タタリガミの学園~働け! 二宮金治郎!

    作者:三ノ木咲紀

     深夜の中学校に、大きなため息が響いた。
     大きく「HKT」とプリントされたTシャツの上に場末のホストスーツを着た男は、鬱陶しそうに夜空を見上げた。
    「あーーー……。殺してぇ……」
     物騒なことを呟いた男は、遅れてついてくる少年を振り返った。
    「おら! 早く来いよタタリガミ! 俺は仕事さっさと終わらせて、中洲で女はべらせて殺してぇんだよ!」
    「……だったら、さっさと行けばいいじゃない」
     不服そうに口を尖らせた少年は、二宮金治郎像の姿をしていた。
     背中に薪を背負い、手に本を持って歩く少年を、男は苛立ったように殴りつけた。
    「そうもいかねぇんだよ! タタリガミの護衛が失敗すると、上に何言われるか……って、硬ぇ!」
     殴りつけた拳を痛そうに吹く男を、タタリガミは恨めしそうに見上げた。
    「僕は二之宮 銀路って名前があるんだけどなぁ。HKTのお兄さん」
    「うっせ! さっさと仕事しろ!」
     小突かれながら前に出た銀路は、目の前にある二宮金治郎像を見上げた。


    「九州の学校で起きとった七不思議の都市伝説事件やけどな、重大な情報が分かってん!」
     教室に集まった灼滅者達を、くるみは真剣な表情で見渡した。
    「ちょっと前から、武蔵坂以外の灼滅者組織があるみたいや、って情報はあってんけどな。そこの灼滅者が九州のダークネス組織に拉致されて闇堕ちさせられた挙句、利用されとるんや。今も、九州で都市伝説を生み出し続けとる。何とかして、助け出したってんか?」
     タタリガミの護衛としてついているのは、HKT御用達の黄色いTシャツを着た六六六人衆が一体。
     番外だが、なかなかの戦闘力を持っている。
     ポジションはクラッシャー。解体ナイフに似たサイキックを使う。
     タタリガミは都市伝説だが、能力は一般的なダークネスに匹敵する。
     ポジションはディフェンダー。魔導書に似たサイキックを使う。
    「タタリガミの銀路はんは闇堕ち前に教育おかんから、えらいようさん習い事をさせられてたみたいやなぁ。そこらへん考えて説得したったら、弱体化も期待できんで」
     一通り説明を終えたくるみは、灼滅者達に向き合った。
    「無理やり闇堕ちさせられた銀路はんには、自分達が救出に来た灼滅者やー! いうことを訴えたったらええと思うわ。信じてもらえた上でKOできたら、救出できるさかい。みんなも気を付けて、行って帰ってきたってや!」
     くるみはにかっと笑うと、親指をビシッと立てた。


    参加者
    両角・式夜(黒猫ラプソディ・d00319)
    東当・悟(の身長はプラス拾センチ・d00662)
    若宮・想希(希望を想う・d01722)
    由津里・好弥(ギフテッド・d01879)
    逢坂・兎紀(嬉々戦戯・d02461)
    天木・桜太郎(鬼の目突・d10960)
    妃水・和平(ミザリーちゃん・d23678)
    雲・丹(ゆるふわふぉーむにへんしん・d27195)

