お試し注意! 100%モチ飲料

    作者:森下映

     ビジネス街にある広場の一角に、妙な一団が妙なものを売っていた。
    「乾いた喉に確かな満足、斬新コーポレーションの自信作!」
    「飲みこめないほどの濃厚さ!」
    「モチ100%ドリンク『特濃もちもちみるく』はいかがっすかー!」
    「そこのおじさま、1本いかがです? もっちもちなんですよう〜?」
     スーツの男たちに混ざり、ファーコートの中はブラトップにショートパンツ、といういでたちの女子が1人。通りがかかった会社員に迫っている。
    「いや、モチじゃ余計喉乾きそうだし……しかも飲み込めないって危ないじゃないか」
    「そんなことないですよう? とってもおいしんですよう? それに〜」
     と、女子は男性の腕をつかむとぎゅっと自分の胸をおしつけ、
    「ルリコこれ飲んで、すっごくもちもちになったんですよう〜?」
    「もっ、もちもちになったってどこが、」
    「うふん、わかってるくせに〜」
     上目遣い、内巻きボブが肩の上でゆれる。
    「もし買ってくださったらあ、どれだけもちもちになったか試させてあげてもいいんですよう〜?」
    「え……じゃ、じゃあ」
    「はーい、まいどありー♪ こちらのお客様、2ケースお持ち帰りですよう〜♪」

    「霧月・詩音(凍月・d13352)さんからの情報で、ラブリンスター配下の淫魔が斬新コーポレーションの強化一般人に協力して、何やら悪事を働いている……って話はもうきいている?」
     須藤・まりん(中学生エクスブレイン・dn0003)が言った。
    「さらに今回夜姫さんの調査で、お餅を原料にした清涼飲料水、といっていいのかわからないけど、とにかくろくでもないドリンクを淫魔と強化一般人たちが売りつけていることがわかったんだ。夜姫さん、情報をありがとう!」
     まりんは翌檜・夜姫(羅漢柏のミコ・d29432)にぺこりと頭を下げ、説明を続ける。
    「ラブリンスター配下の淫魔に勧誘された斬新コーポレーションの強化一般人たちは、見返りに自分たちの商売に強力するよう要請したみたいだね」
     斬新コーポレーションの強化一般人は派遣社員という立場であるらしく、斬新な方法で会社の為に働こうとしているらしい。彼らの働く意志を止めることは難しく、元に戻す事はできないだろう。
    「大きな事件ではないけど、このままじゃお金をつぎこんでしまったり、お餅を喉につまらせちゃったりする人も出てくるだろうし、迷惑な行為なのは間違いないから、止めてきてほしい」
     ラブリンスター配下の淫魔については、説得すれば戦わずに引き上げてくれる可能性もある。が、場合によっては派遣社員達と一緒に戦いに加わるかもしれない。
    「淫魔を灼滅するかどうかはみんなにまかせるよ」
     淫魔と強化一般人たちは、昼休みの時間帯に会社員を狙い、ビジネス街の中にある広場に出店している。皆が接触できるのは販売活動中だ。
     強化一般人は全部で5人。手裏剣甲相当のサイキックを使い、ネクタイの色でポジションが違う。
    「紫に黄色の水玉のネクタイをしている3人がクラッシャーで、蛍光黄緑と蛍光ピンクのストライプタイをしている2人がスナイパーだよ」
     淫魔が戦闘に加わる場合は、サウンドソルジャーとマテリアルロッド相当のサイキックを使用し、メディックに入る。
    「斬新コーポレーションの斬新京一郎社長は、白の王セイメイとの交渉に失敗したけど未だ健在。彼が再び動き出す前に、斬新コーポレーションの戦力を削いでおくことは重要だと思うんだ。じゃあ、よろしくね!」


    参加者
    川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950)
    銀城・七星(銀月輝継・d23348)
    翠川・夜(今宵は朝日が登る迄・d25083)
    儀冶府・蘭(正統なるマレフェキア・d25120)
    マール・アイオネット(妄執と欺瞞の果て・d27013)
    白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160)
    翌檜・夜姫(羅漢柏のミコ・d29432)
    三葉・葵(リグレッタブルプリンセス・d32266)

