節分? 男なら――バナナだろ!?

    作者:空白革命


    「ウッホオオオオオオウ! ウホ、ウホホウホ、ウホホウッホウッホ!」
     ウホホウホ、ウホホウホウホ、ウッキャッキャー。
     ウホウホ。
     ウホホ、ウホホウホウホ!
    「ウッキャー! ウッキャキャッキャー! ウホホホホ!」
     ウホホ。
     ホワッキャウホウホ、ウホウッホホ。
     ウホ、ウホワッキャウホウホキャッキャ、ウホウホ、ウッホホウッホホウッホ。
    「ウホオオオオオオオオオオオオオオオオオウ!」

     ――このままでは何言ってんだか分からないと思うので人間の言葉で翻訳すると。
    「節分に豆まいてんじゃねえよ! 男なら、いやさゴリラなら、バナナだろうがよう!」
     胸毛のあつい男、いやさゴリラは、大量のバナナを取り出してまき散らしていた。
     まくってか高速投擲していた。
     その威力たるや凄まじく、当たった人がアビャアとか言って昏倒するほどである!
    「俺はゴリラだ! お前もゴリラだ! みんなゴリラだ!」
     と言った途端。
     バナナが当たった人から幽体離脱するカンジで、なんとゴリラが出現したではないか。
     幽霊、いやさゴリラはどこからともなく大量のバナナを取り出し、ゴリはーうちー、とか言いながら投げまくった。
    「みんなゴリラになっちゃえばいいのに!」
     

    「…………以上が、僕が見た一部始終だよ」
    「そ、そう……」
     片手にバナナを持って語る穂照・海(ブレイクオブドーン・d03981)に、エクスブレインはちょっと気遣う目をした。
     なんか寝ても覚めても疲れてそうな人だから、ついに頭に何かやっちゃったのかなと思ったからだ。 
     が、ちゃんと調べてみたらどうやらそいつが実体化都市伝説だと分かったようで、このたび灼滅者が出撃することになったわけであーる。
     
    「『節分ゴリラ』っていうどっかの誰かが考えてなぜかバカウケしてしまった都市伝説なの。こいつは節分の時期に豆の代わりにバナナをまいて、当たった人をゴリラ化してしまう力を持っているの」
    「ゴリラ化……」
    「ゴリラ化」
     バナナによってゴリラ化した人はバナナに対する執着心を強くし、なんか攻撃するにもバナナ要素を混ぜ込んだりバナナを撒いたりバナナを食ったりしてしまうという非常に頭の悪そうな異常状態である。しかも喋る言葉までゴリラ語になっちゃうから大変だ。なぜか知らんけど人間にも理解できるゴリラ語に。
     ちなみに戦闘に関して不利になる要素は一切無い。
     ゴリラなだけである。
    「ゴリラといっても、とてもゴリゴリした依頼だよ。気をつけてゴリってきてね!」


    参加者
    喚島・銘子(空繰車と鋏の狭間・d00652)
    八嶋・源一郎(颶風扇・d03269)
    穂照・海(寝ても覚めても疲れてそうな人・d03981)
    クラウス・ブリューネルト(スカーレットアバター・d04977)
    真咲・りね(花簪・d14861)
    御影・ユキト(幻想語り・d15528)
    禍薙・鋼矢(剛壁・d17266)
    難駄波・ナナコ(クイーンオブバナナ・d23823)

