キレ者に怒りを超えて

    作者:幾夜緋琉

    ●キレ者に怒りを超えて
     人気の無い、町外れのとある工事現場……時刻は夜。
     今日は休工日らしく、工事のおっちゃん達の姿もなく、静けさに包まれている工事現場。
     ……が、そんな工場に響くは悲鳴。
    『ギャーー、や、やめろ、こ、こないでくれぇええ!!!』
    『す、すまねえ。知らなかったんだよ、だから、だから……うわぁあああ!!』
     ……ドカ、バキ、という音と共に……次々、トドメを刺されていって仕舞う男達。
     そして、瀕死の状態の男達を足蹴に為ながら。
    「ったく……なんだよ。つえーかと思ったらこの程度か?」
     ガムを音を鳴らして噛みながら、舌打ちしている男。
     見ればその腕は筋骨隆々で、常人離れしていた。
     恐らく、廻りに転がっている者達は、それに気づかず因縁を付けて、ふっかけてしまったのだろう……その結果は、見ての通り。
     ……そして、一人たりとも、動けなくなった所で。
    「あー……ったく、もっと強ーヤツいねーのかねぇ……」
     と、瀕死の彼らを助けることなく、その場を去っていくのであった。
     
    「っし、皆集まってくれたか? それじゃ早速だが、説明を始めさせて貰うぜ!」
     神崎・ヤマトは、教室に集まった灼滅者をひとまず眺めると、早速今回の依頼の説明を始める。
    「今回の依頼、ターゲットになるのは粗暴な羅刹だ。羅刹はどうやら、人気の無い所に、粋がっている不良達に喧嘩をふっかけるなり、ふっかけられるなりをして、歯ごたえのあるヤツと拳を交えているんだ」
    「しかしながら……ダークネスと一般人が拳を交えたら、自ずと結果は見えるだろう。その結果、既に何人もの一般人が被害に遭ってしまっているんだ」
    「勿論、このような事をこのまま続けさせておく訳にはいかない。という訳で、皆にこの羅刹退治を頼みたい。無論、羅刹はダークネスだから、強力な敵で有る事は間違いないが……まぁ、皆なら大丈夫の筈だ!」
     そしてヤマトは、詳しい戦闘能力について説明を加える。
    「このダークネスの戦闘能力。筋骨隆々故に、メインの攻撃手段は腕から繰り出される殴り攻撃、脚から繰り出される蹴撃の二つがメインとなる。この攻撃手段以外、攻撃手段は無いものの、一撃一撃がとても強力な攻撃故に、下手に喰らえば一気に戦況が一変する可能性もある」
    「それにかなり体力も高く、しぶとい相手であるのは間違いない。戦闘が長引けば、ジリ貧になる可能性もある……それぞれが、回復も怠らないように、頑張ってくれ」
     そして最後にヤマトは。
    「ともあれ、羅刹をこのままのさばらせておく訳にはいかない。止める手段は皆の力しかないんだ。みんな、宜しく頼むぜ!」
     と、肩を叩き送り出すのであった。


    参加者
    ライラ・ドットハック(蒼き天狼・d04068)
    志賀神・磯良(竜殿・d05091)
    神虎・華夜(天覇絶葬・d06026)
    リーグレット・ブランディーバ(ノーブルスカーレット・d07050)
    乾・剣一(紅剣列火・d10909)
    ペーニャ・パールヴァティー(星海氷華・d22587)
    巫丞・蒼乃(豪華絢爛舞踏全夜・d24314)
    永星・にあ(紫氷・d24441)

    ■リプレイ

    ●キレし者
     とある町外れにある、工事現場。
     一般人のヤツに嗾けて血祭りに上げたり、嗾けられた状態で反撃して血祭りに上げてやったり……そんなキレしダークネス、羅刹。
     そんな羅刹を倒す為にやってきた灼滅者達……出るのは溜息ばかり。
    「何やってんだろうな、この羅刹」
    「うむ。脳筋とは全く困ったヤツばっかりじゃのー」
     乾・剣一(紅剣列火・d10909)に、巫丞・蒼乃(豪華絢爛舞踏全夜・d24314)が肩を竦める。
     全く以て溜息しか出ない、そんな状況。
     とは言え羅刹は大方そう言った傾向があると言われれば……そうとも言える。
     でも、そんな羅刹の横暴を許せはしない。
    「全く一般人如きを締め上げて、何がもっと強い奴は居ないのか、だ。本当は強い者と戦いたければ、別のダークネスに喧嘩を売れば良い。こいつは気に入らんな」
    「ええ。喧嘩を売る方も売る方ですが、買う方も買う方……とは言っていられない状況ですね。絶対に止めないと!」
     リーグレット・ブランディーバ(ノーブルスカーレット・d07050)と、永星・にあ(紫氷・d24441)が言うと、それに対しペーニャ・パールヴァティー(星海氷華・d22587)が。
    「そうですね……強い方をお探しとなると、まるでアンブレイカブルのような羅刹さんですねぇ。不良はきれー、って感じでしょうかね?」
    「……??」
     きょとんとして、首を傾げる神虎・華夜(天覇絶葬・d06026)だが……更にペーにゃは。
    「いやいや、本人がキレ者なのか、キレ者嫌いなのか解りかねますが、クチャラーである事を指摘したら逆ギレされそうで怖いですねぇ」
    「……まぁ、余り気にしない方がいいと思う」
    「……そ、そうね……」
     ライラ・ドットハック(蒼き天狼・d04068)の言葉に、華夜は軽く苦笑。
     そして剣一と志賀神・磯良(竜殿・d05091)が。
    「仕掛けられてってのは仕方ないトコもあるけど、ヤツから喧嘩ふっかけてくる事もあるってのは気に入らないね。ただの憂さ晴らしじゃねーか」
    「そうだね……喧嘩好きな上に純粋な力押し……あまり私の得意なタイプじゃないね」
    「第一よ、相手が弱いってコも解ってるはずなのに、自分から仕掛けるって事もあるのが気に入らないね。強い相手が欲しいのなら、他のダークネスでも狙ってろってハナシだ。ま、俺等は弱いから徒党も汲むし、使えるモノは何でも使わさせて貰うけどな」
    「そうだね。まぁ、油断せずに、確実に仕留めよう」
     ……と、言っている間にも、何故か踊りまくっている蒼乃。
    「……そろそろ、行くよ?」
    「お、うむ、わかったのじゃー」
     にあに指摘されて、そしてLEDランタン等の用意を一応確認して……そして灼滅者達は、羅刹の居ると言う工事現場へと急ぐのである。

