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寒さも厳しいある日の昼。とある高校の校門前に、1人の女子高校生が立っていた。
「ここね……私の最初の活動場所は」
その少女は、綺麗な赤色が映える、煌びやかなマテリアルロッドと、純白のダイダロスベルトを装着していた。
身にまとった制服は、全体的にピンク混じりの装飾が施されており、まるでアイドルの様な格好をしている。
顔には化粧が塗られていたが、決してケバいという訳ではなく、どこか上品な妖艶さも漂わせていた。
まとめると、超美人だった。
「行くわよ、アンタ達。私のキュートでポップな殺しを、バッチリ写すのよ!! ミスったらタマ潰すわよ!! あと、アンタラは絶対に殺しはしないように。今回は私の殺しを写すのが目的なんだから。アンタラの雑な殺しが写ったら台無しよ」
その少女がビシッと指を指すと、黄色いHKTTシャツを着た4人の男たちが、カメラを構えたままこれまたビシッと敬礼する。
「はい、華美弥さん!!」
その異様な集団の周りには、既にこの高校の学生たちが、ざわつきながら集まっていた。
「さて、行くわよ……ケバいケバいとあのクソどもに言われまくった私が生まれ変わったこの姿、見せてやるわ!」
華美弥という名の六六六人衆は、純白のダイダロスベルトを周囲に放つと、周りにいた学生たちの身体を纏めて絡めとる。
「死ね」
そして学生達の全身をねじ曲がるくらいにしめつけると、骨が砕ける音が一斉に響き、攻撃を受けた学生たちは一斉に息絶えた。
攻撃を逃れた学生たちの間から悲鳴が上がり、一斉にその場を散っていく。
「女子高校生スーパー殺人アイドル、華美弥様の登場よ!! サインは生き残ったらしてあげるわ!!」
華美弥はそのまま校内に突っ込むと、1階から適当に教室を回り、その場にいる学生たちを惨殺していく。
「さて、これで終わりね……戻ったら、私のPVを作成するのよ!」
「はい、華美弥さん!!」
華美弥はそう言いながら、血に塗れた高校を後にするのだった。
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「さて……優生さん、貴方の推理、当たったようですよ」
神埼・ウィラ(インドア派エクスブレイン・dn0206)は、芥生・優生(探シ人来タラズ・d30127)にそう告げた。
「え? 『華美弥がHKTに入ってアイドルっぽくなり帰ってくる』……ってあれが? 本当に?」
優生がそう言うと、ウィラは一枚の資料を優生に手渡した。
「これが、今の華美弥です」
「…………誰だ? この美人さんは。華美弥といえば、目に痛い武器、目に痛い服、目に痛いメイクだと思ってたんだけどなあ」
資料に写った華美弥の姿は、前回対峙した時と比べるとまるで別人であり、困惑した様子で優生が呟く。
「どうやら前回の灼滅者達との戦いで、化粧と装備を徹徹底的に、ここまでするかという位コケにされたことがどうやらかなり心にきたようでして。HKT六六六に入った華美弥はメイクや服装を割と真面目に勉強し、女子高校生スーパー殺人アイドルとして生まれ変わったみたいです。そして、その彼女が、大量殺人を起こそうとしています」
ウィラはそこまで言うと、複数枚の資料を優生に手渡した。
「……自分のPVを撮影するために、大量殺人か。何ともやるせないなあ」
優生はそう言ってため息を吐く。
「場所はとある高校。華美弥はHKTの強化一般人を4人引き連れ、大量殺人を行います。強化一般人達は一般人に手をだすことはありませんが、まあ、灼滅者相手には別でしょう。敵は全部で5体です」
ウィラに続き、優生も説明を続けていく。
「どうやら華美弥はこの日、この高校に在籍する生徒、教師の内、150人を殺害するみたいだ。校門前で殺されるのが20人、校舎内で殺されるのが130人だ。何とかして止めないと」
