。
    「で、その羅刹。下(シモ)のほうは鍛えているのかしらね?」
    「ええっと……」
     今の上の句に下の句をつけるのは相当難しいようで、鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864)はいつものおっとり糸目顔をまんま維持した。
     暫く考えてから手をポン……した途端、がらっがらのバスが停車した。
    「さて、早速行きましょうか。羅刹三人衆を倒しに」
    「おう」
     旭日・色才(虚飾・d29929)は首のスイングで前髪の位置を直し、指ぬきグローブの裾をぎゅっと引いた。
    「武蔵坂の結束力は、一朝一夕の連係プレイには負けないはずだから、な」

    ●ライトな下ネタにド直球キメられたらまあこうなるよ。こうなるよね!
    「オオウアアアアアアアアア!?」
     真っ暗な画面の中、男の絶叫だけが聞こえてるんだと思って欲しい。
     暫く何でか知らんけど遠くの山の風景とかややしめった木桶しか映ってないと思って欲しい。
    「あなたと私のテクニック、どっちが上か試してみない? ほうら」
    「未曾有の、未曾有の、KANKAKU!」
    「あなたのたくましいところ、いっぱい見せて」
    「筋肉的な意味で!?」
    「性的な意味で」
     このなんというか。
     アニメーターが放送までに間に合わなかった感じというか。
     いざ作ったら完璧に何かのレーティングに引っかかって風景画像で間に合わせた感じというか。
     ブルーレイDVD版ではちゃんと挿入しますといわんばかりのやつである。
    「えい、ヴォルテックス」
     ただでさえ絵にできねえなって状況にもかかわらず、イオノが青ヘッドのタオルを引っぺがした。
    「サイキック豆知識。服破りで服が破れないが……破れてはいけないとは言っていないのです!」
    「よく言った、よく言ったわイオノ」
    「じゃあ次これ、妖の槍使いましょう!」
    「えっそれを何に使うんですか。どう使うんですかお嬢さん」
     アニメーションがまたまた途切れ、画面いっぱいに『槍』の文字しか映らなくなったと思って頂きたい。思って頂かなくては困る。
    「黄金色の光を花弁のように散らす槍ですよ。この世のものとは思えないほど美しいですよ」
    「イ、イヤアアアアアアアアアアアアン!」
     槍の文字に降りかかるように、なんかバラの花びらが散った。
     どうしても絵にしたいのなら!
     それはもうピンナップ申請してもらうしかないですな!

