バレンタインデー2015~誰彼茶香

    作者:一縷野望

    ●あなたをイメージする
     2月14日はバレンタイン。
     想いをのせたチョコレートが想い人へ飛び交う1日。
    「ま、甘いモノが多いよね」
     さらっと言い切る灯道・標(小学生エクスブレイン・dn0085)の背後で、なにやらシールに書き綴るのは機関・永久(リメンバランス・dn0072)
    『ダージリン』
    『ほうじ茶』
    『りんご』
    『金平糖』
    『カカオ』
     ……なんだこれ?
    「甘いモノには飲物がほしーよね? てコトで、フレーバーティを手作りしてみないってお誘いだよ」
     ベースは、紅茶、緑茶、ほうじ茶、台湾緑茶。
     そこにドライフルーツやカカオで香りづけしたり、穀物で香ばしさを添えたり、金平糖やアザラン、ハートシュガーで愛らしく飾ったり。
    「パンチを効かすためのスパイスも各種、シナモン、カルダモン、ピンクペッパーとかね」
     ……これは入れすぎ注意。
     永久が次々と書いていくラベルは沢山、余程キワモノで無い限りは大抵のものはありそうだ。
    「例えばさ、あげるチョコに『あなたをイメージしました』なんてお茶を添えるとかー」
    「……お互いをイメージするお茶を作り合って、交換も……楽しそう、です」
     ――実際の交換はここをでてからになるけれど。
     この間行った紅茶の試飲会でお茶のコトは少し習った永久も、こくこく。
     解らないコトがあったら簡単なアドバイスならできるかもと、二人の声が被った。
    「調合した茶葉はプレゼント用のラッピングもできるよ」
     キラキラ素材の袋や和紙で小粋に包み隠してお楽しみ、とか、
     出来た茶葉の華やかさを見せたいなら、敢えて透明な袋に組紐や鈴だけつけるのもアリだろう。

    「お湯を注いで立ち上る香りを想像したら、わくわくするよね♪」
     バレンタインの主役にそっと添える脇役、もしかしたら意外と主役レベル? 華やかな香りで、あなたは誰をどんな思い出をあらわすのか――。


    ■リプレイ

    ●想いの葉
    「湊くんはどんな味がするんでしょうかね」
     違う、香り。
     格好いいピリリ生姜、あったかいカモミールに白ごまのお茶目さも。
     …ハイビスカスの赤が血を想わせ暦の指が止まる、でも心の繋がりが支えになるから。
     甘い物は好きじゃない。お茶ならどうかしら?
     凛としたアールグレイにカカオの甘さと艶やかな薔薇を、金の缶に眠らせて硝子瓶の金平糖をお供に。
     安寿はハートシールで封をする、深い意味はないのよ、なんて。
     台湾緑茶に金木犀の甘香。秋想わせる涼やかな彼描き音雪が編むは桂花茶。花言葉と共に「誰より一番大切な貴方へ」と託す想いを和紙に包む。
     巾着の紐を丁寧に結び直しチョコを渡す時を想えば、熱帯び頬が朱色。

