蘇る吸血鬼たち

    作者:baron

    『生きている……のか?』
     暗闇の中で、『彼』は驚いていた。
     そして事実に納得すると、やるべきことを把握する。
    『どうやら横槍が入ったお陰で生き延びたようだな。ならば幸運に感謝して、かつての栄華を取り戻すとしよう』
     彼の仲間達は抗争に敗北し、殺されるか勢力に組みいれられるはずだった。
     サイキックアブゾーバーの事をまるで知らぬのか、多少の戸惑いが見られる。
     だが今の彼は自由であり、生きているなら、まずは楽しむのが彼なりのスタイルであった。
    『他の連中も生きているならその内に合流するだろう。……まずは祝杯を挙げるとしようか』
     コツコツと階段を登り、上へ上へと地下階から地上に向かう。
     そして別荘の外に出ると、血を求めて彷徨い始めた。
     そう……、『彼』は吸血鬼なのだ。

    「あら……。こんな所に屋敷なんてあったかしら?」
    「確か廃屋くらいだったと思うのだけど、リフォームしたのかしらねえ」
    『廃屋? 失礼ながらお嬢さん達、場所をお間違えになったのでは? まあ目が悪いのだとしても、心配はもう要らないがね』
     そして運の悪い犠牲者を見つけると、当座の食糧兼、下僕として確保する事にした。
     ほどほどに生血を食らい支配下に置くと、彼と一緒に蘇った別荘に引き込んだのである。
    『では屋敷の管理は任せるよお前達』
    「はい、仰せのままに」
     首筋に傷痕を付けた女性達は、虚ろな目のまま別荘へと向かっていた。

    ●ゲートと、吸血鬼の復活
    「最近になって、軽井沢の一角で失踪事件が起きているのは知ってるか? 狭い地域なのに不思議と噂以上にはならない事から、ブレイズゲートと推測されている」
    「バベルの鎖ですか。まあ一件二件退治しても同様の件が頻発するならブレイズゲートが怪しいですね」
     騒ぎの洋館は、かつて高位のヴァンパイアの所有物であったが、そのヴァンパイアはサイキックアブソーバーの影響で封印され、配下のヴァンパイアも封印されるか消滅するかで全滅したらしい。
     だがその地が、ブレイズゲート化した事で、消滅した筈のヴァンパイア達が、過去から蘇ってしまい再びかつての優雅な暮らしを行うようになった……と推測されている。
    「おそらく現れるヴァンパイアは消滅した配下の一人……だろう。別荘の一つを占拠し、かつての栄華を取り戻そうとしているなら、これを阻まねばらん」
     犠牲者を出さず生を謳歌するだけならまだ考慮の余地もあるが、被害が出ているなら捨て置けない。
     今ならばまだ、配下の吸血鬼レベル。事件もそう大きくは無い。
     大ごとにならない内に、対処=灼滅する必要があるだろう。
    「奴らはサイキックアブソーバー以前の暮らしを続ける亡霊のような存在だ。亡霊は亡霊のままに、始末を頼む」
     コクリと何人かの灼滅者が頷いた。
     ある者は詳しい話を聞き、ある者は友人たちに連絡を入れる。
     ブレイズゲートと化した、血塗られた屋敷の主人を灼滅する為に……。
    ●悲鳴の響き
    「……何か聞こえなかった?」
    「まずいな、この辺りで吸血鬼が居るって話じゃなかったか?」
    「ブレイズゲート化してるって話があったろ。クラブの何人かはそれでこっちに来てるんだ。……急ごう、まだ間に合うかもしれん」
     灼滅者たちが、闇夜に響く悲鳴を聞きつけた。
     偶然に別荘地に訪れている灼滅者の元や、他の依頼帰りに、話を聞きつけて来たものなど様々。
     事情は様々だが思いは一つ、敵が居るならば倒し、可能であるなら犠牲者を助けるため。
     必要なメンバーに声を掛け、急遽チームを編成して場所を探し当てたのである。

     そして辿りついたのは、古風な洋館であった。
     数枚のコインをアレンジした紋章が掲げられ、中々に時代がかった様相を見せる。
     灼滅者達は捜索に出た全員が集合したのを確認すると、急いで突入していった……。