    「はい、ここからはキレイなバトルシーンを見て頂きますよ」
     べべん。
     ツインネックの三味線という、何ともキワッキワな楽器を弾き鳴らすくしな。
     あとこれすっごい関係ないことですが、スレイヤーカードに描かれてるフォームで弾くとするならば乳が邪魔して音が『ベッ!』てなりそうでハラハラしますね。あと痛そうですね。
    「よその人たちは遊びまくってるみたいですけど、こっちは真面目枠ですから。ね、皆さ……」
    「UBP(アルティメット・ビューティフル・ポーゥズ)!」
     武がタオル一枚でミロのヴィーナスみたいなポーズをとっていた。
     つまり想像で補間してくれってことである。
     が、見てる側としてはタオルなのに縮尺がおかしくなってハンカチにしか見えない腰周りのアレばっかり気になるので、多分後々スケッチするとミロヴィーみたくなると思う。腕から先うろ覚えだと思う。
    「赤ヘッド。アンタの大胸筋も上腕二頭筋も素敵だわ。でも足りないの、全然たりないのッ」
     首を小刻みに振りつつ、武は声を張り上げた。
    「笑顔! そ・し・て、愛(ラヴ)!」
     スマイルしつつ指でハートを作る武。
    「愛か」
     見開きページいっぱいに描くレベルで呟く赤ヘッド。
    「オラァァァ! 激しく来いやオラアアア!」
     武は急に三つくらいに分身しながら赤ヘッドに殴る蹴るの暴行を加えまくった。
     一瞬でボコボコにされる赤ヘッド。
     既にお気づきかと思うがくしなが言った『キレイなバトルシーン』というのは嘘である。
     その証拠にくしなはずーっと青い空と白い雲だけをじっと見つめたまま三味線べんべらしていたもの。ちなみに楽曲は平家物語。ほーいちさんが耳千切られるまで弾いてたアレである。
     ……が、いつまでもこのテンションを続けてると流石に灼滅者約三人分の戦力と言われる羅刹さんが可哀想なので、里桜のターンにシフトしておきたい。
    「ん、よし。もう気がすんだろう」
     里桜は行成とあみたいな声でそう言うと、しばし素振りしていた刀を鞘に収めた。
     満足したようですすっとミロヴィーポーズで下がっていく武。クライマックスぽくテンポの速い曲にシフトするくしな。
    「こっちは神薙使いになって初めての依頼なんだ。技の使い心地を確かめさせてくれよ」
     里桜はダイダロスベルトをバンテージのように拳に巻いて、ぎりぎりと握りしめる。
    「フッ、一朝一夕で使いこなせるかな? 何なら俺をまねしたっていいんだぜ」
     さっきまで自分が何してたのか覚えてないのかってくらいの決め顔で言い返してくる赤ヘッド。
     言い終わるや否や里桜の腕の間合いまで一気に接近してきた。
     鋭く繰り出された布巻した拳を腕でガード。逃しきれなかったパワーに里桜は数メートルの地面を踵で削った。
     進むか立て直すかを考える間も与えず、赤ヘッドは更に接近。里桜は咄嗟に相手の顔面を殴りつけた。
     首ひとつで回避する赤ヘッド。
     流れるように里桜の腹へ拳が叩き込まれる。
    「(押されっぱなしだ。腐ってもダークネス、やはり油断ならないな)」
     ぐっと喉と腹に力を込め、数歩後じさりする。さらなる打撃を繰り出そうとした赤ヘッドに、里桜は乱雑なジャブを放った。
     ジャブを平手で払う赤ヘッド――の隙を狙って、里桜は利き腕を狼の頭に変化させた。
    「そこだ」
     腕と腕、ギリギリの隙を狙ってフリークパンチを滑り込ませる。
     異形化した彼女の拳は、たったの一発で赤ヘッドを噛み砕いた。

    「おっ、ギャグパートの霊圧が消えた……?」
     フラフープしながら歯ギターを披露する黄色ヘッドを暫く鑑賞していたシルフィーゼは、ようやくまともなバトルパートが来たことを察した。
    「そろそろ仕上げの時間らしいな? 先手は頂くぜ!」
     同じことを察した黄色ヘッドがギターを鈍器持ちし、フープを凄まじい速度で投擲してきた。
    「させるかよっ」
     色才は縛霊手の甲に特殊標識、更にキープアウトテープをぐるぐる巻きにしたものを翳し、殺人フープを一人きりで受け止めた。
     火花が激しく飛び散る中、にやりと笑う。
    「クロサンドラ、落花狼藉!」
    「NANO!」
     クロサンドラ(ナノナノ)がサマーキャンドルを振るや、小さな竜巻が殺人フープとなって黄色ヘッドへ襲いかかった。
     ギターを叩き付けて竜巻を粉砕する黄色ヘッド。
     振り切り姿勢の黄色ヘッドに小さな影がかかる。
    「隙ありじゃ!」
     色才の肩を駆け上がり、高く跳躍したシルフィーゼである。
     刀を振り上げた姿勢で高速縦回転。なんとかかわそうとした黄色ヘッドの肩を深くえぐり取っていった。ギターが黄色ヘッドの手から落ちる。
    「今じゃ!」
    「参ります!」
     薙刀の刃を両端につけたような武器を握り、湯里が中距離の間合いまで接近。
     自らを竜巻のように回転させ、連続で薙刀を叩き込んだ。
    「まだまだ行きゅぞ、どどめじゃ!」
     着地したシルフィーゼが地に手をつけたままカポエラキックを繰り出し、めいっぱいチャージした色才の縛霊撃が同時に叩き込まれる。
     彼らの攻撃にサンドされた黄色ヘッドは、リズミカルな断末魔をあげてこの世から消滅したのだった。