     焙烙にごまと玄米をぱらり、なにげない翔也の所作に薫は釘付けだ。
     髪飾りとそっくりな星砂糖を目に止めた所で「薫」と夫から柔らかに呼ばれた浮かぶ笑み。
    「飲み比べてくれますか?」
     林檎とカカオ、好みのバランスはどぉれ?
    「とってもいい香り」
     どちらも美味しいですと褒めそやす妻に夫は照れ笑い。
    「でも俺はちょっと物足りな…そうだ」
     星を星を、彼女が好きな淡い光、二人あたためる時に添えよう。
    「香り高い薔薇と甘い林檎を合わせると美味しそうです」
     ルナの提案に无凱は口元を崩す。
    「…ローズアップル、さてその心は?」
     小鳥のように首傾げ薔薇散らす無垢さ加減に彼は、
    「薔薇は愛の象徴、林檎は禁断の実とも」
     手製のドライアップルを薔薇の香と絡ませて。
     ――禁断の愛。
     他意はないと戸惑うルナを前にチョコとシナモンで飾り仕上げの彼は余裕。
    「直接食べたいのが本音です」
     金平糖を呼び水に戻る穏やかな日常。
     ドライフルーツ頬張る七緒を眺め玲仁が選ぶは焙じ茶。好むメロンに金平糖も添えたら…夕焼け炎に浮かぶ星か。
     桃と今年もお花見ねの桜ぱらぱら、ハートは愛。
    「…マリーゴールド」
     嫉妬、他者との依頼にか。七緒との平穏は何にも代えがたいのにと微苦笑。
    「…嫉妬だけでもないのだよ」
     絶望も悲嘆も玲仁次第。
    「しかしフレーバーティーは、何に合うのだろう…」
     さっそく和菓子を考えてくれる彼ににこっ☆
     幸せも彼次第♪
     チョコと合わせる紅茶は確保済み☆
    「何がいい?」
    「そうだなぁ…」
     好きなのは緑茶、でも一緒に作るのだから彼女らしさもある紅茶――ユキトの手で散らされる褐色。
     ミルクが添えたのはあまぁいバニラ。
     そこへ薔薇とシナモンをユキトが散らす。
     きらきらアザランに「あ」とミルク。
    「これは絶対必須だな」
    「ふふ、そうだな。」
     思い出の星空、星砂糖を飾ればくすぐったい幸せが満ちて、触れた指を繋ぎ合う。
     …バレンタインは愛をたっぷり紡ごう。
     …愛をもらっても此方からも注ぎたい。
    (「「きみは俺だけの大切な人」」)

    ●ほどける時間
    「好きなもの入れたら美味しくなるよ!」
     冴のアドバイスに司は緊張解く。苺蜜柑ゆず金平糖…緑の茶葉が賑やかに。冴はベリー系で絞り、悩んだすえに金平糖抱かせた紅茶。
     ちまカップで交換試飲。
    「…ってこれなに入れたの司君!」
     広がる豊かな香りに瞠目。
    「おぉ、おぉぉぉぉシンプルで美味しいですね。冴君スペシャル教えてください」
    「ねぇ司君、それもっかい再現できる?」
     2人でレシピお持ち帰り♪
    「ダメな味? イカっぽいの以外なら大丈夫!」
    「イカ…その発想は無かった」
     流石はイカマスター。
     感心エリアルが手にしたのは紅茶。シュガーピンクに合わせて桃オレンジ、ポップコーンと星砂糖…スキッとした飲み口が好きそうかなと。
    「うむむ…」
     バランスに苦心の千代。何度も試飲後、チョコとヘーゼルの紅茶完成。
    「完成!」
     見目クール、話すと面白くて可愛いと屈託なく言われて、
    「えっ、ありがとう…」
     照れ。

     ――茶葉研究会『LEAVES』としては外せないイベントだ!
    「僕としてはやっぱ龍!」
     健が持ってきたのはその名も「龍井茶」――柑橘を纏わせすっきり仕上げ。
     彼女色の紅茶ベースに桜までは決めたけど…そんな一樹へ陽桜。
    「金平糖も桜にちなんだ色合いだと綺麗かもだね♪」
    「金平糖使うか? 贈る人に喜んで貰えるといいよな」
     健の掌でころころパステルカラー。
    「シナモン、喧嘩しないかな」
    「いいと思うわ」
     シナモン降らせ曜灯は笑む。これより焙じるは研究会の新し探しの熱をイメージしたお茶。
    「曜灯は自分で焙じるんだ、手が込んでるね」
     瞳キラキラな勇介と陽桜の眼前で、曜灯の手元魔法のような香りが立ち上る。
    「甘くてちょっとスパイシーな感じにしたいんだ」
     カカオとシナモンにスターアニス煌めかせ、何度も試し飲みの勇介。
    「…イメージが明確なんだな」
     賑やかさに曜灯の口元が綻ぶ。掠めるように火を受けた茶葉へはベリーを彩りよく配置。
     ばばんっと昇り龍『爽風龍星茶』を掲げる健に、陽桜は瞳をまんまるに。
    「柚子とか金柑使ってると雷竜って感じ!」
    「はい、陽桜にお裾分け」
     しゃらり、焙じた琥珀が落ちる。
    「よーひちゃん、ありがと♪ これにカカオとオレンジで…」
    「お! 果物茶はマジ女子らしい」
    「できた☆」
     ミステリアスな標をイメージしました!
    「うん、標さんのイメージぴったり」
     勇介のお墨付きに照れ笑い。折角だからできたてを届けに行こうか。

