斬新三上の超新感覚大独創的復活劇場

    作者:日暮ひかり

    ●scene
    「ない……給料はたいて作った俺の石焼パパイヤ屋台がどこにもない! クソッ、まだまだ働き盛りって時にあっさりくたばるなんてよ。やってらんねえよ!!」
     何事だろう。横須賀の道端で、スーツ姿の若いサラリーマンが頭を抱えて絶叫していた。
     通報されそうなものだが、なぜだか通行人達はことごとく彼を無視し、いつものように通勤通学の道を辿っていく。目の前の踏切を通過する満員電車を、男はただただ呆然と――あるいは懐かしげに、眺めていた。
     彼の名前は、三上洋介といった。今は、行方不明者として忘れ去られている。
     
    「……私にはあなたが見えます。灼滅されて尚、残留思念が囚われているのですね。私は『慈愛のコルネリウス』。傷つき嘆く者を見捨てたりはしません」
    「あなたじゃねえ。覚えておけ……俺は期待の新人『三上・棒棒鶏』。こんな所でくたばっていい人材じゃない……そうだ、せっかくだし俺の斬新なプレゼンを聞いてけ。今度斬新社長様にご提案しようと思っていた、斬新コーポレーション非公認マスコット『くびきりまる』だッ!」
     ――元斬新コーポレーション社員、三上。
     彼はそう言って、日本刀を持った首のないモグラのような生き物を宙にスケッチした。
     もちろん、彼以外には見えていないが。
    「まず、日本ではまだマイナーな珍獣・サバクキンモグラをモデルにしたデザイン……まあ首から上ねえから、常人にはわからないだろうな。口癖は『ゲバゲバッ!』で、こう見えてケアストレスカウンセラーの資格を持っているという癒し系な一面がある。何度会社から首を切られても、他の社員の首を物理的にハネて寄生虫のように働き続ける社畜の星なのだ。そら見ろ、斬新すぎてぐうの音も出ないだろ…………コロネなんとか!!」
     コルネリウスは、憐憫と慈愛に満ちた双眸で、三上をじっと見つめる。
     そして、お決まりの言葉を口にした。
    「……プレスター・ジョン。この斬新な青年を、あなたの国に匿ってあげて……」
     
    ●warning
    「幾らクソボランティアでも、もう少々復活させる奴選んだ方がよいのではないか?」
     のっけからフルスロットルな鷹神・豊(エクスブレイン・dn0052)。深い深い溜息とともに、彼はコルネリウスがあるダークネスの残留思念に力を与え、連れ去ろうとしている事を告げた。
     その名は三上。
     昨年の獄魔覇獄前哨戦において、社長に(石焼パパイヤを)お褒め頂いたにもかかわらず、人事部長の前座に近い形で灼滅された、まことに哀れな六六六人衆である。
    「第一、マスコットキャラという発想が既に新しくない。で、名前がなんだって? ばんばんじィー? ふざけるな、覚悟が足りん。どうせなら『三上ウマのヒヅメなめ太郎』とかまで飛んでみろってんだよ」
     鷹神にも奇妙な視点から酷評されているこの青年、いろいろな意味ですぐに事件を起こすという事はないだろう。
    「だが、放置もできんな……」
     いろいろな意味で。鷹神は、深く深く嘆息した。
     
     三上らの出現場所は、横須賀の住宅街。現場にいるコルネリウスは幻で、戦闘能力はない。
     相変わらず話に応じる気もない。彼女が呼びかけを行っている現場へ乱入し、生前の力を取り戻した三上を再灼滅することが、今回の唯一最大の目標だ。
    「前回の報告によると、三上は怒り心頭のまま灼滅されたという。戦闘は避けられんな。生前の奴は六六六人衆の中でも末席に近い序列だったようだが、だからといって油断は禁物だ」
     攻撃方法についての質問を受けた鷹神は、無表情で黒板にこう書いた。
     『ガトリングガンを』『ロケットハンマーとして』『使う』。
    「……ガトリングガンなの? ロケットハンマーなの?」
    「両方」
     真似しようと思って殲術道具を改造してはいけない。誰もやらないと思うが。
    「……正直どう接したものか分からんので、三上への対応は君達に任せる。……ったく、毎度の事だが慈愛慈愛うるせえなコロネなんとかさんは。何を考えている……」
     哀れな人々を集めて、まさか戦争しましょうとは言わないだろうけどな。
     揶揄するように、エクスブレインは冷ややかな笑みを浮かべた。


