猛る竜は疾く駆ける

    作者:天木一

     白く化粧された山を深く入った場所。
     そこだけは緑が一面を覆っている。その中央にあるのは湯気の出る水。ボコボコと煮立つほどの湯が溢れ、大きな温泉を作っている。その源泉が周囲の温度を上げていた。
     その湯に浸かるのは鹿や猪といった動物達。気持ち良さそうに目を細める中、その湯の中から巨大な影が現われる。
    「グルルルル……」
     それは巨大な恐竜だった。恐竜も他の動物達と同じように湯船を味わい、まどろんでいた。
    「グルァ!?」
     だがその平穏な空気が突然破られる。何かを聞きつけたように恐竜が周囲を見渡し、湯船から上がるとそのまま何処かに駆け出す。
     他の動物達はそれを恐れるように散り散りに駆け出した。
    「グルルルルォォッ!」
     猛々しい声と共に恐竜が去ると、その場は寒々しい静寂に包まれた。
     
    「竜種イフリートについて新しい情報が上がったんだよ」
     教室に集まった灼滅者に能登・誠一郎(高校生エクスブレイン・dn0103)がそう告げる。
    「どうやら京都の朱雀門高校が竜種を戦力として集めようとしてるみたいでね」
     鴻上・廉也(小学生・d29780)からの報告で判明した新しい事態だ。
    「その話がこの間みんなに竜種化を止めてもらったディップという名前のイフリートからも伝わっていてね。そして今回は協力してくれるそうだよ」
     先の戦いで竜種イフリートと成る事に疑問を持ったそのイフリートは、竜種の行動を止める為なら灼滅者を手伝ってくれるという。
    「だからみんなにはイフリートと協力して、竜種を倒してもらいたいんだよ」
     ダークネスとの共闘にそれぞれ複雑な表情を浮かべながらも、灼滅者は頷く。
    「竜種イフリートは山を降りる道中でもう1体と合流するみたいでね。山から出てくる頃には2体になっているよ」
     2体の竜種は強力だが、こちらもイフリートと共闘できるので、戦力は互角といったところだ。
    「何処に向かっているかは分からないけど、麓の町を通過するのは確かなんだ。だからその前に接触して止めてほしいんだよ」
     町を通り抜けるだけとはいえ、恐竜が現われて邪魔な建物や人を蹴散らしてしまう。そうなれば甚大な被害が出るだろう。
    「共闘するイフリートのディップは、単純であまり賢くはないけれど、簡単な言葉ならちゃんと理解できるから問題なく協力できるはずだよ」
     先の戦いで灼滅者に一目置いているので、指示には従おうとするだろう。
    「敵は野生的で思考力は落ちてるんだ。戦力は同じでも、作戦を立てられるのがこちらの強みだよ」
     ディップと上手く共闘すれば、2体の竜種イフリートを倒す事も可能だ。
    「上手くすれば、イフリートのディップと友好関係を結べるかもしれないね。戦わなくて済むならそれに越した事はないからね。戦場で共に戦えば戦友っていうし、今回の事件で少しでも交流が深まるのを願ってるよ」
     見送る誠一郎に別れを告げ、灼滅者は各々の気持ちを胸に竜種の現われる場所へ向かった。


    参加者
    龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)
    ギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)
    伐龍院・黎嚇(ドラゴンスレイヤー・d01695)
    時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753)
    梅澤・大文字(枷鎖の番長・d02284)
    嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)
    上里・桃(人らしくなりたい狼・d30693)