    ■リプレイ

     護衛に小突かれながら前に出た銀二は、台座の上にある二宮金治郎像を見上げた。
     銀路が像にそっと手を伸ばした時、二つの影が同時に躍り出た。
    「足元がお留守ですよ?」
     若宮・想希(希望を想う・d01722)が放ったグラインドファイアが、放物線を描きながら護衛の足元を捉えた。
     奇襲に大きく姿勢を崩した護衛を、上段から槍が襲った。
    「がらあきや!」
     護衛の死角から放たれた東当・悟(の身長はプラス拾センチ・d00662)の槍が、護衛の背中を貫く。
     見事な連携に地面に叩き付けられた護衛は、よろりと立ち上がりながら中庭を振り返った。
    「だ、誰だ?!」
     突然の攻撃に驚いた声に応えるように、凛とした声が響いた。
    「銀路さん、助けにきました! 内なるダークネスに負けずに自分を取り戻して下さい!」
     真剣に訴えた由津里・好弥(ギフテッド・d01879)のナーミエィラ・ダングが空を切り、護衛に大きな穴を穿つ。
    「お手伝いします!」
     好弥の声と同時に灯された灯りが、暗い中庭を明るく照らした。
     灯りを背に現れた灼滅者達は、銀路と護衛を包囲するように展開している。
     現れた八人と一匹の影に、護衛は苛立ったように怒鳴った。
    「てめーらひょっとして、最近よく俺達を邪魔しやがる連中か!」
     苛立ったように解体ナイフを構えた護衛を無視して、妃水・和平(ミザリーちゃん・d23678)は両手を大きく振った。
    「銀ちゃーん、助けにきたよっ。変なこと手伝わされるのも、習い事させられるのも、もー終わりだよっ!」
     明るい声と共に放たれた真っ黒な靄が、護衛と銀路に向かう。靄が銀路の後ろから飛び出した護衛は、ナイフを構えた。
     灯りにギラリと輝いた切っ先が、毒々しい緑色に染まる。
    「毒の餌食にしてやる!」
     粘土が高い霧が生まれ、鞭のように、舌のように大きくしなって前衛へと放たれた。
     迫りくる猛毒の霧が、前衛を襲う。
     咄嗟に顔を庇った逢坂・兎紀(嬉々戦戯・d02461)は、腕に焼き付くような痛みを感じた。
     皮膚を浸食するような毒が、脳まで響く痛みを走らせる。
     さすがは、番外とはいえ六六六人衆。
     兎紀は楽しそうに護衛を睨むと、槍を手に駆け出した。
     フードの兎耳をなびかせながら、護衛に迫る。螺旋を描く鋭い槍は護衛の腕を切り裂き、抉ったような傷を護衛に残した。
    「都市伝説を作るって、なんか面白そーだけど。無理やりさせてるヤツはサイテーだよなっ」
    「うるせえ! お前らにはカンケーねえだろ!」
     護衛は大きく裂かれた腕を押さえながら後退すると、間合いを取った。
     毒づく護衛の声を聴きながら、両角・式夜(黒猫ラプソディ・d00319)は雪女郎枇杷を構えた。
    「掻き鳴らせ! 琵琶ビート!!」
     雪女郎枇杷から溢れ出す、激しくも美しい響きが、戦場に流れる。
     猛毒の霧が、琵琶の音色にかき消されるように、徐々に色を薄くする。傷がすべて癒えた訳ではないが、とりあえず毒の脅威は去ったようだった。
     靄から逃れた銀二は、周囲をさっと見渡した。
     最初は完全に包囲されていたが、護衛との戦闘で注意が逸れた。
     その隙を狙っていたかのように、銀路は静かに駆け出そうと一歩下がった。その時。
    「お藤!」
     式夜の鋭い声が響いた。
     一瞬のアイコンタクト。主人の意を悟った霊犬のお藤は、一足飛びに駆け出すと銀路の足元にすり寄った。
    「わわっ!」
     じゃれつくもふもふを蹴ることもできず、銀路はその場に立ち止った。
     何とかお藤から逃げようとする銀路に、天木・桜太郎(鬼の目突・d10960)は駆け寄った。
     慌てて走り出そうとする銀路をつかまえると、両手を握り締めた。
    「ガチ二宮金治郎だ! 動いてる! すげえ!」  
    「お、お兄さん?」
     面食らう銀路の手をぶんぶん振りながら、桜太郎ははしゃいだ声を上げた。
    「通ってた小学校にも「動く二宮金治郎像」の話も当然あったんだ! 生金治郎超楽しみだったんだ!」
    「う、うん」
     何と言ったらいいのか分からない表情の銀路に駆け寄ると、雲・丹(ゆるふわふぉーむにへんしん・d27195)は語り掛けた。
    「銀路さん、助けにきたんよぉ」
    「お姉さん達……誰?」
     銀路の問いに、丹はニッコリ微笑んだ。
    「ウチらは、武蔵坂の灼滅者やぁ!」
     柔らかい言葉と共に、交通標識が掲げられた。
    「BS注意」と書かれた黄色い標識から溢れ出す光が、優しく灼滅者達を包み込んだ。


