タタリガミの学園~彼が紡ぎしものは

    作者:カンナミユ

     男は退屈で仕方がなかった。
     俺は子守ではない、何でこんな事をしなければいけないのだ。
     広い室内の隅に寄せられた机に腰掛け、男は月明かりに照らされた少年を見つめる。
    「……早くしろ」
     俯きながら音楽室の奥へと歩く学ラン姿の少年だが、静かな苛立ちを言葉に男が言えば、少し早くなったような。
     ゆるゆると歩く少年は埃をかぶったピアノと黒板を前に立ち止まる。
    「……さっさとやれ」
     何か言いたげに視線を向ける少年だが、じゃきっと音を立てて向けられる銃口に諦めたのかポケットからスマートフォンを取り出し操作する。
     するとスマートフォンのスピーカーから流れるべき音楽は鳴らない筈のスピーカーから響きだした。
     音は割れ、かすれ、そして頻繁に混ざるノイズを耳に少年は瞳を伏せ、口を開き、ブレス。
    「――――」
     こいつの歌声は嫌いではないが、どうせ聞くなら死にゆく者の悲鳴や断末魔の方がいい。
     『HKT六六六』とプリントされた黄色いTシャツを着た男は腕を組んだまま瞳を閉じ、不快な音楽に重なる少年の歌声に耳を傾けた。
      
    「既に知っていると思うが、九州の学校で発生していた七不思議の都市伝説ついて重大な情報を得る事ができた」
     集まった灼滅者達を前に結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)は開口一番にそう告げる。
    「武蔵坂学園以外の灼滅者組織の灼滅者が、九州のダークネス組織に拉致され闇堕ちさせられて利用されていたのが原因だったようだ。そして、この灼滅者達は現在も九州の学校で都市伝説を生み出し続けており、この状態を放置する事はできない。
     そこで今回、彼らが都市伝説を生み出す為に九州の学校へと出向いてきた所を襲撃し、救出する作戦を行う事になった」
     灼滅者達の視線を受ける中、相馬は机に置いた資料を手に取り、説明をはじめる。
     場所は山村の廃校。
    「闇堕ちさせられた灼滅者は護衛であるHKT六六六人衆の男と共に2階にある音楽室に訪れ、七不思議の都市伝説を生む。彼らと接触できるのはその瞬間だ」
     説明によれば音楽室へは廊下、そして隣接する音楽準備室の二つから入る事ができる。
    「闇堕ちさせられ、タタリガミとなった灼滅者――ヒビキという少年なんだが、『誰もいないはずの音楽室から不気味な音楽と歌声が聞える』という、自分がこれまでに生み出した都市伝説で最も戦闘力の高い都市伝説の姿となったようだ」
     俯き、暗い表情のヒビキは音楽室内に不気味な音楽を響かせ歌を紡ぎ、都市伝説を生む。
    「ヒビキはお前達と同じくらいの強さを持っているようだが、うまく説得できれば攻撃を鈍らせることができるようだ」
     そう言い、相馬は資料をめくり説明を続ける。
    「ヒビキが七不思議の都市伝説を生む間、彼の護衛を勤めるHKT六六六人衆の男は両端に寄せられた机に座っている。この男、トウゴって言うんだが、どうやら護衛をするのが嫌でさっさと帰りたいらしい」
     護衛より戦いを望むトウゴは、すぐにでも帰れるように入口側の机に座っている。そして、ヒビキが救出されたのを知れば即座に撤退してしまうそうだ。
    「無理矢理闇堕ちさせられた灼滅者についてだが、自分達が救出に来た灼滅者である事を訴え、信じてもらった上で撃破すれば救出する事が出来ると思う」
     そう言い、相馬は資料を閉じると灼滅者達へと視線を向けて言葉を続ける。
    「お前達ならこの件を無事に解決できる筈だ。頼んだぞ」