    ■リプレイ


     ウホ、ウホホホ。ウッホウッホ、ウッキャキャー!
     ……あっ、ここからはリントの言葉で書きますね。
    「なんなのよ、このあからさまなゴリラ庭園は」
     ゴリラとどろく雑木林で、喚島・銘子(空繰車と鋏の狭間・d00652)は遠い目をした。
    「節分にまめでは無くバナナ。鬼では無くゴリラとは……」
     八嶋・源一郎(颶風扇・d03269)が手をパンパンと叩くと、それまで黙ーっていた御影・ユキト(幻想語り・d15528)が手拍子に乗り始めた。
    「マジカルフフフ――バナナといったらゴリラ、ゴリラと言ったら節分」
    「……節分」
    「哲学ですね」
    「哲学ですね」
    「哲学で済ますな」
    「なんだか違うような気が……」
     頬に手を当てて首を傾げる真咲・りね(花簪・d14861)。
     禍薙・鋼矢(剛壁・d17266)は両手を挙げ、場をなんとかまとめようとした。
    「いいかみんな、こいつらはゴリラだしバナナを投げているが、都市伝説の名前には節分ってついてるし、節分キャラに違いねえんだ。そうだろ?」
    「そうだろって言われてもこわまるわよ」
     だらっとした前髪をいじるクラウス・ブリューネルト(スカーレットアバター・d04977)。
     穂照・海(寝ても覚めても疲れてそうな人・d03981)も軽く腕を組み、鋭い視線をゴリラたちに向けた。
    「ゴリラは趣味じゃないのよ。全力で排除させてもらうわ」
    「うん、こんな連中を放置していては僕のアイデンティティが消失しかねない。速攻で片付け、速攻で終わらせるべきだ」
    「具体的にはあと五百文字くらいでね」
    「リプレイになりませんがな」
     がらがらとリアカーを引っ張って難駄波・ナナコ(クイーンオブバナナ・d23823)が現われた。段ボールを子供がギャグで作ったタワーみたいに積み上げて現われた。
    「バナナオブクイーン(非誤字)ことナナコさんを差し置いてバナナ節分とは許せねえな。アタイもまぜな!」
    「……」
    「……」
     海とクラウスはバナナオブクイーンを軽くスルーして、それぞれスタイリッシュに髪をふぁさぁっとかきあげた。
     穀雨から縛霊手を引き抜き、マントに炎をともして跳躍した。
    「さあ行くぞ、誰がゴリラになんてなってやるものか!」
     跳躍して。
     着地して。
    「……ウホ」
    「「もうなってるー!」」


    「ウホウホ! ゴリッラァ!」
     炎のマントを翻し、天を駆け地を奔り、虚空を切り裂き荒れ狂う、穂照海というゴリラがいた。
    「ウーホホホウ! ウッキャキャウッキャッキャ!」
     吊りタイヤにつかまってすげーぶらぶらする海ゴリラ。
     ディープな深夜アニメの主人公みたいな海がゴリゴリしていた。実際やったらプロデューサーが包丁持ってスタジオに乗り込んできそうな事態だった。
    「ウホ、ウホウホ、ゴッリラゴリラ!」
    「ウホウ!?」
     デカいバナナを剥いて、敵ゴリラへおもむろに叩き付ける海ゴリラ。
    「なんだか穂照くん、ゴリラ化してからのほうが強くありません?」
    「そうかな……」
     ビニールシートに正座したりねとユキトが、バナナむきむきしながら語り合っていた。
     こんなことしててゴリラになっちゃわないのかなと思う人がおられるやもしれぬ。
     だからもうちょっとカメラを引いて頂いて。
    「逃げろ皆! 俺がバナナを受け止めている間に逃……げ……ウホウホ、ウホウホ!」
     鋼矢ゴリラが大の字になって立ちはだかっていた。
     立ちはだかるというのは『全裸で立つ』という意味の言葉では無いぞ? わかってるよね。そんな想像はしちゃダメだぞ。赤茶けた紙をワイルドにかき上げた鋼矢の熱い胸板がふくらみシャツが内側からばりばり引きちぎれ腕や足の服もまた引きちぎれ一旦全裸になったあと毛深いゴリラになってドラミングをしはじめる想像をしちゃ――だ・め・だ・ぞ☆
    「吊りタイヤ、ちょー楽しそう」
    「あれを上手に遊べるのって、ゴリラだけですよね。人間には遊びづらいといいますか……」
     りねはランチボックスからスポンジケーキを取り出し、切ったバナナと生クリームを挟んでもぐもぐし始めた。
     あれ、これって『都市伝説フライングバナナ!』とかだっけ? ちがうよね。味についての描写いらないよね?
    「食べ物は無駄にしちゃいけないんだよって、パパとママがいってた」
    「なんだって!?」
     迷彩柄のナナコが目をカッと開いた。
     訂正。
     迷彩柄のバナナが目をカッと開いた。
    「え、ええっと、あたいが毎回持ってくる数十箱のバナナはあとでスタッフがすべて美味しくいただいてるから……」
    「灼滅者じゃなかったら死んでる量ですよね。致死量のバナナですよね」
    「言ってくれるなよ。夢が壊れちゃうだろ」
     ナナコはほろりと悲しい顔をすると、どうやってんのか知らんけどバナナフォームのままむっくりと立ち上がった。
    「鋼矢センパイ、やってくれ!」
    「ウホウ!」
     鋼矢ゴリラはナナコを担ぎ上げると、高らかに叫んだ。
    「ウホホ、ウホウホウホ!(みんな、丸太は持ったか!)」
     ウホーと叫びながらゴリラの群れへと飛び込んでいく鋼矢ゴリラ。
     ゴリラ頂上決戦が、始まろうとしていた。

