2月14日は、バレンタインデー。
その日が刻一刻と近付いた武蔵坂学園も、バレンタインの準備で大忙し!
そして、この空き教室でも、チョコレートの準備の話題で盛り上がっている様子だった。
●手作りトリュフチョコレートを作ろう!
「さて、ここに一枚のチラシがある」
と、ワタル・ブレイド(中学生魔法使い・dn0008)が見せたチラシには「調理室で手作りトリュフチョコレートを作ろう!」と書かれている。
「チラシによると、トリュフチョコを作る大抵の材料は揃っているが、豪華なモノや高級食材とかは、各自で持ち寄るようにって書いてあるな」
トリュフチョコレートの作り方を、とっても大雑把に言うと……。
刻んだチョコと温めた生クリームをクリーム状になるまで混ぜて、さっと冷やし、さっと団子状に丸めて、フォーク等でコロコロ転がしてコーティング。
仕上げにココアやトッピングで表面に化粧を施せば、ふんわり蕩けるトリュフチョコレートが完成! ……のはずッ!!
「まあ、詳しい作り方は料理が得意な者に聞いてくれ、オレも人並み程度の腕前だからな」
どうやらワタルも、教えて貰う気満々な様子でして。
ついでに言うと、多少多く作って、最後にみんなで摘み食い……もとい、試食会のようなものがあれば、もっと楽しくなるだろう。
「味見……コホン、試食会の紅茶や飲み物等は、わたくしが御用意致しますね」
「おう、宜しく頼むぜ」
穏やかに瞳を細めつつ、裏方役を買って出た里中・清政(高校生エクスブレイン・dn0122)の意気込みに、ワタルも嬉々と頷いて応える。
「オレみたいな育ち盛りの中学生は、甘いモノには目がないからな、自分用のご褒美だ」
初心者や料理が苦手な学生のため、初心者用のレシピも用意してあるという。
けれど、誰かに教えて貰った方が、より上手に、そして楽しく作ることが出来るだろう。
「直接教えて貰った方が、失敗する確率も減るだろうし、いい想い出になると思うぜ?」
ワタルは笑みを深めると、集まった1人1人の顔を見回す。
清政も微笑を浮かべたまま、強く同意するように、頷いて――。
「縁の欠片も無しと諦めた方も、皆で作って喰らえば、きっと楽しゅうございますッ!」
「ソレ、フォローって言っていいのか……?」
もちろん参加は自由、1人でも気軽にどうぞ!
想いを込めて、もしくは日頃のご褒美に作るトリュフチョコレート、貴方もいかが?
●真心込めて
調理室に集まった学生達を、甘い香りが包み込んでいく。
こうして皆で集まってチョコレートを作るのも、この時期ならではの光景だろう……。
(「あげるつもりの人に手伝いお願いするって、ビミョウかなあ」)
……まあいいや、キニシナイ。
何時もは食べる専門の郁にとっては、凄いチャレンジに等しくて。
修太郎の視線に緊張しながらも、郁は初心者用のレシピを何度も読み返す。
「まずはチョコを刻むとこからかな」
チャラい見た目に反して修太郎は郁が必要そうなものを、すぐに手渡していく。
郁が手際よく作業できるよう、端から片付けていくことも忘れない。
「ちょっとは知ってるよ? チョコは直火にかけない!」
簡単って言える賢汰を頼もしく思いながらも、茉莉は元気良く答えてみせて。
「それに、チョコは溶けにくいから刻んだ方がいいって聞いたの」
それでも、作り方は終始賢汰にお任せなのは、変わらない様子。
慎重にチョコを刻む茉莉を見守りながら、賢汰は手際良くアーモンドを用意する。
霊犬のろろも尻尾を振って、2人を応援していた。
「あー……瑠璃花、切るのはオレがやるから、チョコを溶かしてくれるかー?」
「えいや!! あ、りょうかいですっ」
苺の板チョコを細かく砕いていた翔は、親の敵を見るような眼で果物ナイフを握り、手をぷるぷる震わせていた瑠璃花に気付く。
勢い良く苺のヘタを切ろうとする瑠璃花に危険を感じた翔はナイフを没収、湯せんに専念するように促した。
「盛大にお手製義理チョコを作るのよ、義理チョコにだって気合入れないと」
誰かに食べて貰うのが密かな楽しみだと言う、三樹だけど……。
チョコに直接お湯を注いで溶かしていますけど、大丈夫?!
