プロレスラーニンジャーvs鴉羽兄弟

    作者:相原あきと

     そこは古風な日本庭園のある由緒正しい合気道の道場だった。
     道場内では師範と練習生達が合計10人、合気道の練習を行っている。
     そんな中、練習にも参加せず道場の縁側で庭の方を向いて座禅を組み続ける1人の男がいた。
     異様な男だった、なんせ顔まで隠れる明らかな忍び装束を着ているのだから。
     もっとも、男が道場主の師範にここで座禅をさせて欲しいと頼みに来てからすでに1週間が経っている、許可を出した道場主も練習生も忍び装束の男を今では誰も気にしない。
     ピクリ、何時間と微動だにしなかった忍びの額が僅かに反応する。
     と、同時。
     ドンッ、ドドンッ!
     重たい音と共に日本庭園に2つの何かが落下してきた。
     それは2体の屈強な男達であった。2人とも黒い空手着を着ている。
    「ケツァールマスク派のプロレスラー・ニンジャーだな」
    「我らはシン・ライリー派のアンブレイカブル、鴉羽兄弟! 大人しくシン・ライリー派に乗り換えるならよし、断るなら……ここで死んでもらう」
     2人から放たれる威圧感がビリビリと空気を揺らすが、忍び装束の男――プロレスラー・ニンジャーは、スッと立ち上がると言うのだった。
    「ドーモ、ハジメマシテ。拙者ノ名ハ、プロレスラー『ニンジャー』デゴザル! 東洋ノ神秘タル忍術ノ数々、ゴ覧アレ!」

    「みんな、ケツァールマスク派とシン・ライリー派のアンブレイカブルが抗争しているのは知ってる?」
     教室の集まった灼滅者達を見回しながら鈴懸・珠希(中学生エクスブレイン・dn0064)が言う。
     それは双葉・幸喜(正義の相撲系魔法少女・d18781)の予想した案件に違いなかった。
     獄魔覇獄の失敗が原因なのか、シン・ライリーの配下と、ケツァールマスク派のアンブレイカブルが争っていると言うのだ。
     もちろん、ダークネス同士の抗争に関わる必要は無いのだが、この抗争に巻き込まれて多くの一般人が被害を受けるなら放っておくわけにはいかない。
    「現場はとある合気道の道場なの。ダークネス同士がここで抗争を行った結果、ケツァールマスク派のアンブレイカブル、プロレスラー・ニンジャーが灼滅され、さらに巻き添えで合気道の道場にいる一般人10人が犠牲になるわ……」
     だから、抗争が起こる前に現場に向かって、アンブレイカブルを灼滅して抗争を未然に防いで欲しい。そうすれば後でシン・ライリー派が来ても抗争にならず、道場の一般人は助かるだろうと珠希は言う。ちなみに到着タイミングはシン・ライリー派が来る15分前との事だ。
    「ケツァールマスク派のアンブレイカブルの名は、プロレスラー・ニンジャー。忍者っぽい格好で、手裏剣と忍者刀を持っているわ」
     サイキック的にはストリートファイターと手裏剣甲と日本刀に似たものを、そして得意な能力値は気魄と術式らしい。ただ、どうも合気道の戦い方を実践したいらしく、戦い方は受け流しの防御優先らしい。
    「今回、最優先は巻き添えをくう一般人10人を助けることよ。だから、ニンジャーを灼滅できなくても、降伏させたりで、さっさと道場から去って貰えれば問題無いわ」
     もちろん、ダークネスなんだから灼滅するのに躊躇する人はいないと思うけど……と珠希は言う。
     ただ、プロレスラー・ニンジャーは、シン・ライリー派のアンブレイカブルが来ると説明しても逃げだす事は無いと言う。プロレス的にもアンブレイカブル的にも「戦わずに逃げる」というのはありえないのだ。
    「ちなみにニンジャーはその道場の練習生とか師範さんとかの一般人には、別段興味は無いみたい」
     人質に取る事もないが、わざわざ庇うような事も無い。
    「獄魔大将のシン・ライリーがこのまま引き下がるとは思えないわ……一般人に被害が出ないのは必須だけど、ダークネスも倒せれば尚良しよ!」
     そう言って珠希は灼滅者を送り出すのだった。


    参加者
    叢雲・こぶし(怪傑レッドベレー・d03613)
    服部・あきゑ(赤烏・d04191)
    緋梨・ちくさ(さわひこめ・d04216)
    素破・隼(白隼・d04291)
    黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)
    楓・十六夜(蒼燐氷霜・d11790)
    英田・鴇臣(拳で語らず・d19327)
    櫻井・椿(発育はいいほう・d21016)