    「ゴリラ化とかごめんだから! 当たりたくないからー!」
     次々と飛んでくるバナナを、クラウスはひょいひょいと回避していた。
     たまにアニメとかで見る妙なポーズをワンカットごとにチェンジしていく例の動きをしていた。
     『ゴリラは趣味じゃないのよ』つって前髪ふぁさぁってやってた時のことは忘れていた。
    「こんなバナナ、打ち落としてやるわ!」
     拳にオーラをためるクラウス……の額にさくっとバナナが直撃した。
    「ウホホホーウ!」
     バナナオーラを乱射し始めるクラウスゴリラ。
     そんな光景を見ながら、銘子はああはなるまいと胸に誓った。
     銘子はキャラを崩すわけにいかぬ。じゃあなんでゴリラ依頼に入ってしまったのかと聞かれても困るが、ゴリラ化などしてしまうわけにはいかぬ。
     で、どうしたかっつーと。
    「杣バリア」
     両手で霊犬杣を抱っこし、飛んでくるバナナをひょいひょい杣で受けていた。
     ディフェンダーの代ダメージ効果が奇跡的に毎回発生してるんだなって思って頂きたい。奇跡だよ。奇跡も魔法もあるんだよ。
    「断固拒否よ。絶対ゴリラになんてならないから」
     ゴリラ霊犬とかいう謎の物体になりかけている杣を盾にしたまま、銘子は綺麗な帯布を取り出しゴリラに投射。
    「ウホ!?」
     布がゴリラの腕に巻き付いていく。
     銘子は指で髪をかき上げ、ちらりと仲間の様子を確認した。
    「別にいいわよね。私以外にも冷静な人も居るみたいだし」
    「ウホ(そうだな)、ウホウホウホホ(奴らより儂らのほうがバナナをうまく扱える)……ウッホ(大事なのはそれだけである)」
     眼鏡かけたゴリラ。もとい源一郎ゴリラがシニカルに呟いた。
    「…………」
     様々な都市伝説やダークネスとの戦いの中で、時として服を破られたりべっとりしたものを振りかけられたり、なんかのイベントで急に女装させられたり妙な着ぐるみに入ったりすることはあれど、さすがにゴリラになったことはあるまい。ないよね?
    「ウホ、ウホホ(さて、いこうか)」
     源一郎ゴリラは眼鏡のブリッジを親指で押し上げると、翳した手にロッドを握った。
     時代と共に姿を変え、数多のゴリラをゴリってきたと伝えられる謎多きバナナ。現在はバナナ型。
     雷を放ったバナナを握りしめ、ゴリラに投げつける。ひるんだところに雷を残した拳でのパンチを叩き込んだ。
     ゴリ雷からのゴリ雷撃のコンボである。
    「ウホホウホ、ウッホウッホ、ウホホホホ」
     源一郎ゴリラはホォーゥと言いながら長く細く息を吐き、拳法の構えをとっていた。
    「…………」
     ああはなるまい。銘子は再び心に誓った。あと霊ゴリラの仙はひたっすらバナナ食っていた。