優生の言葉にウィラは頷き、資料に目を通す。
「この高校の校舎は、正面玄関に加え、小さな裏口がありますが、華美弥はその裏口の存在には気づかず、窓から侵入するようなこともありません。つまり正面扉から校舎に突入されることを防ぎさえすれば、130人の命は救うことが出来ます」
灼滅者達は、校門前で華美弥の周りに学生たちが集まってから、攻撃を仕掛けることが出来る。
それ以前のタイミングで、華美弥への接触や、一般人達の避難を行ってしまえば、華美弥のバベルの鎖に引っかかってしまう。
「華美弥のポジションはクラッシャー。他の4人の強化一般人はディフェンダーだ。華美弥の攻撃力は相変わらずかなり高いけど、前回の戦いで、防御に関してはかなり脆いという事が分かってる」
今回灼滅者達が攻撃を仕掛ければ、二度連続で殺しの邪魔をされた華美弥はかなり怒り、ギリギリまで撤退はしない。全員で協力すれば、今回で灼滅出来る可能性は十分あるだろうと優生は言う。
優生は全ての資料読み終え、ウィラに返した。
そしてファイルをパタンと閉じ、ウィラは灼滅者たちに向き直る。
「説明は以上です。何とかして虐殺を防ぎ、そして出来れば、華美弥も灼滅してきて下さい。お気をつけて。皆さんが無事に、納得行く戦果が得られることを、願っています」
参加者 | |
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アルヴァレス・シュヴァイツァー(蒼の守護騎士・d02160) |
逆霧・夜兎(深闇・d02876) |
射干玉・闇夜(高校生人狼・d06208) |
吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361) |
エイダ・ラブレス(梔子・d11931) |
アレックス・ダークチェリー(ヒットマン紳士・d19526) |
イルミア・エリオウス(ふぁいあぶらっど・d29065) |
芥生・優生(探シ人来タラズ・d30127) |
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とある高校の校門前に、アイドルの格好をした華美弥が立つ。
その煌びやかな格好と、周りに立っている黒服はとても目を引き、その場には高校生たちが集まり始めていた。
しかし集まっていたのは。ただの高校生たちだけでは無かった。
一般人を保護し、華美弥を灼滅するため、多くの灼滅者たちが集まっていたのだ。
「さて、行くわよ……ケバイケバイとあのクソどもに言われた私が生まれ変わったこの姿、見せてや」
ドーン! ピー! ガガガガガガガガガ!!! ッドーーーーーン!!
突如として戦場に、大きな音が何度も響き渡る。
打ち上げ花火、防犯ホイッスル、チェーンソーのエンジン音、信号拳銃。
「うるさっ!! 何? 何なの!?」
ダイダロスベルトを展開して一般人たちに攻撃を放とうとしていた華美弥がその動きを止め、眉間にしわを寄せる。
その一瞬に、多くの灼滅者たちが華美弥の達と一般人たちの間に割り込んだ。
「仕事の時間だ」
吉沢・昴(ダブルフェイス・d09361)はスレイヤーカードを解放すると、殲術道具を構えて飛び出した。
「さて、貴方を灼滅いたしましょうか……黄泉の旅路、ご案内仕ります……!」
同じくスレイヤーカードを解放し、華美弥に向けて飛び出したアルヴァレス・シュヴァイツァー(蒼の守護騎士・d02160)。
「あ、元ケバくてダサいアイドルの華美弥さん、サインもらえませんか?」
芥生・優生(探シ人来タラズ・d30127)はそう言いながら身体から殺気を放ち、周囲の一般人たちに影響を与える。
「あぁ!!? ていうかあんた、この間のクソ共の1人じゃない!!」
