タタリガミの学園~恋とは手書きではじまるモノ

    作者:一縷野望

    「卒業? とかで、焦った奴らががっついてカップルになっちゃう季節じゃーん?」
     HKT! ババンと太文字で記されたTシャツの男は、あくびをかみ殺しつつ傍らの『存在』に視線を向ける。
    「だからさーあ、ちゃっちゃとやっちゃって欲しいのよ。あーばんれじぇんと」
    「…………」
     便箋の冊子を胸に押し当てる少年と青年の間ぐらいの見目の彼は、無言になるコトで不満を顕す。しかし……逆らえないのもまた、わかっている。
    「この高校にゃ『体育館用具室』で告ると必ず結ばれるってやすっぽーい七不思議があんだって。アンタに丁度いいでしょ?」
    「恋、告白……」
     例えば、と彼『都市伝説:恋文仮面』は唇を動かす。
    「メールなんかでお手軽に呼び出したカップルは、ここで告白すると必ず結ばれる」
     ――ただし地獄で。
     その言葉にHKT所属の六六六人衆は「いいねー」と手を叩く。まったくもってやる気のない、とっとと帰りたいって風情で。
     

    「九州の学校で起ってた七不思議の都市伝説なんだけど、とっても大きな進展があったよ」
     灯道・標(小学生エクスブレイン・dn0085)は灯の瞳を巡らせると、手にした手帳をぱらりと開く。
    「武蔵坂学園以外の灼滅者組織があってさ。そこの灼滅者が九州のダークネス組織によって拉致、闇堕ちさせられたのが七不思議の正体だったらしーよ」
     さらりと述べられたがかなり非道い事態。これは看過できないだろう。
    「闇堕ちさせられた灼滅者が、新たな都市伝説を生み出すために学校に出向くのがわかったから、其所に介入して欲しいんだ」
     準備室に入る前に戦闘を仕掛けることになるので、学校の『体育館』が戦場となる。
    「相手取るダークネスは、二人」
     標はぴっと人差し指と中指をあげて掲げる。
    「一人はHTK六六六人衆の男、万代(バンダイ)……20代男性で殺人鬼とダイダロスベルトのサイキックを使用するよ」
     万代は『都市伝説を生み出す元灼滅者』の護衛だ。しかしその仕事にも飽いているため周囲への警戒は薄い。
    「つまり学校に侵入して接触、戦闘に持ち込むのは容易いってコトだよ」
     ……護衛、とは。
     しかしながら奴は六六六人衆。都市伝説と協力し集中攻撃で数を減らすぐらいの知恵は回るし、戦闘に集中していない者の隙を見出し大きな損害も与えてくる危険性もある、注意されたし。
    「んで『都市伝説:恋文仮面』だけど……彼の元人格は高校1年生男子の綴・文(ツヅリ・アヤ)さん」
     都市伝説の主旨としては『告白とは紙に綴った恋文にて行うモノ。それをかっ飛ばす礼儀知らずは地獄へご招待』らしい。
     攻撃は手にした便箋でぶん殴る(気魄:近単+フィニッシュ)と便箋を貼付けて書く(術式:近単+追撃)と便箋ばらまき(神秘:遠列+服破り)がある。
     力量的に、並の都市伝説程気楽に倒せる相手ではない。
     携帯やスマフォをいじる仕草を見せた人を狙う傾向があるが、攻撃が当たりにくいと感じたら見切り解除をするぐらいの理知は持つ。
    「で、さ」
     と、ここまで話して標は小さく息をついた。そうして、打ち明け話をするように、託すように、瞳を眇める。
    「綴さんの意識は闇に閉ざされたわけじゃないんだ」
     攫われ無理矢理ダークネスに堕とされながらも、灼滅者として必死に抵抗している。
    「みんなが助けに来たんだって彼に伝われば、攻撃が鈍るはずだよ」
     説得が叶えば綴・文という青年の魂を呼び戻せるはずだ。それが最終的に彼の救出につながるだろう。
    「ダークネス二人を相手取る割とハードな依頼だから、綴さんを助けるか六六六人衆万代の灼滅、この何れかを達成してくれれば充分だよ」
     もちろん両方できれば万々歳。
     標は文庫本めいた手帳を閉じるとそう口元を綻ばせた。


