ホワイトデーはカップケーキに想いを込めて

    作者:カンナミユ

    ●予測できぬ未来
    「相馬先輩!」
     授業も終わり、教室で資料に目を通していた結城・相馬(超真面目なエクスブレイン・dn0179)は三国・マコト(正義のファイター・dn0160)の声に顔を上げた。
    「どうしたマコト」
     急いでやって来たのか、息を切らせたマコトは深呼吸をふたつし整える。
    「あの、実はオレ、母さんと妹からバレンタインにチョコもらったんですよ。で、お返しにってクッキー作ってみたんですけど、先輩にも食べてもらおうかなって持ってきました」
     にこにこと嬉しそうに言うマコトは鞄からよれよれのラッピングの包みを取り出すと相馬へ差し出した。
    「今年もクッキーを作ったのか」
    「はい! 1年ぶりに作ったし、味見もしてないんですけど……」
     ちょっと待った。何か今、不穏な単語を聞いた気がしたんだが。
     嫌な予感を胸に受け取った可愛らしい袋をしげしげと覗けば、見えるのはマコトが『1年ぶりに作った』『味見をしていない』クッキー。
    「よかったら食べてください!」
    「…………」
     今食えってか。
     不安一杯の相馬が袋から取り出したのは、いびつな形の真っ黒な何か。
    「よかったら食べてください、先輩!」
     重要なのか2回も言われてしまった相馬はそれを口に放り込み――、
     無言で机に突っ伏した。
     
    ●みんなで作ろう!
    「カップケーキを作らないか?」
     放課後、相馬は灼滅者達へと声をかけた。
    「カップケーキ?」
    「いいけど、何でカップケーキなんだ?」
     話を聞く灼滅者達の疑問に相馬はマコトとの放課後の出来事を話すと、
    「……何で悪化してんだよ!!」
     クッキーの味を思い出してしまったのか、この世の終わりを垣間見たような顔でだん! と机を叩く。
     1年というブランクはマコトの腕を戻したどころか悪化させたらしい。
     言葉にできないほどのクッキーを食べてしまった相馬はクッキーを諦め、バレンタインのお返しに手作りカップケーキを贈る事をマコトに提案したのだ。
     みんなが作るのを見ながらならマコトでも何とか作れるかもしれない。そう思ったからである。
    「ホワイトデーはクッキーじゃなきゃいけないって訳じゃないからな。要は気持ちだよ、気持ち」
     そう言いながら相馬は印刷したレシピに目を向けた。
     プレーンにココア、チョコチップ。紅茶やドライフルーツなどのカップケーキを作り、焼き上がったらデコレーションをする予定だ。
    「シンプルにそのままでもいいと思うんだけど、せっかくだからデコレーションして贈ろうと思うんだ。生クリームやアラザン、チョコペンなんかで模様や文字を書いたり、ココアや粉砂糖をまぶしたりさ」
     ぱらぱらとめくるレシピに載る画像はどれもカラフルで美味しそうなものばかり。
     友達と楽しく作るのもいいし、一人で黙々と作るのもいいだろう。もちろん、贈りたい相手と作るのも。
    「作った後は試食を兼ねたお茶会も予定しているから、もし予定がなかったら一緒に作ろうぜ」
     ホワイトデーにカップケーキ。
     気持ちや思いを込めて皆で作りませんか?


    ■リプレイ

     その日の調理実習室は『カップケーキを作る会』に集まった仲間達の声が弾んでいた。
     参加した仲間達は、どんな気持ちを込めて作るのだろう――。
     
    ●想いを込めて手作りを
    「楽しそうな誘いを有難う」
     調理実習室に入った乙彦がまず最初に声をかけたのは相馬。
     聞き覚えのある声に材料や器具を用意していた相馬は手を止め、嬉しそうな顔をする。
    「……今もし手隙なら、隣でご一緒しても構わないか?」
    「こちらこそ、もし良ければ」
     生地にチョコと苺を混ぜた乙彦は相馬と共にカップケーキを作りはじめていると、
    「……何? ベーキングパウダー小さじ1がわからない?」
     彼女へのカップケーキ作りに取り掛かる隼人の隣でマコトがスプーンを手に困りきった顔をした。
     ちょっと待った、それはティースプーンだ。
     一抹の不安を胸に軽量スプーンを差し出した隼人はマコトを全力で教える事にした。
     