    ■リプレイ


    「大人気『特濃もちもちみるく』が今日だけ大特価!」
    「おいしいですよう〜♪ もっちもちですよう〜♪」
    「あれだね」
     翌檜・夜姫(羅漢柏のミコ・d29432)が言った。
    「正直強化一般人がラブリンスターのファンになるだけ、とかならまぁ良いかなって気もするのですけど」
     川原・咲夜(吊されるべき占い師・d04950)が言う。
    「淫魔利用してしっかり商売してるとか……」
    「戦力を拡大したい事情は分かるけど、斬新はやめてもらいたいな」
     夜姫が言った。咲夜は、
    「ラブリンスター側には命の恩がありますし、ルリコさんもできれば逃がしてやりたいところですが」
    「うん、説得できればいいけど」
     そう言って夜姫は、胸の間に缶をはさんで売り込み中のルリコを見る。
    「モチ100%……うーむ、ちょっとだけ飲んでみたい気もするですね……」
     殺気を展開して人払いを開始しつつ、翠川・夜(今宵は朝日が登る迄・d25083)が言った。
    「100%モチって、100%炭水化物ってことなのかな」
     と、儀冶府・蘭(正統なるマレフェキア・d25120)は、
    「ちょっと遠慮したいね……太りそう」
     総カロリーを想像して眉を寄せる。そこへ白臼・早苗(静寂なるアコースティック・d27160)が、鏡餅のマークのついた缶を差し出した。
    「……試しに、買ってきてみた……1本」
    「わ、素早い」
     黒と白の猫の耳のようにはねたサイドの髪をぴょこんと揺らして、三葉・葵(リグレッタブルプリンセス・d32266)が覗きこむ。
    「本当にモチ100%ってかいてあるよ。ほら」
     手にとってみていたマール・アイオネット(妄執と欺瞞の果て・d27013)が、缶を夜に渡した。
    「……モチ100%で飲料って、意味わかんねー……」
     呆れる銀城・七星(銀月輝継・d23348)。
    「これってお餅と何が違うのでしょうか……?」
     夜は缶をじっと見ると、 
    「食べる感じで行けばどうでしょう。ポチ……飲んでみますか? 美味しかったらわたしも」
     霊犬のポチに言ってみるも、ポチも気乗りはしない様子。
    「あとで普通に焼いて食べたらどうかなって思ってたんですが」
     咲夜が言う。
    「そのほうがまだよさそうだね。のどにつまったら危ないし」
     蘭が言った。夜は、
    「そうですね。喉に詰まったのはキュアじゃ……治せないですよね」
     そうこうしているうちに、だいぶ人もまばらになってきた。
    「んじゃオレは、あのへんに残ってるヤツ追っ払、避難させてくる……シマス」
     と言って七星が駆け出して行く。ルリコと派遣社員たちが『特濃もちもちみるく』を売っている出店の前にはもう人はいない。灼滅者たちは接触に向かった。