     2人で一つの紅茶を作り上げる――同じ里で育ち愛を育みつつある黒曜と藍晶は、広げた茶葉に向き合いどちらともなく笑み零す。
    「紅茶にピンクペッパー、どんな味になるのかな?」
     可憐な黒曜に似た薄紅の粒をぱらりぱらり。
    「どんな砂糖がいいかしら?」
     金平糖、氷砂糖、色んな形の砂糖…藍晶は目移り。
     …ちなみにこっそり、彼の作ったチョコに合わせたお茶も調合済み。
    「以前にカフェに行った時に…」
     出されたフレーバーティ、以来一度作ってみたかったリオンは、薄紅で纏めた紅茶。
    「良いんじゃね?」
    「流石、といったところでございますねぇ」
     苺の甘さと桜の見目華やかさにシュバルツは舌鼓、蓮曄は柔和に笑んだ。
    「榊さんのラムが濃厚芳醇です」
    「想定外ではございますが、これはこれで」
     ジュニパーベリーころりころり。
    「カモミールに薔薇を使ってみようと思うんだが、どうよ?」
     ブランデー香に負けぬアッサムに、とシュヴァルツ。
    「優美で美味しそうだと思いますよ」
    「悪くはないのでは…奇跡の1品が出来るかもしれないですし!」
     艶ある水色に瞳輝かせる未来のバリスタ達、試したいフレーバーはまだ一杯。
    (「静菜さんといえば…」)
     ゼラニウム。
     元気色のハーブ手に心太は文山包種を選ぶ。
     一方静菜は髪と瞳色の黒豆をぱらり。緑茶に柚、更に薄荷でスッと。
    「うん、こんな感じです。あ、しんちゃんは緑茶ですか?」
    「見た目日本茶、実は…台湾茶。意外なお茶になりましたかね?」
     型破りなあなたに合わせたと言われ、
    「びっくりさせるのが、人より好きなだけですよ」
     目を逸らす。
     …飲み比べが愉しみ愉しみ。
    「ご面倒であれば私が大紫様の分もお作り致しますので」
    「大丈夫」
     樹へ口元緩め、誘いが嬉しくて。
    「こういう作業は嫌いではないよ」
     緑茶、ローズヒップ、バラに青紫ヒース…傍仕えを描いたが可憐すぎ、か?
     樹は紅茶にマロウブルーとクランベリー星型アザラン。レモンを搾れば蒼から大紫の瞳へと移りゆく水色。
    「お慕いしております、大紫様」
    「ふふ…君以外、誰が俺の世話をできる?」
     帰宅したら早速樹の淹れた茶を愉しもう。
    「さやちゃんのも、蜜柑のいい香りがするわね!」
    「ももちゃん先輩のは葡萄さん」
    「えあんさんが好きだから♪」
     冬の季語ミルクティ、なんて真顔の桜子と百花にエアンは紅茶の奥深さと一つまみの寂莫。
    「ベースはダージリンかなぁ…えあんさん、どう思う?」
    「ダージリンで。俺はミルクティにしようかな」
     冬の季語も納得できる、暖まるよう生姜にカルダモンとシナモンでチャイ風に。
     桜子はお花を加えるか悩み中。
    「お花入れるなら…同系統のオレンジのお花はどうかな?」
     可憐な白が素敵と後押しされてパッとお花畑。百花も情熱の薔薇ぷらす☆
    「あ、エアくん先輩の意外かもっ」
    「えあんさんったら、すぱいしーで良い香りね!」
     お茶会が待ち遠しい。
    「こ、ここから探すんですか…?」
    「探しがいありますなぁ」
     気圧された氷霧へ安寧導く伊織の声。
     今日は出逢って1年目の「好み探し」
    「これ、とかどないです?」
    「…美味しい」
     レモングラスの清涼感に柚の存在感、柑橘に抱かれた仄かな甘みが好みと気付かされて、氷霧は伊織に聞いた素材を組み合わせる。
    「うれしい…オレはこれ」
     懐かしニッキの焙じ茶、甘さを憶え氷霧は口元崩す、なんだか「らしい」
    「いおと俺の、二人だけの味ですね」
     二人だけの秘密、紐解きはお茶会で。