華美弥が優生の顔を見て、再び灼滅者が現れたのだと理解した華美弥。
「ああ、俺もだぜ。こないだはどーも。やっぱ素顔の方が可愛いじゃんお前。まあその顔血塗れにしたらもっとそそるけどな」
「テメエもかこのクソが!!」
錠の顔を見て、更に顔を歪める華美弥。
「此処から逃げろ」
そんなやり取りの隙に、パニックテレパスを使用し、大声で呼びかけていく潮。
校門前は喧騒に包まれ、学生たちは一斉に散開していく。
「チッ、逃がすか……!!」
華美弥は改めてダイダロスベルトを展開し、一般人たちに狙いを定める。
「おっと、お前たちの相手はオレたちだ」
逆霧・夜兎(深闇・d02876)は華美弥に向けて糸を放つと、その腕を絡め取る。
「グッ…………死ね!!」
腕に巻きついた鋼糸を無理やり振り払い、華美弥はダイダロスベルトを周囲に放つ。
灼滅者たちが作った一瞬の隙に逃げ出すことが出来た学生たちもいたが、未だ校門前には学生たちがいた。
華美弥の攻撃は校門前にいた灼滅者と一般人たちに襲いかかる。
「いくよ、マールートっ! 皆を庇って!」
イルミア・エリオウス(ふぁいあぶらっど・d29065)がライドキャリバーの『マールート』と共に一学生たちの前に立ち塞がり、その攻撃を受け止めた。
そして朱音が、來鯉が、ホテルスが、耀が、カルムが、牡丹が、雛美が。
一般人たちの前に立ち塞がった多くの灼滅者たちが、次々とその攻撃から一般人を庇っていく。
校門にいた20人の学生の内、6人は即座に走り出したため逃げおおせ、14人は灼滅者が攻撃から庇った。
多くの人間が学生たちを庇うように動いていたため、幸運にも誰も傷つかずに華美弥の初撃を耐えることが出来た。
「……この人たちを、お願い、します……」
エイダ・ラブレス(梔子・d11931)が、生き残った学生たちを他の灼滅者たちに任せ、殲術道具を構えて華美弥の前へ立つ。
「だいじょぶ、まかせて」
砂羽が一般人数人を引き連れて、安全圏まで連れて行く。
「よくも私のPV撮影を邪魔してくれたわね、このクソ灼滅者どもが!! この間の憂さ晴らしついでに、今度こそぶち殺してやる!!」
華美弥は口汚く罵りながら、杖を構える。
そして、華美弥と灼滅者たちの戦いが始まった。
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「全く……綺麗になろうと努力する女は嫌いじゃねえが……このアピールの方法はいただけねぇな。実際綺麗だとは思うがな」
「うっさいわボケ灼滅者!! アンタ、行きなさい!!」
射干玉・闇夜(高校生人狼・d06208)の言葉に怒号で返し、強化一般人の背を蹴り飛ばす華美弥。
「分かりました、華美弥様!!」
強化一般人は元気よくそう答えると、全身から赤黒い殺気を発し、後衛に放った。
「お前らも何でこいつにつき従ってるんだか。まあ、強化一般人だししょうがねぇか」
闇夜は縛霊手を地面に叩きつけると、自身を中心とした結界を構築し、殺気から自分の身を守った。
「隙が出来た……援護します!」
アルヴァレスは、攻撃後に隙が出来た強化一般人の懐までもぐりこみ拳を叩きこんで地面に叩き伏せた。
「助かったぜ……これで、仕留めきるぜ」
闇夜は巨大な斧を構えながら、立ち上がる強化一般人に接近していく。
「くっ……これしきで倒れるわけにグゴッ」
立ちあがった瞬間闇夜に顔面を殴り飛ばされる。
「お前が手遅れなほど改造されてない事を祈るぜ」
そして闇夜は斧を振り下ろし、強化一般人を切り裂いて気絶させた。
「チッ……相変わらずの役立たずっぷりねこのアホ共!!」
華美弥は倒れた強化一般人に吐き捨てると、杖を大きく振るう。
そして放たれた竜巻が、前衛を襲う。
「………………無駄だ」
昴は、太刀の刀身を抜くと大きく横に振るう。
放った斬撃が竜巻を掻き消し、昴は無傷のまま攻撃に転じる。