    「武蔵坂……」
     呟く銀路に、悟は頷いた。
    「俺らは、お前らとは別の灼滅者組織のもんや。堕とされたって聞いたから助けに来たで」
    「僕たちとは別の? そんなのがあるんだ」
     目を丸くする銀路に、想希は優しく語り掛けた。
    「この前仲間が一緒に遊んだ金治郎さんも、あなたが出したものですよね。ずっとああやって自由に遊びたかったんですよね」
    「うん! 僕習いごとばっかりで時間なかったから、皆と一緒に遊びたいなってずっと……」
    「タタリガミ! てめぇ、なにダベってんだ! 仕事しねぇとどうなるか、分かってんのか!」
     護衛の恫喝に、銀路はびくっと肩を震わせた。慌てて桜太郎の手を離すと、護衛の隣に駆け寄った。
    「ごめん……」
    「ったく、使えねぇ奴だ! てめぇはさっさと、都市伝説出せや! で、さっさとずらかるぞ!」
    「うん……」
     俯いた銀路が、二宮金治郎像へと向かう。その背中に声が響いた。
    「無理やり闇堕ちさせられて、やりたくねーことやらされて、今すっげーつまんねーだろ?」
     兎紀の声に、銀路は立ち止った。
    「だけど僕、前だって塾ばっかり習い事ばっかりで嫌だったんだ! HKTのお兄さん達に従えば、もうやんなくていいって……」
    「その代り、仕事無理強いされたって、嫌だよなー! 俺! 無理強い! 嫌い!」
     子供のように口を尖らせる桜太郎に、銀路は勢いよく振り返った。
    「僕だって嫌だよ! でも……」
    「黙って聞いてりゃ、てめぇら何様だ? タタリガミの何を知ってるんだよ! こいつはな、二宮金治郎像を動かすのが楽しいんだよ! なあ?」
     馴れ馴れしく銀路の薪にもたれかかった護衛は、解体ナイフを銀路の鼻先でちらつかせた。銀路は軽く下唇を噛むと、頷いた。
    「だろぉ? てめぇら、コイツがやりてぇってことを邪魔すんのか? あぁ?」
    「やらされるって嫌なことやぁ。でもぉ逃げるともっと嫌ぁなるんよぉ。せやからいっぺん立ち止まって思い返すんが大切やってウチ思うんよぉ」
    「思い返す……」
     優しく諭す丹に、銀路は顔を上げた。
    「苦痛なら、無理する必要はないのです。やりたい事、やりたくない事。はっきり話すべきです」
     厳しくも優しい好弥の言葉に、銀路は迷うように口を開いた。
    「でも、でも僕は……」
    「私たちがHKTちゃん倒すから、もう自由だよっ! 今のうちに嫌なら嫌だって言っときな!」
     和平が笑いながら、縛霊手を構えた。
    「そこの下っ端に無理矢理働かされてるんなら、究極のお人好し軍団が原因を断ってやる!」
     力強く宣言する式夜の足元で、お藤が賛同するように一声鳴く。
     銀路は灼滅者達を見渡した。
     笑いながら。力づけるように。決意を込めて。
     それぞれの想いをこめて頷く灼滅者達に、銀路は顔を上げた。
    「僕……僕! こいつらなんかに従いたくない! お兄さんお姉さん、助けて!」
     銀路の叫びに、灼滅者達は即座に動いた。


