鬼の現れるコンビニ

    作者:光輝心

     深夜とある町のコンビニの駐車場で、見るからにガラの悪そうな少年達がたむろしていた。
     彼等がずっとその場に居座っているために、怖がって他の客が寄りつこうとしない。
     さすがにこのままにしておくわけにはいかないと、店長は意を決して彼等の元へと歩み寄り、
    「申し訳ありません、他のお客様のご迷惑になるので他の場所に移動していただけないでしょうか」
     と、なるべく穏便に事を済ませようと穏やかな口調で話しかけるが……そんな彼をジッと睨みつけつつ、1人の少年がスゥッと立ち上がった。
    「俺に命令すんじゃねぇ」
     頭に黒曜石の角を生やしたその少年は、あからさまに不機嫌そうな表情を浮かべてそう言い放つと、瞬時にして右腕を異形な形に巨大化させ……目にも止まらない速さでそれを振り回し、店長の体を力いっぱいぶん殴った。
     直後店長は勢いよく後方へ吹っ飛ばされた後地面へと強く叩きつけられ、全身の骨という骨が砕かれたショックで意識を失ってしまう。
    「……しらけちまったな。行くぞ」
     そう言ってチッと舌打ちした後、羅刹の少年は仲間達とともにいずこともなく去っていった。
     
    「お集まりいただきありがとうございます。今回もまた、未来予測によってダークネスの行動を察知しました。皆さんにはそのダークネスの灼滅をお願いします」
     そう前置きした後、今回の事件の詳細についてエクスブレインの少女は語りだした。
     今回のターゲットは高校生くらいの少年の姿をした羅刹。
     彼は配下の不良少年たちとともに町をぶらつき、自分に逆らった者、自分が気に食わない者に暴力を加えるのだという。
    「ダークネスは22時頃、コンビニの駐車場に配下の3人の不良少年達と共に現れ、しばらくの間その場所でたむろするみたいです」
     彼等がいる間一般人はほとんどコンビニに寄りつこうとしないらしく、店長が注意しにやってくるのもだいたい24時前後であるとの事。
     つまり22時から24時くらいの間に現場を訪れれば、誰にも邪魔される事なく羅刹達と確実に接触する事ができるだろう。
     駐車場は車が10台前後停まれるほどの広いスペースがあるようだ。
     羅刹は高校生くらいの外見をしており、鬼神変、神薙刃を使用して戦闘を行う。
     また配下の3人の少年達は羅刹から力を与えられており、パンチやキック等の徒手空拳で戦う。彼等はさしたる戦闘力は持ってないようであるが、油断は禁物である。
    「相手は数人とはいえ、ダークネスとその力を与えられた配下達……侮る事はできません。けれど皆さんが力を合わせればきっと勝てるはずです。勝利の報告をお待ちしてますね」


    参加者
    八千穂・魅凛(シャドータレント・d00260)
    藤沢・いすゞ(エルガミオ・d00516)
    風早・真衣(Spreading Wind・d01474)
    樹・瀬護(生命を盾に飛ぶ・d03713)
    真白・優樹(中学生ストリートファイター・d03880)
    山岸・山桜桃(ワケありの魔法少女・d06622)
    阿剛・桜花(戦闘バカなお嬢様・d07132)
    大豪寺・健五郎(出張ご当地ヒーロー・d07204)

    ■リプレイ


     エクスブレインの少女から報せを受けた8人の灼滅者達は、羅刹とその配下の不良少年達を倒すため、彼等が現れるというコンビニを目指し歩を進めていた。
    「敵はダークネス。なら灼滅者としてやることは一つだね」
     驕れる鬼に人の力をみせてやろうと、静かな闘志を燃やす真白・優樹(中学生ストリートファイター・d03880)。
    「深夜のコンビニと言うと、悪の溜まり場のイメージがありますが、今回は正にそれなんですね。行き過ぎた悪は許せないです。必ず懲らしめます!」
     藤沢・いすゞ(エルガミオ・d00516)もまた、正義の炎をメラメラと燃えあがらせながら自らの決意を熱く語る。
     そんな彼女は、補導されたりしないようにとの配慮からか本来の9歳の姿ではなく、エィティーンを使用して18歳の姿となり行動していた。
    「今回の羅刹さんは闇堕ちから救ってあげられないですか……」
     優樹やいすゞとは対照的に、ダークネスを灼滅する事に対し戸惑いを感じている様子の山岸・山桜桃(ワケありの魔法少女・d06622)であったが、
    「……ダークネスとして罪を重ねさせないようにするのも私たちのお仕事なんですよね……そうでしょう?おねーちゃん」
     と、心の中に思い浮かんだ自らの師にあたる人物にそう語りかけ、自らを納得させた。