    ■リプレイ


     そこは古風な日本庭園のある由緒正しい合気道の道場だった。
     その庭に――バサリ、マントを翻し紅色の烏が舞い降りる。
    「伊賀忍者ヒーロー、服部・あきゑ(赤烏・d04191)参上!」
     あきゑが降り立つと共に3人の灼滅者も庭へと現れる。
     縁側で座禅を組んでいたアンブレイカブルはすっと立ち上がると。
    「ドーモ、ハジメマシテ。拙者ノ名ハ、プロレスラー『ニンジャー』デゴザル……シテ、汝等ハ何用カ?」
    「私が話すわ」と、黒木・摩那(昏黒の悪夢・d04566)が一歩前に出て説明するが、ニンジャーは神妙に頷き。
    「フム、我ヲ狙ッテ何者カガ来ル、ト言ウノハ信ジルデゴザル。サレド、汝ガ言ウ共闘理由ニハ言葉ノ重ミヲ感ジヌ」
     ニンジャーが摩那以外に視線を向けるが、敵の情報やそれ故に共闘が必要な件に関して誰も答える事はできない。まして、ニンジャーが共闘に賛成する理由について「面白そうだから」以外に、突き詰めて語れる者もまた、いなかった。
    「こいつは参ったな……」
     英田・鴇臣(拳で語らず・d19327)とあきゑが嘆息し、持ってきた放送機材を縁側に置く。
    「敵対するあたし等が共闘するドリームマッチ……視聴者は驚くと思ったんだけどね」
    「ソコマデ準備万端デゴザッタカ……」
     鴇臣達の準備を好意的に取ったか、ニンジャーが申し訳ないと頭を下げる。
     ニンジャーとあきゑ達が会話する間も摩那は冷静に考えていた。この短い時間では、一般人の避難は終わってないだろう、と。ならばもう少し時間を……。
     そう摩那が思った時だ、ぴょこんとニンジャーの前に割り込んだ緋梨・ちくさ(さわひこめ・d04216)が元気よく手を挙げる。
    「はいはーい! 僕はここに今流行りの忍者がいると聞いて来た!」
     忍者っぽいポーズを取りつつニンジャーに口を挟まれる前にちくさは続ける。
    「ねえ! お供忍が居ないなら、僕がなってみていいかな?」
    「ム」
    「もちろん、もしニンジャーの敵が現れたら助太刀するでござる!」
    「ツマリ、弟子希望デゴザルカ!?」
    「僕、忍者の極意を知りたいんだ!」

     ――時間は少しだけ巻き戻る。
     道場の正面玄関に作業服やスーツを着た4人の灼滅者がいた。インターホンで業者を名乗り「道場の傷み等の修繕を依頼されてきました」と伝えると、やがて師範と思わしき男が現れ。
    「頼んだ覚えはありませんが」
     師範の断りに素破・隼(白隼・d04291)が王者の風を発動させつつ。
    「拙者らが間違っている、と?」
    「い、いえ、そんな……」
     焦りだす師範。
    「修繕には2時間程かかると思うから、中の練習生の人たちと一緒に、どっかで時間潰して貰えないかな?」
     挙動不審になりつつある師範の真横に立ち、スーツの胸元をチラリとさせつつラブフェロモンを使った叢雲・こぶし(怪傑レッドベレー・d03613)がお願いすると、師範はコクコクと頷き、道場内の練習生を大声で集めて2時間のランニングの開始を宣言する。
     もちろん、練習生達からは非難轟々だが、こぶしが潤んだ瞳と上目遣いでお願いし、効果が微妙な練習生には隼が王者の風で言うことを聞かせれば、最後には誰も道場に残ろうとする者はいなくなっていた。
    「ESPに頼り過ぎるのはあかんけど、適切なもんを使えば効果はてきめんやな」
     二列に並んで走っていく練習生の後ろを見送りつつ櫻井・椿(発育はいいほう・d21016)が言う。自分が用意した土地を管理する会社や個人の情報の記載された手帳をポケットへ仕舞いつつ「無駄骨になってもーた」と笑う。
    「裏方役などそんなものだ、杞憂で終わればそれに越したことは無い」
     達観するように楓・十六夜(蒼燐氷霜・d11790)が言う。
    「で、その麻袋も杞憂か?」
    「まぁな」
     その後、十六夜が玄関前で戻ってくる者がいないか警戒しつつ、その間に3人が扉、窓を箒や重たい家具、張り紙や立て看板なども使い強引に封鎖するのだった。


