ポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)は、こんな噂を耳にした。
『長崎県五島列島福江島の石焼ごと芋怪人が現れた』と……。
石焼ごと芋怪人は都内某所に出没しており、『石焼ごと芋以外、焼き芋に非ず!』と言う考えから、戦闘員達を引き連れて他の石焼き芋を駆逐しているようだ。
それが原因で石焼き芋売りのオヤジ達と攻防戦を繰り広げており、戦いの中で倒れていくオヤジがいるとか、いないとか。
石焼ごと芋怪人は石焼ごと芋を無料で配る事で、主婦層を中心にして一般人を味方につけ、彼女達を嗾けて不買運動を始めているらしい。
これが原因で廃業に追い込まれている石焼き芋売りも多く、石焼ごと芋怪人の天下になりつつあるようである。
そう言った意味で、石焼ごと芋怪人は焼き芋売りの車であればリヤカーであっても、襲い掛かってくる勢い。
ただし、石焼ごと芋怪人のまわりには、屈強な肉体を持った戦闘員達がいるため、色々な意味で注意が必要だろう。
その事も踏まえた上で、石焼ごと芋怪人を倒す事が今回の目的である。
参加者 | |
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蒼月・悠(蒼い月の下、気高き花は咲誇る・d00540) |
冴凪・翼(猛虎添翼・d05699) |
ポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263) |
石神・鸞(仙人掌侍女・d24539) |
大夏・彩(皆の笑顔を護れるならば・d25988) |
仮夢乃・聖也(小さな夢の管理人・d27159) |
新堂・桃子(鋼鉄の魔法使い・d31218) |
柚木・湊(シュリュッセル・d31710) |
●ごと芋
「……名物のごと芋がタダで食べられる……凄い楽しみ……」
ポルター・インビジビリティ(至高堕天・d17263)はワクワクした様子で、石焼ごと芋怪人が確認された場所に向かっていた。
石焼ごと芋怪人は石焼ごと芋を普及するため、戦闘員達と一緒に無料で配り回っていたらしく、それが原因で他の焼き芋が売れなくなっていたようだ。
「ごと芋って、長崎県のそれもかなりローカルな地方で取れるサツマイモだよね? ブランドなんだろうけど、他のサツマイモとやっぱり違うのかな? なんか第六次産業の売り込みをかけてる地方の農業団体みたいにも見えるから不思議だね」
新堂・桃子(鋼鉄の魔法使い・d31218)が、事前に配られた資料に目を通す。
石焼ごと芋怪人は石焼ごと芋を普及させる事によって、世界征服を企んでいるらしく、少なくともこの辺りの地域では、主婦層の心をガッチリと掴んでいるようだ。
「だからと言って、石焼ごと芋だけに絞り込むのはなー」
冴凪・翼(猛虎添翼・d05699)がげんなりとした表情を浮かべて、石焼き芋売りの屋台を引く。
それだけ、ごと芋が美味しいのかも知れないが、他の芋を排除する必要はまったくないだろう。
「焼き芋はそれぞれおいしいのになぁ……」
大夏・彩(皆の笑顔を護れるならば・d25988)が、ションボリとした。
だが、石焼ごと芋怪人にとって、他の焼き芋はゴミ同前。
それ故に、排除すべき対象として、見てしまうのだろう。
「焼き芋……、それはシンプルであるが故に、素材が左右される食べ物。ただ買ってきた芋を温めただけなのに……!」
蒼月・悠(蒼い月の下、気高き花は咲誇る・d00540)が、色々な焼き芋を温めていく。
食べ比べをするため、通信販売で美味しそうな焼き芋を仕入れておいたので、例え石焼ごと芋怪人が何処にいようとも、その匂いを嗅ぎつけて必ず邪魔をしてくる事だろう。
「秋口から寒い冬にかけて、石焼き芋は非常に美味しい季節にございます。少々美味しいからと言って、他の味を楽しむ機会を奪うのは納得が参りません。甘すぎるのが苦手な方、パサパサ感が駄目な方、人の好みは千差万別。美味しい石焼き芋があることを是非とも思い知らせたい所でございます」
石神・鸞(仙人掌侍女・d24539)が気合を入れて、お客を呼び込んだ。
その途端、まわりに住んでいた主婦達が集まってきたものの、石焼ごと芋ではなかったため、『お金を取るならいらないわ』と言って、右手をパタパタと振った。
「ははははははっ! ここで石焼き芋を売るとは愚かな奴らめっ! 既に、この地域一帯は我々の支配下っ! 例え、どんなに美味い焼き芋を持ってきたところで、無意味、無意味!」
次の瞬間、石焼ごと芋怪人が高笑いを響かせ、戦闘員達と一緒にポーズを決めた。