    参加者
    龍宮・神奈(殺戮龍姫・d00101)
    忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)
    柏木・イオ(鈴カステラ怪人・d05422)
    椋來々・らら(恋が盲目・d11316)
    日向・樹(伽藍堂・d16890)
    橋本・月姫(中学生魔法使い・d18613)
    ブリジット・カンパネルラ(金の弾丸・d24187)

    ■リプレイ


     深夜のアスファルトは全てを拒むように暗く硬い。救い求めど叶わず闇に堕ちた文という青年の絶望が、足音吸い込むこの黒に等しいのだとしたら?
     忍長・玉緒(しのぶる衝動・d02774)は苦しみに思い馳せ、だがなおも心折らずに抗う彼を必ず救うと誓う。
    「都市伝説を作り出す、ね。そんなけったいな事ができるなんてねぇ」
     見目鮮やかなエメラルドを指で掬って背に流し嘯く龍宮・神奈(殺戮龍姫・d00101)に、柏木・イオ(鈴カステラ怪人・d05422)は夕焼け色の髪をふわり、瞳をぱちり瞬かせた。
    「あれもHKTに支配されたタタリガミが関係してたのかな?」
     焼き椎茸振る舞う平和な都市伝説灼滅後、現われたHTKの少女……猫の目で捉えた記憶が蘇る。
    「うぅ、面と向かって告白するだけでも恥ずかしさで死にたくなるのに形に残る恋文なんて……」
     とてもとてもと、橋本・月姫(中学生魔法使い・d18613)は亀のように首を竦めボソボソ。
    「……」
    「っ、ごめ……」
     鋭い眼光に謝りかける月姫へ、日向・樹(伽藍堂・d16890)は張り詰めた気配を崩すように小さく首を傾けた。
     はたはた。
     尻尾を揺らす篝枝さんがきゅぅんと鼻を鳴らしフォロー。その流れにセラフィーナ・ドールハウス(人形師・d25752)は、足を止め僅かに口元を綻ばせる。清廉さ示す純白身に纏う彼女に付き従うように、聖堂騎士の甲冑擦れる音も止まる
    「……人の恋路を呪ったりとかさ、きっとすごく不本意なんだろうね」
     夜に彩描くシュガーピンク、だが持ち主椋來々・らら(恋が盲目・d11316)の面差しは精彩を欠く。
    「殺しと闇堕ちを無理強いさせるのも、カップル地獄行きもノーセンキュー!」
     HKTだかHTKだか……ま、どっちでもいい。
     まだ見ぬ七不思議使いに逢えるわくわく。絶対に助けるから――ブリジット・カンパネルラ(金の弾丸・d24187)の天衣無縫な笑みに、ららの気持ちも浮上。同時に左側の薔薇飾りが動きキャロラインがひょっこり。
     校門が見えてきたので玉緒は人差し指を立てて唇に当て注意喚起。一方、校内に人気がないのを把握したイオは門を乗り越え手招く。


