「にぃぃっ」
「ええい、鬱陶しいもちぃ!」
「みぎゃっ」
悲痛な鳴き声と共にその翼を持つ猫は飛びかかり、払いのけられた。
「しつこいもちぃよ! あたいの一体何が不満もちぃ?」
ひっくり返った猫を睨み付けるのは、お尻と豊かな胸に二本のでっかい竹串を挟み込んだトロミのあるタレまみれのやたら露出度の高い少女といった出で立ちのご当地怪人であった。
「うわぁ」
「すげぇ、なんだよあの格好」
「くくく、男達の視線を感じるもちぃ。この調子で存在感をアピールしていけば、なんやかんやで両棒餅が世界征服する日も近いもちぃね」
通行人の視線を受け、ご当地怪人はご満悦。
「みぃぃぃ!みっ! みぃぃ!」
「邪魔もちぃ」
「みっ、みぎゅ」
通行人からその身体を隠そうと飛びかかった猫は身体から引きはがされると、ぽいっと投げ捨てられる。
「うぉばっ」
その時、ご当地怪人に見とれていたオッサンが、電柱に激突した。
「何つーか、コメントし辛ぇーんだけどな」
情報提供者であるレイヴン・リー(寸打・d26564)の呟きへ「さもありなん」と頷いた座本・はるひ(高校生エクスブレイン・dn0088)は一般人が闇もちぃしてダークネスになる事件が起ころうとしていると告げた。
「両棒餅という餅がある。楕円形のお餅に竹串を二本刺し甘い砂糖醤油のとろみダレをかけた餅なのだがね」
どうやら今回はこの両棒餅の両棒モッチアと化してしまう少女が見つかったらしい。
「本来ならダークネスになった時点で生じたダークネスの意識によって人間の意識は消えてしまうはずなのだが、今回のケースでは人の意識を残したまま一時的に踏みとどまる様なのだよ」
言わばダークネスの力をもっちぃながらもダークネスになりきっていない状態とでも言おうか。
「ただし、このまま放置しておけばやがて完全なダークネスとなってしまう」
一時的に踏みとどまった少女の人間としての意識は猫のサーヴァントの姿となって悪行をくい止めようとするらしいが、サーヴァントにダークネスの凶行というか露出プレイというか、ともかくダークネスの行動は止められないらしい。
「もし、猫サーヴァントが悪事を止めるのを諦め消えてしまった時、彼女は完全なダークネスと化してしまう」
その前に闇もちぃしかけの少女を撃破し救出して欲しいとはるひは続けた。
「間に合わずに猫サーヴァントが消えてしまった場合は、悪事を重ねる前に君達の手で灼滅して貰いたい」
前者で済む方が良いことは言うまでもない。故に後者は、あくまで間に合わなかった場合である。
「問題の少女の名は、本棒・涼子(ほんぼう・りょうこ)高校一年生の女子生徒だな」
武人気質で男勝りの剣道少女だったらしいが、道場仲間が両棒餅を知らなかったことがきっかけで口論となり、外に飛び出して「両棒餅」を知っているかを聞いて回ったところ、全滅したことが闇もちぃの切っ掛けだったようだ。
「まぁ、少女の方も両親の都合で数ヶ月前に越してきたばかりだったのでね」
幼い頃過ごした土地、通った道場ではあるが、ご当地的には完全にアウェー、無理もない結果だったのだ。
「そう言う訳で、ご当地怪人両棒モッチアは両棒餅モチーフにした自分の体を見せつけることで知名度を上げようとはかるつもりのようだ」
もっとも、少女の意識としては、すわ露出狂かと言わんがばかりの格好に大反発。何とか身体を隠そうとしては、両棒モッチアの抵抗にあい失敗するという流れを繰り返すこととなる。
「おそらく、君達がバベルの鎖に囚われず接触出来るタイミングでも、両棒モッチアはサーヴァントに飛びかかられているところだろう」
接触後、まず行うのは人払いだ。
「アピールの為、両棒モッチアは人気の覆い場所に居るのでね、人よけのESPはほぼ必須だ」
こうして何とか人払いを済ませればようやく救出に移ることが出来る。
「今回のケースでは猫サーヴァントを存在させた状態でご当地怪人を倒すことが出来れば、少女を救出することが叶う」
つまり、戦闘する必要がある訳で。
「猫サーヴァントに関しては君達が彼女を救いに来たと説明し、納得してくれたなら君達を応援してくれると思われる」