     料理はあまりした事がないという雄斗がチラリと見れば、教わるマコトは悪戦苦闘中。
     多分マコトよりはマシだと思う。
     そんな事を思いながら作るのはバレンタインのお返し用。
     レシピを何度も見返し、慎重に作業する表情は真剣そのもので。
     比較的手先が器用な雄斗は知人に選んでもらったアールグレイの茶葉を生地に混ぜ、カップに流し込んでいく。そして余熱を確認し、丁寧に並べたカップが乗る天板を丁寧に入れてセット。
     タイマー通りに待てばいいのに雄斗は何度もガラス越しに覗き込めば、その度に焼き上がっていく様子がありありと見えた。
     完成したカップケーキはふっくら大きめで気持ちこんがり。
     味見をすれば申し分ない出来だ。
     十分に冷ましたカップケーキはデコレーションせず、そのままシンプルにラッピング。
     メッセージカードを添えて完成するのは寡黙な男が作ったカップケーキ。
     きっと喜んでくれるだろう。
     相手の顔を思い浮かべ、ふと、チラリと見るとマコトは声をかけられていた。
     
    「なー。マコトって恋愛とか分かる方? 初恋とかしたことあるか?」
     イオからの質問にマコトは目を丸くした。
    「俺さ、どんだけ考えても友達と恋愛の好きの差が分かんなくてこっそり色んな奴に聞いてんだけど……お前はどう思う?」
     どうやら経験がないらしく、言葉に詰まるマコトを前にイオは話し続けた。
    「考え始めてもう一年以上経つから流石に焦る……バトル人生のヘーガイってやつなのかこれ」
     ぐてっとなりつつも思い浮かぶのはあの人の顔。
    「普通の好きじゃ駄目なんかな……」
    「あの……オレ、いいと思います。普通の好きでも」
     それはイオに対するマコトの精一杯の言葉だった。
     その言葉に顔を上げ、
    「まぁ、何はともあれ! 今日は美味いカップケーキ作るぞ! 日頃の感謝の気持ちってやつは大事だもんな♪」
     にっと笑い、話を聞いてくれた礼を言うと材料を手に取り準備する。
     気持ちもだけど、やっぱ味も大事だろ! そう思うイオは美味く作れるようマコトの様子を傍で見つつ、日頃の感謝の気持ちを込めたカップケーキを作りに取り掛かると、既にマコトの周辺は小麦粉が舞っていた。
     
    「三国……基礎が出来てないのに本格的にやろうとするんだ、お前」
     脱力した優志が言葉を向けると粉ふるいを使うマコトの周囲には小麦粉が派手に散っている。
     この光景、俺は去年も目た覚えがある……。
    「俺、去年言わなかったか? ホットケーキミックスでもクッキーは出来るんだって」
     本格的にやらなくてもいいのにと思う優志の前で今度は玉子をつるっ落とす。
     全く何をやっているんだか。
     ため息をつきつつ玉子を拾い、それでも去年と同じように手伝いながら優志は自分のカップケーキを作りはじめた。
     
    「それじゃ、戒士くん、頑張ろうね♪」
    「桃子さん、今日はよろしくっすよ!」
     シンプルな服装にエプロン姿の桃子の隣に立つのはシャツにエプロン、頭にタオルというラーメン屋の店員ルックの戒士。
     付き合いはじめたばかりの彼女を目にドキドキしっぱなしの戒士は桃子と共にクラブの新メニュー開発に取り掛かった。
    「みるくくらぶ用だから、少しミルクの分量は多めにしたいね」
    「ふむふむ。ミルク多め、と」
     クラブ用のカップケーキなので用意されたレシピよりもミルクは多めだ。
    「このレシピ通りにしたら、戒士くんでもできるからね?」
     優しい言葉と共に訂正したレシピを受け取る戒士だが、その表情はちょっと不安そう。
     料理とかはほぼした事がない戒士は桃子に教わりながら、一つ一つ覚えていく。
     二人で生地を入れたカップを天板に乗せ、温めたオーブンの中へ。
    「うぉぉ、甘い匂いがすごくするっす! もう美味しそうっす、桃子さん!」
     オーブンから漂う甘い匂いに愛しい彼女。
     焼き上がるまで、もう少し。
     