     隼達がニンジャーのいる道場内へとやってくると、そこでは縁側で並んで座禅を組むニンジャーとちくさ、そして2人から少し離れた所で相談する摩那達がいた。説得組に話を聞くと、避難の時間稼ぎはできたが共闘については上手く話が纏まらなかったらしい。
    「あの野郎、『本当に襲撃者が来るのなら、汝等と彼等、勝った方と戦おう』とか言いだしやがった」
    「なんやソレ」
    「プロレス的には、確かにそっちの方が盛り上がるかもってのが、ね」
     驚く椿に、やれやれとあきゑが言う。
     灼滅者が伝えられたのは『共闘する方が面白くまた盛り上がる』という点だった。だが、面白くて盛り上がるという目的の為なら、ニンジャーの提案の方が有益なのは事実。
     灼滅者達の内心は苦虫を噛み潰したような気分だった。なぜなら今回、共闘して鴉羽兄弟を灼滅した後にニンジャーと戦う2連戦を考えていたから……いや、相談した時の話をするなら、ニンジャーと鴉羽兄弟を戦わせ漁夫の利を得るアイディアだって出ていた。
     今回の『共闘』という選択は予定外の道だったと言える。それはリスクのある道だ。だからこそ、保険や別案に逸れず、目的達成のために集中して知恵を出し合えば……今回集まった面子ならば、きっと共闘という道が開けたはずだったろう。例えそれが成功にたどり着く『想定外の道筋』だったとしても、だ。惜しかった。本当に。

     ドンッ、ドドンッ!
     重たい音と日本庭園に黒い空手着の鴉羽兄弟が現れる。
     一瞬、灼滅者達の姿に躊躇する兄弟だが、とりあえずニンジャーを勧誘……無論断られる。ここまでは既定路線。
     だが、次のニンジャーの台詞から未来は変わり始める。
     ニンジャーは庭に降りると、クイと親指で縁側にいる灼滅者達を指差し。
    「拙者ヲ倒シタイナラ、ソノ前ニ弟子達ヲ倒シテミセヨ」
     ちくさとまとめて灼滅者を弟子扱いし、ニンジャーが先ほど提案した条件を告げる。そこに待ったをかけるは灼滅者だ。
    「ちょと待ってちょと待ってお兄さん!」
     ちくさが言う。
    「何だ?」
     鴉羽兄が反応する。
    「あ、そっちのお兄さんじゃないから」
     ちくさがバッサリ切り、ニンジャーに『タイム』と言って7人に合流する。
    「どうしよう?」
     ちくさが皆に問い、8人はコソコソと相談する。ニンジャーは良いとして、鴉羽兄が精神ダメージを受けイジケているのは幸運だったと言える。
     今回、こうなるのを想定して行動を考えていた者はいない。
    「共闘が不可能になったんだ。撤退じゃねーか?」
     一応、鴇臣の考えていた撤退条件的には、このまま撤退するべきだった。
     だが。
    「おい、オレたちは何の為にここに来た?」
     沈黙を破り静かに問うは十六夜。
    「巻き込まれる一般人を救うため、よね。そしてそれはもうなってる」
     摩那が答える。
    「それはもちろんだ。だが、オレ達は灼滅者だ」
    『………………』
     沈黙。
     十六夜がガチャリと魔弾を機構剣に装填する音だけが響く。各自の方針は無い、ならば各々の性格や信条にそって動くしかない。
    「共闘は手段だ。オレ達の目的はただ1つ……多くが望めないなら、やることは――」
     次の瞬間! 十六夜が――いや、十六夜を含め数人が庭へと飛び出した。
    「死の幕引きこそ唯一の救いや」
     つぶやく声と共に空中で愛用のガンナイフを手に出現させた椿と、破邪の白光を纏った片刃剣を構えた十六夜がニンジャーの背に不意打ちをぶちかます。
    「行くぜ?」
     あきゑがクナイを投げつつちくさにアイコンタクト。
    「師匠直伝、クナイ投げっぱなしビィィィム!」
     ちくさの手からもクナイが投げられ……た、瞬後、あきゑはご当地ビームを、ちくさはバスタービームを発射する。クナイイミナイ。
    「グハァッ、ド、ドウイウ事デ、ゴザルカ!?」
     叫ぶニンジャー。
     鴉羽兄弟にも動揺が走る。
    「1人より2人、2人より3人……でも、3人も2人も無理なら……ねえ?」
     ちくさがニンジャーに「ずっこいけど僕らも必死なんでごめんね!」と舌を出して笑う。
    「さらばYA! 我がライバルのニンジャーYO!」
     椿が銃口をフッと吹きつつニヤリ。
    「裏切ルデゴザルカ」
    「ま、それはしょうがないか――神居転身ッ!」
     こぶしもどこかスッキリした様子でスーツを脱ぎ捨て、殲術道具を解放し戦闘態勢を取る。
    「この展開は考えてなかった」
    「じゃあ、やめるか?」
     ぼやく隼をあきゑが笑うと、隼はバサリと衣装を捨てる。その下に現れたのはあきゑと対になるようなニンジャ服だった。
    「あきゑはやめないのだろう、なら、やる事は一つだ」
    「まー、こっからはアドリブやな!」
     椿の言葉にあきゑ他、皆に笑みが広がる。
    「アンブレイカブルの派閥争いとかマジ迷惑だしね」
     メガネをくいっと持ち上げつつ摩那、その手にするりと黒槍『新月極光』を構える。このまま両派が戦えば、この道場も周囲も竜巻にあったような被害に遭うだろう。それを防ぐには……。
    「どうする、貴様は」
     十六夜が最後に残った鴇臣に言う。
    「正直、戦わずに撤退するんじゃ物足りねぇって思ってた所だ。それに、ニンジャーとは戦ってみたかったしな!」
     ポキポキと指を鳴らしつつ、鴇臣がバトルオーラを解放する。