ただし、もし自分を殺しに来たと思われてしまえば、猫サーヴァントはご当地怪人に加勢してしまうだろう。
「戦闘になれば、両棒モッチアはご当地ヒーロー及び日本刀のサイキックに似た攻撃手段で応戦してくる」
油断出来る相手ではないが、勝てない相手でもない。
「やはり、鍵はいかにして猫サーヴァントを説得出来るかだろうな」
そのヒントに関しては、ある意味であからさまだった。主に猫サーヴァントの行動とかで。
「流石にあのような状況を捨て置く訳にもいかないのでね」
少女のことをよろしくお願いするよと頭を下げ、はるひは君達を送り出す。
「しかし、あの格好……寒そうだと言わざるを得ない」
続けた言葉へ、お前が言うなと言いたくなるような露出度の高い格好をしたままで。
参加者 | |
---|---|
ティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014) |
ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954) |
茂多・静穂(千荊万棘・d17863) |
久瀬・雛菊(蒼穹のシーアクオン・d21285) |
レイヴン・リー(寸打・d26564) |
前田・恵(ずんだ色デモノイドヒューマン・d30150) |
牧原・みんと(象牙の塔の戒律眼鏡・d31313) |
月詠・久遠(闇夜の戦鴉・d32307) |
●やめさせないといけないもの
「くくく、男達の視線を感じるもちぃ」
「みぃぃぃ!」
それは、始まりから残念だった。ティセ・パルミエ(猫のリグレット・d01014)が言うところの「猫さんがもっちぃさんで、もっちぃさんがダークネスで! すごいたいへん」な光景は人の目を集め同時に、羽根の生えた猫の猛反発を呼び起こしていた。
(「武人気質で男勝り……っつー話だったけどあの闇堕ち姿が見事に相殺してるな……」)
あまりにぶっ飛んでる怪人の姿にレイヴン・リー(寸打・d26564)がおそらく形容しがたい気持ちを抱く中、牧原・みんと(象牙の塔の戒律眼鏡・d31313)は平静を装いつつも一瞬絶句していた。
「これがモッチア……猫になるよりダークネスになってた方がマシな気はしますね。客観的に自分の行動みなければならないとか凄く罰ゲーム感が」
ご当地怪人からぞんざいに振り払われてしまう猫の気持ちを察してしまったのか、ついと視線を逸らしてしまいつつも、我に返れば小さく頭を振り。
「いえ、まずい状況なのは理解してますよ。きっちり救い出しましょう」
「そうだよね。ご当地怪人らしい地道な世界征服計画思うけど……勿論、放っておくわけにはいかないし」
相づちを打った月詠・久遠(闇夜の戦鴉・d32307)は、猫の中に居る涼子さんも色んな意味で助けて帰ろう、と続け、歩き出す。
「罪なき夢を守るために!」
スレイヤーカードの封印を解いて。
「ですね。趣味が合わない怪人ですが、それはそれ。闇の中でもがく気持ちは分かりますからね。ちゃんと救出してあげましょう!」
同意した茂多・静穂(千荊万棘・d17863)が殺気を周囲に放ち始めたのはこの直後。
「変身!」
「な」
「にゃ?!」
カードの封印を解き、久瀬・雛菊(蒼穹のシーアクオン・d21285)が猫とご当地怪人の間に割り込んだのとほぼ同時だった。
「こ、これは一体どういうこともちぃ?!」
「はいはーい、ここはイベントで封鎖されるので退去ねがいまーす」
「あら、そうなの? 仕方ないわねぇ」
作り出される巣にご当地怪人両棒モッチアが混乱する中、笛を吹いたティセが買い物帰りのおばちゃんを現場から追い出しにかかり。
「あんな露出狂よりスマートな眼鏡の美しさを貴方は求めているのではありませんか?」
「うぐっ、何て眼鏡力……」
通りかかった高校生はみんとの眼鏡力、じゃなかったラブフェロモンによって魅了され。
「暫くここから離れて頂けると有難いのですが……」
「イエス、マイ、眼鏡」
お願いによくわからない返事を返して去って行く。
「見世物じゃないですよ~、見ちゃダメですよー」
「な、群衆が……ギャラリーが減ってるもちぃ?!」