「一応、聞いておこうか…………何故殺す?」
昴のシンプルな問いに、華美弥はやはりシンプルに返した。
「六六六人衆だからよ……ていうかアンタら1人殺すくらいの役には立ちなさいよ!!」
華美弥は再び強化一般人の背を蹴り飛ばし、前に追いやった。
「イタイ! ……ふっふっふ、華美弥様の命令だ、殺させてもらおう!!」
「…………」
不気味な笑いを浮かべる強化一般人に、昴は無言で返す。
そして強化一般人は盾を振り上げ、昴に向けて勢いよく振り下ろす。
「…………遅い」
昴は腕に嵌めた籠手で相手の打撃を捌くと、腹を蹴って距離を取り、太刀を構えて大きく振り上げる。
「終わりだ」
真っ直ぐと振り下ろした刀身が強化一般人の身体を切り裂き、そのまま仕留めきった。
「何でこうアンタ達はそこまであっさりと倒れるのよ! 馬鹿なの!?」
「すいません華美弥さん!!」
怒号を上げる華美弥に平謝りする、残りの強化一般人2人。
「……何だその言葉遣いは。実に汚い。考えられないほど汚い。貧民街生まれかな?」
アレックス・ダークチェリー(ヒットマン紳士・d19526)がストレートにそう告げると、華美弥の顔が憎悪に歪む。
「ンだとこの糞スーツ野郎が! 見た目は大夫マシになったでしょうが!! マシって自分で言っちゃったけども!!」
「ファッションもメイク術も、その汚い言葉づかいで全て台無しだ……さて、まあ与太話はこの辺にしておこうか」
アレックスはそう呟いてガンナイフを構えると、1人の強化一般人に狙いを定める。
「…………ハァッ!!」
鋭い声を発したアレックスは、ガンナイフを勢いよく何度も突き出し、壁際まで追い詰めていく。
そして不意にヤクザキックを放つと、強化一般人の身体を壁まで弾き飛ばした。
「ふん……これで終わりだ。他愛もない」
アレックスは指輪を嵌めた左手を銃に見立てて狙いを定め、魔力を集束させていく。
そして放たれた魔法の弾丸が、強化一般人の心臓を貫き、そのまま気を失わせた。
「あと1人……そろそろ覚悟した方がいいんじゃないか?」
夜兎は静かに笑い、挑発混じりに華美弥にそう投げかける。
「覚悟すんのはアンタラよ!! 今日という今日はその首取らないと気が済まないわクソが!!」
華美弥は杖にどす黒い魔力を込めると、夜兎に向けて振り下ろし、爆発を引き起こした。
「今……回復、します……」
エイダはそう呟くとギターを構え、癒しをもたらすメロディーで夜兎の傷を癒す。
更に夜兎のナノナノ『ユキ』が癒しのハートを放ち、夜兎の傷を更に癒した。
「助かった、ありがとな…………」
夜兎は礼を言うと足元の影をのばし、最後に残った強化一般人へ覆いかぶせる。
「この辺で、ちょっと大人しくしててもらおうか」
夜兎は全身に纏わせた闘気を拳に集束させ、巨大な塊を形成していく。
そして影から吐き出され、宙を舞った強化一般人に狙いを定める。
「この程度の奴らなら、もっと数揃てくるべきだったな」
そして夜兎が放ったオーラの塊が、強化一般人の意識を一瞬で奪い取った。
「ぐぬぬぬぬ……じゃないわよ、すっかり忘れてたわ! 私そもそもここの学生どもを殺しに来たのよ! ちょっとそこ退きなさいアンタラは後で相手してあげるから!!」
強化一般人が全員倒れて焦ったのか、校舎に向けて全速力で走る華美弥。そしてそれを追う灼滅者たち。
戦いはまだ続く。
●
「……そう簡単に、突破される訳にはいかないのだよ」
アレックスは校舎に向かう華美弥の足元に狙いを定め、正確な射撃で撃ち抜いた。
「……チィッ!! クソ!」
華美弥よろめいた隙に、灼滅者たちは正面扉の前に立ち塞がる。
「危ない危ない……ここは通すわけにはいかないなあ……それにしても、やっぱり見た目だけ変えても中身は同じか。むしろ中身はもっとひどくなってるんじゃないかなあ」