「あっ じかにあっためちゃだめなんだっけ」
「湯せんとかもちゃんと意味があって、上手く美味しく作る方法って事なんだろうな」
湯せんの準備を始めた郁に修太郎が「レンジでやってもいい気もするけど」と呟く。
「作り方考えた人はすごいね」
湯せんもだけど、カカオをチョコレートにした人が、偉大に思えてきて。
普段が大雑把でいい加減な分、郁は慎重にゆっくりチョコを溶かしていく——。
「生クリームを入れて、ゆっくりかき混ぜやがりください」
「うん、ありがと」
サファイアに材料と調理器具一式を手際良く準備して貰ったホワイトは、湯せんの終わりに差し掛かっていて。
「溶けたからここでクリームを入れると……」
瞬間、沸とう寸前でサファイアが火を切り、さっと一振りブランデーを振りかける。
ホワイトがこの後どうするのか聞くと、響くように少し冷やすと返ってきた。
「ソレ、少し変わってるな」
ふと足を止めたワタル・ブレイド(中学生魔法使い・dn0008)に、ゆまが微笑んで。
「ふふ、以前話題に上ったので、小豆がらみのものを作ってみようって」
——いつもお世話になっている、大切なお友達のために。
ワタルに返事を返したゆまが心を籠めて作るトリュフは、小豆のもの。
「これを食べて、少しは疲れを癒してもらえたら」
リキュールが仄かに香るチョコに、ゆまはゆであずきを浸していく——。
「洋菓子作りはあまり経験がないが……」
遊び心全開で菓子作りを楽しんでいたのは、【あおぞら空想部】の仲間達。
作楽は黄粉と抹茶の和風トリュフを作ろうと、チョコを丁寧に刻んでいく。
「だが、普通に作っただけでは面白くない!」
屋台キングを自称する銀都が用意したのは、なんとたこ焼きプレート!
型にホワイトチョコを流し込むと、固まった所にイチゴジャムをリズムよく乗せ始めた。
「ちょっと多めがいいかなー……」
「わ、わ、センパイちょっと入れ過ぎだよ?」
お菓子作りにとって分量は命です!
蓮と材料を計っていた結奈は急いで余分な分を擦り切ると、ほっと胸をなで下ろす。
「刃物の扱いなら任せろー」
丁寧は俺の辞書にあらず。武はキャベツの千切りが如く、チョコを刻んでいて。
温めた生クリームに入れると取り憑かれたように一心不乱に混ぜ……何を作る気だ!
「えーと、ガナッシュつくる……んですよね??」
一心不乱な武に、蓮の思考が停止しかけた時だった。
二つに分けた生クリームの一つに黄粉とアーモンドを、もう一つには抹茶を振り分けていた作楽に視線が留まったのは。
「2人とも頑張っているな、よかったら味を見てくれないか?」
物欲しげな視線を感じた作楽が匙で一掬いすると、蓮のボウルを押さえていた結奈もウットリ見つめていて。
「料理人として、ちょっと気合を入れないといけないよね」
作楽の手際に統弥は僅かに瞳を細め、イチゴパウダーとバナナパウダーを取り出す。
ベースはシンプルでも、パウダー1つで味わいは無限に広がっていく——。
「えっと、こんな感じかしら?」
折角の機会、皆で楽しんで作っていたのは【万華境】の仲間達。
食べたことはあっても作るのが初めてのリディアは材料分のチョコを溶かすと、物憂げな瞳で周囲を見回した。
「私もトリュフは作ったことありませんけど、楽しいですね」
砕いたチョコクッキーをチョコに混ぜていたカティアは、何処かワクワクしていて。
