瑠璃垣・恢(残響のフューネラル・d03192)は、こんな噂を耳にした。
『冬の温泉宿で女性を襲うスライムが発生している』と……。
このスライムは都市伝説で、東北の山奥にある温泉宿で、その存在が確認されたようである。
都市伝説は真っ白な体をしており、雪の中に潜んでいるのだが、女性が温泉に浸かった途端に本性を現し、あんな事や、こんな事。
真っ白な粘液を撒き散らして、えっちたな気分にさせた上で、如何わしい事をしているようである。
しかも、身の危険を感じると、雪の中に紛れて気配を消してしまうため、存在自体が怪しまれており、何かを見間違えたのだろうと噂されているようだ。
都市伝説はそれを利用して、やりたい放題やっており、事態は色々な意味で深刻に。
その事を踏まえた上で、都市伝説を倒す事が、今回の目的である。
参加者 | |
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細氷・六華(凍土高原・d01038) |
シャルリーナ・エーベルヴァイン(ヴァイスブリッツェン・d02984) |
瑠璃垣・恢(残響のフューネラル・d03192) |
真白・優樹(あんだんて・d03880) |
穂照・海(真夜中の緋き翼・d03981) |
初食・杭(メローオレンジ・d14518) |
烏丸・海月(くらげのくらげ・d31486) |
日輪・典(汝は人狼なりや・d32392) |
●東北の山奥
「前に行った温泉はウナギだったけど、今度の温泉はスライムか。都市伝説もタタリガミとかいうダークネスが生み出したものって聞いたんだけど、似たような場所の似たような都市伝説……まさか同一のだったりしないよね」
真白・優樹(あんだんて・d03880)は気まずい様子で汗を流しながら、仲間達と共に都市伝説が確認された東北の山奥に向かっていた。
辺り一面、雪景色。
呼吸をするたび、真っ白な息が吐き出され、全身が凍りつきそうなほど寒かった。
都市伝説はこの先にある温泉宿に出没しており、普段は真っ白な体を雪の中に隠して、獲物が来るのを待ち構えているようである。
そもそも都市伝説は噂によって生み出された存在。
それ故に、同じような噂から派生したものが、別々の都市伝説として生み出された可能性も高かった。
「うーん、流石にこの都市伝説というか、スライムは食べようと思わないね……。肉質がある生物とかなら嬉しいんだけど……」
日輪・典(汝は人狼なりや・d32392)が、事前に配られた資料に目を通す。
資料には都市伝説のイメージイラストも載っているのだが、どう考えても美味しそうには見えなかった。
出来れば、もっと美味しそうなものが、敵であれば良かったのだが、今更文句を言っても意味がない。
「それにしても、寒いね。早く終えて温泉に入りたいな」
瑠璃垣・恢(残響のフューネラル・d03192)が、身体をガタガタと震わせる。
都市伝説が確認された温泉宿が近づくにつれ、辺りが凍えるほど寒くなってきたため、指先が痺れて思うように動かなくなっていた。
「まあ、温泉そのものはとても良いのですが……。都市伝説いなければ、ですね」
細氷・六華(凍土高原・d01038)が、深い溜息をもらす。
都市伝説が存在している限り、温泉に入れない。
ここで無理に入ろうとすれば、都市伝説の思うツボ。
あんな事から、こんな事までされてしまう事は間違いない。
「どうせなら、もっと邪悪で強大な敵と戦いたかった……。まあ、ある意味で邪悪だけど……」
穂照・海(真夜中の緋き翼・d03981)が、複雑な気持ちになった。
ある意味、邪悪な存在ではあるものの、まったくと言っていいほどテンションが上がらない。
むしろ、都市伝説が確認された温泉宿に近づけば近づくほど、テンションが下がっているようだ。
「せっかく温泉まで来たんだから、ぱぱっと都市伝説灼滅したら、みんなで温泉はいろーぜ! よーし、ぽかぽかするぞー!」
