●二月十四日は煮干し(214)の日だっつってんだろ!
「エー君、はいチョコレート☆」
「フフこいつめ。一日よそよそしいと思ったらこういうことか。ほら、逆チョコだぜ☆」
「きゃーんエー君ハンサム! 勿論わたし、服の下にはリボンを巻き巻きしてるのよ」
「フフこいつめ。つまり今日は?」
「わたしをた――べ――」
「チェストオオオオオオオオオオオオオ!」
ふんどし姿の男が飛翔し、天井近くにあった樽を膝蹴りで破壊した。
粉砕された樽から大量の煮干しが飛び散り、カップル的なエキストラーズを押し流していく。
ふんどし男が更に増える。
「ばか野郎この野郎! バレンタインデーだからつってそこらじゅうでイチャイチャしてんじゃねーよばか野郎この野郎!」
「ばか野郎この野郎! リボン自分に巻いて自分をプレゼントとか言ってんじゃねえぞばか野郎この野郎!」
「ばか野郎この野郎! 三倍返しで子供をプレゼントってばか野郎この野郎!」
「だから今日は煮干しの日なんだよおおおおおおお!」
「この空間はカップルはお呼びじゃねえんだよおおおおおお!」
……というカンジの、映画を撮ります。
カップルの熱さで世界を狙えるでおなじみの武蔵坂学園は、それはもう男女無差別にチョコを作ってはプレゼントして密室に籠もってリボン巻き巻きすると思うんで、我々ロンリーウルフたちはそんな気持ちを本人たちには決してぶつけず、純粋で強烈な魂の叫びを映画『今日は煮干しの日』という形で昇華させましょう。させましょうとも。
カップル役は受け付けておりません。エキストラはちゃんと居るので安心ですね。
「それでは皆さん」
バニラさんがショットガンを天に向け、ガシャッとリロードした。
「カップルをヤっちまいなァ!」
●
イルミネーションばりばりの町を、女アンカーが歩いていた。睫ばっしばしの口紅べっったりのアンカーである。
「どこもかしこもカップルだらけ。女の独り身が寂しいよおぉ!」
とか言いながら女が渡す本命チョコを煮干にすり替える仕事をしていた。
そこへ。
「おいユー何してんのー!? 俺のチョコ返してくれルー!?」
YOのポーズで迫ってくる金髪イケメン。
アンカーの手からチョコを奪い取る。
「独身女とかマジだせーし! 帰れし!」
「な、なんですって!」
「おいおんし、リア充だろ?」
後ろから恭乃が張り付いた笑顔で肩ぽんした。
「チョコ置いてけ! なあ、チョコおいてけおまえ!」
男の口に煮干しを詰め込み、奪ったチョコを地面に叩き付けて踏みつける。
それはURAMI!
それはNIKUSIMI!
そしてJEALOUSY!
「チェーンジNIBOSI――とうっ」
和守が高いところからジャンプし、謎の光に包まれた。
「世のため独り身のため、時間と場所をわきまえないカップルを打ち倒す! キャプテンNIBOSI、見参!」
いつの間にか取り出した機関銃から煮干しを乱射し始める和守。
町の至る所が爆発しはじめる。
ええ雰囲気のカップルがちゅーする寸前に煮干しを挟み込むプレイを楽しんでいたレイフォードが、悪しきイケメンたちをクリスマスツリーかなってくらい木に吊るしはじめる。
「リア充死すべし、慈悲は無い」
そんな光景を、春と遵がちょーきょーちゅかいちゅりー(わざと口をキス顔にして発音しました)の頂上から見下ろしていた。
「はーっはっは、お前もとうとう漢になったかー!」
「いたい……」
遵は春の背中をばしばし叩いた後で、ちゅりーからダイブした。
「そこなイケメン! 煮干し魔王の降臨だゴルァ! 手下の春クン、十万煮干しボルトだ!」
「……あ?」
春はギロリと遵をにらみ付けて黙らせ、周囲のイケメンたちを次々とにぼしまみれにしていった。
あふれる煮干し暴徒たちから逃げ走るカップルたち。
そんな彼らの行く手を塞ぐ晃と奏。
全身リボンぐるっぐるにした晃と奏。
「ヒィッ、変態だ!」
「変態じゃねー! 煮干しの使途だよ!」
バケツいっぱいの煮干しを叩き付ける晃。
「そう、煮干しのための聖装束だ。いやしくも先祖代々煮干しのお世話になりながら舶来のちょこれーとにうつつを抜かすなど……ん?」
よく見ると、晃のリボンが梅干し柄だった。
「貴様さては梅干し神のスパイか!」
「今更気づいたか! おまわりさーん! 梅干しポリスさーん!」
大挙して押し寄せる梅干しポリス。そして晃と奏はしょっぴかれていった。
「えっ、オレも!?」
●
同じ町のどっか。
「アーちゃんちゅーしよ☆」
「うんイケメン君! ちゅ~☆」
唇をうにゅーって伸ばすカップル。
そこへ、どこからともなく高波が押し寄せた。
「煮干しとキスしてろやおらああああ!」