    ●羅刹の暴虐
     そして灼滅者達は、工事現場へと到着する。
     夜中故に、工事現場の人もおらず、静けさに包まれた場所。
     ……そんな工事現場の一角に立っている……羅刹。
    『あー……ったく、歯応えのある、強い奴はいねーのかねぇ……』
     肩を竦め、ため息を吐く羅刹。
     その足元には……既に二人くらい、虫の息で倒れている二人の姿……。
    『う、うう……や、やめてくれよぉ……』
     そんな命乞いを呟き続ける彼らに対し、正直羅刹は聞く耳を持っているような状況では無い。
    『ったく、うっせーんだよ。なんだてめぇ……俺に口答えする気かぁ?』
     睨み付ける羅刹……それに。
    「怒るとキレが悪くなりますよ? とっくに切れ痔かもしれませんがね」
     開口一番、挑発するのはペーニャ。
     その挑発に、羅刹が灼滅者達の方へと注意を向ける……それと共に、すぐさま磯良が殺界形成を発動。
    『……ひ、ひぃぃぃいぃ……!!』
     既にボロボロで、精神的に追い詰められている状況の中、殺界形成で更に威圧なんてされてしまえば……もう、取るモノ取らず、さっさと逃げていってしまう。
     ……そんな一般人達には目もくれず、羅刹は。
    『あぁん? なんだてめぇ達はよぉ?』
     怨みを込めて睨み付けてくる羅刹……対してペーニャ、ライラ、華夜が。
    「私達ですか? 私達はさー、なんでしょうねぇ。まぁ歯応えはともかく口応えはする所存です」
    「……自分より弱い者に拳を降って、恥ずかしくないの?」
    「そう。お兄さん、強い人が好みかしら? だったら、望みを叶えてあげましょうか?」
     三人の言葉に、苛立ちを露わにする羅刹。でも、そんな羅刹に、更に更にペーニャが挑発。
    「さーて問題ですよ。私はこれまで何度キレと発言したでしょうか?」
    『うっせぇんだよ!! てめぇ……俺をおちょくってるのか!?』
    「まぁまぁそう怒らずに。今時キレ芸なんて流行りませんよ?」
    『っ!!!』
     顔を真っ赤にして怒る羅刹……そんな羅刹に剣一、ライラ、磯良が。
    「羅刹とやり合うのは久しぶりなんだけどな……さて、お前は強いんだろうな?」
    「……あなたのようなタイプが一番、嫌い。だから灼滅させて貰う」
    「祓いたまえ、清めたまえ」
     三人が次々と宣告……そしてスレイヤーカードを解放。
     次々とスレイヤーカードを解放していく灼滅者達に、羅刹は。
    『そうかそうか……てめぇら灼滅者って事か。んじゃあ、さっさとぶっ殺してやるぜぇえ!!』
     目の前に居るのが灼滅者であると知ると共に、威勢良く戦闘へと駆け出す羅刹。
     その攻撃を、カバーリングするのは磯良の霊犬、阿曇。
     かなり強力な一撃に、苦悶の鳴き声を上げるが……しかし、しっかりと立ち塞がっている。
    「その欲望に忠実な生き方……少しだけ共感出来るよ。でも、一般人を手に掛けるような、そんな野蛮な行為は大嫌い。私もキミのようにならないよう、気をつけないと、ね」
     と、磯良が宣告すると共に、五色布状のダイダロスベルトを射出。
     並行して華夜は、神命に。
    「神命、今回は仲間を護って頂戴」
     と指示を出し、そして彼女自身、予言者の瞳で自己強化。
     更に剣一のライドキャリバーは。
    「相棒、制圧射撃だ。ヤツの脚を止めろ」
     と、指示を受けて、機銃掃射で羅刹の足元に制圧射撃。
     ……動きを軽く制限させられた所で、更にペーニャとにあのスナイパー二人が。
    「そういえばキレ者との事ですから、斬撃が弱点かも知れませんねぇ……では」
     とペーニャが畏れ斬りの一閃を叩き込むと、逆サイドからにあが。
    「一撃のダメージが大きいなら、その動きを止めるまでです」
     と、螺旋槍。
     二人の斬撃は、足止めされている状態の所に鋭く決まり、羅刹の身体に赤い筋が。
    「ザンゲキが効いて、私カンゲキで御座います」
     更にペーニャが、軽く巫山戯たように言葉を告げる。
     ……そして、クラッシャーのライラ、リーグレット、剣一が、満を持して動く。
     ライラがデッドブラスターで。
    「……これが後々、効いてくる毒よ」
     とバッドステータスを叩き込めば、リーグレットがフェニックスドライブで自己にEN破壊のエンチャント付与、剣一はスターゲイザーの足止め付与と続く。
     そして、仲間達の行動一巡の最後に、蒼乃が。
    「さー、その傷、癒すのじゃー」
     と、踊りながらのラビリンスアーマーで阿曇を回復する。
     そして次のターン。
     羅刹は一切守りに転じることは無い……ただ、攻撃一辺倒。
     ……安曇に続き、今度は神命が変わるようにカバーリングに入り、羅刹の攻撃を受け止めていく。
     そして残るディフェンダーの者達は、スナイパーの陣容と共にバッドステータスを次々と叩き込んでいき、羅刹を苦しめていく。
    『っ……くそ、てめぇら鬱陶しいぞ!!』
     と、怨み節を叫ぶ羅刹だが……そんな羅刹に対し。
    「ふふっ、良い気分になってきたかしら? でもまだまだ魔女のもてなしは続くわよ」
     と華夜は軽く微笑みつつ、宣告。
     羅刹は更に怒りを覚え、攻撃、攻撃、攻撃。
     そんな攻撃に対し、ライラは。
    「……あなたのような危険な攻撃を、そう長く喰らう趣味は無いのでね」
     と吐き捨て鬼神変。並行してリーグレットも鬼神変、剣一はレーヴァテインと続いて、クラッシャー効果も含み、大ダメージをどんどんと叩き込む。
     単体の戦力で言えば、遥かに協力な羅刹ではあるが、チームワークに優れた灼滅者達8人の攻撃の前では、効率的にダメージを叩き込む事は難しかったようで……。
     十数ターンの攻防の後……華夜が。
    「疲れたでしょ? おねんねの時間ね。ゆっくり寝なさい、ボウヤ」
     と、斬影刃の一撃を放ち……何度も何度も傷ついていた身体から、一気に血が噴き出す。
     開いた大傷に、ああああ、と叫ぶ羅刹……片膝をついて、はぁ、はぁ……と荒い息を吐くと……。
    「……あなたも今迄葬ってきた者のように、散りなさい」
     ……ライラの鬼神変の一閃が、その大傷を突き刺し、抉り……羅刹は、絶叫と共に、崩れ落ちた。