    「マコトにーちゃん、お久しぶり! あの時の皆でお手伝いに来たよっ」
     にこっと笑顔で勇介が声をかければ、振り向くマコトの周辺は悲惨な有様で。
     そんな様子に久し振りと健も声をかけ、
    「『失敗は成功のおかーさん』!  今日はよーひちゃんセンセーがいるのでムテキなの!」
     まるで自分の事の様にえへんと自慢げに陽桜は言い、曜灯ににこりと笑顔。
     菓子作りが得意な曜灯に簡単ながらも経験のある健や勇介がいれば大丈夫!
    「みんなでかわいくっておいしいの作っちゃおう♪」
     にっこり笑顔でカップケーキ作り開始!
    「生地作りは、素材の混ぜる順番とか入れ方とか美味しくする工夫はいっぱいあるけど、大切なのは分量と混ぜ方よ。ここを押さえれば失敗しにくいわ」
     そう曜灯が説明する中、健が用意したのはホットケーキミックス。
     ホットケーキだけではなく、クッキーからケーキまで何でも作れてしまう優れものだ。
    「わっ、ホットケーキミックスって便利! 折角だから茶葉や抹茶使っていろんなケーキ作ろうよ」
    「お茶のカップケーキ、すごくいい考えだと思う!」
     勇介と陽桜は嬉しそうに言葉を交わすと曜灯はカップケーキを作るコツを説明し、手間取るマコトを手伝ったり。
    「このアールグレイとか、白桃の香りの烏龍茶の茶葉とか、美味しくなりそう! 抹茶あずきも外せないよね」
    「そういう事なら、まずは軽くすり潰して風味を上げてから練りこむといいわ」
    「抹茶あずき、ひおも好きー! アールグレイは外せないよね♪」
     勇介は持参した茶葉に小豆を取り出し、曜灯のアドバイスを耳に陽桜はジャムの瓶を取り出した。
    「白桃烏龍茶の茶葉のは、桃ジャムを中に入れて作ってみたいな」
    「それいいな!」
     健も頷き陽桜と勇介の3人でそれぞれカップケーキの生地を作っていく。
     曜灯が作ったのは柔らかめの紅茶の生地にミルクたっぷりの生地、ドライフルーツを混ぜた生地。丁寧に流し込み、出来上がるのは3層カップケーキだ。
    「みんなできた? オーブンに入れましょ」
     カップを天板に並べ、170℃のオーブンで20分位。
    「さぁ、焼き上がりが楽しみね」
     曜灯の言葉にきらきらと陽桜の瞳は輝きオーブンを見守り、軽やかな音が焼きあがりを告げた。
     
    ●彩りが意味するものは
     綺麗に焼き上がった紅茶のカップケーキを味見すれば、思った通りの出来に優志の表情はふわりと和らぐ。
    「さてっと」
     準備した材料を並べ、手際よくデコレーションに取り掛かった。
     優志が作るのはアニマルケーキ。
     チョコレートやデコペンで作る犬や猫、熊にライオンが並ぶ皿はさながら小さな動物園だ。
     味も問題ないし、気に入ってくれると良いんだけどな。
     喜ぶあの人の顔を思い浮かべ、綺麗にラッピングし完成させる優志だが、ふと沢山のカップケーキが目に入った。
     
     沢山並ぶのは式が作ったカップケーキ。
     いっぱい食べる愛しい人の為に作ったそれはどれも大きく、そしてどれも美味しそうだがまだ完成していない。これからが一番重要な作業なのだ。
     デコレーション用の材料を用意する中、
    「デコは、これでいこうっ」
     目についたナッツを手に取り、式は丁寧にそれをカップケーキに並べて文字を刻む。
     一つのカップケーキに文字を一つ刻み、次のカップケーキにまた文字を一つ刻む。その作業は大変だが、式は想いを込めて丁寧に並べていく。
     ナッツやトッピングが刻むカップケーキは文字となり、それは単語となる。
     黙々と作業を続け、
    「できた」
     最後の一つ完成させた式はカップケーキを順番通りに並べ、確認する。
     色とりどりのカップケーキはそれぞれ違うトッピング、そして一つ一つに込められた愛しい人へのメッセージ。
     メッセージを心の中でそっと呟き、式は愛しい人の顔を思い浮かべた。
     
     苺のピューレを混ぜた淡い桃色の生クリームを絞ってデコレーションしたカップケーキに舞うのは塩漬けされた桜の花びら。
     春らしい雰囲気を目指した乙彦のカップケーキには小さな春が訪れている。
     相馬はどんなものを作っているのだろうと隣を見れば、カラフルな生クリームの上にアラザンを飾りつけていた。
     イメージ通りの器用さの相馬とは対照的に気がかりなマコトは苦戦をしているようだが……。
    「結城の心が籠った品、きっと喜ばれるだろうな」
    「君のもきっと喜ばれるよ」
     互いに最後の一つを完成させ、ふと微笑むと隼人はカップケーキの上に生クリームをのせて、苺ソースをかけている。
     パティシエを夢見る隼人の手際は良く、彼女へ贈るそれはとても美味しそう。
    「マコトはどんなトッピングにしたんだ?」
     そんな隼人が隣を見れば、凄い物が出来ていた。
    「って。な、なかなか個性的だな……」
     その独創性は見習いたいような、遠慮したいような。
     