    参加者
    或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741)
    関島・峻(ヴリヒスモス・d08229)
    漣・静佳(黒水晶・d10904)
    亜麻宮・花火(パンドラボックス・d12462)
    キング・ミゼリア(ロイヤルソウルはうろたえない・d14144)
    神西・煌希(戴天の煌・d16768)
    レオン・ヴァーミリオン(暁を望む者・d24267)
    冠木・ゆい(ポルトボヌール・d25508)

    ■リプレイ

     灼滅者よ。戦いの前に、君達に言っておきたい事がある。

     三上と言う名の三下かと、関島・峻(ヴリヒスモス・d08229)は言った。
     上には上がいる――灼滅者はそれを教えねばならない。
     はげしい戦いになるだろう。
     死んじゃったりする事もあるかもしれない。
     ぬれ煎餅おいしい。

     それでは開幕である。

    ●ここからが本当の斬新バトルだ……!
    「そら見ろ、斬新すぎてぐうの音も出な……ん?」
     プレゼンを終えた三上・棒棒鶏は、流れてくる奇妙な歌に眉を顰めた。
    『パパイ焼き石~♪ パパイ焼き石~♪』
     無理もない。ありていに言って、それはパク商品だった。安物の服に身を包んだ石焼き芋屋風のオヤジが、屋台を引きながらやってくる。その後ろを中高生達がついて回っていた。
    「な、な、なんだこいつ!!? パクラーのくせに繁盛しやがって!!」
    「パクってないわよ! トレースしただけよ!」
     なお冠木・ゆい(ポルトボヌール・d25508)が『小学生の発想だよね』的な事を言ってきたので小学生らしくネタバレをするが、このオヤジの正体はキング・ミゼリア(ロイヤルソウルはうろたえない・d14144)だ。やーい、参ったか!
    「パパイ焼き石たべたいパパイ焼き石たべたい!!」
    「ほ~らお食べ、パパイ焼き石よ」
    「やったーパパイ焼き石だ!!」
     屋台の周りを跳ねまわっていた亜麻宮・花火(パンドラボックス・d12462)が、貰ったパパイ焼き石にかじりつく。
     ガリガリガリガリッ!!
    「パパイ焼き石じゃない!!!! わたしは石焼パパイヤを食べにきたんだよ!!!!!」
    「うおッ危ねっ!!」
     花火がブン投げた石が、残(留思)念三上をすり抜けていった。
     高校野球ならちょっとした記録になってそうな高速スライダーであった。
    「どう、パパイヤで石を焼くという逆転の発想の基に生まれたこのアイテム。1個864円(税抜)!」
    「ボッタクリですねーあなたの服より高いんじゃないですかーうふふ」
    「はァ!?」
     オヤジは激おこした。必ずかの或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741)にパパイ焼き石を売らねばならぬと決意した。ライス党の仲次郎は、近くのコンビニでチンしたおかゆライスを立ち食いしている。
     オヤジは皿の中に石をブチ込んだ。余熱でぐつぐつと煮える、おかゆ。
    「おかゆ、熱々。……でも、ちょっぴり。パパイヤの香り、ね」
     漣・静佳(黒水晶・d10904)がぽつりと呟く。超次元野球から調理まで何にでも使えるパパイ焼き石には未来があった。だが値段のせいかESPのせいか皆がアレなお陰か、一般人は目をそらし現場から退いていく。
    「そこの青椒肉絲ちゃんだっけ? アナタも買わない?」
    「棒棒鶏だよ!! はッ!」
     やっと話を振られた三上は、ひな壇でガヤる若手芸人並の返しをしてしまった事にショックを受ける。
    「棒棒鶏って美味いよな、俺好きだぜえ。回鍋肉サンも好きだろ?」
    「棒棒鶏だよ!! うわァしまった!!」
     神西・煌希(戴天の煌・d16768)が被せて追い打ちをかけた。様式美である。
     ゆいがどう三上を励まそうか迷っていると、峻先生がお手本を見せてくれた。
    「もっと考えろ。石焼屋台より今風のカフェで焼きパパイヤをお洒落に売る方が新感覚スイーツと持て囃されないか」
    「……う、うんうん、そうだよね! 私もそう思うよ……たぶん」
    「一般受けするもの作ってどーすんだよ……全然斬新じゃない!!」
    「斬新と言っても、大抵は思い付いても陳腐だからと誰もやらないだけだよな」
    「ぐはあ!!」
     さすが先生、上げてから落とす。もう瀕死の三上の前に、オヤジが立ちはだかる。
    「ある時は屋台のオヤジ、ある時は花の女子高生、またある時はメイドさん……しかしてその実態は! ヴァカチンの至宝、アタシよッ!」
    「ああッ、あの時の斬新な奴!」
     変装を解いたオヤジ――いや、キングを見て、全てを悟った三上は歯ぎしりした。いやあ斬新な展開だ。まさかオヤジの正体がキングだったとは。
    「クソッ……全部お前ら灼滅者のせいだ! おいコロネ、とっとと俺にこいつらを倒せる力をよこせ。斬新にな!」
     コルネリウスは普通に生前の力を与えた。
     周囲の退路を確認していたレオン・ヴァーミリオン(暁を望む者・d24267)が、消えゆく彼女に真剣な視線を向ける。
    「キミの中にあるのは本当に慈愛だけなのか、あるいは……多分、キミは正しいんだろうけど。悪いね、邪魔させてもら」
    「どうだ俺の斬新さがコロネに認められたぞ! 死ねええええええ!!!」
     台詞の途中だが、三上は後列へガトリングガンを連射した。そのへんは元六六六人衆だ。煌希が射線に入り、弾丸を受け止める。静佳は一見慈悲深そうな笑みをたたえ、三上を眺めた。
    「もうコロネさんの、勧誘は、50を超えてる、の。充分な戦力、よ」
    「ン何ィ!?」
     コルネリウスは ざんこくなんだなあ ゆいを。
     ゆいは若干遠くを見ながら、そんな事を考えた。