    参加者
    桜庭・成美(のようだ・d22288)
    明鶴・一羽(朱に染めし鶴一羽・d25116)
    九形・皆無(僧侶系高校生・d25213)
    影龍・死愚魔(ツギハギマインド・d25262)
    ルーシー・ヴァレンタイン(食い逃げ・d26432)
    矢矧・小笠(蒼穹翔ける天狗少女・d28354)
    静守・マロン(我シズナ様の従者也・d31456)

    ■リプレイ


    「ブレイズゲートってどんななってるんだろ……?」
    「核となるのは別荘だそうですが、どんなものでしょうね」
     バスから降りるスヴェトラーナ・モギーリナヤ(てんねん・d25210)に、九形・皆無(僧侶系高校生・d25213)は手を貸してあげた。
     まだ肌寒い二月の朝だから、繋いだ手と手が温かい。疲れてませんか? いーえ、いえ。
     仲の良い兄妹の如く二人は白き境界に立ち、生くりーむだったら嬉しいのにね。なーんて思う。
    「別荘ってかっこいいのかな? かわいいのかな? 別荘、住んでみたいな」
    「新旧とサイズを気にしなければ、泊ることはできそうですね。最近はシェアタイプや青少年系の訓練施設の……。おや、お早いご到着で」
     スヴェトラーナと皆無は外界と内側を分ける、白い霧の前に立つ。
     霧が杖の幻想的な光で照らされると、妖精界であったり生と死の境界にも似て、摩訶不思議の壁にも見える。
     だが山に慣れた皆無には、懐かしい……くらいのものだ。

     ほどなくして聞こえて来た、しゅたたっと言う足音に、聞き慣れた物を感じ手を振った。
    「シズナ様の別荘に向かおうとしていたらこんな事になるとは……。しかし皆々と合流できたのは行幸である!」
     静守・マロン(我シズナ様の従者也・d31456)は手を振る誰かの姿と、干し肉や果実の匂いを嗅ぎつけて四つ足の動きをゆるめた。
     そして手を振るのが仲間であると理解して、クルっと前転。
     一回転した後は人の姿に変じて、二人との再会を祝す。
    「お主たち、おはようなのである。二人は九州からの帰りか?」
    「良く判りましたね。別依頼から帰る途中で、連絡を受けたのですよ」
    「……それよりも、別荘って本当?」
     マロンは二人から匂うのが、干した馬肉とマンゴーを使った菓子と嗅ぎつけて、九州であろうと当たりを付ける。
     そんな犬みたいな器用さに驚く皆無はともかく、スヴェトラーナは別の事に興味深々。
     別荘、別荘ってどんな? とおめめに浮かべて、目は口よりも雄弁に語る。
    「おう、シズナ様の屋敷か? それは素晴らしい所だ。よければ後で案内しても良いとシズナ様はおおせられている」
    「本当? 静守さん、シズナさんありがとう」
     今の所有権は良く判らないが、案内くらいは良かろうとマロンとその主人は頷いた。
     その後、スヴェトラーナは終始嬉しそうにしていたという。

     そして三人は、連絡をくれた仲間の元に向かった。
    「……こっちだな。こっちから匂いと、呼ぶ声がする」
     マロンが先導して霧の中を進むと、連絡に記載してあった目印に辿りついた。
     そして見知った仲間達を見つけ、合流してブレイズゲートに挑む事となる。
    「揃ったね。この向こうが例の別荘。……行こうみんな、亡霊退治だよ」
     霧の中で見た、ルーシー・ヴァレンタイン(食い逃げ・d26432)の表情は少し堅かった。


    「かつての栄華に縋る亡霊ですか……。随分と人間臭いことをしてますね」
    「うん。栄華の日は終わったんだよ……」
     連絡を受けて駆けつけてくれた桜庭・成美(のようだ・d22288) の言葉を、ルーシーは受け入れた。
     そうだねと微笑もうとして、頬がこわばる。
     喉に針がささった様に痛い。だけれども、その痛みを飲み込んでルーシーは扉を開けた。