    「あけるよ!」
     唇だけを動かしてブリジットは体育館のドアノブに指かけ思い切りよく、引いた。
     瞬間、ワックスで光る黄褐色の光が溢れ出した。目映さの先には、背高インバネスコートの影と革ジャンの男が並び立っている。
    「貴方の名前はなんでしょう」
     影法師へセラフィーナは鋭い声を投げつける、目覚めよと請うように。
    「人としての、本当の名前は」
     人形作る際に籠める愛情にも似た心の彩。今宵鞄にて眠る一体に想いを重ねれば、タタリガミの姿が陽炎のようにたじろいだ。それは恐らくは人として在りたい、熱。
    『なんだよ、てめーらは』
     振り向いた万代は胸元HKTの文字を潰すように握ると、背で踊らせる帯を躊躇わず射出。
    『――』
     傍らの影は便箋冊子を開き1枚2枚と千切った便箋を虚空に放つ。
     殺意という指向性を持った帯と紙が灼滅者達へ向かう。しかし彼らは怯まず床を蹴り命託す武器構え、疾走。
     鍵を握り封印を解きし玉緒の肩へ痛烈が刻まれる。押し返すように、手の甲に浮かべた盾にて万代の顔面を殴打。
    「よく耐え続けたわね。でも、もうこれに従う必要はないわ」
     群青の瞳を横に流し呼びかけた。
    『……ぁう』
     だが虚空で渦巻いた便箋は止まらず、駆け込む攻め手と護り手に纏わり付きその身を破く。飛び散る血飛沫に樹は肩にかけた唐傘を下ろし、下ろくろに指をかけた。
    「ヒーロー見参っ!」
     ぱっと艶やかに散る金糸と暁リボン。
     弾丸のように駆け辿り着いたブリジットが操るロッドの翼がはためき幻影、華麗に冷涼掠め斬りタタリガミ恋文仮面の喉元へ。
    「助けに来たわよっ!」
     私たちを、信じて。
     湛えた魔力と共に届けと言霊、ブリジットは思いの丈を彼へと注ぐ。
     ノックバックで揺らいだ上半身を叩き直すように背後から凶猛なる衝撃。
    「あなたも灼滅者なら知ってるわよね?」
     翡翠の鱗を押しつけて、神奈は切れ長の琥珀を爛々と輝かせる。
    「あなたを救い出すには戦うしかないって」
     戦いへ駆立てる衝動へ身を任せる神奈の脇を掠め、イオの拳が昇竜のように突き抜け恋文仮面の顎の下へ突き刺さった。
    「同じ灼滅者の仲間として助けにきたぜっ!」
     バチリ!
     爆ぜる雷。不定形の闇に隠されし文を見出すべく体内から輝きを思う様引き出し具現化する。
    『!』
     迫り来る氷へ千切った便箋ひらり、全ての氷は包まれ落ちた。月姫はううと奥歯を噛むがすぐに口火を切る。
    「あ、あの……恋文仮面さん?」
     今からの言葉が報告書に残ると思うと恥ずかしさで死にたくなる。でも、そこをぐぐっと堪え、続ける。
    「あなたはわたしたちと同じ灼滅者であって、ダークネスと戦う仲間であって……だから負けないでください……」
     どうか、殺戮の権化と成り果てないでくださいと、月姫は振り絞るようにそれでも囁くような声で訴えかけた。
    「そう、らら達は武蔵野坂学園っていう灼滅者の組織で……」
     薔薇の香りと共に彼の元に降り立つららは、胸で編んだ漆黒を翳した指輪を砲台に万代へ放つ。
    「ええ、堕とされた仲間がいると聞き、助けに参りました」
     セラフィーナの縛霊手へ重ねるように騎士の盾が征く。
    『ちっ! だっるー』
     舌打ちの万代は軽やかに身を振り弾丸と糸、盾を躱した。だが構わず恋文仮面……いや、綴文という青年を見つめ、
    「綴くんの味方だよ」
     かっきりと宣言、闇を照らす。
    「綴さん初めまして」
     ぱさり。
     和紙の擦れるような音たてて樹の手元で山吹が灯り、仲間達の裂傷を塞いだ。キャロラインと篝枝さんは玉緒へしゃぼんを飛ばし眼差しを注ぐ……さすがは六六六人衆、万代の一撃は相応に重たかった。
    「東京は武蔵坂から、同じ灼滅者として貴方を助けに参りました!」
     声は届いた、受け止めた我らが此処に、いる。
     だから、希望という光を今一度思い出して――どうか、どうか。