    ■リプレイ

    ●共闘
     山の麓に灼滅者が辿り着くと、一匹の小柄な羊が出迎えるように立っていた。
    「久しぶり、という程でもないけど元気そうだな!」
    「メェッ」
     時渡・竜雅(ドラゴンブレス・d01753)が手を挙げると、見知った顔にディップも元気に角を振った。
    「ディップさん、今日はよろしくお願いします」
    「ヨロシ、ク」
     龍海・光理(きんいろこねこ・d00500)がお辞儀すると、ディップも真似を頭を下げる。すると角が地面に突き刺さり、慌てて顔を上げる。
    「ディップくん、ちはっす。くー、もふもふっすね」
     挨拶がてらにギィ・ラフィット(カラブラン・d01039)が羊の体を撫でる。
    「ベェ~」
     するとディップは気持ち良さそうに声を出した。
    「チッ、竜種もディップとやらもおれにとっちゃ同じなんだがなァ!」
     梅澤・大文字(枷鎖の番長・d02284)は複雑な表情で羊を見ると、頭を一つ振って声をかける。
    「足引っ張んなよ? おれとしちゃブチ殺すのぁ竜種だろうがテメェだろうが構やしねぇんだからなァ……!」
    「ベエェッ! オレ強イ。今日ノ戦イデ、見セテヤル!」
    「獣と共闘かぁ……ま、慈眼衆よか親近感湧くわな」
     頭の後ろで手を組んでいた嶋田・絹代(どうでもいい謎・d14475)が前に出て手を差し出す。
    「まあ、よろしくっすよ」
    「ベェェー」
     よろしくとディップも片足を上げてちょこんと手に合わせた。
    「おお! お手もできるっすね!」
    「オ、オ手違ウ、握手」
     ディップは首を振って違うと言うと、絹代はからかうようにおかわりと反対の手も出した。
    「そこまでです。来たようですよ」
     伐龍院・黎嚇(ドラゴンスレイヤー・d01695)の視線の先には邪魔な草木を薙ぎ倒して向かって来る2匹の竜の姿があった。
    「……素晴らしいな」
     ぽつりと言葉を漏らす黎嚇は、口元に笑みを浮かべて心躍らせていた。
    「共闘とはいえ、強敵ダークネス2体を8人で相手取るだなんて。灼滅者の成長を感じるね……なんて、わたしは転入してまだ一年ちょっとだけど!」
     セトラスフィーノ・イアハート(夢想抄・d23371)は竜種との戦いを前に高揚したまま軽口を叩いた。
    「ディップくんは、四足竜の足止めをよろしくっす。堅頭竜っぽい二足竜を早く灼滅して、そちらに合流するっすよ」
     ギィはそう告げると、仲間と共に2足の恐竜の方へと向かう。
    「ディップさんはわたしたちと一緒に四足の竜を止めましょう」
     上里・桃(人らしくなりたい狼・d30693)が四つ足の大きい恐竜を指差してディップに話しかけた。
    「9人バラバラで戦うより、皆で作戦決めて戦ったほうが強いんですよ」
    「ワカッタ。コノ間ノ戦イデ、オ前ラ強イ、知ッタ。ソレ今日学ブ」
     ディップは頷くと、炎を纏い恐竜に対して闘志を燃やす。