     ごく普通の扉を、3秒という永遠にも等しい時間を使って、こじ開ける
    「被害者は今の所、二人か三人。生きているなら全員助けるけどね」
    「それが問題ですよねー。優雅な暮らしがしたいならー。好きにすればいいと思いますが他人を巻き込むのはよくないですねぇ」
     ことさら事務的に努めようとするルーシーの言葉に、成美は不機嫌な物を感じた。
     もちろん方向性は自分達にでは無く、吸血鬼に含む所があるのだろうが……。と疑問を浮かべる中、自分もあまり変わりが無い事に気がついた。
     吸血鬼は灼滅する、どんな事情があろうと情け容赦なく。……それこそが慈悲だと思う自分を再発見する。

     こうして先を行く少女達が黙して、地下道を降り始めたので、後ろの声が余計に響き始める。
     もしかしたら賑やかしに景気良くしてくれているのかもしれない。
    「亡霊は亡霊らしく、地獄に戻ってもらいます! てんぐ様は悪鬼悪霊を許しません!」
     矢矧・小笠(蒼穹翔ける天狗少女・d28354)の声と足音は、カンコロカンコロ賑やかだ。
     どこまでも暗い不景気な屋敷と、楽しくなり様がない話題に明るさをもたらしてくれる。
    「でも小笠さんのトコは、修験者やドルイドじゃなかったでしょう?」
    「あはは。……確かに天狗自体が魔縁なんですけどね」
     明鶴・一羽(朱に染めし鶴一羽・d25116)のツッコミにも、爽やかに反応する。
     天然自然の灼滅者二号としては、息を吸うようにヒーローになったので修行とか何それである。
    「なにはともあれ、天狗様のオ・シ・オ・キなんだよう。地獄の果てまで戻すんだもん」
    「(…地獄に戻ると死んじゃうよね。何度も死ぬのか…。一度死んだ事も知らないまま、もう一度死ぬってのは幸せなのだろうか……。それとも記憶が戻るのかな?)」
     話していて気が晴れたのか、小笠がカンカンと先行組に追いついて行く。
     その様子を眩しそうに、影龍・死愚魔(ツギハギマインド・d25262)は呟いた。
     後ろを振り返らない子は、何と眩しいのだらう。少しだけ、うらやましひ。
    「まぁどっちでも良いか。ただまあ、大人しく寝ていればいいのに……傍迷惑な事だね」
    「同感です。大人しくしていれば灼滅は後回しにしてやったものを……。被害が拡大する前にもう一度地獄の底に叩き込んでやりましょうか」
     ぼんやりとした死愚魔の声は、独り事とも感想ともとれる。
     一羽は適当に相槌を打つと、戦いの予感に意識を切り換え始めた。

     切り替わるのではなく、切り換わる。
     レールの上を滑る列車の様に、殺意と戦意を両輪に灼滅者達の意識が、変転した。


    『来客にしては少々無粋だね』
     地下への道をくぐり抜け、ホールらしき場所に出た灼滅たちを主人が迎える。
     傍らには女性が二人、虚ろな笑顔で侍っていた。
    「違いますー。……ほっといてあげてもいいのですが、被害が出てる以上貴方にはここで消えてもらわねばなりません」
    『そんなに殺気立つ者では無いよ。どうだね、老いや病気も心配ない暮らしはいかがかな?』
     成美の宣言に対して、吸血鬼は取り会わず嫣然と微笑んだ。
     どこか親しみの湧く表情で、灼滅者……特に女性達に笑いかける。

     その微笑みは他者を操る魔眼の能力だったのだろう。
     虎の尾を踏む行為であった。
    「病気しないのは。いいなー」
    「リナヤ。知らない人について行ったらだめですよ」
    「リナヤを連れてかれると困るな」
     スヴェトラーナを操ろうとするので、皆無と死愚魔は両側から留めた。
     正直な話、どうでも良かった死愚魔にとって、強いて言うならこれが許せない理由だろうか?
     勿論他のメンバーは、最初から許す気などなかったのだけれども……。
    「話しても無駄の様ですね。さっさと片付けるとしましょうか。次は気を付けてくださいね」
    「にいさま達。ありがとなのです~」
     そして一羽が前に出て視線を遮り、スヴェトラーナを庇った。
     誰かを守るための灼滅者だが、仲間を守る時には、尚更、心を熱くする。