    ●怒り抑え
    「……ふぅ、お疲れ様、皆。これで帰れるわね」
     大きく息を吐いて、スレイヤーカードに再度封印する華夜。
     ……そして消えゆく羅刹の影……その影に、ライラが。
    「……自分も力によって滅ぼされる。これが自業自得。あなたの業というものよ」
     と吐き捨て、その影を踏みつぶす。
     そして総てが消え失せ、気配も何も無くなった後……ふと剣一が。
    「あぁ……良く考えたら羅刹ってワリとあーいうモノなのかもな……相手が強い弱いじゃなくて、暴れられるかどうかが重要みたいな」
     その呟きに、にあが。
    「確かに……そうかもしれませんね。単に暴れられれば何でも良い……そんな感覚で彼らは暴れているのかも知れません」
     とぽつり……確かに二人の言う通り、羅刹の粗暴さは、暴れられるからこそ……なのかもしれない。
     そんな羅刹達が生まれては、こうやって灼滅者達によって倒す……それが、灼滅者である者達の使命。
    「ふぅ……終わったとおもったら、疲れがどっと出ちゃった。帰って寝ようか、神命」
     と華夜は霊犬の頭を軽く撫でて言うと、こくりと頷く神命。
    「よーっし、それじゃおわったのう。さー、さー、帰るとするかのー!」
     と蒼乃が踊りながら帰路の先頭へ。
    「……蒼乃さん、何故、いつも踊り続けているの?」
    「ん? そんなの気にしたら負けなのじゃー!」
    「……そう」
     踊り続ける蒼乃に、苦笑するにあ。
     ……ともあれ、無事羅刹は倒したし……もうこの工事現場に用事は無い。
     踊ったり、霊犬の頭を撫でたりしながら、灼滅者達はその場を後にするのであった。

    作者:幾夜緋琉 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月18日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
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