    ●ここからは普通のバトル……か?
     峻の殺戮帯が腱を斬り、三上の足が止まる。その傷口の上から、キングは煌びやかな銀槍をねじこんだ。
    「フッやるな。流石俺の商売がた」
    「石焼パパイヤたべたい石焼パパイヤたべたい!!」
    「ぐはぁ!!」
     槍を持ってタックルしてきた花火が無惨にも三上のどてっ腹を突き刺した。
    「石焼パパイヤ食べたい!! 三上さん三上さん、わたしたちが石焼パパイヤを作って広めてあげるからレシピを教えてくださいな!!」
     たち。
     布教を強いられた仲間達。
     とにかく石焼きパパイヤが気になって気になって仕方がない花火。彼女はマフラーの中からもみじ饅頭を取りだすと、三上の胸ぐらを掴んでゆさゆさ揺する。
    「もみじ饅頭あげるから!! 公園のおいしい水道水5本もつけるから!!」
    「こんなに俺の石焼パパイヤを必要としてもらえるとは……だが、もう屋台は……」
    「石焼パパイヤ屋台、もう一度、作れる、わよ? 永遠に、作ることに、なるかもしれない、けれど」
    「何なんだよお前! こええよ!!」
     涙ぐみかけた三上だったが、包丁から毒嵐を噴射しながらくすくす微笑んでいる静佳の迫力に別の方向で涙目になった。
    「給料はたいた屋台って……もしや材料も自腹か」
     やばいな社畜。そして何度でも自腹を切らせたいのか静佳。何だか用済みのカモ客をヤバイ御国に売り飛ばそうとするヤミ金の姐さんに見えてきた。
     借金ダメ絶対。パパイヤカフェの開業資金に不安を覚えた峻は、プロジェクトを白紙に戻した。その横では、煌希が作戦の確認をしている。
    「何だっけなあ。レイザースラスト、DESアシッド、スターゲイザー、グラインドファイアを使用し回復には祭霊光とセイクリッドウインドを」
    「ちょ待てよ、何かおかしくね!?」
    「6つ言っとけばよお、逆に何を活性化してねぇかわからねえだろ!」
    「なんだってー!? な、なんて斬新な心理さくせぐあッ!!」
     煌希の放った何らかのサイキックが三上をアレするのを眺めながら、後衛の仲次郎はうふうふと微笑む。
    「やりますねーでも私ならもーっと斬新な事考えちゃいますよー」
     仲次郎の交通標識が青く輝き、三上の方へ光線をばら撒く。その一筋を喰らった三上は、煌希のライドキャリバーおよび仮・轟天号に轢かれ、一層怒りだした。
    「なんなんだよ俺一人に広範囲攻撃しやがって!! ついてくる部下いねえからってバカにしてんのか!? どうせ俺人望ねえよ!!!」
    「仮・轟天号の素敵ボディに傷でも付けたら、解ってますよねーうふふ」
    「うッ……」
     腹いせに仮・轟天号を蹴とばそうとした三上は、ボディの輝きに気圧された。
     確かに斬新だ。味方もあまりの斬新さに震えあがる、最高にロックな挑発である。
    「六六六人衆に黙祷なんてしてやりませんよー。斬新に灼滅されてくださいなー」
    「斬新ってか、アグレッシブにも程あんだろ或田!」
    「最早エクストリームスポーツの域だな……」
     しかもこんな時に限って、壁役の煌希と峻は怒り付与サイキックを持っていない。二人はとりあえずツッコミを入れた。
     この混沌をどうにか治めようと、レオンが前に出た。回転を加えた槍を三上へと突き出したが、三上は大きな銃を槌の如くフルスイングし、槍を弾き返す。
    「くっ!!」
     反動で跳ね飛ばされたレオンは受け身をとって着地した。そして、悔しさに肩を震わせ――。
    「……くっそ、なんてロマン武器使ってやがるんだこいつ、欲しいぞアレ……」
     ……この人もちょっとアレな方だったようだ。
     ゆいは、困り気味の笑顔を浮かべたまま『斬新注意』の黄色標識を掲げる。
     戦闘開始から1分も経ってないのだが、味方が絶妙に噛み合っていない。不穏だ。三上も何となく感づいてしまったか、調子に乗りだした。
    「わははは、俺の斬新さに度肝を抜かれたようだな!! まずそこのうふふ野郎を殺して……皆殺しだ!!!」
     三上の眼に滲む六六六人衆の狂気を目の当たりにし、ゆいは本能的な恐怖を覚えた。
     脚がすくむ。けれど勇気を出して戦場を、戦う仲間の背を見つめた。
     大丈夫、前の時よりは落ちついている。私達は未来を良い方向に変えられる、そう知ったから。だからゆいは戦う、怖くても、成功に向けて頑張ろうと――!
     まあ冒頭でネタバレしてんだけどな!!