     ゆえに洗脳しようとした吸血鬼の行為は、彼らの怒りを掻き立てる一因にしかならなかった。
     怒りを力に変えて、灼滅者たちは改めて戦いを宣言する!
    「さぁ、鮮血の結末を」
    「てんぐ様のお通りであるっ!」
     一羽が眼鏡を外すのと、小笠が面を装着するのは、ほぼ同時だった。
     しかし、そこからの動きは大きく異なる。
     飛び上がる小笠の動きに隠れ、一羽は身を沈めて疾走。
     そして後から動き出した彼の方が、一足早く神足の踏み込みで切りかかる。
    「一枚ずつ削って行く」
    「言わずもがなである!」
     一羽が操られた女性の一人を脇から攻めて、上から小笠が風の刃を鞭のように伸ばす。
     そこへ次々と、仲間達の攻撃が叩きこまれた。
    「後でお助けしますので。今は御容赦を」
    「まずは操られている人たちを止めないとね!」
     皆無の拳が壁に叩きつけるように殴ると、ルーシーはすかさず結界を張って動きを縛る。
     操られた女性達に悪気が無いが、一人ずつ排除せねば。


    『私の可愛い僕を取りあげようと言うのかね? それは困るな。……起きたまえ』
    「はい、ご主人様……」
     吸血鬼の呼びかけは、癒しの力を持っているのだろうか?
     それとも行動を強制したのか?
     倒れかけた女は、チャリンチャリンと響く音と共に、自身を束縛する結界に抗おうと……。
    「そうはさせない……。誰か今の内に早く気絶させてあげて!」
     ルーシーは吸血鬼の優しい声を聞くたびに、喉の奥が閊えるのを感じる。
     脳裏に掠める長身の面影を振り払うように、こわばりかけた声で、仲間の応援を求めた。
     そして彼女の要請に応えたのは……。
    「んー。じゃあなんとかしてみるかな。トドメは他の人が……」
    「多分、私でなんとかいけます。死愚魔さんはもう一人の人をお願いしますね」
     のっそりと動き掛けた死愚魔を置き去りにして、成美が飛び出した。
     そして剥がれかけた結界の上から、手近な物を叩きつけて気絶させる。

     おいて行かれた方としては、仕方ないので……というか順当にもう一人に向き直った。
    「と、言う訳で。ごめんね、ツライことを思い出してもらうことになるんだよ」
     よいしょっと、と面倒くさそうに死愚魔は手甲でもう一人の女性を軽く小突いた。
     ランプで照らされた彼の影が、手甲を介して首に絡みつき、……彼の攻撃よりも後ろから来たナニカが、影の上から巻きついてチョーカーと化す。
     上書きするように攻撃を放ったのは、ランプを持った少女であった。
    「あー。そりゃそうか。直近のトラウマだよね」
    「死愚魔にいさん、おんなのこには優しくしないと、めーなのです」
     トラウマを掘り起こした死愚魔の攻撃に続いて、その場を取り繕ったのはスヴェトラーナだ。
     フリルを伸ばし優しく覆ってパッケージ。
     小さな胸を張っているのに頭を下げているので、撫で撫でする事にした。
     そうすると、くすぐったそうに微笑み、唄うように仲間のトドメを誘う。
    「静守さ~ん♪」
    「あとは吾輩たちに任せるのである! シズナさま!!」
     小鳥の様に囀るスヴェトラーナに促されるまでもなく、人の形をした狼は動きだす。
     甲冑をまとった霊が姿を現し、束縛された女に剣戟を刻むと、マロンは即座に距離を詰めて鉄拳を叩きこんだ。
     否、それは鉄拳では無い。
    「女性達を支配するなどと不届き千番! 我らがここでその悪行、終わりにするである!」
     マロンのそれは、鉄拳にあらず。
     野生の力を持った獣の爪牙だ。
     少女とは思えぬほど力強く叩きつけた。