    参加者
    科戸・日方(高校生自転車乗り・d00353)
    北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)
    ワルゼー・マシュヴァンテ(教導のツァオベリン・d11167)
    三雨・リャーナ(森は生きている・d14909)
    御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)
    ホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988)
    倉本・佐知(都市伝説狩りの女・d21053)
    七枷・緋由(分解系女子・d31760)

    ■リプレイ


     灼滅者達はそのタイミングを待っていた。
     音楽室へと繋がるドアの窓から北斎院・既濁(彷徨い人・d04036)は気付かれないようちらり覗けば、黒板の方へと歩く少年の姿が見えた。
     俯きゆるゆると歩く学ラン姿の少年の歩は遅く、それはまるで進む事を拒んでいるかのよう。
     無理矢理に闇堕ちし、タタリガミとなった七不思議使いの少年――ヒビキ。
     ヒビキを闇堕ちから助ける、その為に来た。
     科戸・日方(高校生自転車乗り・d00353)は決意を胸に、埃をかぶったドラムセットへと視線を向けた。
     ヒビキの歌声はこの九州の学校に都市伝説を生む。きっと音楽が好きなのだろうと彼の事を思う中、ふと流れ出した旋律を耳にする。
    「……はじまったな」
     それは音楽準備室からでも十分聞える音だった。ワルゼー・マシュヴァンテ(教導のツァオベリン・d11167)は言い、瞳は不快な音が響く音楽室へ。
     エクスブレインが説明したとおり、護衛するHKT六六六の男に強要されたヒビキは都市伝説を生み出そうとしている。
     ひび割れ、かすれ、頻繁にノイズが混ざる音にホテルス・アムレティア(斬神騎士・d20988)はかすかに眉を寄せ、三雨・リャーナ(森は生きている・d14909)も悲しげに瞳を伏せた。
     あの少年はどれだけ都市伝説を生み出したのだろう。どれだけ強要され、歌い続けたのだろう。
     口元を覆うマフラーを引き上げ、倉本・佐知(都市伝説狩りの女・d21053)はタタリガミとなった少年の身を思い、
    「まだ間に合う。そう信じて俺は行く」
     静かに、そして誰に言うでもなく小さく口にする御剣・譲治(デモニックストレンジャー・d16808)の言葉は灼滅者達の決意でもあった。
     まだ間に合うのだ。これ以上、彼が利用されない為に救う事が。
     だが、ヒビキには護衛としてHKT六六六の男――トウゴがいる。何としても彼をおさえ、そしてヒビキへと言葉を投げかけなければ。
    「……ん、それじゃあ行こう」
     音楽は流れ、ヒビキは歌う。
     接触できるそのタイミングに七枷・緋由(分解系女子・d31760)は言い、仲間達は顔を見合わせ音楽室へと突入する。
     