    ●二頭の恐竜
    「ギギィオオッ!」
     二足の足の速い竜が先に突っ込んで来た。固そうな頭を前にして灼滅者に突進する。
    「オラ! こいやァ!」
     正面に立つ大文字がその頭に向かって前蹴りを放つ。下駄と頭がぶつかり、足に車がぶつかったような衝撃が走る。
    「らああああッ!」
     それでも大文字は蹴り押し、自身の体が後ろに吹き飛ばされながらも、恐竜の勢いを弱めた。そこへ銀髪金眼に変化したセトラスフィーノが割り込み、盾で受け止め足を止めた。
    「――半年振りだね、竜種(ドラゴン)! あの時とは違うわたしを、鋭さを増したエソカニルの斬れ味を、教えてあげる!」
     盾で押し返すと、横手から光理が漆黒の十字剣を振り下ろした。刃が頭に当たり、ガンッと刃が弾かれた。
    「ギィオッ」
    「頭は硬いみたいですね」
     鉄を叩いたような感触に、光理は手を痺れさせながら距離を取る。それを追おうと恐竜は屈んで足に力を溜めた。
    「殲具解放」
     そこへギィは背丈ほどもある巨大な刀を振り上げる。同時に恐竜は地を蹴った。
    「まずはこいつを仕留めるっす」
     大上段から振り下ろす一撃に、恐竜はバランスを崩して地面に頭から突っ込んだ。
    「ギィィオッ」
     そのまま尻尾を振り回す。
    「龍殺しの伐龍院、その名を知らしめる為に。貴様等の肉体、魂魄、その全てをこの刃で征伐し解体してやろう」
     黎嚇は光で顔を照らして視界を失う。狙いを外れた尻尾は空を切った。その隙に白き剣を閃かせ竜の胴を薙ぐ。
    「その石頭をカチ割ってやるぜ!」
     跳躍した竜雅が大きな剣を振り下ろす。刃が頭部に当たり硬い感触が手に伝わる。体重を乗せて押し込み顔を地面に叩きつけ、頭部には僅かだが切れ目が入っていた。
    「グォオオオッ」
     戦場に太く大きな声が響く。四つ足の大きな恐竜が地響きと共に近づいてくる。
    「さあ行くっすよ!」
    「任セロ!」
     絹代とディップが並んで迎え撃つ。
    「オオオォォ!」
     正面に立つ絹代が両腕を伸ばして受け止めるが、恐竜が顔を上に振ると体が宙に飛ばされる。だがその軌道は途中で停止した。手には赤いスカーフの端が握られ、恐竜の体に巻きついていた。
    「ベェッ!」
     そこへディップが突進してぶつかり、押し合う両者の力が拮抗して足が止まった。
    「グオッ!」
     恐竜が炎を口から噴出し周囲を薙ぎ払う。だが炎を弱めるように穏やかな風が吹いた。
    「怪我をしてもわたしが治療しますから、安心して戦ってください」
     桃がかざす剣から風が吹き抜ける。
     少々の火傷などものともせずに絹代とディップが恐竜の巨体に立ち向かう。
     2人と1匹が四つ足の気を引いている内に、他の灼滅者が二つ足への攻撃を続ける。
    「ここはどうですか」
     光理が剣を脇腹に突き立てる。刃が皮膚を破り肉を抉ると、血と炎が溢れ出る。
    「どうやら硬いのは頭だけのようですね」
    「ギャォッ」
     恐竜が反撃に飛び掛かる。
    「させるかよッ!」
     大文字が割り込み、押し潰そうとする足を右腕に嵌めた縛霊手で受け止めた。圧し掛かる重圧に歯を食いしばって耐える。
    「……いつまで乗ってやがる!」
    「ギョァッ」
     腕を振るい恐竜を投げ捨てると、地面を転がる。
    「竜種がいかに強力でも、1体でこの数の差は覆せないっす」
     そこへギィが炎を纏った大刀を薙ぎ払う。刃が恐竜の小さな前足を斬り飛ばした。
    「ギォッ!!」
     恐竜が頭を下げて突進して鈍い音をさせながらギィを吹き飛ばし、更に速度を上げる。
    「弱き者の盾となり、邪悪を斬り裂く剣となり、世界を照らす光となる」
     黎嚇が言葉を紡ぐとギィに光が降り注ぎ、折れた骨を繋げた。
    「好きに走らせはしない!」
     セトラスフィーノは大剣斧を振り下ろし、恐竜の足に食い込ませた。衝撃にバランスを崩してたたらを踏んで止まる。
    「燃え尽きろ、俺の一撃必殺!」
     踏み込んだ竜雅が地面に叩きつけるように炎を宿す剣を振り下ろし、恐竜の体に赤い線を走らせると、剣の握りを変えて力を込めると斬り上げる。地面を抉り土を巻き上げながら刃は股から腹まで深く抉った。
    「ギャォッ」
     悲鳴を上げ、恐竜は頭突きで竜雅を吹き飛ばす。
    「お返しっす!」
     駆け戻ったギィが頭上から黒いオーラを纏った大刀を叩き込む。刃が傷ついていた頭部を割り傷口から生命力を吸い上げると、恐竜は動きを鈍らせゆっくりと崩れ落ちた。