     ……それから数分後、灼滅者達は無事に目的のコンビニへと到着を果たした。
     情報通り、コンビニの駐車場にはいかにも不良という感じの格好をした少年が4人、気だるそうに腰を降ろしていた。
    「迷惑な奴らだ。これを機会に改めて変わってくれればいいが」
     ため息交じりにぽつり呟きつつ、樹・瀬護(生命を盾に飛ぶ・d03713)はツカツカと4人の元へと詰め寄り、
    「近隣の住民から苦情が出ている。たむろするなら場所を変えてくれ」
     と、彼等に声をかけた。
     すると……1人の少年があからさまに不機嫌そうな表情を浮かべながらスゥッと立ちあがった。
     彼の頭部に生えた黒く輝く黒曜石を見て灼滅者達は確信する。彼こそが今回のメインターゲット、羅刹の不良少年であるのだと。
    「……俺に命令するんじゃねぇ」
     羅刹はそう言い放ちながらギロリと灼滅者を睨みつけ、威圧するものの、
    「あなたたち、居場所が無いから、ここにいる?……かわいそう、ね」
     風早・真衣(Spreading Wind・d01474)は臆するどころか、社会に溶け込む事ができずこんなところで寄り集まっている彼等に対し、同情心さえ抱いているようであった……が、
    「……バカにしてるのか?」
     羅刹にとって、「かわいそう」という言葉は癇に障るものであったらしい。残念ながら、真衣の気持ちは全く通じてはいないようである。
    「やあ角の生えた少年、夜中にコンビニの前にたむろとは、実に羅刹らしく無いな。いや、今の羅刹は皆こんな生活をしているのかい?だとしたら中々にかわいい生活をしているな」
     先程にも増して苛立ちをあらわにする羅刹に対し、八千穂・魅凛(シャドータレント・d00260)はうっすらと笑みを浮かべつつ、更に挑発する言葉をぶつける。
    「フンッ、俺を羅刹だと知って喧嘩を売ってくるとはいい度胸だな」
     自信に満ちた表情を浮かべてそう言い放ちつつ、羅刹がサッと片手を挙げた瞬間、配下の3人の不良少年達も立ちあがり、臨戦態勢を整える。
     まさに一触即発……いつ戦いが始まってもおかしくない状況となった。

     そうして仲間達が羅刹とやりとりを繰り広げている中、近くの電信柱をよじ登っていく阿剛・桜花(戦闘バカなお嬢様・d07132)。
     どうやら彼女はカッコイイ登場シーンを演出するつもりであるらしい。
     そしててっぺんまで上り詰めた彼女が、
    「人様に迷惑をかける羅刹達よ……」
     と、羅刹達に呼びかけようとした……その瞬間、
    「セーフティーアンロック!ご当地パワーへの接続完了!嘆き悲しむご当地の代弁者、大豪寺健五郎がいざ参る!」
     大豪寺・健五郎(出張ご当地ヒーロー・d07204)が威風堂々と名乗りをあげ、バトルオーラを身に纏いながらファイティングポーズをとる。
    「それは私が言いたかったのにっ!?」
     すっかり出番をとられてしまった桜花は涙目になりつつ、渋々電柱から降りて自らのポジションへとつき……そして夜のコンビニの駐車場で、羅刹の少年とその配下達と、8人の灼滅者達との戦いの火蓋が切って落とされたのであった。