    「あとはお主だけである。今度こそ、永遠にこの地で眠るであ……」
    『少し黙れ』
    「……っ」
     怒りと正義に燃えるマロンの向上を、吸血鬼は遮った。
     飛来するコインの嵐を避けたつもりだが、流石に避けきれない。
     乱反射するコインを、霊……シズナが細剣で叩き落し、無理な物は装甲の厚い部分で防ぎ止めた。

    『……私とした事が大人げない。だがせっかくの僕を奪われたのは腹ただしいね。君たちは厳しく躾ける事にしようか』
    「地が出ているわよ。お里が知れるわね」
     牙をむく吸血鬼、ダイモンに対してルーシーは無愛想に返した。
     もはや自分の気持ちに怯えるよりも、苛立つ方が先に立つ。
     八つ当たりとは知っていても、キツイ眼差しと言葉で、相手を自分を呑んで掛った。
    「あたし。死人に情けをかけるほど優しくはないの。……さようなら」
     ルーシーは己の剣を夢現へと滑りこませると、自らを縛る思いこそを切る。
     愛も怒りも憎しみも、この吸血鬼に向けるモノではないのだ。
    「申し訳ありません。少し協力していただけますか? どうせ時間を使うなら、のんびり散策と行きたいもので」
    「その望み、てんぐ様が叶えてつかわそう!」
     皆無と小笠は同時に錫杖を構えた。
     シャンシャンと鳴る鋼の音に紛れ、辺りに風が漂い始める。
     タイミングを合わせて繰り出される、ツープラトンのフォースブレイク!
     だがそれは、ただの目くらましだ。
    「畳みかけますよ」
    「委細承知!」
     皆無は指に風を纏わせ、小笠は風を踏み台にして天を掛ける。
     そして仲間達の攻撃に紛れ、烈風のダブルサイクロン。
     手刀と飛び蹴りが、吸血鬼の体に十字を刻んだ。

     その様子を見ていた少女は、兄貴分の方を向いて……。
    「にいさ……」
    「よいしょっと。……あれ?」
     何故だろう、スヴェトラーナがガッカリしているのに、死愚魔は少しだけ首を傾げた。
     それは決して、彼が陰々滅々の力を放ったことが原因ではないはずだ。
     無いはずだと思いたいが、なぜかガッカリしているので、二人して悲しくなった。
    「あーうー」
    「……ふう。仕方ありません。トドメは譲って差し上げますので、一羽さんとどうぞどうぞ」
     っ!
     スヴェトラーナは、成美が気を聞かせてくれたので、嬉しそうだ。
     なんで気がついたかって?
     そりゃあ……。
    「吸血鬼、もう一度眠らせてやるのである! シズナ様!」
    「……!」
     こんな風に、マロンが活き活きとコンビネーションを掛け、隣で羨ましそうなので一目瞭然。

     そして道を譲られた少女は、今度こそ一緒に戦うことにした。
    「一羽にいさま♪」
    「タイミングを合わせる。……灰は灰に。塵は塵に。塵に還るが良い、ヴァンパイア。」
     スヴェトラーナは妖精の導きによって走り出し、いやし真拳ぱんち! 一羽は聖句を唱え始める。
     言葉は剣に収めた聖堂を活性化し、吸血鬼は声も無く、崩れて落ちた。

    「Quia pulvis es et in pulverem reverteris。塵に過ぎぬ者よ、塵に還るが良い、と。これでこの辺りも暫くは……おや?」
    「何やら紋章の様な物を見つけたんですけど……」
     祈りを捧げ終わった一羽は、部屋の隅でうずくまる成美を見た。
     いつものように、ダンボールの影に隠れている訳でもあるまい。
    「やれやれ、油断はできそうにありませんね」
     それはコインとは別の、剣・杖・杯の三つの紋章。
     おそらくは、このゲートにとらわれた他の吸血鬼なのだろう。
    「私達にできることは被害を出さないように灼滅してあげることだけです。何度でも」
     最後にそう言い残して、灼滅者達は別荘を後にする。
     その後はのんびり、過ごしたとか、凄さなかったとか……。

    作者:baron 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年2月22日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 1/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 3
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