バレンタインデー2015~麗華のお屋敷で

     大豪院・麗華(大学生神薙使い・dn0029)は、絶体絶命のピンチに陥っていた。
     バレンタインデーに向けて、ネットでチョコレートを発注したのだが、数字を一桁間違えて、大変な事に!
     だが、麗華は料理の腕……特にお菓子作りに関しては壊滅的。
     一時期、お菓子作りに凝っていた時があったため、腕が上達した事もあったのだが、それで安心して何もしなかったせいで、あっという間に腕が落ち、何を作っても消し炭状態。
     言葉にもできないほど禍々しいものが出来上がる始末。
     でも、これだけあれば失敗しても大丈夫だと自分を励ましていたのだが、どう考えてもひとりでは使い切る事が出来ない雰囲気。
     しかも、このままでは、義理チョコを作り上げる事すら出来ない可能性が見え隠れ。
     そのため、仲間達を自分の屋敷に呼び集めて、チョコレートを作ろうという考えに至ったようである。
     もちろん、招待したからと言って、みんなが来てくれるとは限らない。
     『あ、あれ? 麗華って誰だっけ?』と思われ、軽くスルーされてしまうかも知れない。
     そんな不安を胸に秘め、麗華が招待状を郵便局に持って行った。


    ■リプレイ

    ●麗華の屋敷
    「わお! こんなにチョコがあると一ヵ月くらい食費に困らないね」
     イリス・エンドル(高校生魔法使い・d17620)は仲間達と共に、麗華の屋敷にやってきた。
     麗華の屋敷は無駄に広く、空き部屋が幾つもあった。
     その空き部屋のひとつにチョコが置かれていたのだが、発注ミスでもしたのか天井に着くほどの量だった。
    「1人では食べきれない量でも、人が集まれば消費も可能になるわね。さあ、食べつくしてしまいましょう」
     それを目の当たりにした忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)が、【光画部】の仲間達と一緒にチョコを食べ始める。
     部屋の中にあったチョコは、高級ブランド物からそうでないものまで、ピンからキリまで。選び放題、食べ放題。いくら食べてもなくなりそうにないほど大量である。
    「あ、いや、そうじゃなくて……」
     しかし、大豪院・麗華(大学生神薙使い・dn0029)は、困り顔。
     今回の目的はチョコを食べるのではなく、チョコ作りがメインである。
     これでは、本来の目的を果たす事が出来ず、何のためにみんなを呼んだのか分からなくなってしまう。
    「ならば、まずは麗華のチョコレート工場を建設し、3年以内の黒字化を目指す!」
     アンカー・バールフリット(シュピーレンツァオベラー・d01153)が、自らの野望に火を灯す。
     あわよくば、そのまま幹部にでもなるつもりなのか、あれこれと計画を進めている。
    「あ、いや、そうじゃなくて……」
     麗華があたふたした様子で答えを返す。
     何やら明後日の方向に話が進んでいるため、かなり焦っているようだ。
    「ふふ、分かっているわよ。でも、その前に手作りチョコを見せてほしいんだけど……?」
     蜷川・霊子(いつも全力投球よ・d27055)が、興味津々な様子で麗華に視線を送る。
    「良かったら、麗華のも味見させてくれないか?」
     椎葉・武流(ファイアフォージャー・d08137)も、霊子に続く。
    「あ、あの……良ければ、どうぞ」
     麗華が申し訳なさそうにしながら、自分で作ったチョコを渡す。
     それは、まるで召喚に失敗して泥のように溶けた悪魔を具現化したような物だった。
    「うっ……!」
     しかも、チョコを食べた二人が青ざめた表情を浮かべ、逃げるようにして洗面台に走っていった。
     それだけで、麗華のチョコがいかにアレなものなのか、まわりにいた灼滅達が十分に理解した。
    「まあ、料理ってちょっとサボるとすぐ腕が落ちるからな。でも一時期あれだけ上達してたんだから、すぐ元に戻るって」
     不破・和正(悪滅断罪エドゲイン・d23309)が、苦笑いを浮かべる。
    「ほ、本当に大丈夫でしょうか?」
     しかし、麗華は何処か不安げ。
     今にも泣きそうな表情を浮かべている。
    「はい、大丈夫ですよ」
     そんな不安を吹き飛ばす勢いで、姫条・セカイ(黎明の響き・d03014)がニコリと笑うのだった。