     今回、灼滅者達は恋文仮面へ身を窶す綴文の救出へ的を絞りきった。口々に彼を説得し攻撃もかなりそちらへ向けている。
    「殺意に呑まれた獣はそこで大人しくしてなさい」
    『完成すんのが怖い半端モノは黙ってッな!』
     命中の高いイオがターゲットを絞らず捕縛試みたため万代へ当ててはいるが、文への視界を遮るように立ち回る玉緒は集中的に狙われていた。
     敢えて最初は攻撃手の守護付与にまわったららと、気を緩めず癒し続ける樹、サーヴァント達の健気な回復行動により、辛うじて崩れずに済んでいるのだ。
    「……ッ。平気よ」
     血で滑る床に足取られぬよう踏みとどまり自ら癒す。しかしこの状態が続けば遅かれ早かれ膝をつかされるだろう。早急に恋愛仮面の説得が必要だ。
    「目が醒めるまであなたの相手は私よ」
     ブンッ!
     空間を斬る勢いの風切り音たて龍が吠える。神奈の飼い慣らす龍の顎が恋愛仮面を喰らい血を吐かせた。
    『……』
     便箋を千切る、複数を巻き込む攻撃の兆候に神奈は舌打ち。一対一に持ち込みたいが毎回といかないのが口惜しい。
     咄嗟に取り出した携帯を手に、イオは周囲へ視線を巡らせた。
    「大丈夫です」
     後押しするように頷くは癒し手の樹。後衛の被弾は少ない、攻撃を寄せても直してみせると虚傘 紺紅夜魔吹をくるり。
    「了解!」
     あくまで視線は外さずに携帯ボタン連打。
    『礼儀、知らずめぇ!』
     インバネスコートを靡かせて巻き上げた便箋は方向を変え、後衛へと降り注いだ。
     便箋に青インキで意図無き羅列を記す、それはぶちまけられた寄生体が樹の体から弾け出る……つまり負傷を意味していた。
    「篝枝さん、大丈夫ですか?」
     山吹を咲かせる主へ慈愛の瞳を向ける事で篝枝さんは答えた。
    「大して痛くはありません、綴さんも気付いてるんじゃねーです?」
     たじろぐ文の手をイオは取った。
    「お前が綴りたいのは、こんな呪われた伝説なんかじゃないんだろ?」
    『……うぅ、う』
     勘弁な! と、片手は握ったままで振りかぶった祭壇の糸巡らせ絡め取る。
    「そ、そうです」
     ハムスターのようにちょこちょこ近づいた月姫は、固まる動きを逃さずに身に潜む蒼の剣で胸元を斜めに裂いた。
     まだ大丈夫――手応えに唾を飲み、月姫は恥ずかしさ堪え声を震わせる。
    「そいつはあなたの恋文へのこだわりを、殺しの名目に利用してるだけで……」
     理解も同調もないと告げれば更に動きが凍った。
    「ねえ、貴方が描くのは地獄への片道切符じゃないでしょ!」
     ブリジットの黄金が室内へあり得ざる三日月を描き、真闇へ一筋の光となりて切り込んでいく。
    「仮面で上手く心を言葉にできないなら、私がその心を砕くよっ!」
     畳みかけるように身を躍らせて、髪飾る輝きが宿ったような黄金の腕を叩きつけた。
    『俺……が、描きたかった…………も、の?」
     ぽつりぽつり。
     落ちる自らの声に、恋文仮面は便箋を引き裂こうとした指を震わせ止めた。

    『ちっ! 口ばっかりぺらぺらぺらぺら……』
     仕切り直すように一人を殺すかと舌なめずり、当然狙いは痛め続けた玉緒。
    「己の闇を跳ね除け、名前を取り戻して! 綴文」
     もはやこれまでと覚悟を決めて張り上げた、が、痛みはいつまで経っても来なかった。
    「――」
     蛇のような帯の前へ果敢に割り込んだのは無骨な甲冑。
    「騎士よ、よくぞ役目を果たしました」
     罅割れ砕けた肩口、垂れ下がる右腕……もはや消失寸前の従者をセラフィーナは鷹揚にねぎらった。
    「つ、づり……俺……」
    「ええ、貴方の名は……」
     そして人の形を取り始めた文へ説得を畳みかけようとするが、それは万代の割り込みで阻まれる。
    『はっはー、戻ったって絶望だけだぜぇ?』
    「やめなさい!」
     闇から舌なめずりの六六六人衆、その悪しき言霊を潰すべく叫ぶブリジット。だが万代は声の隙を狙ってねじ込んだ。
    『ここで助かったってさーあ、てめーのお仲間はみーんなコッチ側よ』
    「……ッ! そ、そんなっ」
     見開かれた瞳が不可逆の絶望に染まりきる、前に――。
    「お友達の所にも学園の皆が救出に向かってるから絶対に大丈夫」
     泣かないで。
     ダークネスに負けないで。
     皆の所に帰ろう。
    「ほ、本当……?」
     泣き出しそうな文の瞳へららはこくり頷く、彼の苦悩に鼻の奥がきゅっとなるけど泣いてられない!
    「綴文さん」
     砕けるように従者が去った向う側から、セラフィーナが呼びかける。
    「私達、別にたった8人で助けに来たわけではないのですよ?」
     穏やかで安寧に導く声に、恋文仮面だった男の膝がゆるゆる折れた。
    「た、助かった……のか、な?」
    「そう。助かったあなたも私達と一緒に戦うの!」
     神奈の激励に零れた涙を拭い顔をあげる。そんな彼に未だ纏い付く恋文仮面の欠片。消す様にららの翳した標識が髪色シュガーピンクよりなお濃い赤へ。セラフィーナも人形繰りで馴染んだ糸で縫うように影を潰す。
     その間「痛いけど」「我慢して」「戻るためだから」と口々に励ましが降る。その一つ一つに感謝するように頷いた。
    「ありが……とう」
     文は文に戻り文として意識を手放した――こうして、灼滅者達は七不思議使いの青年の魂を救い出したのである。