「焼き芋を焼き芋じゃないと言って焼き芋屋さんに迷惑をかける、とても言い辛い石焼ごと芋怪人め! 全力で懲らしめてやるのです!」
それと同時に仮夢乃・聖也(小さな夢の管理人・d27159)が、石焼ごと芋怪人に対抗するようにしてポーズを決める。
「ふっ……、いい度胸をしているじゃないか。だったら、せいぜい足掻いてみろ。そして、己の無力さを味わうがいいっ!」
石焼き芋怪人も見えないマントを翻し、主婦達に石焼ごと芋を配り始めた。
「ちょうだい」
「ちょうだい」
「私にも頂戴」
それに気付いた主婦達が、石焼き芋怪人のまわりに群がった。
「焼きいも怪人、いざいざ勝負!」
そう言って柚木・湊(シュリュッセル・d31710)も、主婦達に焼き安納芋を配っていく。
「ただでくれるなら、貰うわー」
「わたしも」
「わたしにも!」
途端に主婦達が石焼ごと芋を抱えたまま、湊のまわりに群がった。
●焼き芋対決
「一本くらい貰っても、ばちは当たりませんよね」
聖也が石焼ごと芋怪人から貰った石焼ごと芋を眺め、自分自身を納得させた後に、サウンドシャッターを使う。
焼き芋はあっという間になくなり、まるで潮が引くようにして、主婦達もいなくなった。
後に残ったのは、自分達が食べるように取っておいた焼き芋のみ。
すべてタダで配っているというだけあって、主婦達の中には何度も並んで、持って帰る者もいた。
「どうやら、引き分けのようだな。だが、我々の実力はこんなものではないっ! 既に次の石焼ごと芋が、この場に到着する時間だしなっ!」
石焼ごと芋怪人が、狂ったように高笑いを響かせた。
「何か勘違いをしているようだけど、ごと芋だけが焼き芋じゃないよ。食べ物を無料で配ったら、他の商売してる人が迷惑するし、無料で配るのをやめたとたん見向きもしなくなるよ」
桃子がビシィッと正論を言い放つ。
「だから、どうした。そもそも、無料で配る事を止めるつもりはないッ!」
石焼ごと芋怪人も、キッパリ!
別に石焼ごと芋を売り捌いて一儲けを沢山でいる訳ではないため、赤字覚悟で大放出なようである。
「なーなー、友達で食いたいって言ってた奴がいてさ。お土産に分けてもらえねぇかな? こんだけ美味いなら、みんな喜ぶだろうし」
翼が石焼ごと芋怪人に話しかけた。
「ふむ、いいだろう」
石焼ごと芋怪人は何の躊躇いもなく、石焼ごと芋を渡す。
戦闘員達によって、新しい石焼ごと芋が届いたらしく、石焼ごと芋怪人は余裕の態度。
一方、翼達は在庫が切れてしまったため、自分達が食べるために確保した焼き芋を使わねば、勝負どころではなくなっていた。
「なかなか、やるようでございますね。しかし、こちらにも秘策がございます。石焼ごと芋に対抗するため、甘さたっぷりで味わいしっとりな安納芋、甘さ控えめで見た目のインパクトもある種子島紫芋の二種類を用意いたしましたから。その上、付け合わせに蜂蜜、チョコがけ、お塩などバリエーションも豊富に用意させていただきました」
鸞が石焼ごと芋怪人を挑発するようにして、二本の芋を見せつけた。
「付け合わせ……だと!?」
その途端、石焼ごと芋怪人の顔色が変わる。
「そんなもの、焼き芋にあらずっ! 焼き芋の顔を被ったトッピングモンスターだっ!」
石焼ごと芋怪人が、くわっと表情を険しくさせた。
彼なりに凄くいい事を言ったつもりらしく、戦闘員達が『さすが、師匠』と言って絶賛していたが、鸞達には何が凄いのか微塵も分からなかった。
おそらく、彼らの中では魂が震えるほどの名言だったのだろう。
その気持ちがまったく分からなかったため、両者の間には微妙な温度差があった。
「でも……こうやって……バターを塗ると……美味しいよ……」
そんな中、ポルターがキョトンとした表情を浮かべる。
「私の言っていた事が分からなかったのか! 本当に焼き芋を愛しているのであれば、素材本来の味を楽しむべきだっ! 付け合わせなど不要っ!」
石焼ごと芋怪人が、興奮気味に答えを返す。
その間もポルターは焼き芋をもふもふ。
『こんなに美味しいのに、どうしてそんな事を言うんだろう』と言いたげな雰囲気だ。
「まあ、確かに素材のシンプルな味を楽しむのも悪くないと思うけど、こうやってアツアツのお芋に、冷たいバニラアイスを乗っけると、とっても美味しいんだよ。さらに! チョコソースをかければ、美味しいスイーツの出来上がり!」
そこに追い打ちをかけるようにして、彩が美味しそうに焼き芋を食べる。
「ぐわああああああああああっ! や、やめろおおおおおおおおお!」
それを目の当たりにした石焼ごと芋怪人がパニクッた。