    「美味しそうっす、桃子さん!」
     焼き上がったばかりのカップケーキはこのままでも十分美味しそうだが、これからが肝心要のデコレーション作業だ。
     準備しておいたホイップクリームやカラフルなアラザン、苺やミントの葉を桃子は粗熱が取れたカップケーキに乗せていく。
    「桃子さん料理上手っす……!」
     手際よく乗せられていくカップケーキを目にする戒士は感動しっぱなしだが、見てばかりではいられない。
     戒士は不器用ながらも桃子の作業をじっと見ては一つづつトッピングを乗せていく。
    「戒士くんも同じようにできたかな?」
     ちらりと見れば不器用ながらも完成しており、それを目に桃子は微笑んだ。
    「ふふ♪ 二人の共同作業だね♪」
    「ふたりの共同作業……ゴクリ!」
     いつか訪れるであろう未来が見えた気がする。
     二人は顔を見合わせ、幸せいっぱいにカップケーキを完成させていく中、弾む声が聞えてきた。
     
    「健ちゃんのチョコペンのお花、かわいー」
     緑と茶色の色合いが綺麗なカップケーキにピンクや黄色のチョコペンで花弁を描き、仕上げにアラザンを飾ればふわりと花が咲く。
    「野に咲く花みたく見えないか?」
    「健くんのお花畑、いい感じ!」
     一つ完成させた健と言葉を交わす勇介は抹茶や粉にした茶葉を混ぜたクリームで格子模様を描いていた。
    「ゆーちゃんの格子模様はおしゃれ!」
     綺麗な色の格子を目にする陽桜は二人のカップケーキをじーっと見つめ、
    「ひおも花びら描きたいなぁ」
    「じゃあこれ使いなよ!」
     健からチョコペンを受け取りカップケーキに花弁を描く。
     ちょっと曲がっちゃってもご愛嬌。気持ちがこもっていれば大丈夫!
    「マコトおにーちゃんもよーひちゃんはどんな飾りにした?」
     チョコペンの手を止め陽桜が視線を向ければマコトは一生懸命にチョコスプレーを乗せており、曜灯はデコレーションはしないのか皆がデコレーションする様子を見守っている。
     それぞれが思いを込め、一生懸命のデコレーション。
     そして、
    「よっし完成!」
    「できたー」
     陽桜と健の前には沢山の花が咲き、勇介も最後の一つを完成させた。
     デコレーションも終わり、後は最後のお楽しみ。
    「試食もお茶も楽しみだよ!」
     にこりと勇介は言うと皆で試食の準備に取り掛かった。
     
     甘くいい匂いが鼻孔をくすぐる中、彩歌と樹はデコレーションの用意を進めていた。
    「私、お菓子作りは慣れてきたきたんですけれど、デコレーションって初心者なんですよね」
     何かコツみたいなものはあるのだろうかと声をかければ、樹はデコレーション用のマジパンの準備中。
    「イメージを素直に形にしていけばいい……のかなーとは思うんですけれど。じゃあ、樹さん、何かお題ください! がんばってそれを表現してみようと思います!」
    「お題……」
     彩歌の言葉に樹はしばし思案し、
    「そうね、動物っぽくしてみない?」
     にこりと言えばオーブンからは焼き上がりを告げる音。
     オーブンを開けてカップケーキを取り出すと二人は粗熱を取る為、天板から一つづつ丁寧に皿に移す。
    「むむ、カップケーキの上に動物を表現、ですか」
     色とりどりのカップケーキを見つめて考える彩歌を目に樹もマジパンでパーツ作りに取り掛かる。
     黄色いプレーンは狐に見立てて耳を作り、チョコには猫の耳。くるっと丸めた尻尾を付ければいちご味のカップケーキはピンクの豚に変身だ。
    「ぶたちゃんに見えるかしら」
    「とても可愛いですよ」
     可愛いカップケーキを目に彩歌もイメージした動物を素直に形にしていく事に。
    「んーんー……じゃあ、細いチョコレートをこうやって鬣みたいにして……チョココーティングで顔を書いて……らいおーん、とか、こんな感じです?」
    「そうそう、そんな感じ」
     出来上がったライオンは皿の上に集まる動物達の仲間入り。
    「うん、面白くなってきました! 動物の種類、どんどんお願いします! 私、がんばって表現します!」
     嬉しそうにカップケーキを手に取る彩歌を見つめ、ふと樹は思う。前よりずっといい笑顔をするようになったと。
     これもあの人のおかげかしら。
    「樹さんできました! こんな感じです?」
    「すごく上手ね」
     彩歌と樹の手により皿には沢山の動物達。
     こうして親友と楽しい時間を二人は過ごしたのだった。
     