    ●あなたをえがく
     ――できあがりまでは内緒。
     緑茶かほうじ茶か迷い雪緒を見れば笑顔お揃い。
     清十郎の好むダージリン、蜜柑で試し、更に柚でしっくり。英国紳士と和が渾然一体となる彼らしい逸品。小壺には蜂蜜。
     澄んだ翡翠の水色に直接浮かべる桜一片。添えた抹茶で深み増す中へころり遊ぶ金平糖二つ。雪緒の淑やかさと芯の強さを顕した。
    「ふふ、後ほどお部屋でプレゼントいたしますね!」
    「俺も完成、楽しみにしてるな!」
     相手からの自分が垣間見えるのがいいと、ほうじ茶に黒豆を転がす紅子。奏夢も肩ならべ相手描く時間が愛しい、と。
     紅茶に元気なオレンジ、女らしさの薔薇と白いスプーンは砂糖菓子。
     紅子は生姜に桜で仕上げ。祖父と共にいる和装の彼をイメージ。
    「おじいちゃん奏夢もイケメソなんやろな~」
     あれ逆プロポーズ?
    「プロポーズは俺の分に取っといて欲しい…かも」
     己の台詞に却って照れた。次は2人のための茶を作ろう。
    「これは…蓮ですか?」
    「ええ」
     青紫蓮花が従えるのも蓮の花弁。黒砂糖が独特の風味を添える。
    「黒蓮、ブラックロータスですね」
     飲み口は甘くけれど闇色ミステリアス、そんな彼のイメージ。
    「光栄です」
     黒蓮色の髪ゆらす彼の手元、立ち上るはオレンジの香り。
    「…!」
     ぴりり、黒胡椒に瞠目する夕へ結城は柔らかな笑み。
    「独特の香りと優しい味をしていても、ね?」
     スパイシーさが身上でしょう? と。
    「あ、これカワイイー」
     璃依の掌、溢れんばかりのハートシュガー。
    「砂糖は少しにしなさい、少しに」
    「だってラブラブだしっ」
     くるり瞬くラピスラズリ、かなわないと翔琉の頬が染まる。
    「お、バラだっ」
     真実の愛とはしゃぐ彼女へキャラメルの甘い香り、アッサムベースでミルクに合う懐かしい甘さ。
    「嬉しい」
     アタシの大好き考えてくれるの!
    「璃依の作ったチョコにも、きっと合う」
     屈託なさに釣られ破顔、当日が愉しみだ。
    「甘いモン苦手で、ごめんな?」
     バレンタイン…と頬をかく明莉へ心桜が瞳ぱちくり。
    「明莉先輩の分もわらわが食べられるじゃろ?」
     手放し笑顔、彼の心もほろり。
     そんな心桜はローズヒップ、レモンとシナモン…。
    「あ」
     桜摘む指が触れ笑みかわし。
     明莉は星砂糖、心桜は金平糖。
    「テーマは『天然素材』かな?」
    「明莉先輩は『ほっこり』じゃ」
     焙じ茶に柚とかぼす。
     素の儘でいられる2人は微笑みあった。
    (「お兄様はミルクティが好きみたいだし…」)
     生姜とカルダモンとシナモンのチャイ思わせるブレンド。柑橘香で引き締めて完成。
    「究極の紅茶をプレゼントしようじゃないか!」
     意気込む熾はダージリン、アレンジに向かないと舞依は飲み込み。
    「困ったらシナモン」
     苺と高貴な薔薇で舞依のイメージぴったり。
    「後でわたしが淹れてあげる」
     不安もあるけど…きっと素敵なティタイムになるはずだ。
    「ニアに似合いそうな紅茶、喜んでくれるかな…」
    「もちろん」
     キレイで、優しくて、幸せをくれるイーニアス。
     爽やかで、きらきらして、ほんのり甘い、三千歳。
     イーニアスは緑茶、控えめにカモミールと棗。緊迫綺羅星金平糖。
     三千歳は黄色い薔薇蕾に破顔。紅茶が一気に華やかに。後は星砂糖をソーサーに添えよう。
    「カモミールの匂いは平気?」
    「大丈夫!」
     爽やかさにスッとする。
     飲むのが愉しみ!
     そわそわしてたから、暦はアーティアリアを誘ってみた。
    「どうしてもっていうから来ただけだよ」
    「アーたんの紅茶愉しみ」
     のほほん暦を隣にツンデレさんは調合開始!
    「きみ…甘いの、好き?」
    「え、すごく好きだよ」
     準備してくれる暦に『優しくて…安心する』メモにこくり。カカオと苺たーっぷり甘く。
    「…別に黒髪イメージしてアッサムを選んだ訳じゃないからね」
    「ありがとね、アーたん」
     濃い水色揺らしにっこりお礼。
     真剣に悩む薄紅の眼差しに茉莉は釘付けになる。
    「あ、こらこら、内緒だろ?」
     南守の膨れた頬も愉しげな笑顔を前に緩む。
    (「甘い物を美味そうに食べるんだよな」)
     カカオに金平糖と好きそうな物を緑に散りばめる。
    「へへ」
     焙じ茶に綺麗な瞳色のピンクペッパー、桜と桃で甘みも添えて…。
    「なぁ、半分ずつしねえ?」
     南守に茉莉の頬が真っ赤。
    「半分こにしなくても、ね」
     あげるの、内緒にしとこうと思ったのにな。
    「お茶、すきだから、こういうの、うれし」
     そわそわするスヴェンニーナに流は寿ぎ、紅茶にキャラメル纏わしいちじく添えて。
    「私は、こんなイメージ?」
     台湾緑茶。ポップコーンと柚。生姜を隠し金平糖で仕上げ。
     さわやか、柔らに残る甘さとぬくもり――彼女に言われ照れる彼。
    「心に隙間が無くなるくらい、俺の愛でめいっぱい甘くしてみせるよ」
     ハートだらけの茶葉にぽおっと熱くなる頬。
    「…すきまなんて、もう、ない」
     読書の共に。
     就寝前のリラックスに。
    「ベースは和だな、ほうじ茶」
     行き来する依子の瞳に、篠介は「照れるんじゃが」と頭掻き。
    「あ、つい真剣になっちゃって」
     カモミールと生姜でぬくもり。焙じ茶の素朴さが彼らしい、きっと。
    「いや難しいのう!」
     けらり。
     破顔の手には鮮やかな黄色。柚と金平糖、そして…ミモザ。イタリアで女性に贈りお礼を伝える花。
     帰りに交換、一緒に飲もう暖かな居場所で。