    「――――……」
     不快な旋律と溶け込む声は招かれざる者達の音によってぷつりと途切れた。
     黒板とピアノの前に立つヒビキは俯いたまま、暗い瞳は目の前に現れた八人の学生達へと向く。
    「聞け、ヒビキ殿。我々は武蔵坂学園の灼滅者、おぬしを救いに来た者たちよ」
    『……武蔵、坂……』
     ワルゼーの声に応えるのはざりざりとしたノイズが混ざる少年の声。それは音楽室の四方設置されたスピーカーから流れるものだ。
     その声に灼滅者達は直感する。それがヒビキの――タタリガミの声なのだと。
    「私たちは灼滅者。あなたと同じ力を有する者よ」
     まっすぐな瞳を向けた佐知もヒビキへと言葉を向けるとホテルスも騎士として恭しく礼をする。
    「お初にお目にかかりますヒビキ殿。我輩はホテルス・アムレティアと申します。今日は騎士として同じ灼滅者としてこの悲しい歌を止める為、御身を救い出す為にこの場に参りました。」
    『……灼滅……者……』
    「ヒビキ、テメェを元に戻しに来たぜ。他にも同じ様な仲間何人か居るんだろ、大丈夫そいつらも今助けに向かってる」
     ざりざりとした声はホテルスに反応し、日方の言葉にその顔が持ち上がろうとするが――、
    「……勝手に入ってきておいて、ガキを奪おうってか」
     背の一部までが刃になっている斬艦刀を構え牽制に立つリャーナの視界の先、廊下側に寄せられた机に腰掛けていたトウゴは様子を伺っていたが、ようやく口を開いた。
     いつでも戦えるよう体勢をとっている既濁や緋由を前に、ぎしっと机を軋ませ立ち上がると鋭い瞳を向けて銃を構える。
    「歌え」
     低く、威圧する声。
     自らが守るべき対象のヒビキへと銃口を向けたトウゴの冷たく、感情の無い声はなおも続く。
    「お前の選択肢は一つしかない」
     ああ、やはり強制されている。
    「何かを強制される事なんて、絶対に良くない。俺は君を助けたい。俺が――」
    「都市伝説はこいつらを殺してからでいい」
     立ち尽くすヒビキに淡々と、だが実直な言葉を向ける譲治だが、それはトウゴに遮られてしまう。
    「歌え」
    『…………』
     銃口を向けたまま、強く、再びトウゴは命令すると灼滅者達が割り込んだ先に立つタタリガミは言葉もない。
    「駄目だ、ヒビキ!」
    「ヒビキ殿!」
     日方とワルゼーが声を上げるも俯くヒビキには届かない。
     手にしたままのスマートフォンに指を滑らせ、たん、とタップ。そして――、
     