    ●『男だらけの温泉回だと言ったな』『そ、そうだ灼滅者、もうエンディングに……』『あれは嘘だ』『あああああああああ!』
     一糸まとわぬタシュラフェルが泡を胸元に流していた。
     石けんで足を滑らせた湯里がM字開脚で尻餅をついていた。
     裸の付き合いは苦手だと言う里桜のバスタオルを、くしなが舌なめずりしてひん剥いていた。
     この状況を文章で伝えようもんならリプレイ二つ分は必要になるので、是非4人ピンナップで直感的にお楽しみ頂きたい。そして挿絵にして頂きたい。
     そんな、サービスシーン満点の女風呂を隔てた……男風呂。
    「ああ、アタシの美しさは……罪(ギルティ)」
     長い睫をはばたかせ、武は屈強な全裸を青空に晒していた。
     湯気? 光? ねえよ。
     無修正だよ。
    「……」
     そんな彼と二人きりになった色才はもう気が気じゃ無かった。ナノナノとスポンジを取り違えそうになるくらいだった。
     できるだけ最悪の事態は考えたくない。
     文字で『全裸』『無修正』とだけ書いた場合はそれはレーティングになりえるのか。何も描写していないのだからこれは完全セーフラインではないのか。だって文字だし。そんなことを考えてやり過ごしていた。
    「ほらぁ色才、もっと仲良くしても……い・い・の・よ?」
     ウィンク・アンド・投げキッス。唇の塊が超高速ですっ飛んできて壁に突き刺さった。紙一重でかわした色才の、何かの血管が切れた。
    「畜生、こんなホモだらけの男湯になんていられるか! 俺は女湯を覗かせて貰うぜ!」
     色才は崖みたいな所をなんとか移動し、女湯の策を乗り越えにかかった。
    「もう少しだ、もう少し……ここだっ!」
     ギリギリ顔だけ出せる場所を見つけ、色才は白い霧の向こう側を見――ようとした途端シルフィーゼの鉄扇が飛んできた。
    「のじょきじゃー! のじょきがおるー!」
    「くっ、バレたか!」
    「こっちよ!」
     逃げようとした色才の手を掴む、誰かの手。
     助かったと思って滑り込むとそこには。
    「さあて」
     両目のまなこに『成人』『指定』と刻まれたタシュラフェルが両手をわきわきさせていた。
    「う、う――うわあああああああああああああああ!」
     空に響く断末魔。
     イオノは何も見えないし何も聞こえない顔をして、ゆーっくり背中をながしていた。
    「続きはブルーレイDVD版でお楽しみくださーい」

     温泉タイムが終わり、妙にやせ細った色才がカタカタ震えながらイチゴ牛乳飲んでる横で、里桜はちびちびとフルーツ牛乳を飲んでいた。
    「たまにはこうして日々の疲れを取るのも悪くないな。この後は食事にするか?」
    「ウェーイ」
     缶コーヒー片手に、くしなが見たことも無い顔をしていた。
    「この後はァ――恋バナ!」
    「「イエーッ!」」
     盛り上がる武たち。
     ダッシュで逃げようとする里桜。
     羽交い締めにするタシュラフェル。
     そんな一同を眺めつつ、湯里は金色のマイクを手に取った。
     小指を立ててウィンク。
    「あーんど、カラオケですっ」
     ……尚、カラオケの歌唱シーンは全てカットされるのであしからず。ジャっさんに払うお金は一銭たりともないのよ。
     わちゃわちゃする一同を横目に、シルフィーゼは空を見上げた。
    「せめて羅刹(らせちゅ)たちの代わりに楽しんでやろうではないか……のう」
     この後、彼らは食べて歌って喋って遊んで一泊してからお家に帰った。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年1月30日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 1/素敵だった 3/キャラが大事にされていた 5
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