    ●調理場・1
    「チョコレートは沢山あるみたいだから、遠慮なく使わせてもらうわね」
     保戸島・まぐろ(無敵艦隊・d06091)は【光画部】の仲間達と共に、テキパキとチョコを作り始めた。
     これでも、まぐろは料理が得意。
     そのため、他の仲間達にも、適切かつ丁寧に、お菓子作りを教えている。
    「いやはや、これだけ沢山のチョコレートがあると、少し凝ったものを作りたくなるのが人情というものでしょうねぇ……」
     紅羽・流希(挑戦者・d10975)がチョコの中に仕込むため、オレンジジャムや、イチゴのグミ、デスソースなどを準備した。
    「良かったら、みんなも型を使ってね。定番のハート型、星型、丸型。子供にも受けるように動物の型も用意あるよ」
     イリスが上機嫌な様子で、沢山の型を並べていく。
     その中には超特大のハート型もあり、まわりにいた灼滅者達を驚かせた。
    「こう見えても料理は得意な方でしてねー。ちょっとビターなチョコケーキにでも挑戦してみますー。大人の恋は甘くはありませんってねー、うふふ」
     或田・仲次郎(好物はササニシキ・d06741)も、鼻歌混じりにチョコケーキを作る。
    「わたくし、お料理は少しした事があるのですが、お菓子作りは経験がありませんでして……。でも、皆様と一緒ならなんとかなりますよね、きっと」
     スピカ・プリンセプス(中学生サウンドソルジャー・d30603)が図書館で借りた本を広げつつ、【茶屋『もりの』】の仲間達と共にチョコを作っていく。
    「丹精込めてぇ、大事な人へぇの思いこめぇ、チョコレぇえトをぉおつぅくりましょぉお」
     天前・仁王(銀色不定系そしてショゴス・d25660)は、何故か演歌口調で鼻歌を歌いつつ、ハート型のチョコを作っている。
    「まっじかーる♪ けっみかーる♪ くっきーんぐ♪」
     城崎・瑞樹(コンファインドイノセント・d29645)も錬金術で使いそうな大釜に、チョコやドライフルーツ、危険そうな薬物、ウネウネと動く塊を放り込んだ。
    「ちなみに隠し味はぁ、邪神的な緑色の蛸さんをですねぇ」
     仁王がそう言った途端、まわりにいた仲間達が慌てた様子で駆け寄った。
    「あ、冗談です!」
     仁王が苦笑いを浮かべて大釜を隠す。
     その大釜の中に入ったチョコが怪しく蠢いたようにも見えるが、おそらく気のせいだろう。
    「念のために言っておくが、茶屋だから食べ物を祖末にしたら許さないぞ。逃げる奴は、俺が直々に無理矢理にでも食わせるからな!」
     海野・桔梗(鷹使いの死神・d26908)が、仲間達に対して釘をさす。
     仲間達の中にはダークマター的なものを作っている者もいるが、それでも茶屋として食べ物を粗末にする訳にはいかなかった。
    「あらら……うっかりして大量のチョコレートを一気に溶かしてしまいました」
     その横で鷹合・湯里(鷹甘の青龍・d03864)が、驚いた様子で声を上げる。
     一瞬、どうしようかと思ったが、丸ごと使って仕上げる事にした。
    「あら、固まりませんわ……。冷凍庫に入れればいいでしょうか……」
     そんな中、スピカが困った様子で首を傾げた。
     レシピ通りに作ったつもりだが……、何か違う。
     不安になって本を見返してみたものの、よく分からなかったので、そのままポーンと冷蔵庫の中に放り込んだ。