優生は校舎へ向かう気を失くさせようと、挑発を交えた言葉を投げかける。
そして、やはり華美弥には挑発は有効だった。
「だからテメエらが散々私の格好を馬鹿にしたからこうやって可愛くなって帰ってきたんじゃない! それをこの期に及んで中身がどうだの……やかましいわぶち殺すぞ!!」
華美弥は吼えながら、純白の帯を優生に向けて射出した。
「いやまあ、確かにケバくてダサかったけど……あんなに拘ってた割にはあっさり変えちまうんだなあ。その勢いで中身も変えられない物かと思って」
優生は帯が突き刺さる直前、目の前で爆発を引き起こし、帯の軌道を無理やり変えて攻撃を回避した。
片腕を異形化させると、華美弥に接近する。
「………………」
無言で華美弥の背後に回り込んでいた昴は霊気の網を華美弥に放ち、優生の攻撃を援護する。
「今度こそご退場願おうか。お前に、これ以上凶刃を振るわせるわけにはいかない」
そして優生は異形化させた腕で華美弥の腹を抉り、そのまま吹き飛ばした。
「ガ…………! ゲホッ!!」
その一撃がかなり効いたのか、苦しげに顔を歪めながら立ち上がる華美弥。
「チッ……まだ3人しか殺してない。全然殺したりないわ!!」
華美弥はそう吐き捨て、校舎の方を睨み付けた。
そしてその校舎内では、誠を含めた多くの灼滅者達が、学生達を裏口から避難させていた。
『荒事屋』の2人や木葉はプラチナチケットを使用し、冷静に学生たちを誘導していく。
空や菜々乃は一階に立ち、正面玄関ではなく裏口へ行くよう、一般人たちを適切に誘導させていった。
そして裏口に立った由宇と狗姫は、ラブフェロモン等を使用しつつ、一般人たちに正面玄関の方へ行かないように誘導していた。
「華美弥は、防御の面ではかなり脆いようです……一気に畳み掛けます!」
アルヴァレスは槍を構えると、華美弥との距離を一気に詰める。
「この間合い……もらいました」
そして心臓を一突きすると、華美弥は血を吐きながら大きく後ずさる。
「この…………ゲホッ!!」
「逃げても無駄です……その絶望、必ず叩き壊します……!」
アルヴァレスは杖に魔力を込めると、更に華美弥に追撃を仕掛ける。
「覚悟を決めてもらいます……砕け散れっ!」
そして華美弥に杖を叩きつけ、流し込んだ魔力で体内を爆発させたアルヴァレス。
「許さない……絶対に殺してやる……!!」
華美弥の身体から発せられる殺気に反応し、純白の帯が赤黒く染まる。
そして放たれた帯が、前衛に襲い掛かった。
「おっと……まあ、自分の役割は果たさないとな」
仲間を庇い、多くのダメージを引き受けた夜兎。
「前衛の消耗が激しいですね……」
エイダは再びギターを操ると、癒しの旋律を奏でる。
「華美弥さん……人を、殺して……どうして、うれしいんですか……? 折角、努力、できる、人、なのに……」
エイダはぽつりぽつりと、華美弥に問いかける。
「ゲホッ! あー……あぁ? 別に嬉しくなんかないわよ。アンタは毎日呼吸してて嬉しいわけ?」
「……私には、分かりません……」
エイダは眼を伏せ、深く考え込む。
「それが普通よ。アンタらにとっては…………そして死ね!!」
華美弥は血を吐き、更に攻撃を仕掛けようと杖を構える。
「それ以上、傷つけ、させません…………」
エイダは心の中の影を引きずりだすと、漆黒の弾丸を形成する。
同時にエイダのビハインド『エイダ・ブラウン』が、霊力の弾丸を発射し、華美弥の肩を貫いた。
その攻撃に華美弥が怯んだすきに、エイダは漆黒の弾丸を射出し、華美弥の心臓を撃ち貫いた。
「ナイスショットだ。俺も続くぜ」
闇夜は縛霊手を展開させると、霊力から生み出した結界を華美弥に放った。
「ガ…………クソ……引き際を誤ったかしら……」
今更ながら、強化一般人が全員倒れた時点で撤退すればよかったと後悔する華美弥。
体力が少ない華美弥の身体には、限界が近づいていた。