    ●強さ
    「グォォオッ」
    「図体だけはデカイっす!」
     突っ込んでくる恐竜に絹代が赤いスカーフをはためかせ、闘牛のように躱しながら殴りつける。だが竜は止まらずにもう一度向かって来る。
    「ベェエッ!」
     そこに横から突進したディップが脇腹に角を突き刺す。しかしそれでも竜はディップを引きずるように走り続ける。
    「グオアッ!」
     大きく口を開けて炎を吐き出すと絹代は横に跳んで避ける。そこへ向けて方向転換した恐竜が目前に迫った。
    「サポートします!」
     桃が白い帯を腕のように形成して伸ばすと、手を広げた布が絹代を包み硬化して鎧と化す。
    「助かるっす!」
     絹代はスカーフを盾にして受け止めようと踏ん張る。大きな角にスカーフは弾かれ白い布の鎧は突き破られる。だが2重の防御のお陰で僅かな間が出来た。身を逸らし角を避けるが頭に当たって吹き飛ぶ。
    「グオッ!」
     恐竜は体を木に擦りつけてディップを振り落とし、尻尾で払おうとする。
    「1人で無理なら2人で、それでもダメなら3人でやればいいんです!」
     桃は伸ばした布の腕で尻尾を受け止める。布は千切れたがディップは距離を取って逃れていた。
    「ベェェー!」
     炎の柱が恐竜の前に巻き起こる。炎に炙られた恐竜は目標を見失い周囲の全てを潰そうと尻尾を振り回していると、その顔に飛び蹴りが浴びせられた。
    「お待たせしました」
     着地した光理が振り返る。
    「グォオオ!」
     新たな敵を見つけた竜が駆け出すと、その前に大文字が立ち塞がった。
    「次はテメェだ、覚悟しろやァ!」
     突進してくる恐竜の角をオーラを纏った手で掴む。重機のような圧力に押され下駄が地面を削る。両腕の筋肉を盛り上がらせ、角を持ち上げて顔を上向かせた。
    「お待たせしたっすね。これからは手伝うっす。皆で一気に潰しやしょう」
    「ベエー!」
     ギィがディップと駆け出し、大刀に炎を纏わせて振り抜く。その一撃を恐竜は角で受け止める。だがその隙にディップが突進して胸元に角を突き入れた。
    「オオォォッ!」
     恐竜が咆哮して衝撃波を放つ。ギィとディップを吹き飛ばし、踏み殺そうと足を上げる。
    「キミにもエソカニルの斬れ味を味わわせてあげる!」
     セトラスフィーノは木を切り倒すようにスイングした大剣斧を足に叩き付ける。硬い鱗が裂けて竜はバランスを崩しながらもセトラスフィーノの方へ突っ込んできた。
    「俺と力比べだ!」
     割り込んだ竜雅がその巨体を剣で受け止める。踏みしめる足が地面に食い込む。
    「全力でいくぜ!」
     髪を逆立て全身の力を振り絞り、恐竜の体を押し返した。
    「さあ次は貴様だ。その身をもって知るがいい、龍殺しの異名の意味を」
     黒き剣を手に黎嚇が踏み込むと、刃を恐竜の鱗の隙間へと奔らせる。刀身は鋭く足の付け根に刺さり、引き抜きながら傷口を拡げて斬り裂く。
    「グルォオオ!」
     痛みに恐竜が暴れまわる。周辺全てを薙ぎ払おうと爪を振るい尻尾で払う。
    「滅茶苦茶っすね。ご近所迷惑っすよ、ご近所なんて誰も居ないっすけど」
     絹代が迫る前足にスカーフを引っ掛けて引っ張る。だが力任せに振り回されて木に叩きつけられた。
    「大丈夫ですか!」
     桃がすぐさま白い布で傷を覆い塞ぐ。
    「大丈夫っす」
     絹代はそれでも手を離さずにスカーフを木に巻きつけ、恐竜の動きを止めた。
    「好機ですね」
     光理が白銀の杖に蒼い輝きを宿し、恐竜の頭を殴りつける。
    「畳み掛けるっすよ」
     続けて懐に飛び込んだギィが大刀を腹に斬りつけた。
    「グォアアァ」
     恐竜は力を込めて前足を縛るスカーフを引っ張り、繋がっている木を薙ぎ倒す。
    「大人しく……繋がれてろォ!」
     大文字は倒れる木を抱え、恐竜と反対方向へ思い切り投げ捨てた。スカーフが限界まで伸び、勢いよく引っ張られた恐竜はつんのめって腹を地面につけた。
    「竜種よ、その魂に刻みつけて神の身許へと逝くがいい。我が名、龍殺しの伐龍院の名をな」
     黎嚇の振るう白い剣は恐竜を素通りするように抵抗なく通り抜け、傷一つ残さない。だが恐竜は悲鳴を上げた。刃は肉体ではなく魂を斬り裂いたのだ。
    「誰一人倒れさせたりしません。だからわたしはこの手に剣を握るんです!」
     飛び出した桃は竜殺しの剣を竜の目に突き立てた。
    「グギァアアッ!」
     甲高く叫び恐竜は頭を振る。剣が抜け投げ飛ばされた桃を絹代が抱き留めた。
    「よっと! 無事着地っす!」
     絹代が着地したところへ、駆け出した竜が炎球を放つ。それを大文字が受け止めてオーラで消し飛ばした。
    「おれみてぇなハンパモンたぁ違ぇってトコ見せてみろやァ!」
     大文字が咆えるとディップが前に出た。
    「そろそろ終わりにしようぜ」
    「オレ、強イ。証明スル!」
     竜雅がディップに視線を向けると、ディップは地面を蹴って竜の正面に駆け出した。
    「グォオオオア!」
     ディップを撥ね飛ばそうと迫る恐竜。その時ディップの背中を蹴って竜雅が大きく跳躍した。
    「こっちは一人じゃないんだぜ!」
     落下する速度を乗せて大剣を竜の背中に叩き込む。深々と刺さった剣が半ばまで達し骨を断つ。
    「グギィッ」
     衝撃に息を吐き出しながら仰け反るように顔を上げる。そこへディップが交差し角が胸へと吸い込まれるように突き刺さった。
    「グギィアアアア!」
     致命傷と思える傷を受けながらも恐竜は暴れ周り竜雅とディップを撥ね飛ばした。最後の命を燃やすように近づくもの全て破壊せんと炎を撒き散らす。そこへセトラスフィーノは跳躍しながら影を鞭のように伸ばして木の枝に巻きつけ、宙を移動し恐竜の頭上を取る。
    「これが今のわたしの、全力だよ!」
     赤いリボンを靡かせながら大剣斧を振りかざし、恐竜の背、先に竜雅が深く抉った場所に振り下ろす。蒼い雷のような一閃は胴を両断した。
    「ギィ……」
     地響きを立てながら恐竜は力尽きて倒れた。