    ●まだまだ続くチョコづくり
    「せっかくだから麗華センパイも一緒に作ってみようよ?」
     卯月・あるな(正義の初心者マーク・d15875)が、スマホを使ってレシピを見せる。
     あるなが作っているのは、湯煎したチョコをクッキーでサンドするチョコクッキー。
     これだけでも『料理した!』って感じがするから不思議である。
     麗華も見様見真似で恐る恐るチョコを手に取った。
    「チョコレートは基本を押さえれば大丈夫です」
     それに気づいた鬼城・蒼香(青にして蒼雷・d00932)がエプロンをつけて、髪をポニーテールにした後、麗華の横に並んで一緒にチョコを湯煎する。
     溶かして固めるシンプルなものであれば、消し炭になる事もないので失敗する事もないはずである。
    「こういうものはチョコレートと言う素材が一番活きますから、余り手を加えすぎないのもいいですね」
     湯里(鷹甘の青龍・d03864)が、優しくニコリと笑う。
     その笑顔を見てホッとしたのか、麗華が落ち着いた様子で水を手に取った。
    「あ、水と混ぜちゃダメだよ?」
     すかさず、ジヴェア・スレイ(丸まり系女子・d19052)が、麗華の手を止めた。
     放っておくと何をするのか分からないため、色々な意味でハラハラ、ドキドキ。
    「何だか、ほっとけないんですよね……」
     御剣・レイラ(中学生ストリートファイター・d04793)が、心配した様子で麗華の横に並ぶ。
     その拍子に湯煎したチョコが、ふたりのほっぺにくっついた。
     それを見てお互いが、クスクス笑い。
     頬についたチョコを拭き合い、湯煎したチョコを一緒に眺めている。
    「チョコレートを作るのに、技術はもちろん必要だけど、愛情は基本! つまり失敗を恐れずに、愛と気合いと根性で作り切るにゃ!」
     遠間・雪(ルールブレイカー・d02078)も、お気楽な態度で麗華を応援。
     流希も麗華をサポートしつつ、せっせとチョコを作っていく。
    「愛梨沙もせっかくだから、自分の型を使ってみようっと」
     雛山・愛梨沙(のーぱんぱんちゃー・d24988)が、等身大愛梨沙のチョコ型をデンと置く。
     この型は愛梨沙の幼い裸身から直に型を取ったもので、体の隅々までくっきり再現されている。
     何故か、これを作った近所に住む美少女フィギュア職人のお兄さんが、鼻息を荒らしていていたが、深い意味はないだろう。
    「最近は普通のチョコ以外にも色んなチョコが求められている。チョコプリンにチョコゼリーにチョコマシュマロとか、麗華チョコを名乗るからには麗華君を参考しなければ。というわけでちょっと揺れてみてくれたまえ。これはあくまで商品開発のデータのためであってやましい気持ちは一切無い、さぁやりたまえ」
     アンカーがジリジリと迫っていく。
    「い、いや、あの……」
     麗華が困った様子で後ずさる。
    「麗華さんもこういうチョコ作ろう! せめておっぱいだけでも!」
     愛梨沙も涎を垂らして、興奮気味に迫ってきた。
    「みんなで麗華お姉ちゃんをいじめるの?」
     鈴永・星夜(白き子犬の王・d05127)が、麗華に抱き着いたまま、瞳をウルウル。
     その拍子に運命女神が麗華に微笑み、服のボタンが勢いよく弾け飛んだ。
    「危ないっ!」
     それに気づいたセカイが赤面しつつ、後ろから麗華の胸を押さえたものの、逆効果!
    「いやあああああああああああ」
     パニックに陥った麗華が、チョコクリームをぶちまけ、大変な事に……。
    「大変にゃ! しっかりと取ってあげるね♪」
     すぐさま、雪がチョコクレームを拭くふりをして、麗華の胸を反射的に揉んだ。
    「……って、ドサクサに紛れて、何をやっているんだよっ!」
     竹尾・登(ムートアントグンター・d13258)が頭を抱えて、ツッコミを入れる。
     これには、まわりにいた灼滅者達も、苦笑いであった。