「お菓子作りは得意は方だから、腕には少し自信があるよ!」
……と、お菓子好きな架乃は無理せず、シンプルなものを作っている様子。
混ぜる時もムラにならないように手早く、何気にスピード勝負なのが、菓子作りだ。
「えっと、ここはこんな感じに作って行けばいいのかな」
「多少不恰好になっても、気持ちがこもっていれば大丈夫だよ!」
お手本通りに作れば、失敗することはない、けれど……。
皆と楽しみを分かち合うように藍蘭が声を掛けると、すぐに架乃の声が飛んで来た。
「分からない人がいたら、手を挙げて下さいね」
羽月が見回せば、恋人同士で作っている学生も、見受けられて。
(「何時かは私も、そういう相手に作るのかなぁ」)
特別に渡す相手が居る人は、思い入れも強いのだろうか……。
そう、ぼんやり思いながら、羽月は冷蔵庫にチョコを寝かせたのだった。
●想いを込めて
冷蔵庫からチョコを取り出した学生達は、手早く団子状に丸めていく。
初心者には「お菓子作りは得意だから」と、ゆまが一緒に手伝ってくれた。
「もーちょっと気合入れて作ってみようかな」
——今年、正式に彼氏になった人のためにも。
始めはシンプルなものを沢山作っていたリコも、教えて貰いながらグミを入れてみたり、ドライフルーツを刻んだものを混ぜていく。
「こうしたら苺も一緒に食べれるからなー。取り敢えず詰め込んじゃえ!」
翔がスプーンで掬ったチョコに切った苺を中に入れると、瑠璃花が少し手こずりながらも丸めていき……。
「やったー! 1個できたですー!」
出来上がったトリュフは歪な形だったけれど、本人は至って満足そう。
「後で試食あるし、一緒に食べようなー!」
「はい! 一緒に食べるの楽しみです!」
「こう見えても人並みには、料理できるんです」
カティアは冷やして丸めたチョコをフォークで転がしながら、コーティングしていく。
傍らには、トッピング用のココアパウダーと粉砂糖も、用意してあった。
「丸める時も、ずっと持ってると、体温で溶けてしまうからね!」
仲間を手伝いながらも、架乃は自身のチョコに、ココアパウダーを振りかける。
「ん……、なかなかコツが必要なチョコレートね」
リディアも【万華境】の仲間に教えて貰いながら、少しづつ完成に近付けていて。
一緒に手伝っていた羽月も、自分のトリュフを手早く仕上げていく。
ミルク味はホワイトチョコで、ホワイトはミルクで、コーティング。
食べた時、ほんのちょっぴり驚くように——。
「皆、どこか作り方が分からない所とか無いかな?」
少し慣れて来た藍蘭も、最後の仕上げを楽しんでいて。
仲間と教え合い、楽しみながら至高の一粒を完成させたのだった。
「栗のイガっぽい奴、どれがえぇやろ?」
「種類ごとに分けて全部試してみるのは如何でしょう?」
清政のアドバイスを受けながら、悟は栗風トリュフに仕上げを施していく。
器用に丸めたチョコにココナツロングをまぶせば、イガ付き栗トリュフの完成!
「さて、俺も頑張りますか」
頑張っている悟をこっそり眺めていた想希は、少し目を伏せて笑って。
少しだけ洋酒を効かせた、ミルクと抹茶苺のトリュフ。
皆が喜んでくれるように、願いながら——。
「んー、種類ごとにパウダー変えちゃうかなー」
慣れてきたリコも、異なる素材を入れたトリュフに、パウダーを振り掛けていく。
外見は同じに見えても、少し変えるだけで、楽しさは無限大!