そんな空気を払い除ける勢いで、初食・杭(メローオレンジ・d14518)がテンションをガツンと上げた。
このままだと温泉宿に着くまでに、テンションが御通夜と状態になってしまう。
そんな事になれば、都市伝説と戦うどころではなくなってしまうため、色々な意味で必死なようである。
「とても嫌な予感がしますけれど、温泉に平穏を取り戻す為頑張らないとですねぇ……」
シャルリーナ・エーベルヴァイン(ヴァイスブリッツェン・d02984)が、自分自身に気合を入れた。
そうしているうちに、都市伝説が確認された温泉宿に辿り着いた。
温泉宿は都市伝説が現れた事が原因で、お客が激減していると思いきや、レディースデーの真っ最中。
女性であれば8割引。ただし、トラブルが起こっても、一切責任は取りません、と注意書きが書かれていた。
その分、男性客には2倍の料金を取っているが、4倍払えば覗きポイントまで案内してくれるため、色々な意味で客が増えているようだ。
「えとえと、変な人は成敗です……!」
烏丸・海月(くらげのくらげ・d31486)が、変態撲滅を心に誓う。
まず手始めにやる事は、覗き穴を防ぐ事。
変態達を見分けるため、覗き穴に墨を塗っておけば、色々な意味で一石二鳥である。
●温泉宿
「本当に辺りが真っ白で、どこから来るのか分からないですよぉ……」
シャルリーナが白ビキニ姿で不安げな表情を浮かべて、警戒した様子で温泉に入っていく。
その途端、あちらこちらから視線を感じたため、身の危険を感じて後ろに下がる。
間違いなく、誰かに覗かれている。
しかも、一人ではなく、複数に……!
「はっ……! ……これはまるで覗き!」
その視線に気づいた海が、塀の向こう側で首を振る。
防寒具を着込んだ上で、旅人の外套を使っているため、一般人達に気付かれる事はないが、まわりは変態達で溢れ返っていた。
そんな彼らが覗き穴に目を押しつけ、荒々しくハアハアと息を吐いていた。
そのため、海はげんなり。
いくら都市伝説を倒すとは言え、こんな連中と一緒にいなければならないのは、拷問に等しい事だった。
「はぁ……、あたたかいですよぉ♪」
そんな事になっているとは露知れず、シャルリーナが無防備を装って温泉でゆったり。
そのたび、塀に向こう側から荒々しく息遣いが聞こえているが、なるべく気にしないようにした。
「うう、楽しみにしてたのに、こんな目になるとは……ぐぎぎ」
一方、杭は納得のいかない様子で愚痴をこぼしていた。
水着を着て女湯に浸かるまでは良かったが、その上から長めのバスタオルで胸元を隠し、髪を解いた姿はまるで乙女。
思っていた以上にそれっぽく見えるため、色々な意味で不本意なようである。
「ふふ、ほら、仲良くしないと怪しまれちゃうかも知れません。それに髪も綺麗じゃないですか。もっと可愛い髪形してもいいと思います、けど……」
六華が含みのある笑みを浮かべて、すすっと近づいた。
「まあ、顔つき幼いし、背も低い……髪も長いしな。しゃーないっちゃしゃーないんだけど……うう、鍛えるか……」
杭が自分自身に言い聞かせる。
「覚悟は出来てるつもりだけど、襲われるとわかってて入るのは、中々勇気がいるね」
海月がふーっと深呼吸。
「でてこーい、でてこーい、です……」
そう言って、海月が食紅を撒いていく。
そのせいで、真っ白な雪景色が、真っ赤な殺人現場のようになった。
「ふわわ、なんか入ってきた。変なとこ触らないでよ、う~気持ち悪い~」
次の瞬間、優樹が妙な声を上げ、その場にぺたんと座り込む。
それに気づいた海月が食紅を投げつけ、都市伝説の姿をあらわにした。
すぐさま、都市伝説が海月達を威嚇するようにして、真っ白な液体を飛ばす。
「な、なんですか、この白い粘液……酸性とか毒とかではないですけど……気持ち悪いというか、ええと……うう」
それを浴びた六華が青ざめた表情を浮かべ、うぷっと口元を押さえた。
物凄く嫌な臭いがする。それこそ、吐き気がするほどに……!