    ●完成したチョコの数々
     そして、出来上がったのは、ガトーショコラ、チョコレートクッキー、トリュフチョコ、フォンダンショコラ等々。
     チョコ作りを教えたまぐろも、満足顔のようである。
     湯里も何とかチョコを完成させ、高さ・横幅1mの綺麗なハート型チョコを誇らしげにドンと置いた。
    「出来立てのチョコ菓子が次々と並ぶのは壮観だわ。どれから食べましょう?」
     玉緒が迷った挙句、ガトーショコラに手を伸ばす。
    「私、そのうち、大食いキャラになっちゃいそうな……」
     水無月・カティア(仮初のハーフムーン・d30825)も同じように手を伸ばして、ひとつずつチョコを食べていった。
    「ぐわ、げほっげほっ!」
     中にはチョコとは言い難いものも入っており、それを食べた富山・良太(復興型ご当地ヒーロー・d18057) が悲鳴をあげている。
    「ボクはザッハトルテを作ったよ。武流……あ、あーん」
     メイニーヒルト・グラオグランツ(ブレイズサッカー・d12947)が、ニコリと笑う。
     これが日頃の研究の成果。故に不味い訳がない。
    「ん……あーん」
     武流が照れた様子で、パクッと食べた。
     かなり手間のかかるお菓子だが、工程を見ていてもスムーズに動いていたのは普段の研鑽の賜だろう。
     肝心の味の方も、それぞれの素材が喧嘩せずに綺麗に融け合って『美味』となっている。
    「こ、こっちは自信ありますよぅ」
     仁王が申し訳なさそうに、銀色のチョコを取り出した。
     だが、それは見るからに怪しいシロモノ。
    「物凄く見た目はアレですが、チョコの色です! 隠し味には私の体の一部……いえ冗談です!」
     仁王が激しく咳き込んだ。
     その途端、ニョロリとチョコからアホ毛が出たため、仁王が慌てた様子で後ろに隠した。
    「ささっ、食べて、食べて♪」
     続いて瑞樹がチョコ色の触手付きのスライムを仲間達に渡していく。
     見るからに失敗作だが、【茶屋『もりの』】のメンバーが捕まり、強制的に食べる事になったようである。
     これには桔梗も余計な事を言ってしまったと後悔した。
     だが、口に出してしまった以上は食べるしかない。
     覚悟を決めて口の中に放り込み、訳の分からない悲鳴をあげて悶絶した。
    「さて、残るは麗華さんのチョコね。見た目はアレだけど……、女は度胸!」
     霊子が覚悟を決めた様子でチョコを食べる。
     見た目は邪神像のような出来だが、みんなのアドバイスを受けて作ったものなのだから、味の方は大丈夫……のはず。
     色々な意味で心配だったため、一気に口の中に放り込んでしまったが、その結果が吉と出るか凶と出るか、霊子自身にも分からなかった。
    「やれば出来るじゃない!」
     ジヴェアが麗華の作ったチョコを食べて、ニッコリ。
     麗華の自信に反して、チョコは上出来。
     これも彼女なりに頑張った結果だろう。
     霊子も何処かホッとした様子でチョコを食べている。
    「うん、これだけ上達すれば上出来かな。バレンタイン、楽しみにしてるぜ♪」
     和正も力強くウンウンと頷くと、麗華が作ったチョコを絶賛した。
    「ふぅ……、食べ過ぎちゃいましたけど、幸せです♪ 皆さん、楽しく過ごさせてくれて、ありがとうございました」
     カティアも満足した様子で笑みを浮かべる。
     こうして麗華のチョコ作りは幕を閉じ、バレンタイン当日を待つのみとなった。

    作者:ゆうきつかさ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月13日
    難度:簡単
    参加:26人
    結果:成功!
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