    「どこの誰だか知らないが……俺に逆らうなら許さねぇ」
     そう言い放ちながら、羅刹は右腕を異形な形へと巨大化させ、
    「……さっきは舐めた口を聞いてくれたな……食らえ……!」
     魅凛へと狙いを定めた彼は、目にも止まらない速さで右腕を振り回し、彼女の体を力いっぱいぶん殴った。
    「……っ」
     攻撃を食らった瞬間、凄まじい衝撃と痛みが魅凛の全身を駆け巡り、彼女の体力を著しく低下させる。
    「オラァァァ!」
     更に追い打ちをかけるようにして、配下の1人が突進の勢いを利用して魅凛へと殴りかかる……が、マタドールが牛をいなすようにして彼女はその攻撃をヒラリと避け、振り向きざまに影業を使用したカウンター攻撃を繰り出した。無論、少年が死んでしまわないよう手加減しながら。
    「ぐぅぁ……」
     少年はそのまま前のめりに倒れ込み……やがて意識を失った。
    「くそ、てめぇ!!」
    「よくもやってくれたな!!」
     仲間を倒され復讐の炎に燃える少年達であったが、
    「好きに暴れたい?させないよ」
     自信に満ちた笑みを浮かべてそう言い放ちながら、優樹が放出したどす黒い殺気が一瞬にして羅刹とその配下達の体を覆い尽くし、彼等にじわじわとダメージを与え、
    「おいたをする人にはお仕置きですっ!」
     間髪いれず、山桜桃が自らの足元の影を配下の片割れの方へと向けて伸ばし……影は目標の元へと到達した瞬間、彼の体を一瞬にして飲み込んでしまった。
    「う……うああああ……!」
     影に体を覆われた彼はトラウマが発現し、両手で頭を押さえながらガクッと両膝をつき……気絶してしまった。
     そして更に、健五郎は自らのライドキャリバーにフルスロットルで力を溜めるよう指示を出しつつ、最後に残った配下の少年との距離を詰め……深く腰を落とし、勢いよく無敵斬艦刀を振り回して相手の体へと強く叩きつけた。
    「ぐぅぉ……」
     攻撃を食らった直後、配下の少年は苦しげな唸り声をあげながらしばしの間地面を転がりまわっていたが……やがてピクリとも動かなくなった。
     そうして敵の数が減った隙に、真衣は自らの周囲を滞空していたリングスラッシャーを分裂させて小光輪を作りだし、それを魅凛の前方に盾として展開させる事で彼女の体力を回復させ、同時にライドキャリバーのぜんじろうに機銃掃射で羅刹を攻撃させた。

     配下の少年達が全て倒れた今、残る敵はメインターゲットである羅刹ただ1人……ここからが本当の戦いであると言っても過言ではないだろう。
    「大丈夫……大丈夫……落ち着いて……」
     いすゞは自らにそう言い聞かせながらそっと目を瞑り、高ぶった気持ちを落ち着かせ……そして、
    「行くわ!」
     カッと目を見開いた彼女はギターのネックを握りしめ、激しく弦をかき鳴らし、音波攻撃によって羅刹を攻撃していく。
    「チッ……うるせぇな……」
     うっとおしそうにぽつりと呟きつつ、羅刹はいすゞの演奏を力づくでやめさせるべく襲いかかろうとするが、
    「そうはさせませんわよっ!」
     すかさず桜花が両者の間に割って入り、同時に彼女は頭上に掲げたハンマーのロケット噴射機能を発動させ、凄まじい速度でそれを勢いよく振り下ろした。
     さすがの羅刹もまったく反応する事ができず脳天を強打され、ほんの一瞬ではあったが足元がおぼつかない状態となってしまう。
     瀬護はその僅かな隙を見逃さず、瞬時に自らの体にカミの力を降ろし、直後激しく渦巻く風の刃を羅刹の背後から撃ち放ち、彼の背中をズタズタに切り刻むのであった。


    「調子にのるなよ……お前等……!」
     遂に怒りが頂点に達した羅刹は、再び右腕を異形巨大化させ、先程のお返しだと言わんばかりにそれを桜花目がけて振り下ろし……桜花は咄嗟にロケットハンマーでその攻撃を受け止めるものの、耐えきれずその場に片膝をつかされてしまう。
     それでも彼女は羅刹の腕が元に戻った瞬間それを押し返し、
    「あなた達の気合の入っていない攻撃など、全然私には効きませんわっ!」
     と、強気な態度でそう言ってのける。無論、ダークネスの攻撃を食らって無傷でいられるはずはない。だが彼女は自らに注意を向けさせるため、あえて平気なふりをして羅刹を挑発しているのである。
    「フン、強がっていられるのも今のうちだ……」
     桜花の思惑にのせられているとも知らず、彼女に追い打ちをかけるべく三度右腕を異形巨大化させる羅刹。
     だが彼が攻撃を繰り出すよりも早く、魅凛が自らの影から作りだした無数の触手によって羅刹の腕や足を絡めて縛り上げ、桜花への追撃を阻止する。
    「チィッ……」
     うっとおしそうに舌打ちしつつ、まとわりつく影を無理やり振りほどく羅刹であったが……それも束の間、今度はサイキックエナジーで出来た光の剣を握りしめた優樹が、真正面から彼に挑みかかってきた。
    「人里に下りてきた鬼は退治されるのがお約束さ」
     フッと笑みを浮かべてそう言い放った直後、優樹はサイキックソードを構成している光を爆発させた。
    「っ……!?」
     優樹を迎えうとうと身構えていた羅刹であったが、さすがに武器が爆発するのは想定外であったため、もろに直撃を食らってしまう。
     更に間髪いれず、
    「私たちの声が、本当にもうあなたに届かないというのなら……仕方ないです……せめて暗闇から解き放ちましょう……この力で」
     迷いを振り払った山桜桃が赤き瞳でジッと羅刹を見つめつつ、赤きオーラの逆十字を出現させて彼の体を切り裂き、同時に精神を損傷させる。
     続く瀬護は先程同様、相手の背後から神薙刃を撃ちこんで彼の体を切り刻み直後健五郎が無敵斬艦刀による超弩級の威力をもった一撃を繰り出し、追い打ちをかけた。