    ●斬新と没ネタは紙一重っていうが
     三上ぐらい軽くひねり潰せるはずだったのだが、足並みが揃うまで暫くかかり、灼滅者達は思わぬ苦戦を強いられた。だが、皆全力で斬新した――たぶん敗れても悔いはない。
     ってことで。
    「ざんねーん、三上君の出番はこれにて終了ですー」
    「ふざけんなあああああああああああああ!!!!」

     相変わらず挑発的な仲次郎を追い回しながら、怒りMAXな三上は銃を乱射していた。仲次郎は飄々と冷気のつららを撃ち返す。
    「ほーら近づけまいーうふふ」
    「こっちにだって遠距離攻撃あんだよオラァ!!!!」
     三上のガトリング連射で仲次郎はついに倒れたが、どこか満足そうであった。
     なぜここまでするのか仲次郎――宿敵によほど深い恨みがあったのだろう。怒りの矛先を失い、三上は我に返った。暫しの沈黙が流れる。
    「マスコット」
     静佳がぽつりと呟く。
    「お願い、マスコット、見せて、くださる?」
    「は、はい……」
     すっかり静佳にビビっている三上は、くびきりまるの姿を宙にスケッチした。やはり彼以外には見えていないが、そこは斬新展開に慣れつつある灼滅者達。
     ゆい、煌希、そしてレオンはいい笑顔で空を見た。今なら、くびきりまるの姿も見えそうな気がする――!
    「……全然新しくも可愛くもないよ……酷い会社で働いて変になっちゃったの?」
    「いや、ボクは嫌いじゃないなこの斬新さ……実のとこ、結構好きなんだよね」
    「わかってくれるか!!」
     盛り上がるレオンと三上に、ゆいはただただ苦笑を返すしかない。
    「ってかサバクキンモグラってなんだよ! ンな誰も知らねぇようなモノをマスコットキャラにとか、一般民に親しみも何もねえだろ! リアルJKにも不評じゃねえか、没だ没!」
    「ぎゃふん!!」
     煌希部長は企画書を叩き返す時の気持ちで三上を蹴とばした。鬼部長の説教はまだまだ続く。
    「いいかあ三上、大事なのは身近さ、単純明快さ、愛らしさ、そしてそこから生まれる親しみだ! 小難しい役職より、正義の味方が好まれるだろ!」
    「な、なるほど……」
    「どうせなら悪の組織ノーザンギョーを退治する正義の味方シャチクナンジャーとかにしろよ。斬新だろ?」
    「いいな! 斬新だ!」
     なんか富士急ハイランドにそういう奴らいた気がするぞ(絶叫戦隊で検索だ!)――と巧妙なステマを挟みつつ、エア会議は踊る。
    「人形は顔が命だし顔無しは不利な気が……グッズ化し辛いだろうし」
     峻はダメ出しがてら縛霊手で殴り。
    「デザインはもっと、もふもふにすると、斬新だと思う、わ」
     静佳は制約の魔法弾でもふもふを強要しようとし。
    「ねえ、パパイヤはー!」
     花火は殺戮帯で三上の首をしめながら斬り裂いた。
    「す、すいません……じゃあパパイヤ好きな5色のプードル蛾……いや虫はJK受けが……」
     重役達のパワハラに頭を悩ます三上の前に、ライバル社員のアイツが再び現れる!
    「ふふん。なかなかに斬新なマスコットのようだけど、アタシの『くびきりまろ』の斬新さの前では月とスッポンね……」