    ●あたたかな
    「こんにちは、標さん」
    「灯道さん、機関先輩、お誘い、ありがとうございます」
     アリスとチェーロが挨拶交す傍ら、ケモップル花恋はニルギリにカモミール白ゴマ…と、軽快に加えるロジオンをちらり。好み知らずドキドキしつつフランボワーズの酸味にカカオを添えてバレンタインらしく。
    「私の彼、白っぽいのよねー」
     アリスは砕いた金平糖に白薔薇とマリーゴールドをひらり。お茶は専門と言うだけあり迷いがない。
    「呪術的なハーブの方が詳しくて」
    「あ、すごく知りたいー」
     チェーロは却って標に食い付かれた。
    「チェーロさん、紫好きならコーンフラワーにラベンダーとかは?」
     弾む話に安心したロジオンの肩がちょん。
    「ロジー、あのね…」
    「私の紅茶の好み? 好き嫌いは御座いませんよ」
    「よかったー」
     あまぁいミルクティ楽しめる!
    「標さんには日頃お世話になってるから…」
     彼のお茶をアッサムで仕上げ標に差し出すはシナモンベースのマサラチャイ。
    「『スラッグショット』飲んでみて」
    「ピンクペッパー効いてて、いーね」
    「キョーコが紅茶部? ホー…」
     確かに緑に桜と柚、白胡麻と流れるように合わせる指はプロっぽい。
    「灯道」
     恋人立夏を指し相談する今日子に、
    「柚と喧嘩するかなー」
     瞳色の苺をちょん。苺は別添え味遊び。
    「永久っち、アドバイスないンかなー」
     ラブ深めたい!
    「バレンタイン…カカオ、とか」
    「おー…お?」
     ジンジャーとのバランス難しい、ならば最終兵器。
    「キョーコ、愛してるぞぉ!」
    「…まあ嬉しい」
     ラブパワー注入願い叶ったり。
     時間差オーダーで紅茶を調合した実とアルレットを見守る標。
     アルレットはレース紙で繊細に。白薔薇にはフランス文字で愛を。中からはアザランと花砂糖、ピンク胡椒と生姜が見え隠れ。
     みのりは、パステルで『本当』のアルレットをイメージ。茶葉控えめでカカオとベリーの香りと甘さを生かした。
    「お、そっちも可愛いなー♪」
    「これは、本当のアルルを見ている私からです」
     くすぐったくてうきうき、早くその日にならないかな?
    「台湾緑茶に星型のお砂糖」
     レイラが摘むのを興味津々で眺める紫苑、作るのなんて始めてちょっと照れる。
    「私、機関さんには何故か星のイメージがありまして…」
    「星…」
     見上げたのは家庭科室の天井だけど、でも星と言われなんだか嬉しい。
    「桃も…はわわ、味見してもらえますか?」
     アドバイス、是非に。
    「ほっとする感じだから、緑茶ベースってのは決めてるんだけんど」
     紅華の父への思慕に永久はこくり、あたたかな家族の話は好きだ。
    「こんな素敵な男の人を射止めたお母さんがうらやましいずよ…」
     彼氏欲しい乙女の手元ではラフランス茶が仕上がり。
    「山形、素敵な所なん、でしょうね」
    「永久、ありがとうなー!」
     英国出身の友と飲んだ茶の再現。
    「自分探し殺人事件以来だね。今度はこのブレンドをした人を探してみてくれるかい?」
    「マリーゴールド…シナモン…うー…女性? 繊細に見えて元気をくれる感じ、かな…」
    「そうか。さすがだね」
     満足気なアンカー、答えは内緒。
     朋恵は菫の瞳を好奇心と戸惑いで瞬かせる。
    「あ、永久さん! あたしのお茶、作ってもらいたいのですっ」
     バレンタインが誕生日と聞いて、カカオに瞳色のコーンフラワーをふんだんに。兎の形の砂糖をしゃらり。
    「1日はやい、ですけど…おめでとう、です。よき1年、を」
    「ありがとうです」
     ハッピーバレンタイン!
    「あ、やよいもお茶作って欲しいな」
    「マリーゴールドとオレンジ、これは外せま、せん」
     矢宵と標の前でアッサムに其所まではすぐに、その後悩み…。
    「アザラン金平糖、ミントを」
    「ありがとう!」
     包装は矢宵にお任せ、オレンジは標紫は永久にプレゼント。
     ――今なら大丈夫。
     碧月はこっそり、なにしろ主催にあげたいお茶を作るわけだから…。
    (「だって、あげるからにはビックリさせたいんだよぅ」)
     紅茶に永久の名を持つ花、花言葉は記憶、思い出――彼にぴったり。元気が出る生姜に林檎、月型の砂糖は自分の名前と鋼糸描く三日月浮かべて。
     誰かを想い描き作るのってとても楽しい!