    「『忍者ガ卑怯デ何ガ悪イ』ダッタカ……一対十トハ畏レ言ッタ! ナラバ本気デ行クデゴザル! ニンニンニン、ニンニンニンッ! 超忍法、死ニ装束モード!」
     複雑な印を組むと、カッ、と光が瞬きニンジャーの衣装が真っ白な忍び装束へと変化する。
    「ま、まさか、アレはケツァール忍法の奥義!」
     鴉羽兄が叫ぶ。
    「知ってるのか鴉羽兄!?」
     ネタっぽいので合いの手を入れる隼。
    「あの奥義の源流は遡ること紀元前――」
    「タダノごーじゃすもーどデゴザル」
     解説しようとした鴉羽兄にニンジャーがかぶせる。
    「ぬぅ……」
     再び心が折られ膝を付く兄。
    「あ、兄者ー!」
     弟が叫ぶ。予定外の出番で2人もキャラ立てに必死である。
    「ギャグには構ってられないね!」
     兄弟を無視してこぶしが手をニンジャーに向け、除霊結界を発動させる。
    「ナンノッ」
     ニンジャーが右手を左から右に流すと、まるで見えない力に流されるように結界自体が揺れ、霧散される。
    「コレゾ匠ノ力……グフッ」
     半分はダメージを食らってるようで口から血を滴らせるニンジャー。
    「次ハ拙者ノ番ダ」
     ニンジャーが背に手を回すと巨大な手裏剣が握られ、それを勢いよく灼滅者達へと投げてくる。
    「させん!」
     あきゑの前に立ち塞がる隼。機巧剣銃を構え迎撃しようとするが、巨大手裏剣が目の前に来た瞬間――。
     ちゅど――んっ!
     ――大爆発した。
    「お、おい」
    「なんの、爆発慣れしてる拙者に、この程度!」
     自身の気合いを集め自己回復する隼だが、さすがにそれだけでは足りなく、椿からラビリンスアーマーをもらう。
     前衛を爆発から庇っていたビハインドの姿にコクリと頷きつつ、ちくさが手裏剣を投げようと構え――それを見たニンジャーが印を組む。
     するとどうだ、ニンジャーが4体に分裂したではないか!
    「ま、まさか、アレはサイキック分身の術!」
     鴉羽兄が叫ぶ。
    「知ってるのか鴉羽兄!」
     と言いつつ、とりあえず手裏剣を投げるちくさ。
     パンッ!
     勢いよく分身したニンジャーが破裂する。
    「うむ、あれはサイキックエナジーを4分割する事で――」
    「兄者、ただの風船だ」
     ズーン、となる兄。
    「しめやかに爆裂四散しろー!」
     結局、ちくさの手裏剣で分身風船が全て破壊され、手裏剣の突き刺さったニンジャーが1人残り、遠慮なくあきゑがクナイ投げっ放しビームで追撃する。
    「オノレ……4体デ少ナイナラ、サラニ4倍デゴザル!」
     庭の各所で小さな煙がボボンッと立ち、計16体に増えるニンジャー。
    「氷哭極夜」
     静かな声と共に十六夜が地面に刃を突き刺し魔法陣を展開。
     次の瞬間、大地から氷のつららが突き上がり、16体のニンジャーを刺し貫き、15体分の風船が一斉に破裂する。
    「同じ忍術は、どうかと思うわ」
     背後に回った摩那が言うと同時、ニンジャーの死角から黒槍で貫く。
    「匠ノ……グッ」
     受け流せず脇腹を押さえつつ距離を取るニンジャー。
    「……弟よ、我ら、蚊帳の外な気がするぞ」
    「兄者、それは気のせいじゃない」
     ぬぅ、と唸る兄。
     そんな鴉羽兄弟に鴇臣が声をかける。
    「宿敵のオレ達が共闘するのも面白いって思わねーか?」
    「何!?」
    「ま、どっちでも良いけどな」
     槍を振りかぶり、ニンジャーに突撃しつつ鴇臣が言う。その槍は螺旋の力を加えられ、掠っただけでニンジャーの装束がちぎれ舞う。
    「我らは……我らの目的を果たす!」
    「我らが勧誘を拒否したニンジャーは、ここで灼滅する!」
     シンプルに考えることにしたのか、鴉羽兄弟も戦線へと加わった。とりあえずニンジャーを灼滅するまで灼滅者達に攻撃する気は無さそうだった。