    「そこのおじょーさんたち♪ もっちもちなドリンクはいかが〜♪」
    「あっ、もちもち。いいなーうらやましいなー」
     近づいてきたルリコの胸元をじっと見ながら葵が言った。
    「うふん。おじょーさんも、もちもちミルク飲んだらもっちもちになれますよう〜?」
    「だったら今すぐ自分でそれ、飲んでみて。……全部」
     と、早苗がルリコの胸にはさまっている缶を指さす。
    「え?」
     ルリコが笑顔のまま固まった。
    「ハーイハイ、今取り込み中なんでこっから離れて下サーイ」
     一方、七星はルリコが気になっているらしいしつこい一団を追い払い中。
    「いやでもちょっとだけ、」
    「オジサンたち」
     七星の銀の瞳が冷たく光る。
    「貴重な昼休み、揉め事に巻き込まれたくねえだろ?」
     殺気プラス七星のおかげで広場から一般人は1人もいなくなった。七星はサウンドシャッターを展開する。
    「ほら、早く」
    「ええ〜でもお、ルリコ今のどかわいてないですしい」
    「おい、何をやってるんだ」
     揉め事に気づいた派遣社員の1人がルリコと早苗の間に入ってきた。が、早苗は、
    「じゃあ、あなたたちが飲んでみて、これ」
    「何っ!」
    「早く」
    「こ、これは商品であって我々が飲むものでは」
    「自分たちが飲みたくないもの、人に押し付けてたんだ」
     早苗が言う。
    「る、ルリコはそんなつもりじゃ」
    「だいたいこのドリンクは出来損ないだ。飲めないよ」
     派遣社員たちの挙動に注意しながら、マールが言った。
    「モチ飲料なんて、喉に詰まらせる人が出ちゃうですよ!」
     夜が言い、
    「飲んだ人を窒息死させるかもしれない飲み物を売っちゃ駄目だと思うよ」
     夜姫も言う。
    「まともな商品を売らないと、クレームがくるよ」
     マールが言うと、ルリコは、
    「そんなのルリコに関係な、」
    「ラブリンスター宛に」
    「う、うぅ」
     ルリコの顔色が変わった。
    「……もしやあなたたち……」
    「歌はアイドルの魅力の1つ。そんな喉を潰すようなものを売るなんて、ラブリンスターの株まで下がるね」
     早苗が言う。夜は、
    「それに、こんな押し売りみたいな事をしたらファンを減らす事になるですよ」
    「そうだね。飲んだ人が死んじゃったらなおさらだ。それはラブリンスターにとっても、あんまり良くないことじゃないかな」
     夜姫が言った。
    「でもルリコ……」
     ラブリンスターの名前を出され、夜姫たちが武蔵坂の灼滅者たちだということも理解したらしいルリコは、口ごもってしまう。
    「る、ルリコはあ、ただラブリンスター様に言われた通りにい……ちょっとアンタなにみてるのよ」
     醒めた視線に気づいたルリコが七星の方をキッと見た。
    「いや別に。ただ……」
    (「……どう見ても斬新を利用しようとして利用されてるよな、コイツ……」)
    「ファン増やすにも、モチで喉つまらせて死んじまったら単純計算でファン数減ってね?」
    「う、だってえ」
    「えっと、ルリコさん」
     咲夜がルリコの前に進み出る。
    「今の貴女はラブリンスター側と言うより、斬新コーポレーション側に見えるのですけど、大丈夫ですか?」
    「そんなあ。ルリコはいつだってラブリンスター様のために、」
    「ルリコさん、モチ飲料を売っても、斬新コーポレーションの社員はあなたの味方にはなりませんよ!」
     蘭がきっぱりと言った。
    「そんなことないですよう〜! 斬新のみなさん、ルリコがお手伝いしたら仲間になってくれるって、」
    「こんな詐欺まがいの飲み物を売ってる人がどうして約束を守るんです?」
    「そ、それはあ」
     咲夜は、
    「仲間になるっていうならラブリンスターのCD販売メインにして、おまけでモチ飲料つけるくらいのことすると思いますよ?」
     と言って、モチ飲料がおまけにふさわしいかどうかは別として、と付け加える。
    「なにかまともなドリンクとセットならCDの売り上げも伸びるだろうね」
     葵が言った。
    「おいおい、ルリコさんの手前黙ってきいてりゃ勝手なこと言いやがって、」
    「お前たちも!」
     割り込んできた派遣社員を、咲夜が髪の色と同じ銀の瞳で睨みつける。
    「アイドルを売り子に使うんならまずスポンサー料でも出せ。アイドル馬鹿にしてるのか?」
    「あっ、ルリコもそれはちょっと思いましたあ……」
     ルリコが小声で言った。
    「斬新な事がしたいだけなら、ラブリンスター所に行ってさっさと斬新にプロデュースしてやれよ」
     咲夜が言うと、うんうんとルリコが頷く。
    「そもそも商品は百歩譲って斬新だとしても、手口は斬新じゃなくて陳腐だよね」
     葵が言った。
    「美人のおねーさんの色気で商品を売る手口のどこが斬新なのかな?」
    「何っ!」
    「どうせならマッスルボディのお爺さんが売れば斬新なのに」
    「ボクは、今斬新に協力することは、後々ラブリンスターのマイナスになると思う」
     夜姫が言う。
    「彼らを仲間にすると事あるごとに斬新じゃないって理由で、アイドル活動に文句をつけられるかもしれないよ?」
    「でもでもとにかくルリコ、ラブリンスター様にいわれてますしい……それに斬新のみなさんとの約束も」
    「まさかいまさら協力をやめるなんて言い出さないだろうな?」
    「ふええ」
     派遣社員が凄んでみせると、ルリコは咲夜の影に隠れた。ルリコもいっぱしのダークネスなので、実際は強化一般人にそこまで怯える必要もないのだが、灼滅者たちの説得に揺らいでいるがゆえの態度だろう。
    「ルリコさん、私たちはあなたたちと対立したいわけではないんです」
     蘭が言う。
    「ここは、ひいてもらえませんか?」
    「で、でも〜……」
     ルリコがちら、と派遣社員たちの方を見た。
    「ここはボクたちが何とかするよ」
     さりげなくルリコが逃げた場合に派遣社員に追われることがないような位置に移動しながらマールが言う。
    「だからここは出直して。せめて今度はクレームが来ないようなちゃんとした商品を売るようにするんだよ」
    「わ、わかりましたあ……それじゃっ、」
    「あ、ちょっと待って」
     逃げようとしたルリコを葵が呼び止め、一通の手紙を差し出した。
    「これ、ラブリンスターへのファンレター。またコンサートやってほしいな。それからそれ、置いていきなよ」
    「あっ」
     ルリコは手紙と交換に胸にはさんでいた缶を葵に渡し、さっさと逃げていく。気まぐれな淫魔のこと、どこまで言ったことを守るかはわからないが、とにかくこれで淫魔が戦闘に参加する心配はなくなった。
    「さて、あとは、と」
     ルリコから受け取った缶を手に葵が社員たちの方を振り向いた。
    「この身、一振りの凶器足れ」
     七星がスレイヤーカードを解放。大切な姉から贈られたL'Heure Bleueをふわりと纏い、
    「殺し合いの時間だ」
     黒い殺気を一気に放出する。戦闘が開始された。