この様子では石焼ごと芋怪人にとって、それはグロ画像を見るのと、同じレベルだったのだろう。
戦闘員達が心配した様子で、『今すぐにモザイクを入れますからっ!』と励ましていた。
「それなら他のトッピングは、どうですか? 黒糖と、シナモンシュガー、とろけるチーズに、七味唐辛子、他にもたくさんかありますよ?」
悠がみんなで用意したトッピングを、石焼ごと芋怪人に見せつけた。
「は、早くモザイクをっ!」
これには、石焼きごと芋怪人も、卒倒寸前。
口から泡を吐く勢いで、何やら騒ぎ立てている。
「それに、おいちゃん安納芋が好きなんだ。すまんな怪人よ。そっちの芋も美味しそうだけど、インパクトがほしいよねー」
そこに湊がトドメをさす勢いで、石焼ごと芋怪人に駄目出しをした。
「貴様ら、許さんっ! 皆殺しだァ!!」
次の瞬間、石焼ごと芋怪人がブチ切れ、戦闘員達を嗾けるのであった。
●怪人の本気
「もう少し平和的な解決法があると思うんだけど……」
悠が石焼ごと芋を食べながら、戦闘員達の攻撃を避けていく。
石焼ごと芋はとても美味しく、石焼ごと芋が拘るだけはあると思ったが、彼らの考えに賛同する事は出来なかった。
「うっ……、お腹の調子が……」
そんな中、聖也が石焼ごと芋を頬張り、青ざめた表情を浮かべる。
トッピングとして使った蜂蜜との相性が悪かったのか、それとも石焼ごと芋が悪くなっていたのか、それ以外の理由があるのか分からないが、とにかく腹が雷鳴の如く鳴り響いていた。
「ふっ、私の最高傑作の蜂蜜を掛けたから、罰が当たったのだ!」
石焼ごと芋怪人が、戦闘員達と共に、攻撃を仕掛けていく。
しかし、聖也は身動きを取る事が出来ず、ぐるきゅー状態。
「いっくよー! せーのっ!」
それに気づいた桃子がレガリアスサイクロンを仕掛けて、戦闘員達を一掃した。
「ば、馬鹿なっ!」
石焼ごと芋怪人は唖然としたが、元々戦闘員達は石焼ごと芋を配っていただけで、戦闘に関しては、ずぶの素人。そのため、桃子達を相手にして、マトモに戦える訳がなかった。
「こっちの芋もさー、美味しいからあんたも食べてみなよ!」
湊が焼き芋を食べながら、石焼ごと芋怪人に迫っていく。
「それ以上、寄るな! 汚らわしい!」
石焼ごと芋が嫌悪感をあらわにした。
「でも、焼き芋はごと芋だけじゃないんだよ! トッピングで更に進化するし、焼き芋の可能性は無限大! その可能性を潰しているお前に未来はないよ!」
すぐさま、彩が除霊結界を展開した。
「ト、トッピングなど邪道! だ、誰かモザイクをっ!」
石焼ごと芋怪人が、身の危険を感じて、後ろに下がっていく。
だが、戦闘員達はみんなばたんきゅー。
誰ひとりとして起き上がってくる者はおらず、石焼ごと芋怪人はロンリー状態であった。
「……ん? これ、食べられるのかな……いただきます……」
次の瞬間、ポルターが石焼ごと芋怪人の背後から迫り、その頭をガブリッ!
ナノナノのエンピレオと一緒に噛り付いて、美味美味モード。
バターをつけるとさらに美味しく、怪人にしておくのは勿体ないほどである。
「き、貴様っ! 私の頭を食べて、タダで済むと思うなよー!」
石焼ごと芋怪人も、これには激怒!
半分ほど脳味噌的なモノを見せつけながら、カンカンに怒っていた。
「焼き芋なら、それらしく焼かれておけよなー」
それと同時に翼が石焼ごと芋怪人にレーヴァテインを仕掛ける。
その一撃を食らった石焼ごと芋怪人が悲鳴を響かせ、踊るようにして暴れ回り、大爆発を起こして消滅した。
「……最後まで賑やかな怪人でございましたね」
鸞がホッとした様子で溜息をもらす。
後には石焼ごと芋が山のように残ったが、何処からともなく現れた主婦達が、何の躊躇いもなく袋の中に詰めていた。
もちろん、石焼ごと芋自体に害はないはずなので、例え持ち帰ったとしても何か問題になる事はないだろう。
「ちょ、ちょっとお手洗いに……いってくるです……お腹が……」
そんな中、聖也が青ざめた表情を浮かべながら、慌てた様子でコンビニのトイレに向かうのだった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年2月16日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 0/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 7
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