     清浄な気を宿した風の刃が、護衛を切り裂く。好弥が放った風は周囲の気を浄化し、護衛邪な気を一層際立たせた。
    「無理矢理闇堕ちだなんて酷いです。1分1秒でも早く、取り戻します!」
     清浄な気配に向けて、式夜は一気に駆け出し、玉鋼水芙蓉を展開した。
     駆ける勢いそのままに、護衛のこめかみを殴りつけた。
    「あれー? まさか御同業? ちょっとそう見えなくてごめんねぇ」
    「て、て、えめぇ!」
     式夜をギラリと睨んだ護衛に、炎が突き抜けた。
    「余所見してると、ほら」
     想希の赤い交通標識が、一瞬式夜に気を取られた護衛の肩を強打した。
     虚を突かれた護衛に、無数の拳が叩き込まれた。
     悟が放った閃光百裂拳から何とか逃れた護衛は、フラフラになりながらも銀路に近づいた。
     護衛が銀路に触れる寸前、ウニが動いた。
     ウニの姿に変じた丹が、鋭いとげで護衛に迫る。ダメージが累積した腕に向かって突進した丹を何とか避けた護衛に、槍が唸った。
     避けた先を狙いすましていたかのような兎紀の槍が、護衛に突き刺さる。
     大ダメージを負った護衛は、口元を歪めると銀路を睨んだ。 
    「ちぃっ! おい、タタリガミ! てめぇも攻撃しやがれ!」
     護衛の怒鳴り声に、銀路は黙って首を横に振る。強い決意を示す銀路に、護衛は歯ぎしりした。
     桜太郎はバベルブレイカーを起動させると、護衛に迫った。高速回転するドリルが護衛に突き刺さる寸前、護衛が動いた。
    「おら! 来い!」
    「わわっ!」
     護衛は銀路の腕を思い切り引っ張り、バベルブレイカーに向けて突き飛ばした。
     護衛のダメージを肩代わりした銀路が吹っ飛ぶ。二宮金治郎像の台座に叩き付けられた銀路には目もくれず、護衛は闇を集めた。
     灼滅者達と護衛の間を、闇が阻む。霧よりも粘着性が高そうな雲が護衛を包み、姿を隠した。
    「やってられねぇぜ! あばよ!」
     捨てセリフを残して、護衛の気配が遠ざかる。追おうと思えば追えたが、深追いはせずに銀路に向き合った。
    「いたたた……」
     腹をさすりながら起き上った銀路は、護衛が逃げたことに手を叩いて喜んだ。
    「やった! これで自由に、金治郎像を動かせるね! 待っててね、今この子を……」
    「ちょっと待って!」
     手にした薪で銅像を叩こうとした銀路の腕に、和平は縛霊撃を放った。
     突然動きを止められた銀路は、意外そうに振り返った。
    「お姉さん、何するの? これじゃ、金治郎像動かせないよ」
    「オレ銀路の話、色々聞いてみてーなーっ! 何で金治郎像動かしてぇんだ?」
     兎紀の問いに、銀路はきょとんとした表情をする。
    「だって、金治郎像かわいそうだよ。 雨の日も風の日も、皆が遊んでる時も。勉強しながら薪背負って、一人ぼっちで」
     昔を思い出したのか、銀路は頬をぷう、と膨らませた。
    「僕は、金治郎像を自由にしてあげるんだ。ママからも先生からも、誰からも! 自由にしてあげられる力が『堕ちる』っていうんなら、それでもいいんだ!」
     銀路は本を開くと、オーラを集中させた。本の中から光線銃が生まれて空中に静止すると、号令を待つようにふよふよと揺れた。
    「もう、一人は嫌だよ! だから離して、お姉さん!」
     光線銃から放たれた鋭い光が、和平に放たれた。