そして既に校舎内のにいた一般人たちは既に全員避難を終え、避難に回っていた灼滅者たちは、戦闘の援護を行っていた。
戦闘の補助としては主に回復の援護をする者が多く、華美弥の高い攻撃力は、この補助によってカバーされていた。
「私は……貴方を許さないよ。これまでに、貴方は沢山の人を殺してきたはず」
イルミアが、ライドキャリバーと共に華美弥と相対する。
「許さなくて結構よ……私もアンタラを許すきないし」
血に塗れた衣装を引きずりながら、華美弥が灼滅者たちを睨み付ける。
「外見をどれだけ取り繕っても、貴方は最低な性格不細工だよ。この言葉も、貴方が今までやってきた事に比べると軽いくらい」
イルミアは縛霊手とエアシューズに炎を纏わせ、攻撃の準備をする。
「そう……………………私は多分ここで死ぬけど。せめて最後に、手土産に誰かの首を貰わないと気が済まないわクソ共が!!」
華美弥は杖を大きく振り上げ、攻撃を仕掛ける。
しかしその攻撃が放たれるよりも早く、灼滅者たちは一斉に攻撃を仕掛けた。
「お前の負けだ。せいぜいあの世でアイドルでもやってるんだな」
夜兎が放った鋼糸が、華美弥の全身を絡め取る。
「終わりだ」
昴は居合いの構えで太刀を抜き、華美弥の身体を深く斬りつける。
「あなたを、倒して……皆を、守ります…………」
エイダが放った炎の蹴りが、華美弥の身体を燃やしていく。
「来世ではメイク術の他に上品な言葉遣いも学ぶことだな」
アレックスが放った弾丸が、脳天を貫いた。
「それと適切なアイドル活動の方法もな。見た目が綺麗ってのは、本当だからな」
闇夜が振り下ろした斧が、華美弥に深い傷を刻んだ。
「前回の様に逃がしはしない…………ここで絶対に仕留める」
優生が魔術を詠唱すると、華美弥の身体を中心に爆発が引き起こされた。
「さようなら。黄泉路に御気を付けて」
アルヴァレスが、オーラを纏わせた拳の連打を放つ。
「これで終わり……もう一回合わせるよ、マールート!」
イルミアはマールートと共に、華美弥へ突撃する。
イルミアに先んじて突撃したマールートが、華美弥の身体をはね飛ばし、空に高く打ち上げた。
「ナイスアシストだよ、マールート!」
空に高く飛び上がったイルミアが、炎を纏わせた蹴りを放ち、地面まで一気に叩き落す。
そして炎を纏わせた縛霊手を装着したイルミアが急降下し、華美弥の喉元に狙いを定める。
「これで……本当に終わりだよ!!」
落下の衝撃と共に燃え盛る爪を振り下ろし、華美弥の喉を掻き切った。
「ガ…………」
地面に倒れ、全身が焼かれていく華美弥は、喉元を抑えながら空を仰ぐ。
「……私はただ、人を殺す姿を皆に見て欲しかっただけなのに…………」
掠れた声でそう呟き、華美弥は跡形もなく燃え尽きていった。
20の死体が転がる筈だった校門には1つの死体も無く、
130の死体が残るはずだった校舎にも、1つの死体も無かった。
そして華美弥の死体も、どこにも残ってはいなかった。
こうして灼滅者たちは、六六六人衆を灼滅し、多くの一般人たちの命を救った。
全員の協力と、多くの灼滅者たちの助けにより得た、最大の戦果だった。
この戦果を持ち帰り、次なる戦いに備えるとしよう。
作者:のらむ |
重傷:なし 死亡:なし 闇堕ち:なし |
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種類:
公開:2015年2月28日
難度:やや難
参加:8人
結果:成功!
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得票:格好よかった 6/感動した 0/素敵だった 0/キャラが大事にされていた 2
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