    「勝敗は戦場に着いた時には決まってる――……なんてね!」
     儀冶府家伝来のガアプの力を秘めた魔導書、禁術魔導書 "Tap" 写本を手に、蘭が縛霊手の祭壇を展開。一気に襲いかかってこようとした水玉ネクタイを次々に結界の中へ捕らえ、出鼻をくじく。隙を逃さず、ロッドを手に水玉の1人に接近した咲夜がその腹を殴りつけ、逆側から夜姫が鬼の腕を振り下ろした。
    「ぐあっ!」
     夜姫に肩を砕かれたところで、咲夜の注ぎ込んでいた魔力も爆発。ルリコの回復援護も見込めない派遣社員は、あえなくコンクリートへ倒れ伏し、動かなくなる。
    「くそっ!」
     ストライプタイの社員がネクタイとお揃いの柄の手裏剣を大量に投げつけた。夜が符を五芒星形に放ち、造られた攻性防壁が毒の手裏剣を相殺、消滅させ、ポチとオネットは葵と早苗を守る。七星はふっとわずかに身体を揺らがせて、紙一重、しかし確実に手裏剣を避けながら、間合いを詰めていく。が、もう1人のストライプが蘭に向かい、体当たりを仕掛けてきた。
    「!」
     とびこんだマールと、体当たりしてきた社員が蘭の目の前でぶつかる。
    「回復しますっ!」
     強い衝撃に耐え切ったマールへ夜が護符を飛ばした。と同時、マールから意志をもつ帯、Flug von einem Labyrinthが翼のように広がり、水玉たちを縛り上げる。
    「……大丈夫?」
     霊犬たちにたずねる早苗。早苗の指先が奏でるメロディが前衛の受けた傷と毒を回復、葵はタッと霊犬たちをとびこえ、空中で1回転、片足で着地すると、咎人の大鎌を手に駆け出した。社員たちがまた手裏剣を投げつけ、葵の頬を手裏剣がかすめていく。
    「っと、」
     身につけた祭儀服の袂を返し、夜姫は羅漢柏の祓串で手裏剣を弾き返した。そしてそのまま、夜姫は一回しした祓串を内側に構え、水玉の1人へ突進。咲夜は足元へ飛んできた手裏剣を飛び越えると、槍を手に走り出す。
    「援護します!」
     発動する魔力に蘭の茶色い髪が舞い上がった。手元の魔導書から敵へ、蘭が視線を移した途端、水玉2人の胸元に原罪の紋章が刻み込まれる。暴走に備え、すぐに蘭の前へ位置をとる盾役の夜とマール。
    「気まぐれ子猫のダンシングファイトッ! いくよっ!」
     前線では葵が片足で踏切り、大鎌を振りかぶった。ブーメランのように大きく弧を描く鎌の白刃を避け、駆け抜けようとする水玉。しかし次の瞬間、血飛沫があがる。
    「ぐっ、」
     駆け抜けたのは、血に染まる手刀に緋色のオーラをたなびかせ、鎌を振り戻した葵の方だった。直後、正七角形の標識が血まみれの社員を襲う。
    「オマエらなんざ、お呼びじゃねぇよ」
     手にするは武器、自らは凶器。共に有り異形を屠る。七曜区間のピクトグラムが、キン、と変化し、頭から水玉を叩き潰した。
     と、七星の背中を狙ってストライプから次々に手裏剣が投げ込まれる。が、七星は振り返らずに身体を沈め、さらに後ろからの気配を感じとると、バックフリップで飛び抜けた。後方から入れ違い、空いたスペースへ入った夜姫が、魔力を宿した祓串を水玉へ叩きつける。刹那響き渡る美しい歌声は早苗のもの。葵の頬から耳元に刻まれた傷が、歌声の深まりとともに薄くなり、夜姫は斜め後ろから駆け込んできた咲夜を軽く振り返った。咲夜はそれを見て爪先の方向を変え、もう1人の水玉へ向けて肩の上、槍を構えて跳び上がる。
    「!!!」
     夜姫が外へ抜けた瞬間、爆発が起こった。社員が地面の上でボロボロと砕けていく。その間に咲夜の槍はもう1人の水玉の喉元を貫き通した。仰向けに倒れた水玉は決定的なその一撃に、そのまま息を亡くした。