     戦いは鴉羽兄弟が参戦した事で大局が決まったと言って良い。そうでなくとも、灼滅者のアイディアがプロレスラーたるニンジャーを苦しめていた。
     こぶしがスターゲイザーで吹き飛ばした所を、椿が『ここで小休止の為花束の贈呈がございます』とアナウンサー口調で花束を渡す振りをしつつ花束フォースブレイクをかましたり、あきゑの『あたしはプロレスらしく忍者らしく耐え忍んで見せてやろう』という挑発に乗らざるをえなくなり、なぜか隼がクナイエッジデスマッチで殴り合ったりで、無駄にダメージが蓄積される。
    「オ、ノレ……」
     ズタボロになりつつ忍者刀を構えて跳び込んでくるニンジャー。
    「攻撃動作が……大きくなってるよ」
     摩那がカウンターで螺穿槍を撃ち込む。
    「グ……ア」
     さらに。
    「――― 千枚通し」
     後ろによろけた所を、背後からあきゑに突き刺される。
     前後から串刺しにされ、それでも再び印を組もうと手を動かすニンジャーに、緋弾を装填しフェアレーターを銃剣へ換装した十六夜が、その額へピタリと銃口を合わせる。
     ズンッ!
     刃がスライドしバレル部分が露出、闇の燐光が放たれニンジャーが弧を描く。
     そこに身体を回転させ自身を手裏剣に見立てたちくさが体当たり、空中で轢かれるニンジャー。
     そのまま大地へ激突するも、上半身をお越し座り込む。
     もう、立つ力さえなくなっていた。
    「こんな風じゃなかったら、仲良くなれたかな?」
    「忍ビノ世界ニ慈悲ハ無イ」
     なんとか正座を決めるニンジャーの前に鴇臣が立つ。
    「恨むなら恨んでくれて構わねぇぜ?」
    「全テハ、インガオホーデゴザル」
     ニンジャーの言葉に一度だけ目をつぶり、「やっぱり、楽しい戦いだったぜ」と鴇臣が閃光百裂拳を放ち……プロレスラー・ニンジャーはそのまま二度と起き上がってくる事はなかった。
     戦いが終わった後、鴉羽兄弟は「目的は果たした」と帰って行った。
     どうしてこうなった……と思わなくもないが、とりあえずダークネスを1体灼滅し、灼滅者達も学園へと戻る事にしたのだった。

    作者:相原あきと 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年3月20日
    難度:普通
    参加:8人
    結果:成功!
    得票:格好よかった 2/感動した 3/素敵だった 2/キャラが大事にされていた 3
     あなたが購入した「複数ピンナップ(複数バトルピンナップ)」を、このシナリオの挿絵にして貰うよう、担当マスターに申請できます。
     シナリオの通常参加者は、掲載されている「自分の顔アイコン」を変更できます。
    ページトップへ