巨大煮干しをサーフボードにして襲来する赤音。頭上に『フラれた人』のシグナルが出ていた。
「男女がいちゃつくだけで有罪じゃあああ! 煮込めやあああ! てめーら全員カルシウムじゃー!」
「はあいここはチュー禁止ですよおおおおお!」
シャーリーが乳繰禁止の標識を掲げ、逃げまどうリア充たちに襲いかかる。
宣伝カーの上から煮干しをまきながら襲いかかる。
口いっぱい煮干しだらけにして目を回すチャライケメンに、マイクロビキニ(多分普段着)のハノンがきゃっとうぉーくで歩み寄ってきた。
「煮干しだけでは苦しいでしょう。この絞りたてのミルクを飲むのです」
「あ、ありがとう。どうこの後ホテルでも」
「この公園の水道管から絞ったミルクを呑むのです」
「それ水道すごぼぼぼぼぼぼぼ!」
「エロ同人じゃねえんだから絞れるかよ! ほらもっと飲めよ、水道管ぶっ壊したらスプラッシュしてたぜ!」
じたばたあばれるイケメン。そんな光景をのぞき見ながら、イケメンがチョコをそっと懐に隠した……ところで、クレンドがその腕を掴んだ。
「目を覚ませファッキン野郎! お前が食べようとしたものは毒だ! 悪魔だ! 貴様に本当に必要なのはそう……煮干しだ!」
懐から煮干しを取り出すと。
「煮干しは愛のかたまりだ! さあくらえ!」
棒立ちさせたイケメンの口に煮干しをシューッ!
「NOBUSIストライク!」
一方その頃、琥珀は煮干しの神に祈りを捧げていた。
「神よ、このいわしたちに、恵みの光をあたえ、おいしい煮干しにしたまえなのよ。ついでに裁きの光でリア充どものチョコレートを溶かし尽くしたまえなのよ」
一方その横、キングは煮干しを他人にふるまっていた。
「アタシはリーマンだったんだけど、同僚はフェチだらけで形見の狭い想いをしてきました。でも定年になってね、自分に素直に生きようって……」
デカい皿を取り出す。
「第二の人生、煮干しに捧げることにしたんです! はい煮干しのバベルソースべったら風味下手アンドロメダ焼き☆」
●
お茶の間でマーベラスさんちのコたちが煮干しを囲んでおりました。
テレビで淡々と喋る未空。
『今日のタロット占いは? はい塔のカード。カップルの方々、どんなにつらくてもくじけちゃダメよ』
「塔ってどういう意味でしたっけ」
「さあ……」
煮干しをぽりぽりするジェフとアッシュ。その後ろでミックに煮干し食わせる音愛。
「ミック、煮干しおいしーね! それにしても、庭にカップルさんが山積みにされてるんだけど、今日はなにかの記念日かな?」
「英国では好きな人にカードを送る日ですね。あ、塔のじゃないですよ」
「日本では……ふんどしの日でもあるよ」
登がおもむろにふんどしを取り出した。つけろと? つけろというのか?
「へー。白虎は何かしってる?」
「いえ……」
虚無僧みたいなやつ被った白虎が、ちらりと窓の外を見た。
登の手から飛んでいったふんどしが庭のカップルたちにぺたっとはりついていた。
ゆっくりと味噌汁をすする白虎。
「恨むなら、今日というこの日ににぼしをないがしろにした自分を恨んでくださいね……」
死してしかばね広うものなし。
「「やあみんな、にぼしの化身にぼっしーだよ!」」
霞と鉄弘が全く同時に飛び出してきた。
飛び出した途端、お互いの顔を見つめて固まった。
じりじりと間合いを取りながら牽制しあうにぼっしー。
「やあ、自分はイケメンの穴という穴に煮干しを詰めるつもりだったんすけど」
「私もナンパ野郎の尻に煮干しという煮干しを」
「……」
「……」
二人はがしりと手を握りあい、明日の朝日へと走り出した。
そして。
「女あさりで忙しい若者諸君に、ひとりで生きていく強さを」
兎がイケメンの尻に煮干しをひたっすらぶちまけていた。その光景を遠目に見つめる漣。
「ごめんね、これはこういう趣旨のアレだから、仕方ないんだ」
介抱するふりして口にひたっすら煮干しを突っ込む桃花。
もう前から後ろからにぼしにぼし。
ダブルにぼっしーは再び顔を見合わせ、そして。
「「おれたちの煮干しはこれからだ!」」
手を繋いで飛びかかった。
●
20XX年、世界は愛の炎に包まれた。
だが狼たちは死滅していなかった。
「俺たちは、RB団! 行くぞ真スカーレットタイフーンエクセレントRB号! 大空を舞え! そして煮干しをまき散らせ!」
大空へと舞い上がる和弥。が、ライフル的なやつに狙撃され、ひゅるひゅると落ちていく。
「うわああああああしまったあああああ!」
「うおおおおおおおおおおおおおおおだあああああああああらっしゃあああああ!」
その後ろを緑バイクにのった木菟がセルフ暴走。