    「ンだとォ!? じゃあキングとかいう奴、お前もプレゼンしてみろよ!!」
    「いいわよ……説明しよう! 『くびきりまろ』とは……公家の恰好をした手の平サイズのゆるキャラで、和の心の象徴として日本刀を持っているわ。口癖は『成敗でおじゃる』で、蹴鞠という優雅な趣味を持つ一方、給料のピンハネだってやる……でも家に帰れば嫁と姑に頭が上がらないカワイイ一面もあるの。会社への不満を持つ社員を闇討ちする社畜の」
    「パクリじゃねえかああああ!!!!」
    「パクってないわよ!! インスパイアよ!!」
    「ふぐァ!!」
     状態異常が溜まり、弱ってきた三上なんてもう目じゃない。キングはオーラを纏った拳でアッパーの連打を叩きこんだ。
     宙を舞い、地面に墜落した三上はいよいよ銃を担ぎ、キングに殴りかかる。
     三上の重い一撃を、峻は真っ向から受け止める。ゆいは小光輪を飛ばし、その傷を塞ぐ。誰かに認められようと必死すぎる男の顔は、全然楽そうに見えなかった。地獄にいる天童は――今、この会社の実態に失望しているだろうか。案外、けらけら笑っているだけの気もする。
    「負けるか……俺は、まだデキる男だ!!」
     灼滅者達のラストスパートに追いつめられた三上は、愚直にも銃を振り上げる。レオンは真っ直ぐに、それに立ち向かった。
    「いいセンスだ。だが、いやだからこそ! 負けるかぁぁ!!」
     咆哮し、武器が振り下ろされる前に、ジェット噴射で『死の中心点』を突く。
    「く……そぉ……」
    「三上、最後にこれ喰うか。お前の誇りだろ」
    「え……」
     峻は、倒れた三上の傍へ割ったパパイヤを転がした。結構高かったぞ、と微笑む彼を、三上は不思議そうに眺める。花火もにっこりと、笑みを浮かべた。
    「三上さん、あなたはご当地怪人じゃないけれどその思いは伝わってきたよ。それで……石焼パパイヤのレシピ……」
    「……悪い。書き残していきたいが……もう時間がねえみたいだ。また作れんのかな……」
     三上はパパイヤを一口齧ると、うまい、と呟き、静かに目を伏せた。
    「ありがとよ。お前らムカつくが、ちょっと楽しかったぜ」
     パパイヤが、掌から転がり落ちた。

     祈り、考える。最後に棒棒鶏は死に、彼はただの洋介に戻れたのだろうかと。抜けるような青空に消えゆく光の粒を、キング達灼滅者は少しだけ淋しそうに、見あげた。
    「来世があるのなら……今度は優良企業に就職できる事を祈」
     そう、パクられたらパクり返す。残念、字数切れだ!!!(斬新な終わり方)

    作者:日暮ひかり 重傷:或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741) 
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月6日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 7/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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