    ●お茶と共に出来栄えを
    「マコトのケーキ、一口もらっていいか?」
     その言葉にマコトはどうぞと二つ返事で隼人へ皿を差し出した。
     傾くクリームと生地を掬い、ぱくり。
    「う、うーん。面白い味に仕上がったな……」
     隼人の感想にマコトも口にすれば、頑張った結果に満足する。
    「そっちも4人兄弟? 奇遇だな」
     家族の話題に隼人がニカッと笑えば弟に似ているマコトも笑うと、近くからも楽しそうな声が聞えてきた。
     
    「ん、いい感じ!」
     選りすぐりのお茶にカップケーキ。
     ぱくりと口にした勇介はにこりと表情を明るくする。
     抹茶あずきにアールグレイ、白桃烏龍茶。どれも満足の出来だった。
    「おいしー!」
    「マジ大成功だな!」
     自分達で作ったカップケーキを口に、陽桜と健も満足気に頷いた。これなら絶対に喜んでくれるだろう。
     曜灯もお茶と共にカップケーキを食べ進めていくと、3層のカップケーキは進むほど味が変化した。イメージ通りの出来にふと口元に笑みが浮ぶ。
     
     調理実習室は甘い香りと参加者達の声が軽やかに弾んでおり、その中でシェリーは椅子に座り七狼を見つめた。
     バレンタインのお返しに彼から手作りお菓子を貰えるなんて。
     初めての事に嬉しさと楽しみを胸に待てば、
    「口に合えばイイノだが」
     ことりと静かな音と共にシェリーの前に置かれるのは、七狼が彼女の為に作ったカップケーキ。
    「砕いた苺チョコを混ぜ焼いたカップケーキにシテみたよ」
    「わあ、可愛い色のカップケーキ。希望に沿った味にしてくれたんだね」
     嬉しそうに言うシェリーの前に淹れた紅茶を並べれば、チョコと紅茶の香りがふわりと舞う。
    「えへへ、嬉しいな、いただきます」
    「どうぞ召し上がれ」
     口に広がるのは苺チョコに、もう一つ。
    「生地にホワイトチョコを練り込んだからしっとり甘いとは思う」
    「ん、しっとりした味わいが優しくてとても美味しいよ」
     説明する七狼の言葉に味わえば、ホワイトチョコと苺チョコが口の中に広がっていく。
     とても美味しい。
    「七狼はお菓子作りも上手にできるんだね。君が淹れてくれたお茶も凄く良い味」
    「美味しかったノなら本当に良かった。君の教えが上手ダッタからだな」
     言葉や表情で伝えきれない好意を少しでも示せただろうか。
     そんな思いを胸に七狼は美味しそうに口にするその顔を見れば、
    「苺とチョコの甘い好意をありがとう」
     その言葉にふっと心が軽くなるような。
     愛しい人が美味しそうに食べる様子を見つめる七狼だが、
    「素敵なお返しをくれた君にはご褒美」
     そう言うシェリーが取り出したのはナッツを塗したチョコカップケーキ。
    「お礼に? 君も作ってクレタのか」
     彼女から手作りを再び貰えるとは。まさかのサプライズに七狼は驚きを口にする。
    「君に教えつつもこっそり作ってみたの。お口に合うと嬉しいな」
    「ナッツにチョコか好物も沢山有難う、是非頂こう」
     勿論君と食べさせあいで。
     愛しい人への気持ちが篭った二つのカップケーキ。
     食べさせあい、紅茶と共に二人の幸せな時間はゆっくりと流れていく。
     
     完成したカップケーキを食べるその顔からは誰もが満足いく出来だったのは明らかで。
     こうしてカップケーキを作る会は楽しく過ぎていくのだった。

    作者:カンナミユ 重傷:なし
    死亡:なし
    闇堕ち:なし
    種類:
    公開:2015年3月13日
    難度:簡単
    参加:16人
    結果:成功!
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