そのまた後ろを大量の白バイ隊が追いかけていた。
「くっ、このままでは拙者も終わりでござる……かくなる上は!」
アクセル全開で(二人専用)ホテルに突っ込んでいく木菟。
爆発炎上して傾いていく(二人専用)ホテル。
前をチワワにそりを引かせた絹代がスリングショット片手に暴走していた。
「一本の鼻毛が青春を終わらせたシリアルキヌヨ、推参! 遺伝子交流順調かあ!? 『ワタシを食べて』なんていう女は捕食してやるよ! やっていまえチワワー!」
「きゃいん!?」
バナナに足を滑らせて転倒するチワワ。
絹代は顔から地面にずざーした。
「ぐああ……ばかな、おのモッサリキヌヨが、こんな、ところで……」
「まてい!」
塔の上から現われる六玖。
「俺たちの冒険はまだ続くんだ! 煮干しは世界を救う。俺たちの時代を作り上げようじゃ無いか!」
「「ウオオオオオオ!」」
モヒカンの男たち(独身)が一斉に煮干しを振り上げる。
「あははははは煮干し最高ー!」
そこへ、大量のハートチョコ爆弾が放り込まれた。
爆発する塔。うわーといって落下する六玖。
「なんか独身連中がウザいんですけどー!」
「デートの邪魔なんですけどー!」
そう、世界中の悪しきカップルたちが立ち上がり、煮干しの使途たちを攻撃しはじめたのだ。
「くっ……これじゃあ煮干しの日が『カップルがいちゃつく日』に変えられてしまう。神よ、どうか俺たちに反撃の機会を!」
「神、聞き届けたり!」
ぱーららーというファンファーレと共に降臨してくる虎鉄。
「この荒廃した世界を生き抜くために神をあがめよ! 煮干しの神像に炎と乾燥の宴を! 崇拝せよ、あがめ奉れ! 大いなる神は我らが元に降臨し、腐りきったこの世界を浄化するだろう!」
「「ウオオオオオオオオオ!」」
わき上がる民衆(独身)たち。
空へ舞い上がるセレス。
まき散らされる煮干しだか田作りだか。
「見ろ、あれは……」
「民衆たちよ我が輩のこえをきけ!」
セレスが見上げたお空に、巨大なエニエもとい煮干しの神が降臨した。
「クサい台詞を吐き出すカップル共が憎いか!」
「「ニボシ! ニボシ!」」
「見えざるが故に見ゆる『境界線』の向こうで、腫れ物を見るような女男共の視線が憎いか!」
「「ニボシ! ニボシ!」」
「よろしい、今日この日を以ってカワイイ包入りチョコは駆逐される! 菓子製造会社の策略に溺れる憐れで愚かなリア充共に、『救済』の審判を下すのだッ!!」
「「ニボシイイイイイイイイイイ!!」」
「ネコに毒なチョコなどひとつとして残すな! 煮干しだ、煮干しをくばれい!」
そのとき不思議なことがおこった。
世界中に散らばり、悪しきリア充たちに滅ぼされた煮干しの使途たちが一斉に立ち上がったのだ。
着ぐるみを被ったにぼっしーたち。ビッグ煮干しサーファー(この前フラれた)。全身にリボンを巻いた男たち。暴走した煮干しモンスターにどん引きするニボモンマスター。妖怪チョコ置いてけ。木にリア充を吊るすおばけ。煮干しまき散らし男たち。アナウンサー。
煮干し職人。ガスマスク女。煮干しシェフ。マーベラスさんちのみなさん。RB団。バイク暴走男。チワワ暴走女。鳥。他にも沢山の煮干しの使者たち。
あらゆる煮干しの使徒たちが悪しきリア充たちを駆逐し、煮干しをつめ、煮込み、吊るし、神への供物とした。
煮干し神はあまたの煮干しと共に天へと舞い上がり、まばゆい光と共に宣言したのである。
そう、この日を。
頭の悪いカップルがちゅっちゅちゅっちゅしていい日だと勘違いしやがってもうそこら中でいちゃつき始めるこの日を、真なる記念日に塗り替えるのだ。
「ハッピー・ニボシデー!」
「「ウオオオオオオオオオオオオオオオ!!」」
民衆によって空にまき散らされる煮干し。
あらゆる建物の窓からまき散らされる煮干し。
大統領は煮干しコールを唱え、法王は煮干しを神と認め、女王は煮干しをむさぼり食い、総理は煮干しを配布した。空にNIBOSIの煙文字が描かれ、人々は喜びと共に解放されたのだ。
「2月14日は、煮干しの日である!」
――完!
作者:空白革命 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年2月13日
難度:簡単
参加:32人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 11/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 1
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