    ●熱抱き生まれる香
     熱湯で生まれた春色桜の香りに深呼吸、戀花は戀夜のティポットへ瞳を向ける。
    「ねぇ、戀夜のはどんな味がするの?」
    「ふふ、自分で味わってみるといい」
     お菓子のようなバニラとカカオの香り、しかし口に含めば、
    「…苦い…戀夜…苦いお茶好きなの?」
    「確かにじじくさいのかもな」
     戀花のお茶は香りの儘に素直な味わい。
    「戀花らしい、優しいお茶だな」
     お茶だけでお腹いっぱいになりそう。
    「何ていうか、緑茶にポップコーン浮いてるのってシュールだよね」
    「なんなら急須から出して浮かべてやろうか」
     柚生姜に白の雪「飲むのに邪魔だけど」と笑う梛に希は自分の急須を手に取った。含めばオレンジショコラの甘い香り…ぴりっと後味、胡椒。
    「…なんかさこうまったり茶を啜ってると」
     バレンタインってなんだっけ?
    「ポッポーは縁ありそうじゃん」
    「こーちだって、いっぱい貰えそうだけどね」
     平和な男子茶会でした。
    「あとはラッピングね。湊君はどんな感じ?」
    「あ…こんな感じ」
     桜色の千鳥模様を手にうっそり笑う月子へ湊はどぎまぎ。
    「ふふ」
     澄んだ味の茶葉に甘み纏わせてスパイスで身も心も高揚――飲むのが愉しみだ。
    「渡す相手を目の前にしながら包むのもどうなんだろう」
    「一緒だからこその気分も大事じゃない?」
     つつかれた頬からカッと熱くなる。
    「それでさ。この後の予定なんだけど…」
    「今日はずっと一緒だからね」
     年に一度の恋の日は共に…。
     バラ科だから苺と相性はいいはずと九十九の助言で花咲いたストロベリーローズティ。
    「淹れてくださらない?」
    「喜んで」
     丁寧な所作を見守るティシーはカップを受け取ったら、
     すとん。
    「!」
     彼のお膝。反応が楽しみとウインク。
    「ここはわたくしの特等席ですしね」
    「勿論」
     いつも結ばれている口元綻ばせ九十九は収まり良いように足から力を抜く。
    「ティシーが望む時、ここはいつでもティシーだけの特等席だ」
     堂々と返されて吃驚は一瞬「ええ」と華やぎ笑み描く。
     飲みやすさを追求した色味が地味な焙じ茶。
     マローブルー。ハイビスカスとラベンダーで綺羅の彩り。
    「包み、中が見えるやつがいーなー」
     途流は静樹の瞳見て「その色」と破顔。
    「濃く出したらちょーど静樹の瞳、水出しだとおれの髪」
     金平糖散らせば夜の空。
     レモンで紫に変ずると聞くに至っては吃驚のみ。
    「冒険心もっと出してみるべきだったか」
     玄米と黒胡麻で香ばしく。
    「生姜…寝る前にこたつで飲みたい感じなー」
     帰ってから飲むのが愉しみだ。
    「飲み比べてみてや」
     悟の笑みは悪戯っ子のようで。
    「ん! こっちのすごく香り高い」
     吉野の日干番茶に想希は瞬いた。
    「俺は君の味がいい」
     近づくぬくもりに「婿入りやな?」と寿ぎ返し、赤面に余計幸せ。好き言ってくれた日干番茶を炒り直し。
     桜に一足早い春感じ、
    「小豆フィナンシェもいいかも」
    「早速折衷菓子か、えぇな」
     頬にぬくもり、ありがとうと唇寄せて」
    「帰ったら早速作りますね」
     無垢にお返し、頬にちゅー。
     