    ●戦いの後
    「お疲れ様でした」
     ぺこりと光理がお辞儀するとディップも頭を下げ、また角を地面に突き刺していた。
    「一つ聞きたいんすけど、ガイオウガが復活したら何を望むんでやしょう? 自分たちと共存できると思いやすか?」
     ギィが尋ねるとすぐさま答える。
    「ガイオウガ様強イ! スゴイ! カッコイイ! オレ聞イタ話ソレダケ!」
    「そ、そうっすか」
     残念な子を見るような目でギィはディップの頭を撫でた。
    「これで遂に、7体か……。そちらも流石の強さでしたね」
     黎嚇は満足そうな表情で剣を納めると、穏やかな声でディップに声をかける。
    「オ前ラモヤッパリ強イ、オレダケナラ勝テナカッタ」
    「テメェの力確かに見せてもらったぜ。その力を人に向けるんじゃねェぞ。そんときゃおれがブチのめしてやるァ」
     大文字はそう言い捨てて背を向けた。
    「お疲れ! どうだ、一緒に戦うってのは一人で戦うよりずっと強いだろ」
    「竜種強イ。デモ、仲間ガイレバモット強クナレル……オレモット強クナリタイ! 」
     笑顔の竜雅に言葉に頷いたディップは強い意思の炎を心に灯す。
    「ナイスファイト! また一緒に戦えたらいいね」
    「メェ~」
     セトラスフィーノが毛を梳いてやると、気持ち良さそうに目を細めた。
    「ディップさん今回はありがとうございます。んで、これからはどうする予定っすか?」
    「予定ナイ。オレ戦イニ来タダケ」
     絹代の問いに首を振ると、横で桃が大きな包みを取り出した。
    「それなら、お弁当持ってきたのでみんなで食べましょう!」
     広げられたランチボックスには沢山の色鮮やかなサンドイッチが入っていた。
    「コレ、ウマイ?」
    「美味しいですよ!」
     桃が差し出すと、ディップはじーと見た後恐る恐る口にする。そしてむしゃむしゃと夢中で食べ始めた。
     仲間達も戦いで消耗した腹を満たそうと次々に手を伸ばす。
     ピクニック気分で8人と一匹は食事を楽しむのだった。

    作者:天木一 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月8日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 3/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 1
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