     そして真衣は、ぜんじろうに引き続き機銃掃射によって羅刹を攻撃し続けるよう指示を出し……ぜんじろうや仲間達が羅刹の注意をひきつけている間に、自らは再度リングスラッシャーから小さな光輪を作りだし、それを今度は桜花の前方へと展開させ、
    「感謝いたしますわ!」
     仲間のサポートのおかげである程度体力を持ち直した桜花は、勇猛果敢に羅刹へと突貫し、彼の懐へと入り込んだ。
    「先程のお返しですわ!!」
     桜花はおもむろに羅刹の体をガシッと掴んで頭上へと持ち上げると、数歩助走をつけながら彼を危険な角度で投げ飛ばし……数秒後、羅刹はアスファルトの地面へと強く叩きつけられた。
    「グ……ゥ……!」
     なんとか立ち上がる羅刹であったが、怒涛の連続攻撃を食らい既に彼の体力は限界に近付いており、足元がおぼつかない状態となっていた。
    「まだ……まだだ……!」
     それでも彼は諦めようとはせず、右腕を異形巨大化させて一矢報いようとするものの、
    「これで終わりです!覚悟!」
     すかさずいすゞがバイオレンスギターをガンガンとかき鳴らし始め、音波攻撃によって羅刹を攻撃する。
    「ぐ……ぐぉぁ…………!」
     満身創痍の羅刹にはもう、いすゞの攻撃に耐えきるだけの体力は残されてはおらず……ギターが鳴りやむのと同時に彼はその場にドサッと崩れ落ち……やがて周囲の景色に同化するようにして、ゆっくりと消滅していったのであった。


    「無事、終ったんですね」
     羅刹が完全に消え去った事を確認し、ようやくホッと胸を撫で下ろしつつ、このコンビニが今よりももっと繁盛すればいいなといすゞは思う。
    「ふむぅ……ん。夜のコンビニというのも、わくわくしますね」
     このコンビニではいったいどんな物を売っているのかと気になる様子の真衣は、ちょっと中を覗いていこうと決め、入口の方へと向かい歩きだし、
    「せっかくですし、アイスでも買っていこうかな」
     山桜桃もまた真衣の後に続き……2人はコンビニの中へと足を踏み入れて行った。

    「ぅ……」
     戦闘が終了してから数分後、配下の少年達は意識を取り戻し、ふらふらと立ち上がる。
     そんな彼等に対し、
    「やあキミ達、キミ達の友達が普通では無かった、だから倒した。力のある者であっても生活するだけなら構わないとは思う、だが横暴は許さない。判ったらこの事は忘れろ、そして去れ」
     そう言い放ちながら魅凛は王者の風を発動して3人を威圧し……羅刹から分け与えられた力を失いただの一般人になり下がった無気力状態となり、彼女に言われるがまま渋々その場から立ち去っていく。
    「それほど力を持て余してるならば、阿剛流魔道格闘術道場に来なさいっ!まずは精神からガッツリ鍛え直してあげますわ!」
     去りゆく少年達に対し、そう言葉を投げかける桜花。
     彼女は彼女なりに、少年達の将来を心配しているのかもしれない。
     何はともあれ、羅刹は無事灼滅者達によって退治され、それに従っていた不良少年達もまたいなくなり……コンビニに平穏な時が取り戻されたのであった。

    作者:光輝心 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2012年10月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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