     Cafe【Fiore Luna】の面々はいつも通りの和やかなお茶会。
     楚々と霧江が落とす恋飴色、桐人のあわせた薔薇とクランベリーが華やかに香る。
    「ん、美味しい。ナイスチョイスだね」
     花夜子の賞賛に桐人は胸を撫で下ろす、なにしろ彼女をイメージして作ったのだから。クランベリー『不滅の愛』を添えて。
    「桐人さんのはロマンチックだね」
     お店では出せないね、と…天花にはバレてる?
    「天花さん達のは?」
    「あたしはストロベリーティー」
     フローズンの苺とカップに満たした練乳の甘さが解け合う懐かしい逸品。
    「あんま飲まないんだけど、紅茶もいいものだね」
     國鷹に教わったと椎奈が注いだのはフレッシュなアップルティ。ミントがワンポイント。
    「この清涼感がいいね」
     店長花夜子のお墨付きで照れくさい。
    「俺はアールグレイです、完成形であるこのブレンドを自分の好みに合うよう調整するのも…」
    「お兄ちゃん、ちゃんと味わって飲みなさい」
     ひとしきり笑った後で、
    「アタシのは、どうかな?」
     カフェ店長としては気になるわけで。
    「花夜子のは桜と桃かぁ。うん、とっても春らしさがあるし、おいしいね」
    「これからの季節にぴったり!」
     桐人と天花の評価にほくほく。
     ――こんな特別な一杯を素敵な家族や友と過ごせて、椎奈の胸がいっぱいに満たされる。