「お、良い感じだな」
愕然とするご当地怪人の姿に、通行人の視線を奪い取ろうと両棒餅を模した被り物を身に纏ったままで、ファルケ・リフライヤ(爆走する音痴な歌声銀河特急便・d03954)は呟いた。
●説得しよう
「俺達は涼子を救いに来た味方だよ」
両棒モッチアが想定外の事態でパニックに陥っている隙をついて、前田・恵(ずんだ色デモノイドヒューマン・d30150)は羽の生えた猫に接触する。
「にぃ?」
「本棒・涼子さん。そこにいるよね。僕達は事情を知ってる。貴女を助けに来た」
目を剥いた猫へと後を継ぐ形で問いかけたのは、久遠。
「貴女の体乗っ取ったあの露出狂の悪霊、止めに来ました」
「そうです、私達は殺しに来たのではありません、貴方を助けに来ました! 露出も辛いですよね、嫌ですよね……ですからこうやって、見えないようにして、人も遠ざけてます」
続くみんとの言葉を肯定する静穂が口にしたとおり、通行人達が散って行き。
「一体どういう……そこ、何をゴチャゴチャ言ってるもちぃ?」
戸惑っていた両棒モッチアが猫のサーヴァントに話しかけている灼滅者達に気づいた時だった。
「両棒って書いてぢゃんぼって読むんだろ? 特徴的な名前だよな、あんたの好きな餅。ちゃんと知ってるぜ。その……そんな格好でアピールしなくてもな」
レイヴンがご当地怪人へと声をかけたのは。
効果は抜群だった。
「涼子さん……貴女は其処の怪人に体を乗っ取られてる状態やけど、貴女が無事なまま怪人を倒せば貴女は元に戻れる」
「貴女の体は操ってる者がいる。僕達は貴女の体と戦って、それを止めないといけない。信じて欲しい。貴女を助けさせて欲しい」
顔一杯に喜色を浮かべた両棒モッチアの注意は完全にレイヴンへ向き、ここぞとばかりに雛菊達は猫の説得にかかり。
「みぃ?」
「ええ。比喩がちょっとばらけてますが……倒せばあなたも元の体に戻れて普通の服に戻れますよ、ほら」
説明に齟齬があったからか、少しだけ訝しげに鳴いた猫へみんとは頷きを返すと、直前まで説明していた二人を示した。
「わたし達は貴女を助けたいんよ。勝手に望まん事の上、両棒餅を侮辱と恥辱されとる様な物やし」
「必ず貴方の体を取り戻します、貴方も諦めないで」
同じ立場ならと考えるだけで、と雛菊は続け、猫の目をじっと見つめた静穂が今度は訴える。
「やめようよ! そんなの寒いし恥ずかしいよ!」
「そんなの余計なおせわもちぃっ!」
一方でご当地怪人側でも複数の灼滅者が説得していて。
「こっちこれと言って効果がある様には見えねーな」
気合いを反映したかの様にピンと猫耳を立たせたティセの言葉をはね除ける両棒モッチアを見漏らしたのは、感激したご当地怪人に危うく抱きつかれるところだった、レイヴン。
「ぢゃんぼもち知ってるよ」
と、恵が話に加わって、注意が逸れなければどうなっていたことやら。
「砂糖醤油のとろみが美味いよね」
「おお、話がわかるもちぃね」
ティセの制止ははね除けても、恵との会話は成り立つあたり、両棒餅を広めることが全てに優先するとでも考えているのだろう。
「ご当地品をアピールするに目立つ格好をするのは一手だが、肝心なのは美味しいかどうかの味だろ」
「も、もちぃ」
相変わらず被り物をしたままのファルケに指摘されて微妙に凹んでいる姿は雄弁に語っていたのだから。
「ほんとは俺らに見られるのも嫌かもしれねーけどちょっとだけ我慢してくれ」
ご当地怪人の注意が完全に逸れたタイミングで猫の元に歩み寄ったレイヴンはそれだけ告げると、視線だけをご当地怪人の方へと戻して続ける。
「これから俺らはあいつを倒すことになるんだが、それにはちゃんと理由がある。あれ、あんたの体だろ?」
「みぃ」
「このまま行くとあの体は完全にあいつに乗っ取られちまう」
「ふみっ?!」
他の灼滅者は放置すればどうなるかを伝えなかったからこそか。
「その前にあいつを倒してあんたの体を取り戻さなきゃならないんだ。自分の体を攻撃されるのは不安かもしれねーけど、俺らに任せちゃくれないか?」
驚愕の鳴き声を上げる猫サーヴァントを片腕で制す様にしつつ、レイヴンは問いかけ。