    『――――!』
     突如鳴り響く旋律、そしてひび割れた声。
     タタリガミが奏でるそれは灼滅者達へと襲い掛かる!
    「……くっ」
     耳を塞いでもどうにもならないそれに眉をひそめる緋由へとトウゴが弾丸を放ち、
    「させません!」
     ぎん! その一撃は音を立てリャーナの刃が防ぎ、再びの弾丸をダイダロスベルトが弾く。
    「……助かった」
    「どこまでも厄介で、面倒くさい連中だなぁHKTってのは」
     ばさりと髪をなびかせ礼に応えるワルゼーは弾かせたダイダロスベルトを翻し、トウゴへと射出させる。
    「手出しは無用だ、六六六よ。ガチでやり合う気は無いが、此方の邪魔はさせんよ」
    「こんな下っ端仕事してるんじゃあ、たかがしれてるな」
     既濁も続くと牽制にリャーナが動く中、ヒビキへ言葉を向けるのはホテルス。
    「我輩としてはそんな暗い表情で強制されて歌った悲しい歌ではなく、御身が心の底から楽しんで笑顔で歌った歌を聞きたい所ですな」
     ざくりとえぐり、トウゴの腕を血が伝うのを目に振り向けば、仲間を癒す譲治の先にいるタタリガミは微動だにしない。
     駄目だ、声はまだ届かない。
    「んむ、それじゃあ……嫌がらせ、開始」
    「そこをどきなさい、ダークネス」
     廃材を集め組み立てたバイオレンスギターを手に緋由はソニックビートを奏で、ダイダロスベルトを展開させた佐知もトウゴめがけレイザースラストを放つとそれは頬を切り、つと血が流れる。
     灼滅者達の攻撃を受け、HKT六六六の男は顔色一つ変えない。
    「そこをどくのはお前達だ……!」
     攻撃するヒビキを目に、自分と護衛すべき対象の間にいる灼滅者へとトウゴは攻撃を放った。
     灼滅者達は救出すべきヒビキに攻撃を向けず声のみをかけ、トウゴへと攻撃を続けた。少しでも救いにきたと信じてもらう為に。
    「トウゴさん、ですか? 聞こえませんか、貴方には。この風の泣き声が」
     スピーカーから響く声を耳にリャーナは攻撃と共に問うが答えはない。
     その反応にダークネスの言葉に出ぬ答えを悟ったのだろう。リャーナは得物を振り上げる。
    「で、なければ。リャーナは貴方を圧し止める向かい風になりますよ」
     応えもなく弾かれる攻撃。そんな様子を目に譲治はダメージを受けた仲間達を癒すがその内心は複雑だ。
     自ら盾となり仲間を守りたい。そう思う譲治ではあるが、仲間が受けた傷を癒すのはとても大切な役割だという事も分かっている。だからこそ、自分の代わりに前に立ち、ヒビキに声を向ける日方へと癒しを送る。
    「聞いてくれ、ヒビキ! 俺らはテメェを元に戻しに来たんだ! 助けたいんだ!」
     その瞳はまっすぐに自分を攻撃するヒビキへと向けられていた。
     少し前に闇堕ちから助けられた日方は今回の件も他人事じゃないと思えないでいた。だからこそ、体のあちこちに傷が生じ、膝をつきそうになっても声をかけ続け、踏みとどまる。
     灼滅者達がかけ続ける言葉はいずれタタリガミを闇から戻すものとなる事をトウゴは分かっていた。
    「……どけ!」
    「させるか!!」
     攻撃をせず、目の前に立ちヒビキの影に身を裂かれ、それでもなお攻撃が向く仲間を守る為に、動く。
    「目を覚ませ、ヒビキ!」
    『…………』
     既濁を庇う後ろには――ピアノがあった。
    「なぁ、音楽好きなんだろ。そんな俯いて暗い顔して出す音じゃなく、顔上げて明るい声紡ごうぜ」
    「先程も言いましたが、我輩としても御身が心の底から楽しんで笑顔で歌った歌を聞きたい所ですな」
     ぼたぼたと血を流し、日方はピアノを背に言葉を搾り出すとホテルスも言葉を向け、
    「HKTの連中に無理矢理闇堕ちさせられたこと、さぞつらかろう」
    「あなたの力は悪意ある怪異を生み出すためのものではないはず。闇に捕らわれてしまってはいけないわ」
     続くワルゼーと佐知の言葉に遂に流れ続ける旋律が歪みだした。
    『……あ……あ、ァ……!』
     崩れる音にスピーカーからこぼれるのは呻き。
     タタリガミの少年は俯いたまま手で顔を覆うとぐらりと揺れる。
    「テメェ……!」
     視界の先にあるタタリガミの闇が揺れている。これ以上言葉をかけさせる訳にはいかない。
     それは灼滅者達が動くよりも早かった。受け続けた攻撃に加え、トウゴが放つ死角からの一撃を日方は耐え切れない。
    「日方さん!」
    「あと、頼む……」
     リャーナの声を耳に、日方はずるりと崩れ落ちる。
     意識が落ちる瞬間、俯く顔を見上げ――。
    「ヒビキ殿、HKTの連中に無理矢理闇堕ちさせられたこと、さぞつらかろう。ここは我々に任せよ」
     言葉をかけ続け、それはタタリガミ――ヒビキの心に通じたのだろう。スピーカーから流れる不快な旋律は途切れ途切れになり、かすれた呻きが混じる。
    「連中を退け、おぬしを闇から救い出して御覧に入れる」
     タタリガミからの救出を。
     凛と響くワルゼーの声にトウゴへの攻撃は既濁と緋由に任せ、仲間達は攻撃対象を切り替える。
     灼滅者達の声に揺れるタタリガミの攻撃の変化ははっきりと見て取れる。風が少しでも心に吹いてくれるようにと願い、春風の如く魔力を放つロッドを手にリャーナも動く。
    「そこをどけ!」
    「ハッ、こんなもんかね。 やっぱり六六六つっても底が知れてるな」
    「……ここは通さない」
     護衛に向かうべく動こうとするが、既濁と緋由がそれを許さない。二人の攻撃に遮られ、トウゴは瞳をヒビキに向ける事しかできなかった。
    「俺は君を助けたい。俺がそうしたいから」
     攻撃と共に譲治が向ける言葉はトウゴに遮られた言葉。
     強制的に闇堕させられたヒビキの姿に望まぬ覚醒を得た自身と重ねてしまう。
    「だから、君もしたい事を望んで。本当にしたい事」
    『……本当、に……したい……事……』
    「聞くな!」
     その言葉にトウゴは声を荒げるが既に効果はない。
    「あなたを苦しめるものから、私たちが解放する。必ずあなたを、光ある場所へ連れ帰る!」
     トウゴへと攻撃する緋由を目に佐知はヒビキへと声を上げ、構える縛霊手からサイキックを放つ。
     今なら攻撃は届く。タタリガミを救う為、灼滅者達は畳み掛ける。
     そして、
    「騎士として新たな友を必ず救う!」
     ざん!
     ミミングスの剣が閃き、リャーナのロッドがうなり春の嵐が吹き荒れる!
    『……僕……は……』
     ざくりと切り裂かれ、立て続けの攻撃に限界を向かえたヒビキの口からごぶりと吐き出されるのは闇。
    『……うた、を……』
     その言葉を最後にスピーカーの音はぶつりと途切れ、崩れ落ちる体を受け止めた譲治はかすかに聞いた。
     歌を歌いたい、と。
     