「静穂ちゃん、これどうかな?」
生クリームとイチゴジャムを包んだ、ジヴェアのホワイトチョコトリュフに、料理がからっきしの静穂は、瞳を輝かせていて。
カラフルチョコやアラザンなどで彩りを施され、ジヴェアに味見を勧められた静穂は、嬉しそうに口に運ぶ。
「うん、美味しいです! やっぱり手作りってまた違う味わいがありますね!」
チョコが大好きな静穂は、メモしていた手を思わず止めてしまう。
後で恋人にも作れるよう、しっかり味を覚えるように、口の中で溶かして……。
「あ、ジヴェアさんもどうぞ。はい、あーん」
お返しに、ジヴェアにもお裾分けをしようとした時だった。
何か視線のようなものを感じた静穂は、不思議そうに周囲を見回した。
「……やっぱり、今もトリュフチョコ、好きなんだな」
楽しそうにジヴェアと一緒に作る静穂に視線を留め、利恵はつい微笑んでしまう。
けれどそれも一瞬、すぐにレシピが書かれた本に視線を戻す。
「……いけない、集中しないと」
昔は手作りはせず、ただ高い物を買って家族に与えていた、ある記憶を思い出しながら、利恵も丁寧に仕上げていく。
「これぐらい変化をつければ大丈夫でしょうか……?」
去年は精密な球形のチョコを作り上げたエルは、今年は雇い主の言葉通りに形を作り上げていて。
しかし、出来上がったのは楕円形やひょうたん型、2つトリュフを重ねて雪だるま型などなど、どれも左右対称だけど精密な形のもの。
「こいつを特大サイズで作るザンス。ふふふ、驚く顔が目に浮かぶわ」
試食会用に沢山作っておこう。
三樹がココアパウダーの上に転がしていたのは、一口で済まない巨大トリュフだった。
「あとは一つにココアでもかけて……完成でやがりますね」
「これで大丈夫かな?」
サファイアに好きに丸めていいと言われたので、色々やってみた結果……。
ホワイトのトリュフは大きさがまばらで歪なものが多く、ふと思いにふけてしまう。
「形はどうあれ、ちゃんと作ったって方が重要でやがりますよ」
サファイアの言葉に、ホワイトは何処かほっとしたように頷く。
もうすぐ試食会が始まるのだろう、調理中とはまた違う賑わいが溢れ始めていた。
「フ、上出来だ」
ドヤ顔の武が【あおぞら空想部】に披露したのは、何とも愛らしい雪だるまトリュフ!
仕上げに白ココアパウダーを振り掛けると、今までの工程が嘘のように、大変身♪
「……わ、わたしにもできました!」
ビターとストロベリーのトリュフの出来栄えに、結奈の瞳は感動で満ち溢れていて。
皆と一緒に作ったトリュフ、その味わいもきっと格別に違いない!
「ありがとうって、書きましょうか」
完成したトリュフに蓮は結奈と共に、チョコペンで彩りを添えていく。
ついでに武の真似をして、雪ウサギを作ることも忘れていない。
「みんなで楽しみながら作るのが一番だよね」
——そう、遊び心は大事である。
少しだけ味見をし、満足そうに頷いた統弥は、さりげなく唐辛子パウダーを取り出す。
その様子に作楽が首を傾げたのも束の間、丸め粉を塗して完成に持ち込んだ。
「名づけて『銀さん特製、たこ焼き風トリュフ』だ!」
銀都は型から出したチョコに、チョコクリームを乗せていく。
タコをジャムに、チョコクリームをソースに見立てた銀都のトリュフに、一際大きな歓声が沸いたのだった。
「いつから! 浮気やないで!」
「え、いや最初から……」
ふと眼と眼が合った悟と想希の顔が赤く染まっていき、すぐに笑みが洩れて。
「ついでやから味見してや」
何かを呟いた想希の口に悟がトリュフを運ぶと、想希の頬が幸せそうに蕩ける。
「俺のも味見して?」
甘くてほろ苦いお返しの味わいに悟は眼を瞬き、プロは違うと口を尖らせて。
それは大切な人からのお墨付き。想希の口元も柔らかく緩んでいく——。
●手作りに込められた想い
調理台と机いっぱいに広げられたトリュフは、キラキラと輝く宝石のよう。
腕を掛けたトリュフを持ち寄った【花園】は、互いに食べ比べを楽しんでいて。
「如何です? 皆さん」
基礎を重視した詩音のトリュフはシンプルだけど、女子としては拘りたいもの。
失敗はしていないので、無難に美味しく出来ている筈!