「……やっぱり、美味しそうに見えてきたかも」
典が都市伝説をじーっと見つめて、ゴクリと唾を飲み込んだ。
都市伝説はまるで餅のような姿をしていたが、食紅を体内に取り込んで事で、桜餅のようになっていた。
しかも、そのポヨポヨ感は、まるでグミのようである。
だが、それよりも優先すべき事があった。
それは変態の排除。
今もなお、はあはあしている変態達を、どうにかする事であった。
それに気づいた典が、殺界形成を発動させ、変態達を追っ払う。
変態達はあられもない姿のまま、蜘蛛の子を散らすようにして逃げていく。
「ヘッドフォンに良くない。さっさと終わらせよう」
次の瞬間、恢がスレイヤーカードを解除し、温泉に乗り込むのであった。
●真っ赤なスライム
「そのピンクの色彩はお似合いですが……腹立たしいですね、なんだか」
六華がムッとした表情を浮かべて、都市伝説に視線を送る。
都市伝説の全身はピンク色に染まっており、まるで何かのマスコットキャラクターのようだった。
「……とは言え、居場所さえ分かれば、都市伝説を倒すのも、難しくなさそうだね」
すぐさま、典が都市伝説めがけて、幻狼銀爪撃を放つ。
都市伝説は優樹の傍から離れて雪の中に身を隠そうとしているが、食紅が辺りに撒かれているせいで、思うように隠れる事が出来ないのか、戸惑っているようだった。
「人の業より生まれし孤児よ、虚無の海と還るがいい……」
それと同時に海が塀の上に登って、マントをバサッとはためかせる。
これで都市伝説が人間タイプであれば、『なんだ、アイツは!』と驚くところだが、スライムタイプのせいか無反応。
そんな事などおかまいなしで、海が都市伝説の前に着地すると、虚空ギロチンを放って都市伝説の身体を切り裂いた。
「天運尽きたりというやつだね。欲望のままに動き続けると、俺達みたいな怖いのが来るんだよ。来世での教訓にするといい」
続いて恢が跳ね回るようにして距離を縮め、都市伝説に螺穿槍を仕掛ける。
それでも、都市伝説は雪の中に身を隠そうとして必死なようだった。
「女性の敵です……覚悟してください!」
次の瞬間、シャルリーナが都市伝説の行く手を阻み、ビシィッと力強く言い放つ。
それに腹を立てたのか、都市伝説が再び真っ白な液体を飛ばしてきた。
そのため、シャルリーナ達は真っ白な液体にまみれ、全身がドロドロになった。
「けしからん輩ですね、破廉恥はダメですよ……!」
それを目の当たりにした海月が嫌悪感をあらわにしながら、都市伝説めがけて神薙刃を仕掛ける。
その一撃を食らった都市伝説の身体から、真っ白な血がぶわっと勢いよく噴き出した。
「エロス撲滅!」
それと同時に優樹が都市伝説に狙いを定め、レイザースラストを放って、ズンバラリンと切り裂いた。
これには都市伝説も完全に戦意を喪失させ、這うようにして逃げていく。
「それじゃ、もう遠慮せずにガンガン叩くぞおらー!」
次の瞬間、杭がティアーズリッパーを仕掛け、都市伝説の身体を切り刻む。
その一撃を食らった都市伝説の身体は、饅頭ほどの塊になり、雪の中に溶けるようにして消え去った。
「灼滅はしましたが、何だかまだ纏わり付いている様な感覚ですよぉ……」
シャルリーナが深い溜息をもらす。
しかも、全身に妙な臭いがこびりついてしまったため、早くシャワーで全身を洗い流したい気分である。
「はぁ……今度こそゆっくり温泉に浸かりたいですね……」
六華が魂の抜けた表情を浮かべた。
先程まで変態達が覗いていたせいか、気が休まる暇がなかったため、いつもよりもどっと疲れているようである。
「……とは言え、何だか本当に殺人現場のようになってしまいましたね……。とりあえず、お湯をかけて、掃除しておきましょうか……」
そう言って海月が、辺りを掃除し始めた。
どちらにしても、辺りに撒かれているのは食紅なので、すぐに掃除を終える事が出来そうである。
そして、海月達は温泉で疲れを癒した後、卓球をしてからその場を後にするのであった。
作者:ゆうきつかさ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年2月20日
難度:普通
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 2/感動した 1/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 0
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