     自分が守るべき対象は灼滅者の手に落ちた。
    「……そのガキはくれてやる」
     戦う理由を失ったトウゴはもう必要としない少年を目に舌打ちし、後ずさる。
     ダークネスはだらだらと血を流し続けるが、その顔にはまだ余裕があり灼滅は難しいだろう。
    「あなたとは、またいずれ」
     佐知の言葉と譲治の睨みは一瞥されるだけで、黄色いTシャツ姿は背を向ける事なく音楽室の扉をくぐり、闇へと消えていった。
     音楽室に残るのは八人――いや、九人の灼滅者。
    「都市伝説の裏にタタリガミとHKTの影あり、か。さて今後の状況、どう動く哉と」
     月明かりも届かぬ先に視線を向け呟くワルゼーだが、ヒビキが意識を取り戻したと告げるリャーナの声に振り向き仲間達の元へ。
     仲間達に囲まれ、譲治に支えられたヒビキはタタリガミであった時よりも少し大人びていた。
    「おかえりなさい。こちらに戻って来てくれてよかったわ」
    「……ありがとう、助けてくれて」
     佐知の声に反応し、向ける顔は少し暗い。
     闇堕ちした時の事や今までの事を思い出しているのだろうか。
    「ヒビキ、さっきも言ったけど音楽好きなんだろ? 顔上げて明るい声紡ごうぜ」
    「せっかく歌を歌うのなら、楽しい方がいいわよね」
     伏せ気味な瞳のヒビキを前に日方と佐知は言い、
    「リャーナにも聞かせてくださいね?」
    「其の時は我輩も竪琴で伴奏しますので」
     リャーナとホテルスも言葉をかける。
     暗く悲しい歌を紡いだ少年は、人を幸せにする歌を紡ぐ事ができるだろう。
     まだ体が痛むのか少し眉根を寄せヒビキは譲治に支えられながら立ち上がると灼滅者達を見渡し、そして視線は月光を受けるピアノへ。
    「……そうだね、いつか……いや、近い内に」
    「楽しみにしてる」
     言い直すその言葉を聞き譲治は応え、ワルゼーも満足そうに頷いた。
    「よっし、そろそろ帰ろーぜ、武蔵坂に」
    「……ん」
     HKT六六六の灼滅は叶わなかったが、タタリガミとなっていたヒビキを無事、救出する事ができた。目的を達成した以上、灼滅者達もこの場に留まる理由はない。
     既濁の声をにずれたマフラーの位置を直しながら緋由は頷き、出口へと向かうと仲間達もヒビキと共に音楽室を後にする。
     
     人は去り、残るのは誰も近づかぬ廃校。
     悲しき歌声はもはやなく、救われたヒビキが紡ぐものを灼滅者達が耳にする日も近いだろう。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 0/感動した 4/素敵だった 1/キャラが大事にされていた 2
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