「詩音さんの美味しいです♪」
出来栄えには自信があったりんごも、詩音のトリュフに自然と頬が蕩けてしまう。
もちろんお返しのお裾分けも忘れず、りんごは手ずから「あーん」と食べさせていく。
「おぉ……セカイさんの、コセイっぽい!!」
「ふふっ、悠花さんのも、とても美味しいです」
セカイのはマシュマロをコーディングしてチョコペンで仕上げた、動物トリュフ。
犬の顔が描かれたチョコを迷わず手にした悠花に、セカイは柔らかく微笑んで。
「セカイのは形も凝ってて……素敵ねぇ」
皆のトリュフを1つずつ摘んでいたタシュラフェルも、美味しそうに舌鼓を打つ。
「……わたくし、色々用意してまいりましたの」
一通り、皆で食べ比べを堪能した時だった。
彩がちょっとしたアクセントをと、色とりどりのソースを並べたのは。
「ディップもいいですね、いただきます」
紅茶で口直ししたりんごは、トリュフをヨーグルトソースにつけていく。
悠花も自作のトリュフをラズベリーソースをつけると、りんごの口元にお裾分け♪
「あ、りんごに悠花、良かったら私とも……♪」
食べさせ合いの構えでいたタシュラフェルも混ざり、お裾分けの輪は広がっていく。
「むむむ、流石ですね」
タシュラフェルの甘味強めなのトリュフを口にした詩音も、これは負けられないと味比べに力が入る。
甘党のセカイの瞳も味わいを楽しむように、輝いていたという。
「まさか全生徒宛に本命チョコが来るとはね」
先日に来訪した、ラブリンスターの話を持ち出したアンカーは、紅茶を口に運ぶ。
清政が淹れた紅茶を飲みながら、物欲しげな視線を女の子達に投げていた時だった。
「ワタル様、私もチョコを製作致しました。お一ついかがでしょうか?」
「お、頂くぜ」
エルのトリュフは何れも妙な形をしていたけど、精密な味わいにワタルは舌鼓を打つ。
だが、その幸福は恨めしそうに見ていたアンカーに、突如破られた。
「ワタル君、この独身貴族と一緒に食べよう」
「コレはオーレーのーだ!」
ガッシリ肩を掴まれたワタルが悲鳴を上げた、同時刻——。
「わたくしには、勿体なく……」
悟と想希から味見を頼まれた清政は、普段の冷静さと打って変わって動揺していて。
清政にとって灼滅者は皆本命、意中の相手から貰うなんて、本当に恐れ多いのだろう。
けれど、それを面白可笑——否、放っておく学生達ではない!
「友チョコって習慣もあるんだ、なら問題ない!」
清政からトリュフに合うお薦めの珈琲を教えて貰っていた周も、試食は全力で楽しむものだと援護射撃!
御礼を兼ねて、作ったトリュフを清政に手渡そうと、伊達眼鏡の奥を光らせた。
「それとも、アタシに送りたいと思ってる相手がいるとでも……?」
「……失礼致しました」
にっこり微笑む周、清政は二つ返事で恭しく受け取ったのでした。
「皆さんは誰にあげるんです?」
女の子集団だからこそ、チョコをあげる相手が気になるもの。
自分のは友チョコなので【花園】の皆に配ると言うりんごに、彩が最初に口を開いた。
「私もやっぱりクラブのみなさんかしら」
「そうですね。親友や……いつもお世話になっている方へ、でしょうか?」
仲間に入れて貰ったばかりだからこそ、これからもっともっと仲良くなりたい。
そう、言葉を零した彩にセカイが頷き、詩音とタシュラフェルも顔を見合わせる。
「特に予定も無かったんですが……お世話になってるクラブの方々には御裾分けしようかと」
「私? 私もお友達の皆に配るつもりよ……皆大好きだもの」
——同じですわね。
和やかに微笑むりんごに、彩とセカイは口元を緩め、詩音も笑みを深めて。
私自身を味わって欲しいくらいだとタシュラフェルが言葉を続けると、悠花が……ん?
誤摩化すように紅茶を口にしていた悠花に、5人の視線が集まった。
「さーて、誰でしょー? コセイは確実ですけどねー」
悠花の傍では霊犬のコセイが静かに尻尾を振っていて。
調理台と机いっぱいに埋め尽くされた一粒一粒に込められたのは、確かな想い。
それを囲むように、和やかな笑みが広がり、甘い香りと共に包み込んでいく——。
作者:御剣鋼 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年2月13日
難度:簡単
参加:36人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 5
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