    「えいっ!」
     葵が大鎌を一閃。残った社員を薙ぎ払い、攻撃の手をとどめたところを夜の構築した結界が捕らえた。その1人の背中に、早苗の放った漆黒の弾丸が炸裂。毒に蝕まれた社員は悶え苦しむ。
     回復役のいない社員たちの形勢は悪い。淫魔参戦も想定しての布陣だった灼滅者たちも、攻撃寄りにシフト。一気に潰しにかかる。
     投げ込まれた手裏剣の前には霊犬たちとマールが果敢に飛び込み、マールは傷を負いながらも天星弓を引き絞った。星の煌きを散らす矢の軌道を縫い、七星のNyxが空を切る。絡みつく鋼糸、刺さる鏃。さらに妨害者の恩恵をもって、幾重にも深く蘭から刻みつけられる暴走の紋章。蘭へ突撃しようとした1人を葵の発動させた逆十字が斬り裂き、混乱した社員は仲間へ攻撃を加えてしまう。
    「ユウラ、ヤミ! オレの敵だ、存分にやれ!」
     七星の足元から現れた影の猫と鴉が疾走する。その間を抜け、一足先にロッドを叩きつける咲夜。髪の銀を映し光る左耳のイヤリングが揺れ、飛び抜けた瞬間、激しい爆発とともにまた1人動かなくなった。
     ユウラとヤミは瞬時に軌道を変え、残る1人に喰らいつく。すっぽりと影に飲み込まれた社員は我に帰るまもなく、夜姫の鬼の腕に叩き潰され、倒れ伏した。
    「お餅は美味しいけど、食べ方を間違えると危ないからね」
     ほっと息をついて夜姫が言う。依頼を成功させただけでなく、淫魔を戦闘に巻き込むこともなかった。
    「……普通に焼けば食べられるかな?」
     と、早苗は残された缶を手にとる。葵はルリコの逃げていったほうをみながら、
    (「ファンレター、渡してくれるといいな」)
     小さな声でつぶやいた。

    作者:森下映 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月12日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 4
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