    『恋文仮面』という駒を失った万代と手負いの灼滅者達、拮抗に見えて勝敗の天秤は微妙にではあるが後者へと傾いていた。ダークネス2人の間に誰1人地につけられなかったのが響いているのだ。
    『……死ねや!』
     練り上げ放つ皆殺しの気、これで果たして何人が斃れるか……。
    「ッ……くぅ」
     玉緒唯1人、しかも堪えるように凌駕。打った瞬間にそこまで感じ取っていた万代は予想が外れなかった事に舌打ちし床を蹴った。
     文の救出を1番に考えていた彼らはその跳躍を阻む事は、できない。
     心ゆくまで戦いきれぬ乾きに神奈は踵を叩くように踏みならす。眠りし龍の影が追うように伸びるも、噛みごたえは霞みの如し。
     ガシャン。
     即座に頭上で窓の割れる音、そして降り注ぐ硝子の欠片。
     イオは悔しげに手を握るもすぐにあっかんべー!
    「いずれ追い詰めてやるから覚悟しろよっ!」
     ……多かれ少なかれこの場にいる誰もが逃がす事への苦渋を抱いていた。
     それでも、
     文の救済を最優先とした選択を後悔はしない。
    「ん、んぅ……」
     布ずれの音が滑らかな床を滑り、文が目覚めるに至ってそれは彼らの中で確信となる。
    「らら達と仲良くしてくれると嬉しーな、綴くんっ」
     身を起こした文と入れ替わりへたり込んだららは、感極まって泣き笑い。
    「良かった……」
     鍵を両手で包む玉緒の面に安堵が灯った。
     情報交換はまた後かと、イオは荒い息の文と疵だらけの仲間達を見て頷いた。
    「あ……うー」
     もじもじ。
     皆の影に隠れた月姫。
     大事な事だとわかっていても、言えない――自分の想いを整理して素直に伝える、なんて恥ずかしくって、無理だ。
    「うん、良かった良かった!」
     初遭遇の七不思議使いに興味津々のブリジットは、表情豊かにくるりとリボン色の眼を瞬かせた。
    「改めて」
     釣り目の三白眼も、笑えばにっと潰れて猫や狐のように人好きのするものとなる。それは元来の樹をよく顕していた。
    「綴さん初めまして、東京は武蔵坂から参りました、日向樹です」
     それを皮切りに名乗り出す灼滅者達。忘れぬように文は便箋に名を書き留める。
    「助けに来てくれて、ありがとうございました」
     また『俺』として話せる幸せに寿いで、青年は爽やかに口元崩す。
    「さぁ、恋文仮面……いえ、綴・文さん」
     漢字も几帳面に聞く彼へ、セラフィーナは微笑まし気に瞳を眇めた。
    「貴方も一緒に帰りましょう?」
     ――仲間達の待つ武蔵坂学園へ!

    作者:一縷野望 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 0/素敵だった 9/キャラが大事にされていた 0
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