     光線銃の射線上に、想希が割り込んだ。
     衝撃を拡散するように構えたが、肩を灼く痛みに思わず眉をひそめた。
    「逃げたいなら、時には逃げたっていい。だけど今は、逃げちゃ駄目です。立ち向かって。手伝うから」
    「逃げてなんか……」
    「習い事しとったら学校のダチと遊べんから寂しいな。俺も独りやった。大人の中で育ったさかい」
     悟の説得に、銀路は顔を明るくした。
    「そうなの? お兄さんなら、僕の気持ち……」
    「そやから大人の仲間作る事にしてん。世界が広がったで。篭ってたら何も変わらん!」
     悟が放ったフォースブレイクを、銀路はとっさに腕で遮った。
     がら空きになった胴に、好弥の槍が走った。
     高速で突き出された槍は、銅の銅の脆い部分を正確に貫き、大きなヒビを与えた。
    「習い事は大変だと思いますが、きっと貴方の為になると思っての事だと思います。でも苦痛なら、無理する必要はないのです。全ての期待に応えられる人間なんていません」
     好弥がつけた割れ目に沿うように、式夜の黒死斬が薙いだ。
    「親の期待ってのも判らなくもないが、押し付け過ぎちゃ逆効果だよなー?」
     割れ目が更に広がり、バランスが崩れかける。
     胴に走った割れ目を庇うように、銀路は一歩後ろへ下がった。
     警戒する銀路に、丹はにっこり微笑みかけた。ダイダロスベルトを器用に操ると、傷の深い想希を包んだ。
    「ウチ習い事ってした事ないから、どんなんやってたんか、いろいろ教えて欲しいんよぉ」
    「習い事、したことないの?」
     驚く銀路に、丹は頷いた。
    「いろいろあってなぁ」
    「そう……なんだ」
    「でもまあ、勉強苦手な俺が言うのも説得力無いけど、知識は一生使えるらしい。何か一つ、好きなもの事や得意なものの事、勉強してみるのも悪く無いんじゃね?」
     言葉と共に、ガトリングガンが火を噴いた。叩き込まれる無数の弾丸は、銅の体に突き刺さり、頑なな体にヒビを作った。
     銀路はボロボロな体を抱きしめるように掴むと、うつむいた。
    「……。帰ったって、前とおんなじじゃ……」
    「逃げたらまた、逃げることになるよ? 嫌なら嫌、良いなら良い。嫌なら断る、銀ちゃんなら、もーできるはずだよっ!」
     煮え切らない銀路に苛立ったように、和平がエアシューズを起動させた。
     聞き分けのない弟に拳骨を食らわせるような飛び蹴りが、銀路の脳天に向かって落とされる。
    「白羽取り!」
     銀路はとっさに和平の足を両手で挟むと、脳天への攻撃を止めた。
     投げ飛ばされて、くるりと回って着地した和平は、どこか得意げな銀路に親指を立てた。
    「だってほら、こんな力あるじゃん。手伝うよっ」
    「こっち来いって。やりたいこと、やりたいだけやって、思いっきり遊ぼうぜ!」
     真っ直ぐな気持ちで手を伸ばした兎紀の手を、銀路は驚いたように目を見開いて見つめた。
    「……うん」
     銀路は兎紀の手を取ると、目から涙をこぼした。
    「僕、皆と遊びたい! お友達も作りたい! それでいっぱい勉強して、いつか二宮尊徳みたいに、立派な大人になりたいよぁ!」
    「お前ならできる!」
     皆の想いを乗せたフォースブレイクが、銀路に放たれる。
     マテリアルロッドは銀路が被っていた銅の鎧を打ち砕き、生身の銀路が中庭に倒れ伏していた。


     目を覚まして体を起こした銀路に、好弥はホッと息を吐いた。
     護衛が嫌がらせに戻って来ないか念のため警戒していたが、その様子はなさそうだ。
     起き上った銀路と視線を合わせた和平は、興味深々に質問した。
    「そいや銀ちゃんみたいな人いっぱいいるの? 私たちと似たような組織だと思うから、皆で遊びいくよっ」
    「あ、うん。ありがとう! でも、無理だよ」
    「? どして?」
     和平の問いには答えず、銀路は俯く。
     空気を変えるように、悟から眼鏡を受け取った想希は提案した。
    「ね、折角だしラーメン食べに行きません?」
    「銀路。九州ラーメンの美味い店知らへんか? 食いたいから案内してや」
     悟の質問に、銀路はパッと顔を明るくした。
    「いいよ! パパに教えてもらった、とっておきのお店に行こう!」
     銀路は笑って歩き出した。
     美味いと評判のラーメン屋に、賑やかな声が響くのは、もう少しだけ先のことだった。


    作者:三ノ木咲紀 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
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