(「闇堕ち救出は初めてって訳じゃねーけど、サーヴァントを説得するってのはなかなか新鮮だな」)
「これ以上恥ずかしい真似はさせない。だから諦めないで」
「ここからは、貴女一人じゃない」
口には出さず、胸中で呟いた後方、猫へとかけられるのは、恵と久遠の言葉。
「そんな格好だとお餅が冷えて固まっちゃうよ」
「ううっ、離せ、離すもちっ」
前方にはタレにまみれるのも辞さず、抱きついてご当地怪人を押さえ込もうとするティセの姿があり。
「ええい、しつこいもちぃ!」
「うみゃぁっ」
「今は耐えましょう、大丈夫、珍しく癒し手の私がすぐに治しますから!」
はじき飛ばされたティセを静穂が即座に癒す中。
「み!」
背を向けぬ二人へ猫は一鳴きして頷いた。信頼を勝ち取れたのだろう。機は熟したのだ。
●救出と言う名の暴力的な何か
「広めたい気持ちはわかるけど、その姿は逆効果だよ。姿ばかり注目され、肝心の両棒餅を知ってもらえない」
「うっ、そ、そんなことはないもちぃ! 興味を抱けば、それが普及への足がかりになる筈もちぃ!」
再び両棒餅の認知度を広めることについて恵と討論し始めた、両棒モッチアは気づかない。
「けどさ、まずは食べてもらう事からはじめてみようよ。そっちの方が良いんじゃないかな?」
「うっ、それは一理あるもちぃ」
「そうそう、お餅は食べてこそだよ~」
ティセが恵の言葉に乗っかりつつWOKシールドを広げて自身を他者の目から隠そうとしたこと。
「さてと……まずは一曲目」
と言うかファルケを始め、灼滅者達それぞれが自分を袋叩きする態勢へ移行しつつあることに。
「セッションスタート、合わせて行くぜ?」
「な、うぐっ」
「せやね、イカスミちゃん」
「もっちゃぁぁぁ?!」
ファルケの視線を受けた雛菊が頷いて呼べば、ライドキャリバーはエンジン音で応え、ファルケの伝説の歌姫を思わせるのに音痴な歌声で耳を塞いだご当地怪人を突撃して、跳ね飛ばした。
「行くよ蒼穹……穴子神霊剣ッ!」
「うぐ……え? も゛」
跳ね飛ばし、アスファルトにバウンドして起きようとしたところへ、非物質化した穴子型のクルセイドソードによる穴子のオーラを纏った叩き付ける一撃。
「もちゃぁぁっ」
起きあがろうとしたところに開幕必殺技ばりの容赦なさで神霊剣が叩き込まれてもまだ灼滅者達の攻撃は終わらない。
「動きを止めていくよ。狙って!」
「ぐ……な、もちっ?!」
「では、お言葉に甘えましょうか。行きますよ、知識の鎧――マキハラントメイガス」
久遠の影が触手と化してご当地怪人の手足を絡め取り、呼び声に応じたみんとがバベルの鎖を集中させた視界の中、帯を射出しつつビハインドへ呼びかける。
「ちょ、ちょっと待つもちぃ! こ、こんな格好のま、あ、ちょ」
「返して頂きますよ、その身体」
「もちゃぁぁぁぁっ」
突き刺さるダイダロスベルトと霊撃、上がる悲鳴。
「みぃぃ、ふみぃぃ」
「同性でも少しばかり目のやり場に困るかな。涼子さんの気持ちはわかるよ。止めないと、ね」
どことなく気まずげに久遠が視線を逸らすと、猫サーヴァントは前足で自分の両目を覆い隠して耐えていた。やはり、最大の犠牲者はこの中の人なのだと思われる。
「餅の為とか言いながら露出したいだけでしょう!」
「うぐぐ、そんな訳ないもちぃ! 普及の為に決まっ」
「そういうのは迷惑のかからない範囲で個人的に……おっといけない。その露出、コレで抑えて上げます!」
「いや、だから普きゅもぢべっ」
指摘への反論をスルーされたご当地怪人は、静穂から跳び蹴りを食らったあげく包帯のようなモノを巻き付けられ。
(「個人的な興味として、猫の能力が気になるとこではあるんだが、まぁ、それはとりあえず救出が成功してからの話だよな」)
少なくとも、誰かの公開処刑じみた戦いをさっさと終わらせるべく、レイヴンは殲術道具に炎を宿し、跳躍する。
「いくぜ」
「っ、もっちゃぁぁぁっ」
二つの影が交差し、胸に挟んだモノを抜串し斬撃が放たれたのと、ほぼ同時に炎を宿した一撃は叩き付けられた。
「みっ!」