     昨日、この依らいから逃げ出そうとした同行しゃが一人、バナナされた、て はなしだ。
     夜、ごりら中 ばななうほほ。
     胸のくだ物 かきむしたら 果肉がくさり落ちやがた。
     いったいおれ どうな て。
     ――。
     やと ねつ ひいた も とてもうほほ。
     今日 はらへったの、ごりら のエサ くう。
     ――。
     ばなな ばなな フィリピン産きた。
     すべるかわなんで ぽいっ。
     うまかっ です。
     ――。
     ばなな
     うま
    「ウッホオオオオオオオウ!」
     鋼矢ゴリラがバナナを手にクローゼットから飛び出してきた。
     ギター片手に虚空を見上げるゴリラ。ドラムセットに座るゴリラ。
     回り始めるミラーボール。
     ドラムゴリラは警戒にリズムを取り始めた。
    「ウッ、ホッ、ウッホッホ――ホイ!」

     『ゴーリンラーズ』
     歌:ゴリラの皆さん。
     詞:いつもの人。

     ゴリラはいつまでも、食べきれないバナナ見て。
     騒ぐ海ゴリが森かき回して。かき回して。
     (吊りタイヤにぶら下がった海ゴリラがくるくる回りながら炎のマントをはためかせる)
     『バナナ食え』と呟いて、人語は失われた。
     (クラウスゴリラがゴリラをバックドロップからのさらなるバックドロップかーらーのジャンピング回転バックドロップ!)
     キュアしてゴリ、キュアしてゴリ。
     BS解除に追われて、また投げるの。
     (ビニールシートに正座してバナナを貪り喰うナナコゴリラ)
     もう一本、もう一本。
     『カンストしてても入りますよ』とナナコは言う。バナナは言う。
     バナナにバナナを挟みながら。
     『ウホウホホ』『ウホウホホ。ウホウホウホホウッホウホウホ、ウホホウウホ、ゴリ』
     (バナナをクシにさしてくるくる火であぶる鋼矢ゴリラ)
     ゴーリンラーズのなれの果て。焼きすぎた、バナナの色。
     元から黒いやつはスイートスポット、スイートスポット。
     (味方にバナナを投げ続ける海ゴリラ。ゴリラを掴んで振り回すクラウスゴリラ。バナナを点に掲げて雷鳴とどろかせる源一郎ゴリラ)
     『速攻戦』で戦った彼らはゴリられた。
     ゴリラたっていいんだってさ。ゴリ雷撃だって起こしちゃおうと誘う、八嶋。
     (ドラミングする霊ゴリ仙ちゃん。その様子をとても冷めた目で見つめる銘子さん)
     六文銭、六文銭。『どう見てもそれバナナでしょ』と銘子は言う。銘子は言う。ひきつる笑みを浮かべながら。
     (バナナケーキをもふもふ食べるりね。体育座りでみんなの様子を観察するユキト)
     『まだ食べる?』『ごちそうさま』『もういいよ、そろそろゴリラ疲れたろうし』
     標識立てるの、今。

     ユキトは『ゴリラ注意』のステッカーが貼られた標識を地面にぶっさした。
     はっとした顔で人間に戻る海、鋼矢。依然としてバナナ食ってるナナコ。
    「フゥーハハハ! ゴリラを制して真のジャングルの王者ナーちゃんとなるのだー! バナナのちからを思い知っ……あれ、解けてる!」
    「じゃあそろそろいきますね」
     りねはカードを翳すと、自分の周囲に大量の武器を出現させた。
     ロッドを握って大量の矢を発現、発射。矢と同じ速度で飛びかかってロッドを握ったままの手を異形化させて殴りつける。更に靴を装着。炎を上げて踵を叩き込み、後を追って発射された布槍でゴリラを次々に貫いた。
     両手をY字にしてすちゃっと着地するりね。
     すべてのごりらは『ウホー』と言って爆発四散した。
     爆風に靡く髪をおさえ、銘子はふっと目をそらした。
     あたりに散らばったバナナがなんかキラキラしたもんになって消えていく。
    「バナナチップス……作り損ねたわね」
     源一郎もクラウスも、天に昇っていくキラキラを見上げた。
     なぜだろう。
     今度の一年は、ちょっとイイコトありそうな気がした。

    作者:空白革命 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月4日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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