     長年の夫婦のように通じ合うのは幼馴染みだからか。隼人がポットに茶葉を振らせれば、陽はカップを温める。
     まずは隼人の、桃の甘さにミントの清涼感が陽のイメージ。
    「イメージしたっていうより…一緒に飲みたいお茶、かな」
     ダージリンに、マリーゴールド、マロウフラワー、ローズ。グレープフルーツで花をとりまとめ。
    「こんな素敵な恋人に入れてもらったなら、美味くない訳無いしな」
    「も…もー! なんでそういうコト急に言うかなぁ…」
     ご馳走様です。
    「んっと、エルダーフラワーが空くんぽいかなって…」
     白い小花に添えたのは瞳色のオレンジ。
    「2人でいっしょ、のイメー…い、今の忘れて!」
    「ははは、なるほど、優しい幸せの味がするわけだね」
     照れる彼女へ差し出すルイボスティ。
    「ん…甘くてとっても良い香り」
     バニラにカカオ、シナモン。飲む人を甘さで解し暖めて。
    「毎日安心して眠れそう…」
    「ありがとう、俺も灯倭のお蔭で幸せだって…」
     思うさは笑みへ融け。
     蒼つれた白のコサージュ、カモミールとキャラメルで優しさ添えた。
    「うん、真琴さんのいい香りだね」
     様々な和紙で描く虹色模様、中には桃とシトラスが揺れる。
    「七波くんの、なんだか風を感じる様な素敵な香りです」
    「良かった…真琴さんをイメージしたんだ」
     茶葉の扱いに自信がなかったから安堵。
    「七波くんは…」
     はにかみ笑いに照れ微笑み返し。
    「おだやかで甘い香りで、落ち着いた気持ちにしてくれるんです」
    「スィラン君は?」
    「…こんなの、だ」
     葉耳猫の包み開けば金平糖がしゃらり。
    「可愛い…ラベンダー?」
     キリリとした緑茶が香る。
    「みちるのも…くれ」
     未散の手元ショコラオレンジの香りが立ち上る。
    「…どうかな?」
    「甘くて…うまいな」
     暖を取るようにカップに指をあてれば零れる微笑み。
    「帰ったらログハウスでもお茶にしようか」
    「うん…帰ろう。俺たちの…家に」
     茶請けも買って掛け替えのない時間を過ごそう。

     ――ぬくもりが誰かをあたためて、優しい刻があなたの元に訪れますように。

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月13日
    難度:簡単
    参加:95人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 10/キャラが大事にされていた 8
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