猫サーヴァントの尻尾にあるリングが光ったのは、ちょうどこの時。そは、メディックの灼滅者さえ攻撃に回れた理由。
「悪ぃ、助かったぜ」
「に」
リングの光は傷ついた灼滅者達を纏めて癒したのだ。
「うぐっ、あくまで邪魔をするつもりもちぃか?」
両棒モッチアからすれば、実質敵が一匹増えたようなもの。
「ならば、お前から片づ」
「それを許すと思ったか?」
敵意を宿し視線を猫へと向けようとすると、白光と共に斬撃を放ちつつ、恵が立ち塞がる。
「知識の鎧」
更にはみんとのサーヴァントも猫を庇い。
「両棒餅は醤油と味噌味、どちらも優しく後を引く素敵な味やもんそれを知っとる貴女の未来……絶対守る!」
仲間に任せた猫にも聞こえる様に声を発し、雛菊は攻めあぐねたご当地怪人を捕まえるとそのまま、攻撃に繋ぐ。
「アナゴダイナミックっ!」
「もちゃぁぁっ」
生じる爆発の中に元少女の悲鳴が消え。
「今です、畳みかけましょう」
「そうだね。いくよ、ずんだ餅キック!」
灼滅者達の攻撃が集中する。
「ぐっ、がっ、も、もっちゃぁぁぁっ」
説得が成功した時点で、もはや両棒モッチアに勝ち目は無く、悲鳴をあげて倒れると元の姿に戻り始めたのだった。
●門出
「ううっ、ぬるぬるするぅ」
「ちょっと待ってろ」
ファルケのクリーニングが、助けた少女ではなく猫耳をへにょーんとさせて凹むティセへと先に使われたのは、やはりティセがご当地怪人に抱きついたからか。
「おかえり、涼子」
「涼子さん、お疲れ様」
「この場合、ただいまとお疲れさまでいいのかね? ともあれ、本当に世話になったよ、ありがとう」
責任を感じたらしく、悪いねと先に謝罪してから少女は恵と久遠の言葉に応じつつ感謝の意を示し。
「あんた達の言うとおりだったよ。一時はどうなることかと思ったけどさ」
「あ、そのことなんだけど――」
一同が詳しい設営をしていないことに思い至って説明タイムが設けられたのは、この直後のこと。
「そう言う訳で、学園には同じような境遇の人がいるのさ」
「成る程ねぇ」
「だからさ、学園に来てみないか?」
みんとに借りたマント的な物を羽織ったまま頷く少女へと説明に繋げてファルケは歓迎するぜと勧誘し。「うん、おもち学校でみんなで食べようよ!」
「だな。餅仲間は歓げ……とっとっと」
ティセがこれに乗っかれば、恵も便乗する。
「わわっ」
「へっ? ちょ」
何もないところでつんのめった上、バランスを崩して顔から少女の胸に突っ込んだ様に見えたが、まぁ補正はいかんともしがたかったのだろう。
「おや、いけませんね。……どうぞ」
その弾みで地面に落ちた恵の眼鏡を拾うと、みんとは傷がないことを確認してお取り込み中の片方に差し出し。
「大丈夫です、アウェーなら布教する楽しみという物があるのですから。餅も同じくですよ」
視線を移動させて、少女にも布教用の眼鏡を差し出しつつ別口の勧誘を始める。
「いや、アウェーというか今それどころじゃな、ちょっと、どいておくれよ」
「ですから、そういうのは迷惑のかからない範囲で個人的に」
「「違ぁぁぁぁう!」」
「あ、どうせなら続けて罵って下さい」
静穂も加わって、状況が更にカオスになりゆく中、レイヴンは空を仰ぐ。
(「猫の能力の検証はまた今度ってとこだな」)
少女が元に戻って時点でサーヴァントは消えてしまったのだ。
「剣の借りは剣で返すのがあたいの流儀さ」
「よろしくね」
十数分後、何とか事態が収拾し少女が学園へ行く旨を表明すれば、久遠は少女へ笑いかけ。
「よし、だったら歓迎の歌で」
「え゛」
ファルケを見て少女が固まる。きっと戦闘中の歌を思い出したのだろう。
「いや、ちょっと待――」
誰かが制止の声を上げる中、こうして少女は救われ、闇もちぃ事件は幕を閉じたのだった。
作者:聖山葵 |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年2月13日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 6
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